非現住建造物等放火事件で弁護士に相談

非現住建造物等放火事件で弁護士に相談

非現住建造物等放火事件について,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~

Aさんは,滋賀県草津市にある飲食店で働いていましたが,店からの待遇に不満を持っていました。
ある日Aさんは,ついにその不満を爆発させ,飲食店を燃やしてしまおうと考えました。
そこでAさんは,閉店してAさん以外の人がいなくなった飲食店にあったガスコンロで椅子のクッションに火を点け,店に燃え移らせて店舗を半焼させました。
その後の捜査で,Aさんが店に放火したことが発覚し,Aさんは,非現住建造物等放火罪の容疑で滋賀県草津市を管轄する滋賀県草津警察署の警察官に逮捕されました。
(フィクションです。)

~非現住建造物等放火罪~

放火して,現に人住居に使用せず,かつ,現に人がいない建造物等を焼損した者には,非現住建造物等放火罪(刑法109条1項)が成立します。

刑法109条
1項 放火して、現に人が住居に使用せず、かつ、現に人がいない建造物、艦船又は鉱坑を焼損した者は、2年以上の有期懲役に処する。
2項 前項の物が自己の所有に係るときは、6月以上7年以下の懲役に処する。
ただし、公共の危険を生じなかったときは、罰しない。

非現住建造物等放火罪が成立する場合,2年以上の有期懲役刑が科せられます。
非現住建造物等放火罪で言われる「放火」とは,建造物等に直接点火することだけでなく,媒介物への点火も含まれます(大判大正3年10月2日)。
ですから,今回のAさんのように飲食店の建物に直接放火していない場合でも,非現住建造物等放火罪は成立しうるということになります。
Aさんは,媒介物である椅子のクッションに火を点け店に燃え移らせているので,非現住建造物等放火罪のいう「放火」をしたといえます。

そして,非現住建造物等放火罪の中で出てくる「焼損」とは,火が媒介物を離れ,目的物が独立に燃焼を継続するに至った状態をいうと解されています(大判明治43年3月4日)。
Aさんが点けた火は,店に燃え移り,その結果店が半焼しているので,非現住建造物等放火罪にいう「焼損」をしたといえます。

ここで,実は放火罪といっても3種類に分けられることに注意が必要です。
これらの放火罪は,それぞれ何かに「放火」して「焼損」させることで成立する犯罪ですが,何に「放火」して「焼損」させたのかによって成立する放火罪の種類が異なるのです。
今回のAさんが容疑をかけられている非現住建造物等放火罪は,罪名の通り「非現住建造物等」,つまり,条文中の「現に人住居に使用せず,かつ,現に人がいない建造物等」にあたるものに放火し焼損させた場合に成立する犯罪です。
今回のAさんが放火し焼損させたのは,Aさん以外に人のいなくなった飲食店です。
飲食店は人が住んでいる場所ではないですから,「現に人住居に使用せず」に当てはまるでしょう。
さらに,Aさん以外には人のいない状態であるため,「現に人がいない建造物」にも当たると考えられますから,「非現住建造物等」であるといえそうです。
したがって,Aさんの行為は,非現住建造物放火罪となると考えられるのです。

~非現住建造物放火事件と弁護活動~

前述のように,非現住建造物放火罪は重い犯罪であることもあり,逮捕されるリスクも大きいといえます。
逮捕された場合,引き続いて勾留される可能性も高いでしょう。

また,その法定刑の重さから,非現住建造物放火罪で起訴され有罪となった場合,初犯であっても実刑判決を受ける可能性があります。
しかし,弁護士が情状弁護を行うことで,執行猶予がつく可能性も全くないわけではありません。
弁護士が情状として主張するのは,被害弁償や示談の成立,環境調整,再犯防止策を真剣に検討していることなどです。
こうした主張のために活動していくためにも,適切に主張を続けるためにも,早い段階から弁護士に相談することが望ましいでしょう。

刑事事件専門弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では,放火事件のような重大犯罪についても安心してご相談いただけます。
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