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違法風俗店経営で風営法違反に

2021-08-11

違法風俗店経営で風営法違反に

違法風俗店経営風営法違反に問われたケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~

Aさんは、滋賀県草津市内で、主に男性を相手とする個室マッサージ店を経営していました。
このマッサージ店は表向きは一般のマッサージ店とされていましたが、マッサージと称して性的なサービスを個室で提供する店であり、性的サービスについては口コミなどで集客を行っていました。
するとある日、Aさんのマッサージ店に滋賀県草津警察署の警察官が訪れ、Aさんは風営法違反の容疑で逮捕されてしまいました。
Aさんの妻は、Aさんが逮捕されたと聞いて驚き、滋賀県内の逮捕に対応してくれる弁護士を探すと、すぐに弁護士に依頼してAさんのもとへ接見に行ってもらうことにしました。
(※この事例はフィクションです。)

・違法風俗店と風営法違反

今回のAさんの逮捕容疑は風営法違反、すなわち、風営法という法律に違反したという犯罪です。
風営法とは、正式名称を「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」という法律のことを指します。
風営法では、風俗営業等に関してその営業時間や営業場所を制限したり、青少年の立ち入りを規制したりすることで、風俗業務の適正化を図ることを目的としています。
つまり、風営法のいう風俗店(風俗営業)であれば、風営法で規定されている制限や許可に従わなければ違法となるということになります。

風営法が規制の対象とする風俗営業等には、それぞれの定義を全て挙げてしまうと長くなるためここでは省略しますが、風営法第2条第1項の定義する「風俗営業」や、風営法第2条第4項が定義する「接待飲食等営業」、風営法第2条第5項が定義する「性風俗関連特殊営業」などがあります。
そのうち、「性風俗関連特殊営業」には、「店舗型性風俗関連特殊営業」、「無店舗型性風俗特殊営業」、「映像送信型性風俗特殊営業」、「店舗型電話異性紹介営業」、「無店舗型電話異性紹介営業」があります。
これらは、サービスを提供する場所や形態によってより細かく分類されることになります。

今回のAさんのケースを考えてみましょう。
Aさんのマッサージ店では、店舗で性的なサービスを提供しているようですから、提供しているサービスや場所を考えると、その実態は風営法の「店舗型性風俗関連特殊営業」に当たりそうに見えます。
店舗型性風俗関連特殊営業については、風営法が以下のように定義しています。

風営法第2条第6項
この法律において「店舗型性風俗特殊営業」とは次の各号のいずれかに該当する営業をいう。
第1号 浴場業(公衆浴場法(昭和23年法律第139号)第1条第1項に規定する公衆浴場を業として経営することをいう。)の施設として個室を設け、当該個室において異性の客に接触する役務を提供する営業
第2号 個室を設け、当該個室において異性の客の性的好奇心に応じてその客に接触する役務を提供する営業(前号に該当する営業を除く。)
第3号 専ら、性的好奇心をそそるため衣服を脱いだ人の姿態を見せる興行その他の善良の風俗又は少年の健全な育成に与える影響が著しい興行の用に供する興行場(興行場法(昭和23年法律第137号)第1条第1項に規定するものをいう。)として政令で定めるものを経営する営業
第4号 専ら異性を同伴する客の宿泊(休憩を含む。以下この条において同じ。)の用に供する政令で定める施設(政令で定める構造又は設備を有する個室を設けるものに限る。)を設け、当該施設を当該宿泊に利用させる営業
第5号 店舗を設けて、専ら、性的好奇心をそそる写真、ビデオテープその他の物品で政令で定めるものを販売し、又は貸し付ける営業
第6号 前各号に掲げるもののほか、店舗を設けて営む性風俗に関する営業で、善良の風俗、清浄な風俗環境又は少年の健全な育成に与える影響が著しい営業として政令で定めるもの

具体的に例を挙げると、いわゆるソープなどが第1号に、店舗型のファッションヘルスなどが第2号に、ストリップ劇場などが第3号に、ラブホテルなどが第4号に、アダルトグッズショップなどが第5号に、出会いカフェなどが第6号にあたる「店舗型性風俗関連特殊営業」です。
先ほど触れたように、Aさんのお店は表向きは通常のマッサージ店としているものの、実際には個室で性的なサービスを提供していることから、実質的には風営法第2条第6項のうち第2号にあたる「店舗型性風俗関連特殊営業」であると考えられるのです。

