詐欺事件のような窃盗事件?

詐欺事件のような窃盗事件?

詐欺事件のような窃盗事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~

29歳のAさんは、滋賀県大津市に住んでいる80歳のVさんの自宅を訪ねると、市役所の職員を装って、「このあたりでキャッシュカードが不正利用されているということだったので、セキュリティの強化と不正利用されていないかの調査のために巡回している。調査の間にカードが不正利用されるといけないので、この封筒にカードを入れて封をして調査している期間の間保管しておいてほしい」などと話すと、Vさんのキャッシュカードを持参した封筒に入れさせ、封を閉じさせました。
そしてAさんは、「本日から2週間、市が調査をするので、その間封筒は開かずに保管しておくように。封を開けていないことがわかるように封筒の口部分に印鑑を押してほしい」と話すと、Vさんに印鑑を取りに行かせ、その間にVさんのキャッシュカードが入った封筒と、よく似た封筒をすり替えました。
Vさんに封筒に判を押させたAさんは、すり替えた封筒に入れられていたVさんのキャッシュカードを利用して、Vさんの銀行口座にあった預金のうち80万円をATMでおろしました。
2週間後、市の調査について連絡が来ないことを不審に思ったVさんが市に問い合わせたことで被害に遭ったことが発覚。
Vさんは滋賀県大津北警察署に被害届を提出し、捜査が開始され、Aさんは窃盗事件の被疑者として逮捕されてしまいました。
Aさんの逮捕を聞いたAさんの家族は、「窃盗罪」という言葉から万引きや置引きを想像していたところ、まるで詐欺事件のような事件内容であったため、驚いて弁護士に相談することにしました。
(※この事例はフィクションです。)

・詐欺事件のような窃盗事件

今回のAさんは、滋賀県大津北警察署窃盗罪の容疑で逮捕されているようです。
しかし、Aさんの家族がそのギャップに驚いたように、Aさんの犯行の手口は市役所の職員を装ってキャッシュカードを持って帰ってしまうという、詐欺事件のようにも見える手口でした。
なぜAさんに成立する犯罪が窃盗罪なのでしょうか。

まず、詐欺罪について定めている条文を確認してみましょう。

刑法第246条第1項
人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。

条文によると、詐欺罪は「人を欺いて」「財物を交付させ」ないと成立しない犯罪です。
確かに、今回のAさんは、市の職員を装ってVさんのキャッシュカードを封筒に入れさせるなどしているため、Vさんという「人」を騙す=「欺いて」いることになるでしょう。
しかし、AさんはVさんからキャッシュカードを引き渡してもらった=Vさんにキャッシュカードを「交付させ」たわけではなく、こっそり似ている封筒とすり替えて持ち去っています。
この部分が詐欺罪の条文と合致しないことから、Aさんには詐欺罪が成立しないと考えられるのです。

ではAさんに成立すると考えられる犯罪は何罪かというと、冒頭でも触れられていた窃盗罪が考えられます。
窃盗罪の条文を確認してみましょう。

刑法第235条
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

窃盗罪の条文に出てくる「窃取」とは、他人が支配・管理している物を、その人の意思に反して自分の支配・管理下に移してしまうことを指します。
今回のAさんがVさんのキャッシュカードを入手した手口は、Vさんが気付かないうちにこっそり封筒を入れ替えるという手口でした。
この手口を見ると、AさんはVさんの所持しているキャッシュカード=「他人の財物」を、Vさんの意思に反して自分の管理下に移した=「窃取した」と考えられますから、Aさんには窃盗罪が成立すると考えられるのです。

今回の事例のAさんの家族は、Aさんの逮捕容疑である窃盗罪とAさんの犯行の内容の間にあるギャップに驚いたようですが、刑事事件ではこのように容疑をかけられている犯罪名と実際の犯行の間にイメージのギャップがあることも少なくありません。
被疑者・被告人である当事者はもちろん、サポートするご家族などもそのギャップを解消し、容疑をかけられている犯罪やその見通しを把握しながら手続きに臨むことが重要です。
例えば今回の事例でいえば、詐欺罪の法定刑は10年以下の懲役であり、窃盗罪の法定刑が10年以下の懲役又は50万円の罰金であることから、罰金刑がある分窃盗罪の方が軽い刑罰が定められていることになります。
しかし、今回の事例のようなケースでは、事件の内容的に詐欺事件に近い=より悪質性の高い窃盗事件であると考えられ、裁判で有罪判決が下された場合の量刑は一般の窃盗事件よりも重くなる可能性があります。
だからこそ、「たかが窃盗事件」と罪名だけで判断して軽く考えるようなことはしない方が賢明といえ、早期に弁護士に相談・依頼し、入念な準備をする必要が出てくるでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、詐欺事件窃盗事件を含む刑事事件全般を取り扱っています。
「家族が逮捕されたがどういった容疑をかけられているのか分からない」「容疑をかけられている犯罪の見通しや内容が分からない」といったご相談にも、弁護士にお気軽にご相談ください。
お問い合わせは0120-631-881までお電話ください。

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