Archive for the ‘暴力事件’ Category

少年による器物損壊事件と示談

2021-09-25

少年による器物損壊事件と示談

少年による器物損壊事件示談について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

〜事例〜

Aさんは、滋賀県高島市に住む16歳の高校生です。
ある日、Aさんはいたずらのつもりで、近所に住むVさんの車にペンキで大きく落書きをしました。
Vさんが滋賀県高島警察署に相談したことから捜査が開始され、Aさんは器物損壊事件の被疑者として取調べをされることになりました。
Aさんやその家族は、被害弁償や示談をすれば全て終わるものだと思っていたのですが、弁護士に相談してみたところ、少年事件の場合は示談をしたからといって全て終了とはいかない可能性があるという話を聞いて驚きました。
(※この事例はフィクションです。)

・器物損壊罪

器物損壊罪は、刑法261条に以下のように定められています。

刑法261条 器物損壊罪
前3条に規定するもののほか、他人の物を損壊し、又は傷害した者は、3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料に処する。

この条文や器物損壊罪という名前を見ると、例えばお皿を割るといった、物を物理的に壊す行為に器物損壊罪が成立するように思えます。
しかし、この器物損壊罪の「損壊」という言葉の意味には、まさに物を壊すといった意味以外にも、その物の効用を失わせる、という意味も含まれています。
つまり、その物を使えなくしてしまったり、その物の価値をなくしてしまったりという行為をしてしまえば、物を壊していなくとも器物損壊罪が成立する可能性があります。
よく例に挙げられるのは、他人の飲食器に放尿した場合に器物損壊罪が成立するという例です(大判明42.4.16)。
放尿されたとしても食器が壊れたわけではありませんが、誰かが放尿した食器を食器として使いたいという人はいないでしょうから、食器の効用を失わせている=器物損壊罪が成立する、ということになるのです。
今回のAさんの事例のような、ペンキで車に大きく落書きをするという行為と器物損壊罪とは結び付きにくいかもしれませんが、上記のような考え方から、車本来の効用を失わせていると考えられ、器物損壊罪が成立する可能性が高いのです。

・器物損壊罪の示談と少年事件

Aさんやその家族が考えていたように、一般的に器物損壊事件では示談が重要視されます。
なぜなら、器物損壊罪は「親告罪」と言い、被害者の方等による「告訴」がなければ起訴できない犯罪だからです。
犯罪の被害を受けたということを申告するのが「被害届」ですが、そこにさらに加害者に処罰を求める意思表示も行うのが「告訴」です。
ですから、示談を行って、被害者の方に告訴を取り下げてもらったり告訴を出さないようにしてもらうことができれば、器物損壊事件は不起訴となって刑罰等を受けることなく終了する、ということになります。

しかし、Aさんやその家族は、弁護士に相談したところ、示談をしても今回そうなるとは限らないと言われています。
それは、Aさんが20歳未満の少年であるというところが深くかかわってきます。
度々取り上げているように、20歳未満の少年が起こした事件は少年事件として扱われ、捜査ののち、家庭裁判所に送られて保護処分を受けるかどうか、どういった保護処分を受けるのかを判断されます。
保護処分は成人の刑事事件の結果として科せられる刑事罰とは別物で、少年が更生するための処分です。
このように少年事件の手続きが成人の刑事事件と別になっている理由は、少年の柔軟性を重視し、少年が今後更生できるようにすることに重点を置いている点にあります。
そのため、全ての少年事件は原則少年の専門家が在籍している家庭裁判所に送られることになっていますし、理論上、成人の刑事事件なら不起訴になるような事件であっても、少年を取り巻く環境から少年院に入ることが少年の更生に適切であると判断される可能性があるのです。
つまり、原則として少年事件の判断の中に、成人の刑事事件の「不起訴」の考え方はないのです。

今回の器物損壊事件は、先述したように「親告罪」であるため、成人の刑事事件では示談ができれば不起訴となります。
しかし、少年事件となれば、「不起訴」の考え方はありませんから、なぜ少年が器物損壊行為をしたのか、再度そうした器物損壊行為をしないためには、更生のためにはどのようにすべきか、という点が重視されます。
ですから、示談をすれば終了ということではなく、示談を含めてその後の更正に関わる環境を整えていくことが重要となるのです。。

