猟友会の有害鳥獣駆除活動中に猟犬3匹を見失い、見失った猟犬が人に噛みつきけがを負わせたとして、業務上過失致傷罪の容疑で捜査されている事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
事例
19日午後0時5分ごろ、大津市(中略)の民家で、居住者(中略)と飼い犬が敷地内に入り込んだ猟犬3匹にかまれた、と110番があった。女性は左腕や両足に軽傷を負い、飼い犬は深い傷を負った。滋賀県警大津署は業務上過失傷害の疑いで捜査する。
(中略)猟犬は体長70~80センチで、猟友会のメンバー5人がイノシシやシカなどの有害鳥獣駆除活動をしている最中、メンバーの男性(72)が所有する猟犬3匹を見失ったという。
(11月19日 京都新聞 「猟犬3匹が民家に入り込み住人襲う 52歳女性が軽傷、飼い犬にも深い傷」より引用)
業務上過失致傷罪
刑法第211条
業務上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、五年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金に処する。重大な過失により人を死傷させた者も、同様とする。
業務上過失致傷罪はその名の通り、業務上必要とされる注意を怠った結果、人にけがを負わせた場合に成立する罪です。
判例によれば、業務とは「本来人が社会生活上の地位に基づき反復継続して行う行為であって、かつその行為は他人の生命身体等に危害を加える虞あるものであることを必要とする」(昭和33年4月18日 最高裁判所 判決)であり、「人の生命・身体の危険を防止することを義務内容とする業務も含まれる」(昭和60年10月21日 最高裁判所 決定)としています。
猟友会の有害鳥獣駆除活動は業務にあたるでしょうか。
猟友会の有害鳥獣駆除活動は反復継続して行う行為だといえますし、猟銃の発射や両県との駆除活動は一歩間違えれば命の危険もあり、生命身体等に危害を加えるおそれがあるといえます。
また、有害鳥獣駆除活動は人の生命・身体の危険を防止することを目的としています。
ですので、有害鳥獣駆除活動は業務上過失致傷罪における業務に該当するでしょう。
今回の事例では、容疑者が猟友会の有害鳥獣駆除活動中に猟犬を3匹見失ったとされています。
猟犬が人を噛むと噛まれた人の生命身体に危害を加えるおそれがありますので、人を襲わないためにも、猟犬が勝手にどこかに行ったり人に危害を加えないように監視監督する必要があるでしょう。
報道によれば、猟犬を見失ったとのことですので、報道が事実であれば、容疑者は猟犬を連れるうえで必要な監視監督を怠ったといえます。
ですので、実際に容疑者が猟友会の有害鳥獣駆除活動中に猟犬3匹を見失い、人にけがを負わせたのであれば、業務上過失致傷罪が成立する可能性があります。
業務上過失致傷罪と不起訴処分
業務上過失致傷罪の法定刑は5年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金ですので、決して科される罪の軽い犯罪だとはいえません。
懲役刑や禁固刑が規定されていますので、過失の程度やけがの程度によっては、懲役刑や禁固刑が科され、刑務所に行かなくてはならなくなる可能性があります。
刑事事件では、被害者と示談を締結することで、不起訴処分を得られる場合があります。
不起訴処分とは、その名の通り、不起訴になる処分のことです。
刑事事件では起訴されることで刑罰を科されます。
ですので、不起訴処分を得られることができれば刑罰は科されません。
また、刑罰が科されませんので、前科が付くこともありません。
加害者が被害者と直接連絡を取ることで、被害者に恐怖を抱かせてしまったり、処罰感情をより激化させてしまうおそれがあります。
そのような場合には、再度の連絡を取ることができなくなってしまう可能性が高いですし、加害者が直接示談交渉を行う場合には捜査機関から被害者の連絡先を教えてもらえない場合も少なくなく、示談交渉どころか連絡すら取れない場合もあります。
弁護士を入れることで連絡先を教えてもいいと思われる被害者もいますし、処罰感情を激化してしまうようなケースも避けられる可能性があります。
弁護士を介して示談交渉を行うことで、トラブルの発生を回避できる可能性もありますので、示談交渉を行う際には、弁護士に相談をすることが望ましいでしょう。
また、弁護士は検察官に対して処分交渉を行うことができます。
弁護士が不起訴処分が妥当だと検察官に訴えることで、不起訴処分を獲得できるかもしれません。
故意ではなく過失であったとしても、人にけがを負わせると業務上過失致傷罪などの罪に問われることになります。
ですが、弁護士に相談をすることで、不起訴処分などのより良い結果を得られる可能性があります。
業務上過失致傷罪などの刑事事件で捜査を受けた方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
初回接見サービス、無料法律相談のご予約は、0120―631―881で受け付けております。