夏休み中の違法バイトで詐欺事件②

夏休み中の違法バイトで詐欺事件②

~前回からの流れ~
Aさんは、滋賀県東近江市に住んでいる17歳の高校2年生です。
8月に入り、夏休みであったAさんは、時間を持て余し、この機会にバイトをして小遣いを稼ごうと考えました。
そこでAさんは、インターネットやSNSでバイトを探し始めたのですが、そこに「夏休みの間だけでOK!簡単な集荷・配達で稼げる!」といったあおり文句の自宅近くでできるバイト募集が見つかりました。
Aさんはこれ幸いとそのバイトに応募しました。
そのバイトは、指示された家に向かい、住人から荷物や封筒を受け取り、また指示された場所にもっていくというものでした。
そうした仕事内容から、Aさんは「もしかすると何か怪しい仕事なのかもしれない」と思いましたが、「そんなことないだろう」と思い直し、バイトの仕事を受けました。
その後、Aさんは夏休みの間しばらくこのバイトを続けましたが、ある日自宅に滋賀県東近江警察署の警察官が訪れ、Aさんは詐欺罪の容疑で逮捕されてしまいました。
どうやらAさんの行っていたバイトは、特殊詐欺の「受け子」をする違法バイトだったようです。
(※この事例はフィクションです。)

・「受け子」をしたら絶対共犯?

前回の記事では、バイトから詐欺事件の被疑者となってしまう可能性のあることや、「受け子」という役割、「受け子」をした場合には詐欺事件の共犯となる可能性があるということについて触れました。
では、「受け子」をしてしまったら必ず詐欺罪の共犯ということになってしまうのでしょうか。
今回はまずそうしたことから考えていきましょう。

犯罪は基本的に「故意」がなければ成立しません。
これは共犯についても同じです。
ですから、「受け子」であり詐欺行為の一端を担うことであるという認識を全くせずに「受け子」をしてしまったのであれば、共犯とは認められず、無罪となるでしょう。
実際に、「受け子」をしてしまった被告人が、詐欺罪の故意がなかったとして争い、無罪となった事件も見られます(東京高判平成23.8.9)。
この東京高裁の裁判では、被告人は「まっとうでない仕事である」ということは認識していたものの、詐欺行為で現金をだまし取るということまで認識はしておらず、詐欺罪の故意がないということで無罪としています。
ですから、「受け子」をしてしまったら本人の認識にかかわらず絶対に共犯となる、というわけではありません。
Aさんの詐欺事件でも、Aさんが詐欺の認識を全く持っていなかったということが認められれば、Aさんの嫌疑はなしということで、家庭裁判所への送致をせずに事件終了となったり、家庭裁判所送致後には審判を開始せずに終息させたり不処分となったり、という可能性もあります(Aさんの詐欺事件少年事件のため、成人の刑事事件とは異なる流れをたどります。)。

ただし、例としてあげた東京高裁の詐欺事件については具体的な事情を考慮して詐欺罪の故意(認識)まではなかったと判断されているものであるため、一概に「何か違法な仕事だと思っていても詐欺罪ではないと思っていたから無罪になる」とは言えません。
特に、近年は特殊詐欺については厳しい判断が下される傾向にあります。
報道でも特殊詐欺が取り上げられることは多いため、「本当に詐欺と気づかなかったのか」という点については厳しい判断がなされることが多いです。
Aさんがバイトをした経緯やバイトへの認識、どういった状況でバイトをしていたのかといった具体的な事情を検討しながら、詐欺罪の共犯となってしまうのか見通しを立てながら対応を考えなければなりません。

さらに、Aさんのような20歳未満の者による少年事件の場合には、嫌疑が晴れたとしても、その少年の周囲の環境等の事情によって家庭裁判所の審判に付すことが相当であるという判断が下った場合については、家庭裁判所に送致されることにも注意が必要です。

こうしたことから、違法バイト詐欺事件に巻き込まれてしまった少年事件の場合、容疑を認めるにしろ認めないにしろ、弁護士に早期に相談することが重要となります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件だけでなく少年事件のご相談・ご依頼も多数承っています。
捜査段階のサポートから家庭裁判所へ送致された後のサポートまで、刑事事件少年事件専門だからこそ一貫して丁寧な活動が可能です。
まずはお問い合わせ用フリーダイヤル0120-631-881までお電話ください。

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