少年事件は、こうした特色から、注意すべき点も独特です。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所刑事事件だけでなく少年事件も専門として取り扱う弁護士事務所です。
滋賀県の少年事件・器物損壊事件にも対応しておりますので、お困りの際はご遠慮なく0120-631-881までお問い合わせください。

DVによる傷害事件の逮捕にも対応

2021-08-25

DVによる傷害事件の逮捕にも対応

DVによる傷害事件の逮捕に対応するケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~

滋賀県近江八幡市に住んでいるAさんは、妻であるVさんと2人で暮らしていました。
ある日、機嫌の悪かったAさんは、酒に酔い、注意してきたVさんに腹を立ててVさんを殴ってしまいました。
倒れ込んだVさんが頭を打ち付け出血してしまったため、Vさんは「夫と喧嘩になって頭を打ち、血が出てきた」と救急車を呼びました。
その際、滋賀県近江八幡警察署の警察官も臨場し、AさんはDVによる傷害罪の容疑で現行犯逮捕されてしまいました。
Bさんは、まさかこれほどの大事になるとは思いもよらず、Aさんの両親に相談。
その後、Aさんの両親は刑事事件に強い弁護士に今後どのようにしたらよいか相談することにしました。
(※フィクションです。)

・DV防止法

家庭内暴力は、ドメスティックバイオレンス、通称DVと呼ばれます。
DVは、今回の事例のように夫婦間で起こる場合もありますし、親子間で起こる場合もあります。
そして、今回の事例のように夫が妻に暴力を振るう等するDVもあれば、逆に妻が夫に暴力をふるう等するDVもあります。

DVについては、通称DV防止法(正式名称:配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律)という法律も定められています。
DV防止法では、主にDVの防止やDVを受けてしまった人の保護、その自立支援の体制などを定めています。
しかし、DV防止法では、DVの行為自体を直接犯罪として定めているわけではありません。
DV防止法違反として処罰されるのは、「保護命令」に違反した場合です。

DV防止法に基づいて出される「保護命令」とは、DVの被害者の住居等に接近することや、DVの被害者と同居している場合にそこから退去すること、DVの被害者の子供への接近すること等を禁止する命令です。
この命令に違反した場合には、DV防止法違反として処罰されることになります。
保護命令違反によるDV防止法違反の法定刑は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金です(DV防止法29条)。

・DVと刑事事件

先述したように、DVはDV行為自体が「DV」として犯罪が定められているわけではありません。
では、DV行為はどのように処罰されることになるのでしょうか。

DVは、そのDVの態様によって、刑法やその他の特別法に触れる行為として犯罪になります。
例えば、今回のAさんとVさんの事例では、AさんがVさんに暴力をふるい、けがをさせてしまっています。
このようなDVの場合、刑法の暴行罪や傷害罪によって対処されるということになるでしょう。

刑法204条(傷害罪)
人の身体を傷害した者は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

刑法208条(暴行罪)
暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。

・DV事件と弁護活動

DV事件では継続してDVをしていたのではないかと疑われたり、被害者への接触が懸念されることから逮捕・勾留による身体拘束が行われたりすることも多いです。
例えば、今回のAさんの場合、事例を見る限りでは、Aさんは継続してDVをしていたわけではないようです。
しかし、それらをAさん1人で取調べで主張し続けることはAさんの負担が大きいかもしれませんし、Aさんが釈放されれば今回の傷害事件の被害者であるVさんと一緒に住んでいる家に帰ることになるわけですから、被害者との接触を考えればこのまま逮捕に引き続いて勾留されてしまう可能性も低くないでしょう。
だからこそ、弁護士に依頼し、取調べ対応のためのアドバイスや、釈放に向けた環境づくりとその主張をしてもらうことが重要となってくるのです。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、傷害事件などDVに絡んだ刑事事件のご相談も受け付けております。
逮捕された方向けの初回接見サービスや、在宅捜査を受けている方向けの初回無料法律相談をご用意しておりますので、お気軽にお問い合わせください。