では、Aさんのお店が「店舗型性風俗関連特殊営業」であったとして何が問題になるのかというと、風営法では、風俗営業や「性風俗関連特殊営業」を行う際には管轄する都道府県公安委員会に届出を行わなければならず、風俗営業の場合は許可も必要になるということです(風営法第3条、風営法第27条)。
「性風俗関連特殊営業」の営業の届出をしなかった場合、6月以下の懲役もしくは100万円以下の罰金または併科に処されます(風営法第52条)。
今回のAさんのお店は、表向きは一般のマッサージ店として営業していたようですので、本来しなければいけない風営法上の届出を出していないということが考えられます。

さらに、「店舗型性風俗関連特殊営業」は、一部の官公庁、学校、図書館、児童福祉施設やその他各都道府県が定める条例で指定された区画の周囲200メートルの区域内で営業することを禁止されています(風営法第28条)。
「性風俗関連特殊営業」を営業禁止区域内で営業した場合には、2年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金または併科に処されます(風営法第49条)。
Aさんは表向きには一般のマッサージ店を経営していたため、営業禁止区域内かどうかのチェックを受けていないでしょうから、Aさんのお店がこの営業禁止区域内で営業されていたという可能性もあります。

Aさんのお店は、こういったことから風営法に違反する違法風俗店として摘発されたのだと考えられるのです。

無届営業や禁止区域内営業による風営法違反では、具体的に被害者が存在するわけではなく、示談によって解決を図ることはできません。
さらに、Aさんのように違法風俗店を経営していたといったケースでは、店の経営者や従業員など、事件関係者が複数人いることが多く、口裏合わせや証拠隠滅を防止するために、逮捕・勾留によって身体拘束されたうえで捜査されることも多いです。

こうした特性上、違法風俗店を経営したことによる風営法違反事件では、示談以外の部分、例えば再犯防止策の構築などに取り組む活動や、釈放を求める活動に迅速に取りかかることが大切です。
そのためには、逮捕されてしまったり捜査を受けたりしてから早い段階で弁護士に相談・依頼することが重要です。
可能・適切な弁護活動は、それぞれの刑事事件や被疑者・被告人自身の環境によって異なってきますから、まずは弁護士に詳しい話をしてみることがおすすめです。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、風営法違反事件を含む刑事事件専門の弁護士事務所です。
滋賀県内の逮捕にも対応していますので、お困りの際はお気軽にご相談ください。

家に招かれたのに住居侵入罪に?

2021-08-04

家に招かれたのに住居侵入罪に?

家に招かれたのに住居侵入罪に問われるというケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~

滋賀県大津市に住んでいるAさんは、友人であるXさんの自宅へ遊びに行った際、Xさんの妻Vさんに対して好意を持ちました。
そこでAさんは、再びXさんの家に招かれた際に盗撮用のカメラを持参し、家の中にあるトイレにこっそりカメラを仕掛け、Vさんがトイレを使用する様子を盗撮しました。
しかし、AさんがまたXさんの家へ行ってカメラを回収する前にXさんにカメラを発見され、AさんはXさんから「盗撮するなんてどういうつもりだ。誠意をもった対応をしないのであれば滋賀県大津警察署に相談する」と言われてしまいました。
Aさんは、どうにか刑事事件として捜査される前に穏便に解決することはできないかと考え、刑事事件を取り扱っている法律事務所に相談してみることにしました。
そこでAさんは、弁護士から、刑事事件化する前でも弁護士を入れることのメリットがあるということをききました。
(※この事例はフィクションです。)

・招かれたのに住居侵入罪に?

