盗撮事件で任意出頭・自首②建造物侵入罪

盗撮事件で任意出頭・自首②建造物侵入罪

盗撮事件と任意出頭・自首、建造物侵入罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

~事例(前回からの流れ)~
Aさんは、滋賀県草津市にあるXという会社で勤務する会社員です。
Aさんは、女性の下着姿に興味を持ち、会社の女子トイレに忍び込むと、女子トイレの中に盗撮用の小型カメラを設置し、女子トイレの利用者の下着姿を盗撮していました。
しかしある日、女子トイレの利用者の1人がしかけられた小型カメラに気づき、滋賀県草津警察署に通報したことをきっかけに捜査が開始され、会社内で盗撮事件が起こったことが知れ渡りました。
Aさんは、自分が盗撮をしていたことがばれて滋賀県草津警察署に逮捕されてしまうのではないかと不安になり、まずは刑事事件に強い弁護士に、自ら出頭した方がよいのかどうか、自分の盗撮行為はどういった罪にあたるのかといったことを含めて今後の対応を相談してみることにしました。
(※この事例はフィクションです。)

・トイレでの盗撮と建造物侵入罪

前回の記事で触れたように、滋賀県の場合、会社のトイレで盗撮行為をすれば滋賀県迷惑防止条例違反となる可能性が高いといえます。
しかし、実は今回の事例のAさんには、滋賀県迷惑防止条例違反以外にも、別の犯罪が成立する可能性があるのです。

その中の1つが、刑法にある建造物侵入罪です。

刑法130条
正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、3年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。

Aさんはその会社の会社員であるのに建造物侵入罪が成立するのか、と不思議に感じられる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、以下の理由から、Aさんには建造物侵入罪が成立する可能性があるのです。

そもそも、建造物侵入罪のいう「人の看守する…建造物」とは、簡単に言えば「人が管理・支配している建造物」という意味です。
会社の建物は、その会社の社長などの役職についている人たちが管理・支配する権限を持った建物です。
テナントのような形でビルに入っている会社であれば、その建物のオーナーが管理・支配しているといえるでしょう。
この管理・支配は当然、その建物全体に及んでいるものですから、今回の盗撮事件が起こった女子トイレも、建物の一部に含まれています。
ですから、たとえ女子トイレだけが独立した建物でなかったとしても「人の看守する…建造物」にあたると考えられるのです。

また、建造物侵入罪が成立するのは、「正当な理由がないのに」前述の建造物に「侵入」した場合です。
「正当な理由」とは、例えば警察官が適法な捜査のために立ち入る場合や職務のために立ち入る場合などが考えられます。
今回のような女子トイレへの立ち入りであれば、通報を受けて駆け付けた警察官が不審者の捜索のために立ち入る場合や清掃員が清掃のために立ち入る場合などが「正当な理由」のある立ち入りだと考えられるでしょう。

そして、「侵入」とは、一般に、その建物の管理者の意思に反する立ち入りを指すといわれています。
今回のような場合であれば、女子トイレに盗撮目的で立ち入るようなことは通常その建物を管理・支配している人は許可しないだろうと考えられることから、建造物侵入罪のいう「侵入」に該当すると考えられるのです。
逆に言えば、盗撮目的で立ち入った人自身が建物の管理者であったような場合や、立ち入った当初は「正当な理由」があったものの立ち入ってから盗撮を思いついて盗撮カメラを仕掛けたような場合には、建造物侵入罪は成立せず、前回触れたような都道府県ごとに定められている迷惑防止条例違反などのその他の犯罪の成立が検討されることになるでしょう。

・盗撮事件の建造物侵入罪と示談

こうした盗撮事件建造物侵入罪が成立する場合、考えられる弁護活動の1つに示談交渉があります。
建造物侵入罪も被害者の存在する犯罪ですから、被害に遭った方に謝罪や弁償を行い、示談をすることで刑罰の減軽などが期待できます。
しかし、盗撮事件建造物侵入罪の場合、被害者=盗撮された人とは限らないということに注が必要です。

先ほど触れたように、建造物侵入罪は管理者の意思に反して建造物に立ち入るという犯罪ですから、被害者は勝手に建造物に入られてしまったその建物の管理者となります。
これが例えば個人宅で起こった盗撮事件であれば、盗撮された人もその建物の管理者も同一人物、ということになりそうですが、今回のAさんの事例のように、会社の女子トイレが盗撮現場である場合には、実際に盗撮をされた被害者(今回の場合は滋賀県迷惑防止条例違反の被害者)と建造物侵入行為をされた被害者が全く別ということになりうるのです。

また、今回の事例のように会社のトイレで盗撮したような場合には、盗撮行為の被害者が複数人いる場合も少なくありませんから、謝罪や弁償を行って示談交渉をしようとすれば、一度に複数人の被害者の方に連絡を取り、示談交渉をすることも考えられます。
当事者だけでこうした活動を行うことは非常に負担も大きいですから、早めに弁護士に相談・依頼されることをおすすめします。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、起こしてしまった盗撮事件でどういった犯罪が成立しうるのか、どういった活動が可能なのか、といったご相談にももちろん対応しています。
まずはお気軽に、初回接見サービス・初回無料法律相談からご利用ください。

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