10代女性の太ももを触ったとして強制わいせつ罪の容疑で逮捕された事例を基に、強制わいせつ罪や不同意わいせつ罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
事例
施設内で女性の体を触るわいせつな行為をしたとして、滋賀県警高島署は8日、強制わいせつの疑いで、(中略)逮捕した。
逮捕容疑は、(中略)面識のある10代女性の太もも付近を触り、わいせつな行為をした疑い。
同署によると、男は「記憶にない」と容疑を否認しているという。
(後略)
(7月8日 京都新聞 「10代女性の体触ったか、強制わいせつ容疑で68歳市職員を逮捕 滋賀」より引用)
強制わいせつ罪
強制わいせつ罪は刑法第176条で「13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、6月以上10年以下の懲役に処する。13歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。」と規定されています。
強制わいせつ罪を簡単に説明すると、13歳以上の人に対して反抗することが難しいような暴行や脅迫を加えて、世間一般の人を辱しめるような、わいせつな行為を行うと成立します。
また、13歳未満の人にわいせつ行為を行った場合には、暴行や脅迫の有無は関係なく、強制わいせつ罪が成立します。
今回の事例では、容疑者が10代女性の太もも付近を触ったと報道されています。
太ももを触る行為によって、恥辱を受ける人も多いと思われますから、太ももを触る行為が強制わいせつ罪に規定するわいせつ行為にあたる可能性があります。
また、腕を掴んだり押さえつけるなどして、相手の抵抗を抑圧させる行為は、強制わいせつ罪が規定する暴行にあたります。
報道からでは、事件の詳しい内容はわかりませんが、実際に容疑者が腕をつかむなどの暴行を加えたり、被害者を脅して太ももを触ったのであれば、強制わいせつ罪が成立する可能性が高いです。
不同意わいせつ罪
刑法の改正により、先週の木曜日(7月13日)に、強制わいせつ罪は不同意わいせつ罪に改正されました。
ですので、7月13日以降にわいせつ行為を行った場合には、不同意わいせつ罪が成立する可能性があります。
刑法第176条
1項 次に掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、わいせつな行為をした者は、婚姻関係の有無にかかわらず、6月以上10年以下の拘禁刑に処する。
一 暴行若しくは脅迫を用いること又はそれらを受けたこと。
二 心身の障害を生じさせること又はそれがあること。
三 アルコール若しくは薬物を摂取させること又はそれらの影響があること。
四 睡眠その他の意識が明瞭でない状態にさせること又はその状態にあること。
五 同意しない意思を形成し、表明し又は全うするいとまがないこと。
六 予想と異なる事態に直面させて恐怖させ、若しくは驚愕させること又はその事態に直面して恐怖し、若しくは驚愕していること。
七 虐待に起因する心理的反応を生じさせること又はそれがあること。
八 経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させること又はそれを憂慮していること。
2項 行為がわいせつなものではないとの誤信をさせ、若しくは行為をする者について人違いをさせ、又はそれらの誤信若しくは人違いをしていることに乗じて、わいせつな行為をした者も、前項と同様とする。
3項 16歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者(当該16歳未満の者が13歳以上である場合については、その者が生まれた日より5年以上前の日に生まれた者に限る。)も、第1項と同様とする。
上記が不同意わいせつ罪の改正後の条文となります。
今までは暴行や脅迫によるわいせつ行為は強制わいせつ罪、アルコールや薬物による抗拒不能、心神喪失によるわいせつ行為は準強制わいせつ罪が成立していました。
今回の刑法改正により、強制わいせつ罪や準強制わいせつ罪の区別がなくなり、暴行や脅迫、アルコールなどの抗拒不能・心神喪失のどちらの場合であっても、不同意わいせつ罪が成立することになります。
また、今回の改正により、同意する時間を与えずに行うわいせつ行為や社会的地位を利用したわいせつ行為なども不同意わいせつ罪が成立し、強制わいせつ罪や準強制わいせつ罪と比べて成立する範囲が広くなっています。
加えて、今までは13歳未満に対するわいせつ行為は暴行の有無など関係なく強制わいせつ罪が成立していましたが、刑法改正により、相手が13歳以上16歳未満でなおかつ相手との年の差が5歳以上ある場合には、暴行等の有無関係なく不同意わいせつ罪が成立することになります。(13歳未満の場合は年の差関係なく不同意わいせつ罪が成立します。)
このように、不同意わいせつ罪が成立する範囲は幅広く、今までであれば強制わいせつ罪や準強制わいせつ罪が成立しなかった場合であっても、不同意わいせつ罪が成立してしまう可能性があります。
不同意わいせつ罪で有罪になると、強制わいせつ罪、準強制わいせつ罪と同様に6月以上10年以下の懲役刑が科されます。
罰金刑の規定はありませんので、有罪になってしまうと執行猶予付きの判決を得ない限り、刑務所に行かなければなりません。
強制わいせつ罪や不同意わいせつ罪の容疑をかけられていても、罪が成立しない場合があります。
また、事件の内容によって処分の見通しは変わってきますので、強制わいせつ罪や不同意わいせつ罪の嫌疑をかけられた際には、一度弁護士に相談をすることが望ましいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、初回接見サービス、無料法律相談を行っています。
刑事事件に精通した弁護士による示談交渉や取調べアドバイスで、不起訴処分や執行猶予付き判決を獲得できるかもしれません。
強制わいせつ罪や不同意わいせつ罪の容疑をかけられた場合は、お気軽に弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。