大津市の監護者性交等事件を相談①

大津市の監護者性交等事件を相談①

滋賀県大津市に住んでいるAさんには、妻のBさんと14歳の娘Vさんがいます。
ある日、Vさんがなかなか帰宅せず、不審に思ったBさんがVさんの通っている中学校に確認の電話を入れたところ、Vさんが児童相談所に保護されていると言われました。
驚いたBさんが児童相談所に問い合わせたところ、Vさんが学校でAさんから性交されたと相談したため、学校から児童相談所に通告され、保護するに至ったとのことでした。
児童相談所からは、検査の結果等も見るが今のところ滋賀県大津警察署に通報する予定であることも伝えられました。
それを聞いたAさんとBさんは、刑事事件に詳しい弁護士に相談することにしました。
(※この事例はフィクションです。)

・Aさんに容疑がかかる犯罪は?

今回Aさんに容疑がかかる可能性のある犯罪としては、刑法上の「監護者性交等罪」が考えられます。

刑法179条
1項 18歳未満の者に対し、その者を現に監護する者であることによる影響力があることに乗じてわいせつな行為をした者は、第176条の例による。
2項 18歳未満の者に対し、その者を現に監護する者であることによる影響力があることに乗じて性交等をした者は、第177条の例による。

※注※
刑法176条(強制わいせつ罪)
13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、6月以上10年以下の懲役に処する。
13歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。

刑法177条(強制性交等罪)
13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いて性交、肛門性交又は口腔性交(以下「性交等」という。)をした者は、強制性交等の罪とし、5年以上の有期懲役に処する。
13歳未満の者に対し、性交等をした者も、同様とする。

つまり、監護者わいせつ罪となれば、強制わいせつ罪と同様の「6月以上10年以下の懲役」という刑罰を受けることになり、監護者性交等罪となれば、強制性交等罪と同様の「5年以上の有期懲役」という刑罰を受けることになります。

・監護者性交等罪はなぜできた?

今回の事例で問題となるであろう監護者性交等罪ですが、その名前には聞きなじみがないと思う方も多いかもしれません。
監護者性交等罪は、平成29年に行われた刑法改正で新設された犯罪なのです。

監護者性交等罪ができるまでは、「監護者」=18歳未満の者を保護・監督している者が18歳未満の者に対して性交等の行為やわいせつ行為をしても、暴行や脅迫を用いられていなければ(または被害者が13歳未満の者でなければ)、「児童福祉法違反」や各都道府県の「青少年保護育成条例違反」という犯罪が成立するにとどまりました(暴行・脅迫が認められた場合や相手が13歳未満であった場合には、旧「強姦罪」や「強制わいせつ罪」が適用されていました。)。

児童福祉法34条
1項 何人も、次に掲げる行為をしてはならない。
6号 児童に淫行をさせる行為

「淫行」は性交類似行為を指すとされていますから、わいせつ行為や性交等は「淫行」にあたると考えられます。
児童福祉法の「児童」は18歳未満の者を指します。
同様に、滋賀県の青少年保護育成条例では、以下のように規定されています。

青少年の健全な育成に関する条例(滋賀県)24条
何人も、青少年に対して行またはわいせつな行為をしてはならない。

青少年保護育成条例では、未婚の18歳未満の者を「青少年」としているところが多いです。

さて、この淫行をさせる行為による児童福祉法違反では、法定刑が「10年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金に処し、又はこれを併科」となっており(児童福祉法60条1項)、滋賀県の青少年保護育成条例違反では「1年以下の懲役または50万円以下の罰金」となっています。
これは強制性交等罪の法定刑である「5年以上の有期懲役」や強制わいせつ罪の法定刑である「6月以上10年以下の懲役」よりも軽い刑罰となっています。
しかし、監護者であることを利用して性交等やわいせつ行為を18歳未満の者にすることは、強制性交等罪や強制わいせつ罪と同じくらい悪質であるとして、監護者性交等罪や監護者わいせつ罪が新しく規定されたのです。

このように、法律の改正によって新しく犯罪ができることもあり、こうした犯罪にも迅速に対応することが求められます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所刑事事件を専門に取り扱う法律事務所です。
監護者性交等罪など、まだできて間もなく、事例も多くない犯罪であっても、今までの経験や知識から、丁寧にご相談に乗らせていただきます。
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