特殊詐欺に関わって逮捕されたら④複数の犯罪

特殊詐欺に関わって逮捕されたら④複数の犯罪

特殊詐欺に関わって逮捕されてしまったケースのうち、特に複数の犯罪をしてしまっている場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~

23歳のAさんは、自由に使えるお金がないことに不満をもち、どうにかお金を手に入れることができないかと悩んでいました。
そこで、Aさんは知人であるBさんと一緒になって、警察官を装った特殊詐欺を行い、高齢者から金をだまし取り、山分けする計画を立てました。
そして、AさんとBさんは計画通り、警察官を装った特殊詐欺を行いました。
ある日、Bさんは滋賀県米原市に住む高齢者Vさんに電話をかけ、「警察です。特殊詐欺犯を逮捕したところ、あなたの氏名が出てきました。被害に遭うと大変なので、こちらで警察官を向かわせて対策を立てます。キャッシュカードと暗証番号を用意して待っていてください。」などと伝え伝え、キャッシュカードと暗証番号を準備させました。
Aさんは、警察官を装うため、滋賀県米原市にあるVさん宅の近くにあるコンビニのコピー機で、警察を表す日章の記号や警察官風の写真などを印刷し、警察官の身分証のようなものを作成し、Vさん宅に向かいました。
しかし、その道中、Aさんは複数の特殊詐欺の被害を受けて警戒していた滋賀県米原警察署の警察官に職務質問され、偽造した身分証を発見されました。
結果、Aさんは公記号偽造罪の容疑で逮捕されてしまいました。
(※令和2年3月4日YAHOO!JAPANニュース配信記事を基にしたフィクションです。)

・複数の犯罪に触れる場合どうなる?

今回の事例では、AさんとBさんは詐欺罪詐欺未遂罪)と公記号偽造罪・同行使罪(同行使未遂罪)と、特殊詐欺を実行するにあたって複数の犯罪に触れうる行為をしています。
複数の犯罪に触れる行為をした場合、処罰される際にどのように処理されることになるのでしょうか(②の記事で触れた通り、今回の事例でBさんに詐欺未遂罪が成立するかどうかは詳しい事情を考慮して考えなければいけませんが、このテーマを検討するにあたり、詐欺未遂罪が成立するという前提で検討していきます。)。

刑事事件の一連の流れの中で複数の異なる犯罪に触れる行為をしてしまっている場合、それぞれの犯罪に当たる行為の関係性によって、処理される方法が異なります。
例えば、今回のAさんらの事例を考えてみましょう。
Aさんらの場合、詐欺罪詐欺未遂罪)にあたる行為=Vさんからキャッシュカードをだまし取る行為をするために、公記号偽造罪・同行使罪にあたる行為=警察の日章を偽造して相手に見せる行為をしています。
このように、ある犯罪行為をすることを目的にして、そのための手段として別の犯罪行為をしているような場合には、「牽連犯」という考え方が用いられます。
Aさんらで言えば、詐欺罪にあたる行為が目的、その手段として公記号偽造罪・同行使罪にあたる行為があることになります。
複数の異なる犯罪をしてしまった際、この牽連犯の関係である場合には、成立する犯罪のうち最も重い刑罰の範囲で処罰されることになります。
これは、刑法の条文でいえば刑法54条の後段部分に規定されています。

刑法54条
一個の行為が二個以上の罪名に触れ、又は犯罪の手段若しくは結果である行為が他の罪名に触れるときは、その最も重い刑により処断する。

Aさんらの事例で言えば、詐欺罪の法定刑は10年以下の懲役公記号偽造罪・同行使罪の法定刑は3年以下の懲役ですから、より重い詐欺罪10年以下の懲役という刑罰の範囲内で処罰されることになるでしょう。

・複数回犯罪をしていたらどうなる?

事例を見てみると、AさんらはVさん相手の特殊詐欺行為以外にも特殊詐欺をはたらいていたようです。
複数回にわたって別の刑事事件を起こしている、複数回犯罪をしているといった場合には、「併合罪」という考え方が用いられます。

刑法45条
確定裁判を経ていない二個以上の罪を併合罪とする。
ある罪について禁錮以上の刑に処する確定裁判があったときは、その罪とその裁判が確定する前に犯した罪とに限り、併合罪とする。

刑法47条
併合罪のうちの二個以上の罪について有期の懲役又は禁錮に処するときは、その最も重い罪について定めた刑の長期にその二分の一を加えたものを長期とする。
ただし、それぞれの罪について定めた刑の長期の合計を超えることはできない。

刑法47条にある通り、併合罪となった場合で懲役刑の定めのある犯罪であった場合には、それぞれの犯罪のうち最も重い刑の1.5倍(それぞれの犯罪の最も重い刑の合計よりも重い場合には、それぞれの犯罪の重い刑の合計)の範囲で処罰されることになります。
例えば、今回のAさんらが詐欺事件を複数起こしていたような場合、先ほど確認した通り、Aさんらのした犯罪の最も重い刑罰は詐欺罪10年以下の懲役です。
その1.5倍は15年以下の懲役となり、詐欺罪の長期の合計である20年以下の懲役よりも下回るため、Aさんらが複数の詐欺事件を起こしていた場合、15年以下の懲役という刑罰の範囲で処罰されることになると考えられるのです。

1回の犯行で複数の異なる犯罪に触れているような場合や、いわゆる余罪が複数あるような場合など、複数の犯罪・複数回の犯罪が関わる刑事事件は、見通しも含めて複雑になりがちです。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、こうした刑事事件のご相談も、刑事事件専門弁護士が丁寧に対応いたします。
複数の犯罪・複数回の犯罪が関わる刑事事件では、身柄解放活動や被害者対応なども対応が難しくなることが予想されますから、まずはお気軽にご相談ください。

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