投資話から恐喝事件に
投資話から恐喝事件に発展したケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
滋賀県甲賀市に住んでいるAさんは、友人のVさんから「いい儲け話がある」と投資話を持ちかけられ、その投資話に乗る形でVさんに50万円を渡しました。
しかし、それ以降、いつまでたってもVさんから投資話の続報が来ないことに苛立ったAさんは、「Vさんに騙された。50万円をとられた」と思い、Vさんを呼び出すと、「お前は俺を騙しただろう。騙し取った50万円をいますぐ返さないと痛い目を見るぞ」「金を用意できないなら無事に帰す気はない」などと告げました。
VさんはAさんの言葉に恐怖を感じると、その場で50万円用意し、Aさんに渡しました。
しかし、Vさんは「まだAさんに何かされるのではないか」という恐怖が拭えず、滋賀県甲賀警察署に通報。
結果、Aさんは滋賀県甲賀警察署に恐喝罪の容疑で逮捕されてしまいました。
(※この事例はフィクションです。)
・恐喝事件
今回のAさんの事例では、投資話に乗って友人Vさんに金を渡したものの、その金を返してもらおうとして友人Vさんに恐喝行為をしてしまったという形になるようです。
刑法の恐喝罪は第249条に規定されています。
刑法第249条
第1項 人を恐喝して財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。
第2項 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。
このうち、今回のAさんのように、現金などの財物を被害者から渡させたようなケースでは、刑法第249条第1項の恐喝罪が成立します。
他方、恐喝によって財物ではなく利益を得たような場合には、刑法第249条第2項の恐喝罪(第1項の恐喝罪と区別するために「恐喝利得罪」などと呼ばれることもあります。)が成立します。
例えば、恐喝によって家賃の支払いを延期させたという場合には、支払いの期間の猶予という利益を得ていることになるため、刑法第249条第2項の方の恐喝罪の成立が考えられるということになります。
そして、恐喝罪でいう「恐喝」するという行為は、被害者の抵抗を抑圧しない程度の脅迫や暴行によって財物(又は利益)を要求することを指しています。
ここで、もしも用いられた脅迫・暴行が被害者が抵抗できないほどの強さのものであった場合(例えば拳銃や刃物を突きつけらえるといった場合)には、恐喝罪ではなく強盗罪の成立が考えられます。
脅迫や暴行の程度の強さは、凶器の有無や被疑者と被害者の関係、体格、当時の周囲の状況などによって判断されますから、恐喝罪となるか強盗罪となるかもそういった事情から判断されることになります。
さて、今回のAさんは確かにVさんに現金を渡させていますから、恐喝罪の「財物を交付させた」という部分に当てはまるでしょう。
そしてそのためにVさんに脅すような言葉を言っていることから、脅迫を用いて現金を要求した=「恐喝」したと考えることもできます。
これらのことから、Aさんに恐喝罪が成立する可能性があることはわかりますが、Aさんは「騙し取られた金を返してもらった」という認識のようです。
こうした場合でも恐喝罪は成立するのでしょうか。
過去の判例を見てみると、借金取りが恐喝罪に当たるかどうか争われた事件で、「他人に対して権利を有する者が、その権利を実行することは、その権利の範囲内であり且つその方法が社会通念上一般に忍溶すべきものと認められる程度を超えない限り、何等違法の問題を生じないけれども、右の範囲程度を逸脱するときは違法となり、恐喝罪の成立することがあるものと解するを相当とする。」とされています(最判昭和30.10.14)。
つまり、たとえ正当な権利として持っているものでも、その権利の実行に際して、社会通念上許されるような程度を超えてしまえば、恐喝罪になってしまうということなのです。
今回のAさんとVさんの間の投資話が詳しくどのようになっていたかはわかりませんが、もしもAさんがVさんからお金を返してもらう正当な権利を持っていたとしても、Vさんを脅してそのお金を渡させるという行為は「社会通念上一般に忍溶すべきものと認められる程度」を超えていると考えられるため、恐喝罪が成立するということになるでしょう。
知人同士の恐喝事件では、被疑者と被害者の接触のおそれがあることから、Aさんの事例のように逮捕されることもあります。
そうなれば、被疑者本人の社会生活に影響が出ることはもちろん、被害者への謝罪や弁償といった活動もしにくいでしょう。
だからこそ、弁護士のフルサポートが必要とされるのです。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件専門の弁護士が逮捕直後から一貫してサポートを行います。
滋賀県の刑事事件でお困りの際は、まずはお気軽に弊所弁護士までご相談ください。