寄付金の着服で成立する犯罪とは?

寄付金の着服で成立する犯罪とは?

寄付金着服によって成立する犯罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~

Aさんは、災害の起こった地域の復興支援をしたいと思い立ち、寄付金を集めることにしました。
Aさんは、自分が住んでいる滋賀県長浜市内で知り合いなどから寄付金を募り、約200万円の寄付金を集めました。
しかし、自分の想定以上に寄付金が集まったことに目がくらみ、Aさんはその寄付金のうち100万円を着服し、自分の懐に入れてしまいました。
その後、寄付の報告を見た寄付者が金額の少なさに疑問を持ち、滋賀県長浜警察署に相談したことをきっかけとして捜査が開始され、Aさんは横領罪の容疑で逮捕されるに至りました。
Aさんは、今後の手続に不安を抱き、滋賀県刑事事件に対応している弁護士に相談することにしました。
(※この事例はフィクションです。)

・寄付金の着服で成立する犯罪は横領罪だけではない

前回の記事では、事例のAさんに横領罪が成立するだろうことを取り上げました。

刑法第252条第1項(横領罪)
自己の占有する他人の物を横領した者は、5年以下の懲役に処する。

しかし、似たようなケースであっても、細かい事情が異なると、横領罪以外の犯罪が成立する可能性も出てきます。
今回の記事では、寄付金着服によって成立する可能性のある横領罪以外の犯罪を紹介していきます。

・寄付金の着服と業務上横領罪

まずは、業務上横領罪です。
例えば、Aさんが定期的に寄付業務をしており、そこで寄付金着服をしていたような場合には、横領罪ではなく業務上横領罪が成立する可能性が出てきます。

刑法第253条
業務上自己の占有する他人の物を横領した者は、10年以下の懲役に処する。

横領罪業務上横領罪の違いは、「占有」が「業務上」行われたものかどうかという点です。
業務上横領罪の「業務上」とは、社会的立場に基づいて継続して行うものであり、委託を受けて人の物を管理する事務のことを指します。
もしもAさんが定期的に寄付業務をしていたのであれば、その立場に基づいて寄付をする人から寄付金を預かる事務を繰り返していたということになりますから、「業務上」管理していた他人のお金を横領したということになり、業務上横領罪が成立する可能性が出てくるのです。

注意しなければいけないのは、業務上横領罪では前回の記事で紹介した横領罪よりも重い刑罰が設定されているということです。
「業務上」行われた横領行為であれば、単なる横領行為よりも信頼を裏切った度合いが高く悪質性が高いと考えられることから、横領罪が「5年以下の懲役」という刑罰になっているのに対して業務上横領罪はより重い「10年以下の懲役」という刑罰が設定されているのです。
ですから、業務上横領事件でも、より早期に弁護士のサポートを受けて弁護活動を開始してもらうことが望ましいでしょう。

・寄付金の着服と詐欺罪

また、もしもAさんが最初から寄付金着服するつもりで寄付金を募っていたり、そもそも寄付をするつもりがないのに寄付を募っていたような場合には、横領罪ではなく詐欺罪が成立する可能性も出てきます。

刑法第246条第1項
人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。

このケースで詐欺罪の成立が考えられるのは、寄付目的であると偽って人からお金をだまし取ったという構造になるためです。
詐欺罪の「人を欺」く行為は、単なる嘘をつくということではなく、相手が財物を交付させる判断をするときに重要な事実を偽ることであると考えられています。
今回の事例でもしもAさんが最初から寄付金着服をもくろんでいたり、そもそも寄付をするつもりがないのに寄付金として寄付を募っていたのであれば、当然寄付をした人たちはAさんにお金を渡したりしなかったでしょう。
そのため、もしもAさんがこうした嘘をついて寄付金を募っていたのであれば、Aさんは「人を欺いて」寄付金=「財物」を寄付した人から引き渡させた=「交付させた」ことになり、詐欺罪が成立する可能性が出てくるのです。

寄付金の着服で詐欺罪の容疑を疑われている場合、寄付を募った際の目的がどういったものだったかという内心の問題も絡んでくるため、本当は横領罪に当たる事実しかないのに詐欺罪を疑われるという可能性もあります。
自身の認識をきちんと把握しながら取調べに慎重に臨むことが求められますが、そのためには、被疑者・被告人の持っている権利や取調べのポイントを押さえていく必要があります。
刑事事件の専門家である弁護士にこまめにアドバイスをもらうことをおすすめします。

寄付金着服という一行為をとっても、細かな事情が異なるだけで様々な犯罪の成立が考えられます。
このように、刑事事件は一見同じように見えても少しの違いによって全く別の対応を迫られることがあります。
どういった犯罪が成立しうるのか、それぞれの犯罪に対応する活動はどういったものなのか等は、専門家に聞いてみることが一番です。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件専門の弁護士が横領事件や詐欺事件などの罪名を問わず刑事事件のサポートをしています。
刑事事件にお悩みの際は、まずはお気軽にご相談ください。

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