【事例紹介】金づちで頭を殴り軽傷を負わせ、殺人未遂罪で逮捕

警察官に逮捕される男性

金づちで警察官の頭を殴り軽傷を負わせたとして、殺人未遂罪の容疑で逮捕された事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

事例

警察官の頭を金づちで殴ったとして滋賀県警草津署は(中略)公務執行妨害と殺人未遂容疑で現行犯逮捕した。調べに黙秘しているという。
(中略)滋賀県草津市木川町の路上で自転車に乗ろうとしていた男に同署地域課の男性巡査部長(50)が職務質問したところ、男は逃げようとし、進路をふさがれると金づちで巡査部長の左側頭部を殴ったという。巡査部長は軽傷。
(2023年12月25日 「金づちで警官の頭を殴った疑いで60歳男逮捕…自転車に乗ろうとして職務質問される」より引用)

殺人未遂罪

刑法第199条
人を殺した者は、死刑又は無期若しくは五年以上の懲役に処する。

殺人罪は簡単に説明すると、殺す意図をもって人を殺した場合に成立します。
また、殺人罪は未遂も罰せられますので(刑法第203条)、死亡しなかった場合には殺人未遂罪が成立することになります。

今回の事例では、容疑者は警察官の頭を金づちで殴ったとされています。
この警察官は軽傷のようなのですが、こういった場合には殺人未遂罪は成立するのでしょうか。

結論から言うと、報道が事実なのであれば、殺人未遂罪が成立する可能性があります。

大まかに説明すると殺人未遂罪は、殺そうと思って相手に危害を加え、その結果死に至らなかった場合に成立します。
ですので、相手が軽傷であっても上記の要件を満たしていれば殺人未遂罪が成立する可能性は十分にあります。

では今回の事例ではどうでしょうか。

報道によると容疑者は金づちで頭を殴ったとされています。
頭部には脳がありますから、頭部に衝撃を加えると死に至る可能性があります。
また、金づちで殴ると相当な衝撃を相手に与えるでしょうから、金づちで人の頭を殴ることで死んでしまう可能性があることは容易に想像できるでしょう。
殺人罪殺人未遂罪では、殺意があったかどうかは、加害者本人の供述や使用した凶器、危害を加えた箇所などから総合的に判断されます。
殺意を否認している場合でも、その行為によって人が死ぬことを容易に想像できるような場合には、殺人罪殺人未遂罪が成立する場合があります。
金づちで頭を殴ると死ぬ可能性があることは想像できるでしょうから、実際に容疑者が金づちで警察官の頭を殴ったのであれば、容疑者に殺人未遂罪が成立してしまうかもしれません。

殺人未遂罪と量刑

刑法第43条
犯罪の実行に着手してこれを遂げなかった者は、その刑を減軽することができる。ただし、自己の意思により犯罪を中止したときは、その刑を減軽し、又は免除する。

未遂罪の場合、未遂でない場合と比べて科される刑罰が軽くなる可能性があります。
ですが、軽くなる可能性があるといっても、殺人罪の法定刑は死刑又は無期若しくは五年以上の懲役ですので、有罪になれば懲役刑が科されることになるでしょうから、執行猶予付き判決を得ない限り刑務所に行くことになります。

殺人未遂罪と傷害罪

人にけがを負わせた場合に成立する犯罪として、傷害罪を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。

刑法第204条
人の身体を傷害した者は、十五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

傷害罪は暴行を加え人にけがを負わせた場合に成立する犯罪です。

今回の事例では、容疑者が金づちで頭を殴ったとされています。
人を殴る行為は暴行にあたりますし、金づちで殴ったことでけがを負わせているようなので、実際に容疑者が金づちで頭を殴ったのであれば、傷害罪が成立する可能性も考えられるのですが、今回の事例では傷害罪は成立しないのでしょうか。

繰り返しになりますが、殺人罪殺人未遂罪が成立するためには、人を殺そうとする意志が必要になってきます。
ですので、殺意が認められない場合には、殺人罪殺人未遂罪は成立しないことになります。
ですので、今回の事例で殺意が認められない場合には、殺人未遂罪でなく傷害罪が成立する可能性があります。

傷害罪には罰金刑の規定がありますから、傷害罪殺人罪殺人未遂罪と比べて科される刑の軽い犯罪だといえます。
殺人未遂罪と傷害罪ではかなり科される刑罰が変わってくる可能性がありますから、殺人未遂罪を疑われている場合には、場合によっては傷害罪の成立を目指した弁護活動が必要になってくる可能性があります。

傷害罪の成立を目指すうえで取調べ対応が重要になります。

証拠というと、今回の事例の金づちのような、犯行で使われた凶器を思い浮かべる方が多いと思います。
金づちなどの凶器ももちろん証拠にあたるのですが、本人や被害者、目撃者などの話した内容も証拠となります。

取調べでは、供述調書というものが作成されます。
この供述調書は裁判で使用される重要な証拠となります。
供述調書取調べで話した内容を基に作成されますので、不利な証拠の作成を防ぐためには、取調べで自分の不利になるようなことを離さないことが極めて重要になります。

ですが、警察官や検察官は、自分たちが思い浮かべたとおりの筋書きになるように、話す内容を誘導してくることがあります。
例えば、殺人未遂罪の容疑をかけられている場合には、「殺すつもりがあった」というような殺意を認める内容を話すように誘導されるおそれがあります。
一度供述調書が作成されてしまうと、内容を訂正することは容易ではありませんから、事前に取調べで話す内容などをあらかじめ考えておくことが重要です。

とはいえ、どういった内容を話せばいいのかわからない方がほとんどでしょうし、わからないことだらけで不安な方も多いと思います。
ですので、取調べで困っている場合には、弁護士に相談をすることをおすすめします。
弁護士であれば法律の観点から、積極的に話した方が良い内容やそうでない内容の検討がつきますし、取調べに対してアドバイスを行うことができます。
後に窮地に陥るような事態にならないためにも、取調べ前に弁護士に相談をすることが望ましいでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件に精通した法律事務所です。
刑事事件の豊富な弁護経験をもつ弁護士に相談をすることで、望んだ結果を得られる可能性があります。
殺人未遂罪など、刑事事件でお困りの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

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