覚せい剤の輸入は裁判員裁判?③

覚せい剤の輸入事件で裁判員裁判となった事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

◇覚せい剤の輸入事件◇

滋賀県大津市に住んでいるAさんは、以前から覚せい剤などの違法薬物に興味を持っていました。
Aさんが覚せい剤について調べたところ、SNSで知り合った海外に住むXさんが、海外から覚せい剤を送ってくれると声をかけてきました。
Aさんはその誘いに乗り、Xさんから滋賀県大津市にあるAさんの自宅宛に、覚せい剤を送ってもらうことにしました。
しかし、いくら経っても覚せい剤が届かないことからおかしいと思っていたAさんの元に、滋賀県大津警察署の警察官がやってきて、Aさんは覚せい剤取締法違反と関税法違反の容疑で逮捕されてしまいました。
Aさんが送ってもらった覚せい剤は、税関で止められ、検査の結果覚せい剤であると判明したことから捜査が開始されたということのようです。
(※この事例はフィクションです。)

◇覚せい剤輸入と裁判員裁判◇

①の記事で触れた通り、覚せい剤輸入事件では、覚せい剤輸入の目的によって刑罰の重さが変わってきますが、変わるのは刑罰の重さだけではありません。
実は、覚せい剤輸入の目的が営利目的だった場合、受けることになる裁判が通常の裁判ではなく、裁判員裁判になります。

裁判員裁判について定めた裁判員法(正式名称「裁判員の参加する刑事裁判に関する法律」)では、裁判員裁判となる対象の事件について、以下のように規定しています。

裁判員法第2条第1項
地方裁判所は、次に掲げる事件については、次条又は第3条の2の決定があった場合を除き、この法律の定めるところにより裁判員の参加する合議体が構成された後は、裁判所法第26条の規定にかかわらず、裁判員の参加する合議体でこれを取り扱う。
第1号 死刑又は無期の懲役若しくは禁錮に当たる罪に係る事件
第2号 裁判所法第26条第2項第2号に掲げる事件であって、故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪に係るもの(前号に該当するものを除く。)

前回以前の記事で取り上げているように、営利目的の覚せい剤輸入による覚せい剤取締法違反には、その法定刑に無期懲役が含まれています。
つまり、裁判員法第2条第1項第1号の「死刑又は無期の懲役若しくは禁錮に当たる罪に係る事件」にあたることになりますから、営利目的の覚せい剤輸入事件は裁判員裁判となるのです。

◇裁判員裁判は何が違う?◇

ここで、では通常のの裁判と裁判員裁判では何が違うのか、と疑問に思う方もいらっしゃるでしょう。
いくつか裁判員裁判の特徴をご紹介します。

まず、裁判員裁判は、その名前の通り、弁護士や裁判官、検察官といった法律の専門家以外に、一般の方が裁判員として裁判に参加します。
裁判員の方は、裁判官と一緒に弁護士や検察官、被告人や証人の話を聞いたり証拠を見たりして、被告人の有罪・無罪や有罪の場合の量刑(形の重さ)を決めたりします。
つまり、裁判員裁判の場合、法律知識のない裁判員の方にも被告人側の主張を理解してもらうための工夫が必要となってくるのです。

そして、裁判員裁判は、そうした裁判員の方にも裁判内容が分かりやすいよう、また、スムーズに裁判が進められるよう、本番の裁判の前に、公判前整理手続という手続きが開かれます。
この手続きは、あらかじめ証拠を整理したり裁判で争われる争点を明確にしたりする手続きです。
この手続きを裁判の前にしておくことで、裁判を開始してから証拠や争点を絞り込む必要がなくなり、進行がスムーズになったり、今何が裁判で争われているのかが分かりやすくなったりするのです。
公判前整理手続は裁判員裁判以外の通常の裁判でも開かれることがありますが、必ず開かれるものでもありません。
しかし、裁判員裁判の場合、この公判前整理手続は必ず開かれることになります。
裁判員裁判をするとなれば、この公判前整理手続から主張を固めて活動をすることが重要です。
裁判で使用する証拠やポイントとなる争点を決める場ですから、裁判本番ではないから気を抜いてよいということにはならないのです。

そして、裁判員裁判では、裁判の開かれる期間も通常の裁判とは異なります。
例えば、通常の裁判では、起訴されてから大体1,2ヶ月程度で1回目の裁判が開かれ、その後また1,2ヶ月程度で次回の裁判、と裁判が開かれ、最終的に判決が言い渡される、というスケジュールになることが多いです。
そのため、最初の裁判が開かれてから判決が言い渡されるまで少なくとも2ヶ月程度はかかる計算になります。
一方、裁判員裁判は、参加する裁判員の方の負担を減らすため、裁判が集中的に開かれます。
例えば、初回の裁判が開かれた次の日に2回目の裁判が開かれ、さらにその翌日に3回目の裁判が開かれる、といった具合いです。
ですから、もちろん事件にもよりますが、裁判員裁判では、最初の裁判が開かれてから判決が言い渡されるまでは一気に進んでいくことになり、短いものであれば初回の裁判から判決まで1週間かからずに終わることも考えられます。

しかし、先ほど触れた通り、その裁判が開かれるまでの準備段階も含めると、裁判員裁判のために活動する期間は起訴から数カ月間、長ければ年単位になることも考えられます。
長い間集中した活動を求められますから、刑事事件に強い弁護士のサポートを受けながら対応していくことが望ましいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、裁判員裁判についてのご相談・ご依頼も受け付けています。
刑事事件専門だからこそ、裁判員裁判でも丁寧かつ迅速な対応が可能です。

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