体罰による児童虐待

体罰による児童虐待

滋賀県長浜市に住むAさんには小学校に通う6歳の息子さんがいます。
ある日,いうことをきかなかった息子さんに対し,Aさんは手を上げて叱りました。
翌日,息子さんが学校で殴られたことを話したことから虐待を疑った先生が児童相談所へ相談し,Aさんは児童相談所から事情を聞かれることになりました。
躾のつもりで手を上げたことが虐待に当たり,滋賀県木之本警察署に通報されるのではと不安になったAさんは,弁護士に相談することにしました。
(フィクションです)

【躾と虐待】

親などの親権者やその他監護権者が監護する子供の健全な育成のために指導を施すのは当然のことです。
その方法の一つとして子供が不適切な行動をしたり,またはしそうになったときに叱責したり説教したりすることもあるでしょう。
しかし,世の中にはそういったいわゆる躾の一環としてなされた行為が虐待に当たるものとして処罰されたりする場合があることも実情です。
では,どういった場合に躾が虐待と判断されるのでしょうか。

【暴行による虐待】

民法では,親権者は監護や教育に必要な範囲内でその子を懲戒することができると定めており,懲戒行為が直ちに処罰されるものではないことがわかります。
しかし,懲戒にあたる行為であっても,子どもを殴ったり蹴ったりした場合は刑法上の暴行に当たり暴行罪(刑法第208条)として処罰される可能性が出てきます。
暴行罪の法定刑は2年以下の懲役もしくは30万円以下の罰金または拘留もしくは科料です。

今回のAさんの事件ですと,Aさんは息子さんを暴行していますので暴行罪に問われる可能性があります。
実際はその暴行の程度や頻度などを総合的に考慮して逮捕や起訴が差し控えられるケースもあります。
これは,子どもから親を引き離すことや犯罪者の子どもであることのレッテルを周囲から貼られることによって生じる子どもへの不利益を回避するためです。

だからといって,体罰が許されるものではありません。
懲戒権を濫用することによって前科はつかずとも親権を失う場合があります。
どんな理由があろうとも,体罰やそれによる児童虐待を行ってはいけません。

【暴行によらない虐待】

Aさんの場合では直接暴行を加えていますが,他の方法によって「躾」を行うことも考えられます。
例えば,しばらく部屋に閉じ込めたり,人格を否定するような暴言を浴びせたり,一時的に食事を与えなかったりすることなどが挙げられます。

部屋に閉じ込めることは監禁罪(刑法第220条)にあたる可能性が考えられます。
監禁罪の法定刑は3月以上7年以下の懲役です。

著しい暴言を浴びせたり児童の心身の正常な発達を妨げるような著しい減食などは,それによって直ちに罪に問われることはないかもしれませんが,これらの行為により子どもの心身に実害が発生した場合は傷害罪(刑法第204条)または過失傷害罪(刑法第209条),あるいは保護責任者不保護罪(刑法第218条)などに問われる可能性があります。

傷害罪の法定刑は15年以下の懲役または50万円以下の罰金過失傷害罪の法定刑は30万円以下の罰金または科料で,保護責任者不保護罪の法定刑は3月以上5年以下の懲役です。

暴行による場合とよらない場合とにかかわらず,躾のつもりで行った行為で子どもを死なせてしまった場合にはさらに重い罪に該当する可能性が高くなります。
もし子どもがいいつけに背いたりしても,やはり暴力や心理的圧迫に頼らない方法による懲戒権の行使が望ましいと言えます。

児童虐待を疑われたからといってすぐに逮捕されるとは限りません。
もしそのような疑いが向けられた場合は,早めに弁護士や児童相談所に相談して適切な対応をとることにより,逮捕や起訴の回避を目指すことも考えられます。
親権や監護権をもつ子どもに対する暴行で警察による捜査が開始されてしまった方は,刑事事件に強い弁護士補人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

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