滋賀県彦根市で事後強盗事件

滋賀県彦根市で事後強盗事件

滋賀県彦根市の事後強盗事件について,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

【事件】

Aさんは滋賀県彦根市内のスーパーで未清算の商品をバッグに入れて立ち去ろうとしました。
レジを通らず視線がキョロキョロと泳いでいるAさんを怪しんだスーパーの警備員Vさんは,Aさんを呼び止めようとしました。
声をかけられたAさんは逃走しようとしたので,咄嗟にVさんはAさんの腕を掴みました。
AさんはVさんを払いのけようと暴れた折にVさんの顔を肘で殴打し,Vさんは全治1週間の怪我を負いました。
スーパーの監視カメラの映像をきっかけとして,Aさんは強盗致傷罪の疑いで滋賀県彦根警察署で取調べを受けることになりました。
(フィクションです)

【事後強盗罪】

強盗罪(刑法第236条)にいう強盗とは,暴行や脅迫を手段として財物その他財産上の利益を得た場合を指します。
しかし,今回のように財物を得た後にそれに関連して暴行や脅迫があるケースも存在します。
このように,財物を得た後に暴行や脅迫があった場合で強盗罪の適用が難しい場合を処罰する犯罪類型として,事後強盗罪が設けられています。

事後強盗罪は刑法第238条によって「窃盗が,財物を得てこれを取り返されることを防ぎ,逮捕を免れ,又は罪跡を隠滅するために,暴行又は脅迫をしたときは,強盗として論ずる」と規定されています。

「強盗として論ずる」とは,
①法定刑が強盗罪と同じになる。
②事後強盗罪に当たる場合,事案によっては強盗致死傷罪(刑法第240条)や強盗強制性交等罪及び同致死傷罪(刑法第241条)の成立があり得る。
③事後強盗罪の予備行為が強盗予備罪(刑法第237条)となる。

以上のことを意味します。

①の場合について,窃盗罪(刑法第235条)の法定刑は10年以下の懲役または50万円以下の罰金であるのに対して,強盗罪の法定刑は5年以上20年以下の懲役ですので,暴行・脅迫の有無によって格段に重い処罰があり得るということになります。

②で挙げられる強盗致死傷罪の法定刑は,傷害結果が生じた場合は無期または6年以上の懲役で,死亡させてしまった場合は死刑または無期懲役です。
強盗強制性交等罪及び同致傷罪の法定刑は,無期または7年以上の懲役で,強盗強制性交等致死罪の法定刑は,死刑または無期懲役です。

③の強盗予備罪の法定刑は,2年以下の懲役です。

このように重い法定刑が定められている事後強盗罪では,強盗罪の場合と同様に,その成立のために求められる暴行・脅迫は相手の反抗を抑圧するに足りる程度のものでなければならないとされています。

窃盗犯人が,財物を取り返されたり逮捕されたりすることを防ぐために,これらの行為をしようとしている人に暴行や脅迫を行うことは,ある意味では当然のことといえます。
このような防御的動作のうち,羽交い絞めの状態から逃れたい一心で体をひねり,よって相手に怪我をさせた事例で,反抗を抑圧する程度に至らないものとした判例(東京高判昭和61・4・17高刑集39巻1号30頁)があります。
この事件から,裁判所は逮捕から逃れるための暴行があったことの他に積極的な加害意思があったかどうかも反抗を抑圧する程度の暴行があったかを判断する上で考慮しているものと考えられます。
事後強盗罪に限らず強盗罪全般が争われた過去の事件のいくつかを見ると,被害者を助ける人がいたかどうか,周囲の人通りの多さ,暴行・脅迫の手段や内容なども総合的に考慮して反抗を抑圧する程度にあったかどうかを判断しているようです。

ここで注意したいのは,被害者が実際に反抗していようとも,客観的に一般人が反抗できないような様態であったことが認められれば反抗を抑圧する程度の暴行・脅迫があったと認められる場合があるということです。

また,暴行・脅迫は窃盗の機会に行われなければ事後強盗罪は成立しません。
窃盗の機会とは,時間的・場所的に窃盗行為に接着した範囲内であることを要します。

Aさんの場合,Aさんが万引きを行った後,立ち去ろうとする中で同じスーパーでVさんを殴打しています。
よってAさんの暴行は窃盗の機会に行われたということができるでしょう。
問題は,それが反抗を抑圧する程度の暴行であったかどうかとなります。
事件の概要からは分かりませんが,周囲に警備員の他に多数の人がいたり,偶然Aさんの肘が顔面に当たってしまったなどといった事情があれば,相手の逮捕遂行の意思を抑圧するに至らない防御的動作として,事後強盗罪に当たらない可能性も出てくるかもしれません。

ただし,事後強盗罪や強盗致傷罪に当たらないとしても,窃盗罪と傷害罪の併合罪に問われることも考えられます。
この場合の法定刑は,22年6月以下の懲役または100万円以下の罰金です。
一見,事後強盗罪の場合と比べ窃盗罪と傷害罪の併合罪となった方が重く処罰されるように思われるかもしれませんが,実務上は法定刑の範囲でより軽い刑が言い渡される場合がほとんどです。

また被害者に謝罪したり示談を成立させることで不起訴処分や執行猶予を得られる可能性が高くなります。

Aさんのように,窃盗にあたる行為をしたときに暴行や脅迫をしてしまった場合,時として強盗という非常に重大な犯罪事実が認められてしまうケースがあります。
早期に適切な弁護活動を行うことにより,早期の身体拘束からの解放や,不起訴や執行猶予を得られたり,より軽い処罰で済ませられる可能性を高めることができます。
事後強盗罪の被疑者となってしまった方,ご家族やご友人が事後強盗罪の容疑で逮捕されてしまった方,滋賀県彦根警察署で取調べを受けることになってしまった方は,刑事事件に強い弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にお早めにご相談ください。

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