包丁を使った脅迫事件で逮捕されたら

2021-07-03

包丁を使った脅迫事件で逮捕されたら

包丁を使った脅迫事件逮捕されてしまったケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~

Aさんは、滋賀県甲賀市に住んでいる大学生です。
ある日、Aさんは、同じ大学に通い交際関係にあるVさんと滋賀県甲賀市内で一緒に出掛けていました。
AさんとVさんはAさんの家で話をしていましたが、些細なことから口論になってしまい、AさんはVさんから別れを切り出されてしまいました。
感情的になったAさんは、台所から持って来た包丁をVさんに向け、「別れるなら殺してやる」などと言って、Vさんを脅してしまいました。
VさんはまさかAさんが包丁まで持ち出すとは思っていなかったため、怖くなって滋賀県甲賀警察署に通報しました。
Aさんは、通報によって駆けつけた滋賀県甲賀警察署の警察官に、暴力行為処罰法違反の容疑で逮捕されてしまいました。
Aさんの家族は、Aさんが逮捕されたことを知り、今後どのようにすべきなのか相談すべく、刑事事件を取り扱う弁護士を探し始めました。
(※この事例はフィクションです。)

・暴力行為等処罰に関する法律とは

Aさんの逮捕容疑である、暴力行為処罰法違反とは、正式名称「暴力行為等処罰に関する法律」という法律に違反したという犯罪です。
暴力行為処罰法とは、団体で、もしくは凶器を用いたりすることによって、暴行や脅迫などを行った場合に適用される法律です。
元々の暴力行為処罰法は、旧仮名遣いで書かれた法律ですが、現代の言葉に直すと以下のように定めています。

暴力行為処罰法第1条
団体もしくは多衆の威力を示し、団体若は多衆を仮装して威力を示し又は兇器を示しもしくは数人共同して刑法第208条、第222条又は第261条の罪を犯した者は3年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。

暴力行為処罰法第1条で触れられている刑法第222条とは、脅迫罪のことを指します。
今回のAさんも、Vさんに対して脅しをしていることから、この脅迫罪暴力行為処罰法の関係を見ていくことにしましょう。

刑法222条第1項
生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、2年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。

この脅迫罪における「脅迫」とは、人が畏怖するほどの害悪を告知することを言います。
そして、この人が畏怖するほどの害悪の告知に当たるかについては、「相手方の年齢、性別、職業などの相手方の事情や加害者と相手方の人間関係など具体的な諸事情を考慮して、周囲の客観的状況に照らして判断」(最判昭和29年6月8日)するとしています。

では、今回のAさんに暴力行為処罰法違反は適用されるのでしょうか。
本件についてみると、Aさんは、1人でVさんを脅しているわけですから、暴力行為処罰法の中にある「団体若は他衆を仮装して威力を示し」ているわけでも、「数人共同して」いるわけでもありません。
しかし、Aさんは包丁という「兇器(凶器)」を用いています。

そのうえでAさんは、Vさんに対して「殺す」などと言ってVさんの生命に対する害を告知しています。
Aさんが包丁を持って脅していることから考えれば、Vさんが畏怖するほどの害悪の告知と言え、Vさんを脅迫している=刑法第222条の行為をしていると考えられるでしょう。
そのため、Aさんは「兇器(凶器)を示し」て「刑法第222条」の罪を行ったといえ、暴力行為処罰法違反となると考えられるでしょう。

暴力行為処罰法違反となれば、単純な脅迫罪となるよりも重い刑罰が予想されます。
容疑を認めていて、刑の減軽や寛大な処分を希望しているのであれば、早急に被害者対応などを行うことが求められるでしょう。
そのためにも、まずは刑事事件に対応している弁護士への相談・依頼が望ましいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、こうした脅迫行為から発展した暴力行為処罰法違反事件のご相談・ご依頼も受け付けています。
まずはお気軽にお問い合わせください(0120-631-881)。

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