被害者をだましたのに窃盗事件?②
被害者をだましたのに窃盗事件として検挙されたケースで、特に捜査段階の釈放を求める活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
滋賀県東近江市に住んでいる高校生のAくん(17歳)は、高校が冬休みに入ることから、冬休みに稼げるアルバイトはないかとアルバイトを探していました。
すると高校の先輩であるBさんから、「簡単に稼げるアルバイトがある」と伝えられ、Bさんの伝手でそのアルバイトをすることになりました。
Aさんがそのアルバイトの詳細を聞いたところ、お年寄りの家に行って銀行員を装い、キャッシュカードと暗証番号を封筒に入れさせたうえでその封筒と自分の用意した偽物の封筒を隙を見てすり替え、すり替えたキャッシュカードと暗証番号を使用して金を引き出すというものでした。
Aさんは、「よくニュースで見る犯罪だ」と思ったものの、「冬休みの短い間だけで何十回もやるわけではないからばれないだろう」と考え、そのアルバイトをすることにしました。
しかしアルバイトをしてから数日後、滋賀県東近江警察署の警察官がAさん宅を訪れ、Aさんは窃盗罪の容疑で逮捕されてしまいました。
Aさんの両親は、警察官から「窃盗罪の容疑で息子さんを逮捕します」としか聞かせてもらえず、困って弁護士に相談しました。
その後、弁護士から事件のあらましを聞いたAさんの両親は、「被害者の方をだましているのに窃盗罪なのはどうしてなのか」と疑問に重い、弁護士に詳しい説明を聞くことにしました。
(※この事例はフィクションです。)
・少年の窃盗・詐欺事件で釈放を求める~捜査段階
今回のAさんが関わってしまったような詐欺まがいの窃盗事件や類似の詐欺事件では、Aさんのような学生がアルバイト感覚で関わってしまうケースも少なくありません。
冬休みや夏休みといった長期休暇でアルバイトに誘われ、軽い気持ちで関わってしまう少年もいます。
こうした窃盗事件・詐欺事件は組織的に行われていることも多く、逮捕されやすい被害者へ直接かかわる役割を学生のアルバイトに任せ、いわゆるとかげの尻尾切りのように利用している犯罪組織もあります。
こうしたアルバイトに関わらないことはもちろんですが、もしも関わってしまったら、弁護士にどのような活動をしてもらうことが考えられるのでしょうか。
まず、今回のAさんは逮捕されて滋賀県東近江警察署に留置されています。
少年事件の手続きが成人の刑事事件と異なると聞いたことのある方も多いかもしれませんが、捜査機関に捜査されるいわゆる被疑者の段階では、少年事件であっても成人の刑事事件と手続きが異なる点は多くありません。
少年事件であっても、逮捕されれば逮捕から48時間以内に釈放されるか検察官のもとへ送られるかが決められ、検察官へと送られる場合(いわゆる「送検」)には、そこからさらに24時間以内に勾留という逮捕より長期間の身体拘束をするよう請求するかどうかが決められます。
そして勾留を請求された場合、裁判所がその請求を認めれば、最大72時間に及ぶ逮捕から引き続いて、勾留というさらに長い期間の身体拘束がなされることになるのです。
勾留は、原則最大10日間であり、さらにそこから最大10日間の延長が認められています。
つまり、逮捕を伴う少年事件では、捜査段階において、逮捕から合わせると最大で23日間身体拘束される可能性があるということになります。
例えば、今回のAさんは、複数人で詐欺まがいの窃盗事件を起こしています。
前述したように、こうした手口の詐欺事件や窃盗事件では、役割分担が行われ、組織的に犯行が行われていることが多いです。
ニュース番組などでも「詐欺グループが逮捕された」というような報道が多くなされています。
このように複数人が関わる犯罪、いわゆる共犯者のいる犯罪では、仲間内での口裏合わせなどで証拠隠滅されるおそれがあると考えられて逮捕・勾留される可能性が高く、なかなか釈放されないケースが多いです。
さらに、複数件の詐欺事件や窃盗事件に関わっている場合には、理論上関わっている詐欺事件・窃盗事件の数だけ逮捕・勾留される可能性がありますから、被疑者として取調べられる捜査段階だけでも長期に渡る身体拘束を受ける可能性が高まってしまうのです。
捜査段階で釈放を求めていくためには、先ほど挙げた勾留までの流れの中で、勾留を求めるかどうか判断する検察官や勾留請求を認めるかどうか判断する裁判官に対し、釈放を主張していくことが考えられます。
しかし、読んでいただければわかるように、逮捕されてから勾留が決定されるまでは、最大でも72時間しか時間がありません。
事件の状況などにもよりますが、最大72時間とされているだけで、手続きの進行が早ければ、2日程度で逮捕から勾留までが決まってしまうこともあります。
勾留が決定してからでも不服申し立てをすることはできますが、この不服申し立ても1回の勾留につき1回しかできません。
釈放を求める機会を少しでも多く確保するためには、逮捕から早い段階で弁護士に釈放を求める活動をしてもらうことが重要です。
通常の成人の刑事事件であれば、この最大23日間の身体拘束ののち、起訴・不起訴が判断され、起訴されて勾留が続く場合には保釈という手続きを取ることができます。
しかし、少年事件の場合、ここから成人の刑事事件とは異なる手続きが入ってきます。
それが「観護措置」という手続きです。
こちらについては、次回の記事で取り上げます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、逮捕後から迅速に弁護士へご相談いただけるよう、初回接見サービスのお申込みを24時間いつでも行っています(0120-631-881)。
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