自転車を無断使用したら窃盗罪?
自転車を無断使用して窃盗罪に問われてしまったケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
〜事例〜
滋賀県高島市に住んでいるAさんは、近所にあるコンビニへ買い物に行くために出かけようと思ったところ、同じマンションに住んでいるVさんの自転車が鍵がかかっていない状態で停められているのを見つけました。
Aさんは、「どうせ1時間かからない程度で帰ってくるのだから借りよう」と思いつき、Vさんの自転車を無断使用しました。
Aさんが40分ほど経ったあとにコンビニから帰ってくると、自転車がないことに気付いたVさんが窃盗罪の被害に遭ったと通報していたようで、通報によって駆け付けた滋賀県高島警察署の警察官がAさんに窃盗罪の容疑で話を聞きたいと言ってきました。
(※この事例はフィクションです。)
・無断使用と窃盗罪
今回のAさんが容疑をかけられている窃盗罪は、刑法の以下の条文に定められています。
刑法第235条(窃盗罪)
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
今回のAさんは、Vさんの自転車を勝手に持ち出して無断使用していることから、この窃盗罪に当てはまりそうに見えます。
しかし、窃盗罪をはじめとする奪取罪(窃盗罪・強盗罪・詐欺罪・恐喝罪)については、条文に書かれた成立要件(刑法では「構成要件」と呼ばれたりします。)のほかにも、成立するための条件があります。
それが「不法領得の意思」という意思です。
つまり、窃盗罪では、条文に書かれている条件+「不法領得の意思」の2つが充たされる場合に窃盗罪が成立することになります。
では、その「不法領得の意思」とはどういった意思のことを指すのでしょうか。
不法領得の意思とは、「権利者を排除し、他人の物を自己の所有物と同様に利用し、または処分する意思」のことをいいます。
なぜ条文に書かれていないのに窃盗罪の成立に不法領得の意思が必要とされるのかというと、刑法が財産犯(窃盗罪など財産に対する犯罪のこと)の処罰対象を毀棄行為(壊すこと)と領得行為(他人の物を自分の物にしてしまうこと)とに分けているというところに理由があります。
「不法領得の意思」で区別しなければ、毀棄行為と領得行為が区別できないのです。
ここで、Aさんのケースに当てはめて考えてみましょう。
AさんはVさんの自転車を無断使用していることから、自転車の占有(支配・管理すること)を勝手に自分に写していると考えられますが、「すぐに返しておこう」と考えていることから不法領得の意思があるとは考えにくいと言えます。
しかし、Aさんが「不法領得の意思はない」と言えばそのようにすんなり判断されるというものではなく、無断使用の時間の長さなどから総合的に判断されることになります。
無断使用のために借りた時間が長ければ長いほど不法領得の意思が認められやすくなると言えますし、無断使用したのが自転車なのか自動車なのかと言ったことも不法領得の意思の有無の判断に考慮されます。
例えば、過去の判例で、夜中に自動車を5時間使用するつもりで運転し約4時間後に逮捕されたという事件で、不法領得の意思を認め、窃盗罪の成立を認定したものがあります(最決昭和55.10.30)。
今回のAさんのケースでは、Aさんが無断使用を開始してから40分しか経っていませんし、無断使用をしたものも自転車であるということから、不法領得の意思がないと主張できる可能性も十分あるでしょう。
無断使用はそもそも避けるべきではありますが、今回のように窃盗事件を疑われてしまったら、弁護士のサポートを仰ぐべきでしょう。
上記のような専門的な分析も必要になるため、取調べ等の対応を弁護士のアドバイスを受けながら対応することが効果的と言えるからです。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件専門の弁護士が無料法律相談を受け付けています。
無断使用による窃盗事件についてお悩みの際は、お気軽にご相談ください。