【事例紹介】監護者性交等罪、傷害罪で実刑判決
監護者性交等罪、傷害罪で実刑判決を下された事例を基に、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が監護者性交等罪、傷害罪について解説します。
事例
娘に性的暴行を加えたとして監護者性交と傷害の罪に問われたブラジル人の男の判決公判が9日、大津地裁であり、畑山靖裁判長は懲役7年(求刑同8年)を言い渡した。男は即日控訴した。
判決によると、男は4月中旬~下旬、自宅で娘と性交し、5月24日、娘の両腕や右肩をベルトで複数回たたいて全治7日間の打撲傷などを負わせた。
(中略)裁判長は(中略)「娘は嫌な時は嫌と言っていた」とする男の供述について、「被害者は性的行為に嫌悪感を抱いていたものの、被告の(父親としての)影響力から明確に拒絶できなかったに過ぎない」と指摘。(中略)
傷害罪については、「(中略)しつけのつもりだった」とする男の供述に対し、「しつけの範疇(はんちゅう)を超えている」とし、日常的な暴力があったと指摘した。
(後略)
(2023年11月9日 京都新聞 「父の性的暴行に娘「明確に拒絶できず」被告の男に懲役7年判決 大津地裁」より引用 )
監護者性交等罪
刑法第179条2項
18歳未満の者に対し、その者を現に監護する者であることによる影響力があることに乗じて性交等をした者は、第177条の例による。
※注:「第177条」とは、刑法第177条の強制性交等罪のことを指します。
簡単に説明すると、監護者性交等罪は、18歳未満の子どもに対して、親など(子どもの生活を支えている者)が立場や子どもへの影響力を利用して性行為を行うと成立する犯罪です。
監護者性交等罪の法定刑は、強制性交等罪(刑法第177条)と同じ5年以上の有期懲役です。
強制性交等罪の成立には、被害者の抵抗を困難にする程度の強さの暴行や脅迫行為が必要とされていますが、監護者性交等罪については、監護者がその影響力に乗じて子どもに性行為を行っていれば成立しますのでしますので、必ずしも暴行や脅迫は必要ありません。
報道によると、被告人は被害者が性的行為を拒絶しなかった旨の供述をしていますが、この供述に対して裁判長は「被告の(父親としての)影響力から明確に拒絶できなかったに過ぎない」と指摘しています。
すなわち、この裁判では、被告人が被害者の父親であるという影響力が被害者の抵抗を困難にしたと判断されたものと考えられます。
親などがその立場や影響力を利用して18歳未満の子どもに性行為を行うと監護者性交等罪が成立しますので、こうしたことから被告人は監護者性交等罪で有罪判決が下されたのでしょう。
傷害罪
刑法第204条
人の身体を傷害した者は、15年以下の懲役または50万円以下の罰金に処する。
大まかに説明すると、人を暴行し、けがをさせた場合は傷害罪が成立します。
ですので、たとえしつけの為であったとしても、子どもを暴行しけがをさせてしまえば傷害罪が成立することになります。
今回の事例では、被告人が被害者の腕や肩をベルトでたたき全治7日間の打撲傷を負わせたとされています。
ベルトで人を叩く行為は暴行にあたりますし、被告人の暴行により被害者は全治7日を要するけがを負っていますので、被告人の行為は傷害罪に該当します。
実際に、裁判では被告人の暴行はしつけの範疇を超えているとして、傷害罪の成立が認められています。
監護者性交等罪の法定刑は5年以上の有期懲役ですので、有罪になってしまった場合、執行猶予判決を獲得することは難しく、実際に今回の事例では、別途傷害罪が成立すると判断されたこともあり、実刑判決が下されています。
こうした実刑判決が見込まれる事件では刑罰を減軽するための弁護活動も重要となりますし、そもそも容疑を否認しているということであれば、無罪を求める弁護活動を早い段階から開始することが理想的です。
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