傷害罪・傷害致死罪と殺人罪②

傷害罪・傷害致死罪と殺人罪②

傷害罪傷害致死罪殺人罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~

Aさんは、滋賀県近江八幡市にある会社に勤める会社員です。
ある日、同僚のVさんと喧嘩になり、Vさんの顔面を殴ったり、倒れ込んだVさんの腹部を蹴りつけたりといった暴行を加えました。
目撃した人が救急車を呼び通報したことでVさんは病院に搬送されましたが、Vさんは搬送先の病院で息を引き取りました。
Aさんは、通報によって駆け付けた滋賀県近江八幡警察署の警察官に傷害罪の容疑で逮捕されました。
Aさんの家族は、警察官から「今後傷害致死罪殺人罪の容疑に切り替わる可能性がある」という旨の話を聞いて不安になり、滋賀県刑事事件や逮捕に対応している弁護士に相談することにしました。
(※この事例はフィクションです。)

・傷害致死罪と殺人罪

前回の記事では傷害罪傷害致死罪の関係を見ていきましたが、今回の記事では傷害致死罪殺人罪の関係を見ていきましょう。
まずは傷害致死罪の条文をもう一度見てみましょう。

刑法第205条(傷害致死罪)
身体を傷害し、よって人を死亡させた者は、3年以上の有期懲役に処する。

傷害致死罪は、人の身体を傷害したことで結果的に人を死なせてしまった場合に成立する犯罪であり、人を傷害した場合に人を死なせてしまったのであれば傷害致死罪が、人に傷害を与えたのみであれば傷害罪が成立することとなるのは前回の記事で確認した通りです。
すなわち、傷害致死罪が成立するのは、「人を暴行する」もしくは「人に怪我をさせる」といった認識・認容=故意のあった場合であるということになります。

対して、殺人罪の条文は以下のようになっています。

刑法第199条(殺人罪)
人を殺した者は、死刑又は無期若しくは5年以上の懲役に処する。

殺人罪は「人を殺」すことで成立しますが、この際、殺人罪の故意、すなわち、人を死なせることの認識・認容がなければ殺人罪は成立しません。
簡単に言えば、わざと人を殺すつもりで人を死なせてしまったり、相手が死んでしまってもよいと認識しながら人を死なせてしまったりすることで殺人罪が成立するのです。
つまり、殺すつもりがなく相手を死なせてしまえば傷害致死罪、殺すつもりで相手を死なせてしまえば殺人罪となる=故意によって成立する犯罪が異なるということになるのです。

ここで注意しなければならないのは、故意というのは内心の問題であるものの、被疑者・被告人本人の供述だけでその有無を判断されるわけではないということです。
凶器の有無、暴行等を加えた場所、事件の起こった経緯や事件前後の事情など、様々な事情と供述を考慮して成立する犯罪が傷害致死罪なのか殺人罪なのかが判断されます。
例えば、腹や胸といった急所を包丁などの凶器を用いて何回も刺しているようなケースでは、殺意=殺人罪の故意があったと推定できるでしょう。

故意の違いで成立する犯罪が異なるため、実際は傷害致死罪が成立する事件であっても殺人罪の容疑をかけられて捜査されるということも考えられます。
殺人罪傷害致死罪では刑罰の重さも全く異なりますから、不要に重い刑罰が科されることを防ぐためにも、弁護士と細かく取調べへの対応や見通しの確認をしていくことが求められます。

また、傷害致死罪殺人罪裁判員裁判対象事件となるため、より刑事事件の専門知識が必要となります。裁判員裁判の場合、裁判が開かれるまでにも長く丁寧な準備が必要となるため、弁護士のフォローを受けながら手続きを進めていくことが望ましいでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、裁判員裁判の対象となる傷害致死事件殺人事件についてのご相談・ご依頼も受け付けています。
お困りの際は、お気軽に弊所弁護士までご相談ください。

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