飲酒運転を隠そうと逃亡…これも犯罪に?②
~前回からの流れ~
滋賀県大津市のAさんは、仕事から帰宅後、飲酒していました。
ふとAさんは、帰路に買って帰ろうと思っていた日用雑貨を買い忘れて帰ってきてしまったことを思い出しました。
そこでAさんは、「そんなに遠い距離ではないし大丈夫だろう」と思い、飲酒運転をしながらホームセンターに向かいました。
するとその道中で、歩行者Vさんと接触し、けがをさせてしまうという人身事故を起こしてしまいました。
このままでは飲酒運転がばれてしまうと焦ったAさんは、Vさんに声をかけることもなく、そのまま自動車で走り去り、コンビニで水を購入して飲む等をしました。
しかし、15分後、通報を受けて捜査していた滋賀県大津北警察署の警察官により、Aさんは警察署に任意同行され、その後逮捕されてしまいました。
(※この事例はフィクションです。)
前回の記事では、飲酒運転や、飲酒運転中の人身事故に関わる犯罪について取り上げました。
上記事例Aさんは飲酒運転中に人身事故を起こしているわけですから、飲酒運転による道路交通法違反と過失運転致傷罪、もしくは危険運転致傷罪、さらにひき逃げによる道路交通法違反に該当するでしょう。
しかし、上記事例のAさんには、この他にも該当する可能性のある犯罪が考えられます。
今回はその犯罪について詳しく考えていきましょう。
・飲酒運転を隠そうと逃亡したら
上記事例のAさんは、飲酒運転をしていたことが発覚するのをおそれ、その場を逃げ去り、コンビニで水を購入して飲む等しています。
こうした場合、人身事故を起こしたことで成立する自動車運転処罰法違反や飲酒運転をしたことで成立する道路交通法違反以外に別の犯罪に問われる可能性が出てきます。
それが、自動車運転処罰法にある以下の規定です。
自動車運転処罰法4条(過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱罪)
アルコール又は薬物の影響によりその走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で自動車を運転した者が、運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた場合において、その運転の時のアルコール又は薬物の影響の有無又は程度が発覚することを免れる目的で、更にアルコール又は薬物を摂取すること、その場を離れて身体に保有するアルコール又は薬物の濃度を減少させることその他その影響の有無又は程度が発覚することを免れるべき行為をしたときは、12年以下の懲役に処する。
この規定に違反することは、通称「過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱罪」と言われています。
長い罪名でなかなか分かりにくい罪ですが、簡単に言えば、ある程度の飲酒運転で人身事故を起こしたにも関わらず、飲酒運転の発覚やその程度をうやむやにするために、事故後にあえてアルコールを摂取したり、事故現場を離れてアルコール濃度を下げるための行為等をしたときに成立する犯罪です。
なぜこのような規定があるかというと、人身事故後に現場から逃げ、飲酒運転をしていたかどうか分からなくしてしまうことで、飲酒運転にかかる部分の犯罪を証明できなくする、いわゆる「逃げ得」を防止するためであるといわれています。
では具体的に「逃げ得」とは、どのような状態を指すのでしょうか。
次回の記事で詳しく取り上げます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱罪といったなかなか聞きなじみがなく、わかりづらい犯罪についても、刑事事件専門の弁護士がご相談に乗らせていただきます。
交通事故に関わる刑事事件の場合、「飲酒運転」「人身事故」という一般に言われるワードは知っていても、実際に成立する犯罪や、それがどれほどの重さ・見通しとなるのかはなかなかわかりづらいでしょう。
弁護士であれば、刑事事件の専門家ですから、そうした部分についても事細かに聞くことができます。
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