線路への置き石で往来危険罪

線路への置き石で往来危険罪

Aさんは、日頃の鬱憤を晴らそうといたずらをしようと考え、滋賀県近江八幡市内を走る電車の線路の上に、コンクリートブロックや大きな石などを約100メートルにわたって並べました。
電車が来る前に駅員が置き石に気づき、緊急停止信号を送ったため、事故には至りませんでしたが、電車は大幅に遅延しました。
その後、滋賀県近江八幡警察署の捜査により、Aさんの置き石行為が発覚。
Aさんは往来危険罪の容疑で逮捕されることとなりました。
(※令和元年9月4日京都新聞配信記事を基にしたフィクションです。)

・往来危険罪

なかなかなじみのない犯罪かもしれませんが、刑法には交通機関の安全を保護するための犯罪も定められています。
その1つが往来危険罪です。

刑法125条1項
鉄道若しくはその標識を損壊し、又はその他の方法により、汽車又は電車の往来の危険を生じさせた者は、2年以上の有期懲役に処する。

往来危険罪の客体は、鉄道とその標識です(2項には灯台等についての規定もありますが、今回は鉄道に関連した1項のみに触れていきます。)。
この往来危険罪においての「鉄道」とは、線路のレールや構造上レールと密接不可分の関係にある、電車や汽車の走行に直接役に立っているものを全て含みます。
つまり、線路のレール部分だけでなく、枕木などの部分、さらには鉄橋やトンネルといった線路を直接構成していないようなものについても含まれるのです。
また、「標識」とは、信号機など運行のための目標を指しています。
これらを損壊=物理的に壊してしまうことでその効用を失わせてしまうほか、それ以外の方法で汽車や電車の往来の危険を生じさせることで往来危険罪が成立するのです。

この往来危険罪がよく問題となるのは、事例のAさんのような置き石行為です。
置き石とは、文字通り線路に石を置く行為を指します。
線路への置き石行為は、汽車や電車を脱線させてしまう可能性のある危険な行為です。
ですから、置き石行為はまさに「汽車又は電車の往来の危険を生じさせ」る行為となり、往来危険罪が成立することになるのです。

・置き石は往来危険罪以外にも犯罪になる?

置き石行為往来危険罪以外に成立しうる犯罪としては、威力業務妨害罪も考えられます。

刑法234条
威力を用いて人の業務を妨害した者も、前条の例による。
(※注:前条=刑法233条 虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。)

威力業務妨害罪の「威力を用いて人の業務を妨害する」とは、細かな事情や当時の状況等にも寄りますが、大まかに言えば直接的・有形的な方法で相手の業務を妨害することを指します。
今回のような置き石行為は、線路に置き石をするという直接的・有形的な方法により、電車の運行という業務を妨害していることから、威力業務妨害罪に問われる可能性もあります。

ただし、この場合、「線路に置き石をする」という1つの行為が、往来危険罪と威力業務妨害罪2つの犯罪に触れることになります。
こうした場合、「観念的競合」という考え方が用いられ、その最も重い刑罰によって処されることになります。
今回の場合でいえば、往来危険罪の法定刑が2年以上の有期懲役であり、威力業務妨害罪の法定刑が3年以下の懲役又は50万円の罰金ですから、最も重い往来危険罪の2年以上の有期懲役という刑罰の範囲で処罰されることになるでしょう。

線路への置き石行為は、行為自体は非常に簡単なものですが、大きな危険を発生させる行為であり、それだけに非常に重い刑罰が規定されているものです。
だからこそ、往来危険事件を起こしてしまったら、早めに弁護士に相談し、今後の見通しも含めて刑事事件の流れを把握しておくこと、それにどのように対応するのか考えておくことが大切です。
0120-631-881では、刑事事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所弁護士によるサービスをいつでもご案内しています。
滋賀県往来危険事件ほか刑事事件にお困りの際は、お気軽にお問い合わせください。

無料相談ご予約・お問い合わせ

 

ページの上部へ戻る

トップへ戻る

電話番号リンク 問い合わせバナー