帰省ラッシュで渋滞中の交通事故③
~前回からの流れ~
Aさんは、お盆休みの帰省のため、滋賀県近江八幡市内を通る道路で自動車を運転していました。
しかし、帰省ラッシュのために道路はずいぶん先まで渋滞しており、Aさんは1時間強の間、少し動いては停まるといったことを繰り返していました。
Aさんは渋滞にいら立ち、つい、Vさんの運転している前の車に対してパッシングや前後の距離を詰めることを繰り返してしまいました。
そしてその結果、Aさんの車はVさんの車にぶつかる交通事故を起こしてしまいました。
Aさんは、Vさんが通報したことで駆け付けた滋賀県近江八幡警察署の警察官に逮捕され、話を聞かれることになりました。
(※この事例はフィクションです。)
前回はAさんの起こした交通事故が人身事故だった場合に成立しうる犯罪を考えてみましたが、今回はAさんの起こした交通事故が物損事故だった場合(Vさんやその同乗者に怪我がなかった場合)に成立しうる犯罪を考えてみましょう。
Aさんは何罪になる?~物損事故の場合
先日の記事でも触れたように、単純な物損事故だけでは刑事事件になることは少なく、行政や民事での処理のみで終わることが多いです。
しかし、物損事故時の状況や運転態様等によっては、物損事故でも刑事事件となることがあります。
Aさんのようなケースで物損事故となった場合について考えてみましょう。
①道路交通法違反
道路交通法には、自動車を運転する際に守ったり注意したりしなければいけない様々な義務が定められています。
今回のAさんは、交通事故を起こす前、Vさんの運転する自動車に対してあおり運転をしていました。
このあおり運転は、態様によっては道路交通法に定められている義務に違反することになります。
例えば、以下のような急ブレーキの禁止や車間距離の保持といった義務があります。
道路交通法24条
車両等の運転者は、危険を防止するためやむを得ない場合を除き、その車両等を急に停止させ、又はその速度を急激に減ずることとなるような急ブレーキをかけてはならない。
道路交通法26条
車両等は、同一の進路を進行している他の車両等の直後を進行するときは、その直前の車両等が急に停止したときにおいてもこれに追突するのを避けることができるため必要な距離を、これから保たなければならない。
これらに違反すると、「3月以下の懲役又は5万円以下の罰金」(車間距離の保持については高速道路上の場合。一般道の場合は5万円以下の罰金)となります。
②暴行罪
昨今、あおり運転に対しては刑法上の暴行罪が適用されることも多くなってきています。
暴行罪という単語からは、直接相手を殴ったり蹴ったりして暴行を加える態様がイメージされやすいですが、そうした直接相手に触れるもの以外にも、暴行罪は成立しえます。
暴行罪となった場合には、「2年以下の懲役もしくは30万円以下の罰金、または拘留もしくは科料」に処せられる可能性が出てきます。
③器物損壊罪
もしもAさんに「Vさんの車にぶつけて車を壊してやろう」「Vさんの車にぶつかってしまっても構わない」といった意識があったうえであおり運転をして交通事故を起こしていた場合には、あえて交通事故を起こしてVさんの車を壊したとして、刑法上の器物損壊罪に問われる可能性もあります。
器物損壊罪の法定刑は「3年以下の懲役又は30万円以下の罰金もしくは科料」となっています。
物損事故の場合、その場から逃げたり、損壊したものが建造物等であったりしなければ、基本的には刑事事件とはなりませんが、このように態様によっては刑事事件になってしまいます。
帰省ラッシュなどで渋滞になってしまえば、気持ちに落ち着きがなくなってしまったり、態度が大きくなってしまったりすることも考えられますが、あおり運転をして交通事故を起こしてしまえば、これらの犯罪に問われてしまうかもしれません。
交通事故直後には、相手が怪我をしているかどうかも判断が付かないこともあります。
まずは弁護士に相談し、見通しも含めて今後について詳しい話を聞いてみましょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、お盆の期間であっても休みなく初回無料法律相談や初回接見サービスを受け付けております。
帰省ラッシュの渋滞中に交通事故を起こしてしまってお困りの方、物損事故から刑事事件に発展してしまってお悩みの方は、遠慮なく弊所弁護士までご相談ください。
(お問い合わせ:0120-631-881)