交際関係になくてもリベンジポルノに?
交際関係になくてもリベンジポルノとなるケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
〜事例〜
滋賀県大津市に住んでいるAさんは、飲食店で知り合ったVさんと親しくなり、一度だけAさんの自宅で性行為をしました。
Aさんはその際、Vさんの下着姿や裸の姿を写真や動画に納めていました。
後日、AさんはアダルトサイトにVさんの下着姿や裸の姿が映った写真や動画を投稿しました。
その後、知人伝いに自身の写真や動画がインターネットに拡散されていると聞いたVさんは、滋賀県大津北警察署に相談し、被害届を提出。
そこから滋賀県大津北警察署の捜査が開始され、Aさんはリベンジポルノ防止法違反の容疑で取り調べられることになりました。
警察からの連絡を受け、交際関係になかったVさんの件でリベンジポルノ防止法違反事件の当事者になったことに驚いたAさんは、刑事手続にどのように対応すべきか、滋賀県の刑事事件に対応している弁護士に相談してみることにしました。
(※この事例はフィクションです。)
・交際していなくても「リベンジポルノ」?
リベンジポルノは、「リベンジ」という言葉が入っていることから、交際関係にある、若しくは交際関係にあった相手のプライベートなポルノ画像を、相手への仕返しとして勝手に拡散・流出させる行為であると認識されている方も多いでしょう。
もちろん、リベンジポルノにはそういった行為も含まれていますが、実は法律上、今回のAさんの事例のように、交際関係の有無は法律で言う「リベンジポルノ」に関係ありません。
そもそも、一般に「リベンジポルノ防止法」と呼ばれている法律は、正式には「私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律」という法律です。
このリベンジポルノ防止法では、「私事性的画像記録」について以下のように定義づけられています。
リベンジポルノ防止法第2条第1項
この法律において「私事性的画像記録」とは、次の各号のいずれかに掲げる人の姿態が撮影された画像(撮影の対象とされた者(以下「撮影対象者」という。)において、撮影をした者、撮影対象者及び撮影対象者から提供を受けた者以外の者(次条第一項において「第三者」という。)が閲覧することを認識した上で、任意に撮影を承諾し又は撮影をしたものを除く。次項において同じ。)に係る電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。同項において同じ。)その他の記録をいう。
第1号 性交又は性交類似行為に係る人の姿態
第2号 他人が人の性器等(性器、肛門又は乳首をいう。以下この号及び次号において同じ。)を触る行為又は人が他人の性器等を触る行為に係る人の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの
第3号 衣服の全部又は一部を着けない人の姿態であって、殊更に人の性的な部位(性器等若しくはその周辺部、臀部又は胸部をいう。)が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するもの
条文を見てお分かりいただける通り、リベンジポルノ防止法では、対象としている写真や動画等(「私事性的画像記録」)について、交際相手の者とは限定していません。
あくまでその画像や動画に写っている相手が第三者に見せる気のないプライベートな性的画像・動画を対象としていることがわかります。
そして、その画像を流出・拡散することでいわゆるリベンジポルノ行為となりリベンジポルノ防止法違反となるのですが、リベンジポルノ行為を規制している条文を詳しく確認してみましょう。
リベンジポルノ防止法第3条
第1項 第三者が撮影対象者を特定することができる方法で、電気通信回線を通じて私事性的画像記録を不特定又は多数の者に提供した者は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
第4項 前三項の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。
「提供」というとわざわざ誰かに渡すと言う行為をしなければいけないように思えますが、例えばAさんのようにサイトにデータをアップロードしたり掲示板などに掲載してしまえば、それを見た人がダウンロード等できる状態になることから、わざわざ相手に渡さずとも「提供」に当たることになります。
注意が必要なのは、ただプライベートなポルノ画像を「提供」するだけではこのリベンジポルノ防止法違反とならないと言うことです。
条文にある通り、リベンジポルノであると言えるためには、「第三者が撮影対象者を特定することができる方法で」という条件を満たす必要があるのです。
ですから、例えば顔が写っていたり、身元を特定できる情報が一緒に拡散されていたりといったことが必要となってくるのです。
今回のAさんの事例でも、Aさんが流出させたVさんの画像・動画にVさんの顔が写っているなどVさんであると特定できる情報が含まれていたのでしょう。
リベンジポルノ防止法違反は、同法第3条第4項にある通り、被害者等の告訴がなければ起訴されない親告罪ですから、まずは被害者対応が重要となるでしょう。
しかし、リベンジポルノという行為の性質上、被害者の被害感情が大きいことも予想されます。
だからこそ、第三者かつ専門家である弁護士に間に入ってもらい、サポートを受けることが効果的と言えます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、リベンジポルノ防止法違反事件についてのご相談も受け付けています。
リベンジポルノ防止法違反事件にお困りの際は、お気軽にご相談ください。