ドアを壊して器物損壊罪?建造物損壊罪?

ドアを壊して器物損壊罪?建造物損壊罪?

ドアを壊して器物損壊罪建造物損壊罪に問われるケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~

滋賀県守山市に住んでいるAさんは、隣の家に住んでいるVさんと常日頃から喧嘩をしており、その仲は険悪でした。
ある日、AさんはVさんを困らせてやろうとVさん宅の玄関のドアをへこませるなどして壊す嫌がらせをしました。
その後、近所の人が「Vさんが『ドアを壊されたから滋賀県守山警察署に被害届を出す』と話していた」と噂しているのを聞いたAさんは、途端に自分が刑事事件の被疑者として逮捕されるのではないかと不安になり、刑事事件に強い弁護士に相談に行くことにしました。
そこでAさんは、ドアの損壊行為が器物損壊罪よりも重い建造物損壊罪になる可能性もあることを知りました。
(※この事例はフィクションです。)

・器物損壊罪と建造物損壊罪の違い

上記事例のAさんは、Vさん宅の玄関ドアを壊したことで刑事事件の当事者となる可能性が浮上したために弁護士に相談に来たようです。
Aさんは弁護士に相談したことでドアの損壊行為が器物損壊罪もしくは建造物損壊罪にあたることを知ったようですが、この器物損壊罪建造物損壊罪の2つの犯罪どちらが成立するかによって違うことはあるのでしょうか。
まずは器物損壊罪建造物損壊罪の条文を確認してみましょう。

刑法第260条前段(建造物等損壊罪)
他人の建造物又は艦船を損壊した者は、5年以下の懲役に処する。

刑法第261条(器物損壊罪)
前三条に規定するもののほか、他人の物を損壊し、又は傷害した者は、3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料に処する。
※注:「前三条」とは、刑法第258条の公用文書等毀棄罪、刑法第259条の私用文書等毀棄罪、刑法第建造物等損壊及び同致死傷罪のことを指します。

条文からも分かるように、器物損壊罪建造物損壊罪では有罪となったときに科される刑罰の重さが異なります。
建造物損壊罪には罰金刑の規定がないため、起訴され有罪となり執行猶予が付かなければ刑務所へ行くことになってしまいます。

加えて、器物損壊罪は親告罪とされています。

刑法第264条
第259条、第261条及び前条の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。

親告罪とは、告訴なしには起訴することができない犯罪のことを指します。
告訴とは、犯罪被害に遭ったという申告に加え、その犯人の処罰を求める意思表示をすることを指します(犯罪被害に遭ったことの申告のみの場合は被害届の提出のみとなったりします。)。
ですから、器物損壊事件であれば、起訴前に告訴の取下げや告訴を出さない内容の示談をすることで不起訴処分が確実となりますが、建造物損壊事件であれば示談をしても確実に不起訴になるとはいえないということになります(もちろん、示談があることによって不起訴処分を得られる可能性を上げることはできると考えられます。)。

・ドアを壊す行為は何?

では、今回の事例のAさんのVさん宅の玄関ドアを壊すという行為は、器物損壊罪建造物損壊罪のどちらに当たるのでしょうか。

今回、AさんはVさん宅の玄関ドアを壊していますから「損壊」行為をしていることには間違いなさそうです。
ということは、Aさんが壊したVさん宅の玄関ドアが「建造物」にあたるのか、それとも「建造物」以外の「他人の物」にあたるのかによって成立する犯罪が異なることになります。
建造物損壊罪のいう「建造物」とは、一般的に、その建物から取り外し可能でないもの、もしくはその建物の中で重要な役割を持っているものを指すとされています。
これらに当てはまらないものは、「建造物」以外の物であるとされ、器物損壊罪が成立しやすくなるのです。

今回の事例でAさんが壊したVさん宅の玄関ドアは、Vさん宅という建造物から取り外し可能なものであるため、一見建造物損壊罪は成立せず器物損壊罪が成立するように思えます。
しかし、過去の事例では、建造物損壊罪の客体である「建造物」であるかどうかは、取り外し可能かどうかだけではなく、その建造物における機能の重要性も考慮する必要があるとし、玄関ドアは建造物の外壁と接合して外界との遮断や防犯等の重要な役割を負っているため、「建造物」にあたるとした判例が見られます(最決平成19.3.20)。
そのため、今回の事例のAさんの行為も、こうした判断がなされれば器物損壊罪でなく建造物損壊罪が成立する可能性があるのです。

刑事事件はケースバイケースで判断されることも多く、一般の方がこれを判断することは難しいです。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件を専門として取り扱う弁護士が初回無料法律相談を行っています。
滋賀県の刑事事件にお困りの際は、一度ご相談ください。

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