接触事故で轢き逃げ事件

接触事故で轢き逃げ事件

接触事故轢き逃げ事件となったケースについて,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~ケース~

Aが滋賀県長浜市内を車で走行していたところ,不意に歩道から出てきたVと接触し,Vは転倒した。
Aは数メートル走って停車したが,車内のバックミラーから背後の様子を見ると,Vは自力で起き上がり,そのまま反対方向に歩き去ってしまった。
起き上がったことや,歩いて去る様子から怪我はしていないと判断したAは,そのままその場を立ち去った。
しかし後日,滋賀県長浜警察署の警察官が自宅に来て,Vから被害届が出ていることを告げられ,Aは轢き逃げの容疑で警察署で取調べを受けた。
そこで,AはVが左足の小指を骨折するけがを負っていたことを知った。
(事実を基にしたフィクションです)

~轢き逃げとは~

交通事故に関係した車両等の運転者等について,道路交通法第72条では,次のような義務があると定めています。

(1)直ちに運転を停止する義務
(2)負傷者の救護義務
(3)道路上の危険防止の措置義務
(4)警察官に,発生日時,死傷者・物の損壊の状況や事故後の措置,積載物を報告する義務
(5)報告を受けた警察官が必要と認めて発した場合に,警察官が到着するまで現場に留まる命令に従う義務

交通事故で人に負傷させた場合,負傷者を救護して警察官に報告しなければならず,それを怠った場合,道路交通法第72条違反の罪に問われます。
これがいわゆる轢き逃げです。

本件では,AはVの様子を見て,Vは怪我をしていないと判断して立ち去りました。
Aは,負傷者が存在するということを認識していなかったということであれば,轢き逃げの故意がないことになるから,轢き逃げの罪には問われないのではないかとも思われます。

しかし,昭和45年4月10日の最高裁判所の判決では「車両等の運転者が,いわゆる人身事故を発生させたときは,直ちに車両の運転を停止し十分に被害者の受傷の有無程度を確かめ,全く負傷していないことが明らかであるとか,負傷が軽微なため被害者が医師の診療を受けることを拒絶した等の場合を除き,少なくとも被害者をして速やかに医師の診療を受けさせる等の措置は講ずべきであり,この措置をとらずに,運転者自身の判断で,負傷は軽微であるから救護の必要はないとしてその場を立ち去るがごときことは許されない」とされています。
即ち,一見したところでは被害者が何の負傷もしていないようでも,余程間違いなく負傷していないと断言できるような事情があるのでもない限りは,運転者には負傷者の救護のための措置を執る義務があるとされたのです。

本件では,Aは,Vが普通に立って歩いて行ったので怪我はしていないと思ってその場を立ち去りました。
しかし,その状況で,Vが本当に全く負傷していないと明らかに断言できたでしょうか。
実際には,Vは,この事故によって左足の小指の骨を折る怪我をしていました。
Vが絶対に負傷していないと断言できるような事情がなかった以上,Aは,Vが負傷している可能性を認識しながらその場を立ち去ったことになります。
Aは救護義務があることを認識しながらその場を去ったということになりますから,轢き逃げの罪の成立は免れられません。
自動車を運転していて人に接触したと思ったら,安易に考えてその場を立ち去るべきではないでしょう。

~轢き逃げの罪の重さ~

轢き逃げは,10年以下の懲役又は100万円以下の罰金(事故の原因が本人に無い場合は5年以下の懲役または50万円以下の罰金)に処せられます。
また,事故が運転者の過失によって生じたものであれば,過失運転致傷罪(7年以下の懲役もしくは禁錮又は100万円以下の罰金)も成立します。
轢き逃げと過失運転致傷は法律的には併合罪として処理され,二つの罪で,最大15年以下の懲役又は200万円以下の罰金に処せられる可能性があります。

このように,轢き逃げの刑事罰はとても重いので,もし轢き逃げの罪に問われるようなことがあれば,可能な限り早く弁護士に相談することをお勧めします。
轢き逃げ事件でお困りの方,またはそのご家族は,刑事事件に強い弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所弁護士にご相談ください。
0120-631-881までお気軽にお電話ください。

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