少年の強盗致傷事件で逮捕②試験観察
少年の強盗致傷事件で逮捕されてしまったケースで、特に試験観察処分を目指す活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
滋賀県甲賀市に住んでいるAさん(15歳)は、普段からあまり素行がよくなく、仲良くしている友人たちと一緒に学校をさぼったり、夜遅くまで帰宅せずにうろついたりといったことを繰り返していました。
ある日、Aさんは自由に使えるお小遣いが少ないことに困り友人たちと話したところ、一緒に夜道を1人で歩いている人から財布を奪おうという話になりました。
そこでAさんらは、滋賀県甲賀市の道路を1人で歩いていたVさん(56歳)に集団で殴りかかるなどして襲い、無理矢理財布を奪いました。
財布から現金を奪ったAさんらは、これに味をしめ、付近でもう何件か同様の事件を起こしました。
しかし、Vさん等被害者から被害の申告を受けた滋賀県甲賀警察署が捜査をした結果、Aさんらの犯行であることが発覚し、Aさんは自宅を訪れた滋賀県甲賀警察署の警察官に強盗致傷罪の容疑で逮捕されてしまいました。
Aさんの家族は、普段から素行はよくなかったものの、まさかAさんが警察沙汰になるような事件を起こし逮捕までされてしまうとは思ってもいなかったため、慌てて弁護士に相談し、今後について詳しい話を聞くことにしました。
(※この事例はフィクションです。)
・捜査段階での弁護活動
今回のAさんの事例では、強盗致傷罪という重い犯罪をして逮捕されていることももちろん気を付けなければならない点の1つなのですが、Aさんが友人たちと起こした強盗致傷事件(または強盗事件)が1件ではないということにも注意が必要です。
このように現在捜査されている事件以外にも事件を起こしている場合、つまり、いわゆる「余罪」がある場合には、理論上その余罪の数だけ逮捕や勾留が繰り返され、身体拘束が長期化することも考えられるからです。
そうなれば、捜査段階だけでも1か月以上の身体拘束をされてしまうおそれもあります。
そこで、弁護士に釈放のための活動をしてもらったり、再逮捕・再勾留を防ぐための交渉をしてもらうことが重要となってくるでしょう。
今回のAさんの事例では、Aさん本人の反省やご家族がAさんの監督に協力すること、被害者の方との示談交渉等、釈放のための環境を弁護士とともに作り上げること、それを弁護士に適切に主張してもらうことによって、釈放を求めていくことが考えられます。
・家庭裁判所送致後の付添人活動~試験観察を目指す
今回のAさんのような強盗致傷事件や強盗事件を何件も起こしてしまっているケースでは、最終的に少年院送致という処分が取られる可能性が考えられます。
少年事件で原則として最終的に取られる処分は、少年の更生を実現させるために適切であると考えられる処分です。
今回のAさんは、普段の素行も悪く、友人たちと一緒になって強盗事件や強盗致傷事件を起こしてしまっています。
Aさんの更生のためには一度その環境からAさん自身を切り離し、再犯をしないために教育をしていく必要がある=少年院に収容して規律のある生活を送ってもらう必要があると判断される可能性があるのです。
少年院は成人の刑事事件でいう刑務所とは異なり、少年事件を起こしてしまった少年が更生するための矯正教育のための施設です。
ですから、少年院に行くことが少年事件を起こしてしまった少年にとって全くメリットのないことであるというわけではありません。
少年院で規則正しい生活を送り、生活指導や勉強についての指導、職業訓練等を受けることで立ち直っていく少年もいます。
しかし、少年院に行くということは良くも悪くも前述したように少年事件を起こすまで生活してきた環境から切り離されてしまうことになります。
ですから、それまで通り学校や職場に通うことはできなくなりますし、家族とも自由に会うことができなくなります。
一定程度の期間社会から離れて過ごすことが少年へのデメリットとなってしまうことも十分考えられるのです。
では、その少年院送致を回避するにはどういった活動が考えられるでしょうか。
今回のAさんのような事例では、まずは試験観察という処分を獲得することを目標として活動していくことが考えられます。
試験観察とは、文字通り、最終的な処分を決める前に、試験的に少年を一定期間家庭裁判所調査官の観察に付すことを指します。
例えば、少年を一定期間民間の篤志家の元に預けて生活環境を変え規則正しい生活を送らせる等し、その間家庭裁判所調査官が少年にアドバイスや面接等を重ねるといった例が挙げられます。
こうした試験観察期間中、家庭裁判所調査官は少年が自分自身の問題と向き合えているか、改善しようとできているか等を観察し、その観察結果も踏まえて少年に対する最終的な処分を決定するのです。
試験観察は、少年事件で少年に対する最終処分を直ちに決めることが難しいと判断された場合に付されます。
つまり、少年院送致が見込まれるような少年事件であっても、少年が更生できる環境を整え、まずは様子を見てほしいと試験観察を目指し、試験観察期間中に少年の更生が社会内でも可能であることを示すことができれば、少年院送致を回避できる可能性もあるということなのです。
仮に少年院送致となってしまった場合であっても、少年が戻ってくる環境を整えておくことは今後のためにも重要ですから、試験観察の獲得を目指すことも兼ねて、弁護士と協力しながら少年の更生に適切な環境を作っていくことが重要でしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件だけでなく少年事件も専門的に扱う法律事務所です。
強盗致傷事件などの重大な少年事件にお困りの際や、少年事件で試験観察を目指したいとお悩みの際は、一度弊所弁護士までご相談ください。