売春あっせん行為で売春防止法違反・児童福祉法違反事件
売春あっせん行為で売春防止法違反・児童福祉法違反事件になったケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
18歳のAさんは、滋賀県守山市で一人暮らしをしていました。
Aさんは、知人の会社員男性Bさんが「若い子と性行為をやりたい」と言っていることと、知人の高校生Cさん(16歳)が「性行為混みでいいからパパ活をしたい」と言っていることを知り、2人を紹介して引き合わせると、2人が会って性行為をする際に自分の住んでいた部屋を貸すなどしました。
しかし、Cさんが滋賀県守山警察署に補導されたことをきっかけに発覚し、Aさんは売春防止法違反と児童福祉法違反の容疑で逮捕されてしまいました。
Aさんとは離れて暮らしていたAさんの両親は、滋賀県守山警察署にAさんが逮捕されたという知らせを聞き、とにかく早く何かしらの対応をしなければいけないと考え、滋賀県の逮捕に対応できるという弁護士に接見に行ってもらうことにしました。
(※令和3年3月2日京都新聞配信記事を基にしたフィクションです。)
・売春防止法
売春とは、金銭などの対価のかわりに不特定の相手と性交をすることを指します。
売春については、「売春防止法」という法律で売春をすることも、売春の相手となることも禁止されています。
売春防止法第3条
何人も、売春をし、又はその相手方となつてはならない。
この売春防止法第3条には刑罰の規定がなく、たとえ売春をしたり売春の相手となったりしても、それによって刑罰が科されるということはありません(売春防止法違反という犯罪にはなります。)。
しかし、売春防止法違反という犯罪全てに刑罰がないというわけではなく、売春の周旋行為や売春のための場所を提供する行為によって売春防止法違反となった場合には以下のように刑罰が科せられるほか、売春をさせる行為を業として行った場合や売春の勧誘をしたような場合には刑罰が科せられるように定められています。
売春防止法第6条
売春の周旋をした者は、2年以下の懲役又は5万円以下の罰金に処する。
売春防止法第11条
第1項 情を知つて、売春を行う場所を提供した者は、3年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。
第2項 売春を行う場所を提供することを業とした者は、7年以下の懲役及び30万円以下の罰金に処する。
今回のAさんは未成年のため刑罰を受けることは原則としてありませんが、売春の「周旋」(=あっせん)や、売春をすることを知りながら(=「情を知って」)売春を行う場所として自身の部屋を貸している(=「売春を行う場所を提供」)ことから、これらの行為による売春防止法違反という犯罪に問われたと考えられます。
ここで注意が必要なのは、Aさんが売春を周旋した当事者の1人であるCさんが16歳の高校生であり、Aさんもそのことを知っていたということです。
18歳未満の児童が金銭などの対価と引き換えに性交をした場合、それは児童買春と考えられます。
児童買春の周旋も、売春の周旋同様に児童買春禁止法によって規制されている行為ですから、Aさんには売春防止法ではなく児童買春防止法違反という犯罪が成立することになる可能性もあるのです。
逮捕された時点ではAさんの逮捕容疑は売春防止法違反となっていますが、捜査が進むにつれて被疑罪名が変更になる可能性があるのです。
なお、児童買春の周旋による児童買春禁止法違反の刑罰は、「5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金に処し、又はこれを併科」となっています(児童買春禁止法第5条第1項)。
・児童福祉法違反
今回のAさんには、売春防止法違反だけでなく児童福祉法違反という別の犯罪の容疑もかけられているようです。
児童福祉法とは、名前のとおり児童の福祉を保障する法律です。
児童の福祉を守るため、児童福祉法では児童にさせてはいけない行為を定めています。
その中の1つに、以下のようなものがあります。
児童福祉法第34条第1項
何人も、次に掲げる行為をしてはならない。
第6号 児童に淫行をさせる行為
児童福祉法第第60条第1項
第34条第1項第6号の規定に違反した者は、10年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
児童福祉法における「児童」も、児童買春禁止法同様18歳未満の者を指しています。
今回の事例では、Aさんは「児童」であるCさんにBさんとの性交等をさせた=「淫行をさせ」たと判断されたのでしょう。
注意が必要なのは、児童に淫行させたことによる児童福祉法違反は、今回のAさんが容疑に問われているような児童に第三者に対する淫行をさせた場合だけでなく、児童に自分に対して淫行をさせた場合にも成立するということです。
・弁護活動
今回のAさんは未成年であることから、少年事件の手続によって処分が決められます。
少年の更生に重きをおく少年事件では、示談交渉などの被害者対応や身柄解放活動といった活動だけでなく、Aさん自身が今回のような事件を起こしてしまった原因をつきとめ、再度同じことを繰り返さないようにすることが重要です。
Aさんの周囲の環境を整え改善するためには、少年事件に詳しい専門家のアドバイスが効果的です。
そのためにも、早期に少年事件に対応している弁護士に相談することが望ましいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、成人の刑事事件だけでなく、少年事件も専門的に取り扱っています。
少年事件で必要と考えられる活動はまだまだ一般に浸透していない部分も多いですから、まずはどういった活動が考えられるのかだけでも専門家に聞いておくことが重要です。
お気軽に弊所弁護士までご相談ください(お問い合わせ:0120-631-881)。