コインランドリーの下着泥棒事件で逮捕①窃盗罪
コインランドリーの下着泥棒事件とその逮捕について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
滋賀県守山市に住んでいるAさんは、近所のコインランドリーの利用客に女性客が多いことと、利用客は洗濯機を回している間、近くのコンビニやスーパーに買い物に出ていることに気が付きました。
そこでAさんは、コインランドリーの利用客が洗濯機を回している間にコインランドリーへ行き、女性客の下着を盗むことを思いつきました。
Aさんは、コインランドリーで女性客Vさんが洗濯機を回し、スーパーへ出かけていったのを確認するとコインランドリーへ入り、Vさんの利用していた洗濯機からVさんの下着を盗み、立ち去りました。
その後、Vさんが下着を盗まれたことに気づき、滋賀県守山警察署に相談。
捜査の結果、Aさんの犯行が明らかになり、Aさんは窃盗罪と建造物侵入罪の容疑で逮捕されました。
(※この事例はフィクションです。)
・コインランドリーの下着泥棒事件と窃盗罪
今回のAさんは、コインランドリーで下着泥棒をはたらいていて、窃盗罪と建造物侵入罪の容疑で逮捕されています。
刑法235条(窃盗罪)
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
下着泥棒ですから窃盗罪が成立することが当然だろうと思われるかもしれませんが、ここで、コインランドリーの利用客であったVさんは、洗濯物を洗濯機に入れてその場を離れています。
このように、物をどこかに置いたまま持ち主がその場を離れた時にその物を取った場合にも窃盗罪となるのでしょうか。
刑法には、遺失物横領罪という犯罪が規定されています。
刑法254条(遺失物横領罪)
遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物を横領した者は、1年以下の懲役又は10万円以下の罰金若しくは科料に処する。
この遺失物横領罪は、落とし物や忘れ物を盗んでしまったケースで成立することの多い犯罪です。
今回のように持ち主がその場を離れている場合は、こちらの犯罪になるのではないでしょうか。
窃盗罪と遺失物横領罪の違いは、盗まれた物が誰かの占有下であったかどうか、という点の違いによって生じます。
占有とは、その物を支配・管理していることを意味します。
例えば、道端に落ちている落し物は、持ち主の手を離れてしまい、誰の支配・管理のもとにもありませんから、誰の占有もない状態であるといえます。
窃盗罪が他人の占有下にある物をその占有者の意思に反して自分の占有下に移してしまう犯罪であるのに対し、遺失物横領罪は誰の占有下にもない物を自分の占有下に移してしまう犯罪です。
つまり、先ほど例に挙げた道端の落とし物を勝手に自分のものにする、いわゆるネコババをしてしまえば、遺失物横領罪となる可能性が出てくるということになります。
ここで、今回のコインランドリーの下着泥棒はどうでしょうか。
Vさんは洗濯機を回してその場を離れていますが、洗濯物の占有はどうなるのでしょうか。
先ほどの話から見ると、その場に持ち主がいないのであるから洗濯物は誰の占有も受けておらず、Aさんに成立するのは窃盗罪ではなく遺失物横領罪のようにも思えます。
しかし、Vさんは洗濯が終わるころにはコインランドリーに戻って洗濯物を回収するつもりであったでしょうからそれほど遠くへ行ってはいないでしょうし、そもそもコインランドリーではお金を払って洗濯機を利用するため、使用中の洗濯機があれば誰かが使用中でありその中身はその使用している人のものであるということは一目瞭然でしょう。
こうしたことから、今回の場合、たとえVさんがその場を離れていたとしても、洗濯物にVさんの支配・管理は及んだままであるといえるでしょう。
ですから、Aさんに成立が考えられるのはやはり窃盗罪であると考えられるのです。
なお、もしもVさんの洗濯物に対する占有がないとしても、今度はコインランドリー(の管理者)の占有が認められる可能性が高いです。
コインランドリー内の物はもちろん、コインランドリーが支配・管理している物です。
たとえコインランドリー内で落とし物があっても、それを支配・管理するのはコインランドリーとなります。
ですから、もしもVさんの洗濯物に対する占有が認められなかったとしても、やはり今回の被害品である洗濯物には誰かしらの占有が認められ、Aさんには窃盗罪が成立する可能性が高いといえるでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、こういった窃盗事件へのご相談・ご依頼も承っています。
滋賀県の窃盗事件にお困りの際は、お気軽に弊所弁護士までご相談ください。
次回の記事では、Aさんのもう1つの逮捕容疑である建造物侵入罪について触れていきます。