ペットの横領・窃盗事件②

ペットの横領・窃盗事件②

ペット横領窃盗事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~

滋賀県守山市にあるペットホテルを経営しているAさんは、ある日、滋賀県守山市在住のVさんから預かったペットの犬を世話していました。
するとAさんは、Vさんのペットの犬が珍しい犬種であることに気づき、どうしても自分で飼いたくなってしまいました。
そこでAさんは、Vさんのペットの犬を自宅に連れ帰ってそこで自分のペットとして世話をしはじめると、Vさんには「犬の調子が悪いようなので病院に預ける」などと嘘を言ってペットの犬を引き渡しませんでした。
Vさんが不審に思って滋賀県守山警察署に相談し、滋賀県守山警察署が捜査を開始したところ、AさんがVさんのペットの犬を自分のペットとして飼っていることが発覚。
Aさんは業務上横領罪の容疑で逮捕されてしまいました。
(※この事例はフィクションです。)

・ペットと業務上横領罪

前回の記事では横領罪(単純横領罪)について触れましたが、今回のAさんの逮捕容疑は業務上横領罪のようです。
業務上横領罪は、刑法253条に規定されている犯罪です。

刑法253条(業務上横領罪)
業務上自己の占有する他人の物を横領した者は、10年以下の懲役に処する。

前回の記事で取り上げた横領罪がこの業務上横領罪と比較するために「単純横領罪」と呼ばれることもあるように、業務上横領罪は単純横領罪の要件に加え、その成立には「業務上」という要件が必要となっています。
業務上横領罪の「業務上」とのイメージとしては、「仕事上」というイメージが強いでしょう。
業務上横領罪といえば、銀行の出納係や企業の経理担当がお金を横領する、という想像がしやすいからかもしれません。
しかし、この「業務上」とは、必ずしもイコール「仕事上」「職業上」という意味ではありません。

業務上横領罪のいう「業務」とは、「社会生活上の地位に基づいて、反復継続して行われる事務」であると言われています。
つまり、仕事はもちろん、「社会生活上の地位に基づいて、反復継続して行われる事務」であればたとえ仕事でなくとも「業務」であることになります。
例えば、町内会の経理係として町内会のお金を預かって管理していたような場合、町内会の経理係は職業ではありませんが、「社会生活上の地位(=町内会の経理係)に基づいて、反復継続して行われる事務(=町内会のお金を管理すること)」となるため、業務上横領罪の「業務」といえることになります。

業務上横領罪の「業務上」の後に続く「自己の占有する他人の物を横領」する行為については、前回の記事の単純横領罪同様、「委託信任関係に基づいて自分の支配下にある他人の物」について「他人の物の占有者が委託の任務に背いてその物につき権限がないのに、所有者でなければできないような処分をする意思」を実現する行為をする、ということになります。

すなわち、業務上横領罪は、
①社会生活上の地位に基づいて、反復継続して行われる事務をするうえで(=業務上)
②委託信任関係に基づいて自分の支配下にある他人の物について(自己の占有する他人の物を)
③他人の物の占有者が委託任務に背いてその物につき権限がないのに、所有者でなければできないような処分をする意思を実現する行為をする(=横領)
ことで成立します。
短い条文からはパッとこのような要件にはたどりつきづらいですが、業務上横領罪の成立にはこういった要件が求められているのです。

今回のAさんについて考えてみましょう。
今回のAさんは、ペットホテルを経営していて、仕事としてペットを預かっています。
これは、ペットホテルを経営しているという社会的立場に基づいている行為であり、ペットホテルの業務としてペットを預かることを反復継続して行っているといえます。
ですから、Aさんがペットホテルの業務の一環としてペットを預かるという行為は、業務上横領罪の「業務上」にあたるといえます。
そして、Aさんとペットを預ける人の間では、委託信任関係があるといえますし、Aさん自身がペットホテルを経営していることから、預かったペットたちはAさんが支配・管理していると考えられます。
当然、ペットたちは一時的に預かっているだけですから、Aさんの物ではなく「他人の物」です。
さらに、今回のAさんはその預かったVさんのペットを連れ帰り、自分のペットとして世話をしています。
自分のペットとして世話をしているのですから、権限なく所有者のようにふるまっていることになるでしょう。
これらのことから、Aさんには業務上横領罪が成立すると考えられるのです。

業務上横領事件はこのように非常に複雑です。
被疑者となってしまったら、逮捕されてしまったら、すぐに弁護士に相談しましょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、24時間お問い合わせを受け付けていますので、まずはお気軽にお電話ください。

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