特殊詐欺に関わって逮捕されたら③共犯

特殊詐欺に関わって逮捕されたら③共犯

特殊詐欺に関わって逮捕されてしまったケースのうち、特に共犯について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~

23歳のAさんは、自由に使えるお金がないことに不満をもち、どうにかお金を手に入れることができないかと悩んでいました。
そこで、Aさんは知人であるBさんと一緒になって、警察官を装った特殊詐欺を行い、高齢者から金をだまし取り、山分けする計画を立てました。
そして、AさんとBさんは計画通り、警察官を装った特殊詐欺を行いました。
ある日、Bさんは滋賀県米原市に住む高齢者Vさんに電話をかけ、「警察です。特殊詐欺犯を逮捕したところ、あなたの氏名が出てきました。被害に遭うと大変なので、こちらで警察官を向かわせて対策を立てます。キャッシュカードと暗証番号を用意して待っていてください。」などと伝え伝え、キャッシュカードと暗証番号を準備させました。
Aさんは、警察官を装うため、滋賀県米原市にあるVさん宅の近くにあるコンビニのコピー機で、警察を表す日章の記号や警察官風の写真などを印刷し、警察官の身分証のようなものを作成し、Vさん宅に向かいました。
しかし、その道中、Aさんは複数の特殊詐欺の被害を受けて警戒していた滋賀県米原警察署の警察官に職務質問され、偽造した身分証を発見されました。
結果、Aさんは公記号偽造罪の容疑で逮捕されてしまいました。
(※令和2年3月4日YAHOO!JAPANニュース配信記事を基にしたフィクションです。)

・特殊詐欺と共犯

特殊詐欺事件は複数人で計画立てて行われることも多く、共犯者が存在することも多いです。
今回の特殊詐欺事件でも、AさんとBさんは一緒に特殊詐欺の計画を立てたうえで実行に移していることから、いわゆる「共犯」として処罰されることになるでしょう。

刑法60条
2人以上共同して犯罪を実行した者は、すべて正犯とする。

刑法60条の共同正犯とは、一般に知られている「共犯」という言葉に近い考え方でしょう。
共同正犯となった場合、共同正犯とされた者は、それぞれが1人でその犯罪を実行した時と同じ重さの刑罰の範囲の中で処罰されます。
例えば、複数人で犯罪をしようということになってそれぞれが犯罪にあたる行為の一部ずつを担当したとしましょう。
こうした時、共同正犯であると判断されれば、たとえ実行した行為が犯罪の一部分だけであっても、1人でその犯罪を実行した時と同様の刑罰の重さの範囲で処罰されることになるのです。

共同正犯の成立用件である「共同して犯罪を実行した」を簡単に言えば、それぞれが犯罪を一緒に実行する意思を持っていることと、それぞれが一緒に犯罪の実行行為をすることを指します。
今回のAさんとBさんは、詐欺罪にあたる行為をそれぞれ役割分担して行っているようですが、お互いが一緒に特殊詐欺行為をしようと計画を立て、それぞれが実行に移していることから、AさんとBさんは詐欺罪詐欺未遂罪についてこの共同正犯という共犯の考え方に当てはまり、それぞれが詐欺罪詐欺未遂罪に問われることになると考えられます。

・共謀共同正犯

ここで、Bさんに関しては、公記号偽造罪にあたる行為を直接実行しているわけではありません。
しかし、AさんとBさんが一緒に計画を立てた特殊詐欺のための行為であり、Bさん自身もその行為を一緒に計画立てていることから、公記号偽造罪に関してもBさん自身の犯罪であるという意識・連絡があり、さらにAさんとBさん2人で立てた計画に基づく行為であるという判断が下される可能性があります。
そうなれば、Bさんも公記号偽造罪の共犯、つまり共同正犯として処罰される可能性があるということになるのです(いわゆる「共謀共同正犯」)。

共謀共同正犯という考え方は、犯罪の実行をしていない者でも上述の共同正犯に当てはまるとする共犯の考え方です。
共同正犯であるとされれば、先ほど説明したように犯罪を1人で実行した時と同じ重さの刑罰の範囲で処罰されてしまいます。
ですから、共謀共同正犯になれば、犯罪を実行していないにも関わらず犯罪をしたときと同じ刑罰を受ける可能性が出てくるということになりますので、共謀共同正犯にあたるかどうかということは非常に重要な分かれ目であるということになります。

共同共謀正犯が成立するための条件を簡単に挙げると、共謀の存在と、その共謀に基づいて共謀した者のうち一部または全部の者が犯罪を実行したこととなります。
先述したように、今回の事例では、AさんとBさんは一緒になって特殊詐欺の計画を立てており(=共謀)、その計画に基づいてAさんが公記号偽造罪を実行に移していることから、Bさんについては公記号偽造罪共謀共同正犯となる可能性があるということになるのです。
もちろん、犯罪の実行行為の態様や共犯者らの関係、犯罪への関与の度合いなど、検討しなければならない部分も多いため、共謀共同正犯が疑われる刑事事件では刑事事件に強い弁護士の意見を聞いてみることをおすすめします。

共犯の存在する刑事事件では、どの犯罪についてどういった共犯となるのか、その共犯になった場合どういった処分が予想されるのかなど、そもそも「共犯」について検討しなければならないことが多く、複雑になることが予想されます。
さらに、共犯の存在する刑事事件では、共犯との口裏合わせを防ぐ等の理由から逮捕・勾留を伴う捜査が行われることも多く、身体拘束に対する活動も求められることも多いです。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、共犯事件のこうしたご不安・お悩みについて、刑事事件に強い弁護士逮捕直後からサポートを行います。
まずはお気軽にご連絡ください。

次回の記事では詐欺罪と公記号偽造罪、余罪との関係について解説します。

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