福祉施設に勤める看護師が施設利用者に対して殴ったとして、傷害罪で逮捕された事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
事例
滋賀県警草津署は31日、勤務先の福祉施設の利用者に暴行を加えたとして、傷害の疑いで、大津市の看護師の男(48)を逮捕した。
逮捕容疑は、(中略)滋賀県内の福祉施設で30代女性の顔を殴り、左顔面打撲の軽傷を負わせた疑い。
同署によると、男は「殴ったことに間違いない」と容疑を認めている。(後略)
(9月1日 京都新聞 「福祉施設で30代女性の顔を殴った疑い、48歳看護師を逮捕 滋賀」より引用)
傷害罪
傷害罪は、刑法第204条で「人の身体を傷害した者は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。」と規定されています。
傷害罪は簡単に説明すると、人に故意に暴行を加え、その結果、相手にけがを負わせると成立する犯罪です。
傷害罪の法定刑は15年以下の懲役又は50万円以下の罰金ですので、傷害罪で有罪になると懲役刑や罰金刑が科される可能性があります。
今回の事例では、容疑者が女性の顔を殴り、打撲を負わせたと報道されています。
人を殴る行為は暴行にあたります。
また、殴る暴行を加えたことで、打撲を負わせているので、今回の事例では傷害罪が成立する可能性が高いです。
傷害罪と釈放
今回の事例では、容疑者が傷害罪の容疑で逮捕されたと報道されています。
一度逮捕されてしまうと、事件が終わるまで家に帰ることはできないのでしょうか。
実は、事件が終わる前であっても釈放がみとめられれば、家に帰ることができます。
弁護士は、検察官や裁判官に勾留請求に対する意見書を提出することができます。
この意見書は勾留を請求、決定しないようにお願いする内容の書面ですので、勾留が決定する前でなければ提出をすることができません。
勾留の判断は逮捕後72時間以内に行われます。
ですので、意見書を提出する際には、逮捕されてから72時間以内に提出する必要があります。
勾留が決定しなければ釈放されることになりますので、意見書を提出することで、釈放を認められる可能性があります。
意見書では、主に、勾留されて困ることや証拠隠滅や逃亡のおそれがないことを主張します。
意見書の準備にも時間が必要ですので、ご家族が逮捕された方は、できる限り早く弁護士に相談をすることが望ましいでしょう。
また、勾留が決定した後であっても、弁護士が裁判所に準抗告の申し立てを行うことで、釈放が認められる可能性があります。
今回の事例では、容疑者が福祉施設で勤務しており、被害者がその施設を利用していたと報道されています。
報道からは明らかではありませんが、容疑者が被害者の住居などを知っている可能性があります。
刑事訴訟法第60条1項では、
裁判所は、被告人が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由がある場合で、左の各号の一にあたるときは、これを勾留することができる。
1号 被告人が定まった住居を有しないとき。
2号 被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
3号 被告人が逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
と規定しています。
被害者に接触して、供述内容を変更させる行為なども証拠隠滅に該当します。
ですので、加害者が被害者と知り合いであったり、住居などを知っている場合には証拠隠滅の疑いがあると判断されやすくなり、勾留が決定してしまう可能性が高くなります。
今回の事例で容疑者が被害者と知り合いであり、なおかつ住居などを知っているのであれば、勾留が決定してしまうかもしれません。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、数々の刑事事件で釈放を実現させてきました。
早期に弁護士に相談をすることで、釈放を実現できるかもしれません。
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次回のコラムでは、看護師免許と欠格事由について解説します。