今回のAさんは友人Xさんの自宅へ招かれた際、そこで盗撮カメラを仕掛け、盗撮をしているようです。
こうした盗撮行為には、住居侵入罪が成立する可能性があります。

刑法第130条
正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、3年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。

Aさんは友人であるXさんの自宅に遊びに行っている=Xさんに招かれてXさんの家に行っているのに住居侵入罪が成立する可能性があることに疑問を持つ方もいらっしゃるかもしれません。
ここで、住居侵入罪における「侵入」がどういった行為を指すのかがポイントとなってきます。

住居侵入罪における「侵入」とは、住居権者やその住居の管理権者の意思に反してその住居に立ち入ることであると解されています。
つまり、簡単に考えれば、そこに住んでいる人が許可していないにもかかわらず住居に立ち入れば住居侵入罪の「侵入」行為に当たることとなります。
今回のAさんは、Xさんの自宅に招かれて行っていることから、Aさんの立ち入りにXさんは同意しており、Aさんの立ち入りは一見住居侵入罪の「侵入」に当たることはないように思われます。

しかし、住居侵入罪では、住居権者等の立ち入りに対する同意が、嘘をつかれて騙されたための同意であったり、脅迫されて仕方なく同意したりした場合には同意があったとは認めないと考えられています。
今回のAさんは、Xさんの家を訪れたときに盗撮カメラを持参しており、初めから盗撮カメラを設置してXさん宅を盗撮することを目的としているようです。
Aさんは盗撮目的であることを隠してXさんの家に立ち入っていることになりますが、Xさんからすれば盗撮目的で家に立ち入ることを許すことはないでしょう。
こうしたことから、Aさんの立ち入りはXさんの意思に反する立ち入りであると考えられるため、住居侵入罪が成立しうるということになるのです。

・他の都道府県だと別の犯罪に?

今までは今回のAさんの盗撮行為住居侵入罪に当たり得るということに触れてきましたが、この盗撮行為が別の都道府県で行われていた場合、住居侵入罪ではなく別の犯罪になり得るということにも注意が必要です。
例えば、今回の事例の舞台である滋賀県の隣にある京都府では、迷惑防止条例にこのような条文が存在します。

京都府迷惑防止条例第3条第3項
何人も、住居、宿泊の用に供する施設の客室、更衣室、便所、浴場その他人が通常着衣の全部又は一部を着けない状態でいるような場所にいる他人に対し、第1項に規定する方法で、みだりに次に掲げる行為をしてはならない。
第1号 当該状態にある他人の姿態を撮影すること。
第2号 前号に掲げる行為をしようとして、他人の姿態に撮影機器を向けること。

京都府の迷惑防止条例で取り締まっている盗撮行為は、盗撮の現場として「住居」や「便所」なども含まれているため、今回のAさんの事例のように住居のトイレでの盗撮事件も、迷惑防止条例違反となります。

対して、滋賀県の迷惑防止条例の盗撮行為を取り締まっている条文は以下のようになっています。

滋賀県迷惑防止条例第3条
第2項 何人も、公共の場所、公共の乗物または集会所、事務所、学校その他の特定多数の者が集まり、もしくは利用する場所にいる人の下着等を見、またはその映像を記録する目的で、みだりに写真機、ビデオカメラその他撮影する機能を有する機器(以下「写真機等」という。)を人に向け、または設置してはならない。
第3項 何人も、公衆または特定多数の者が利用することができる浴場、便所、更衣室その他の人が通常衣服の全部または一部を着けない状態でいる場所において、当該状態にある人の姿態を見、またはその映像を記録する目的で、みだりに写真機等を人に向け、または設置してはならない。

滋賀県の迷惑防止条例では、盗撮行為を規制する対象の場所として、個人の住居や特定多数ではない人が利用する便所などは含まれていません。
そのため、滋賀県では今回のAさんの事例のような盗撮行為は迷惑防止条例違反ではなく、先ほど触れたような住居侵入罪などによって処罰されると考えられるのです。

このように、盗撮事件であっても事件が起こった場所や盗撮方法などによって、成立する犯罪が異なります。
さらに、「家主に招かれたが結果的に住居侵入罪に問われうる行為をした」というような、一般的なイメージとはギャップのある犯罪の成立の仕方をしてしまうケースもあります。
自分にかけられる可能性のある容疑や犯罪をきちんと把握していなければ、いざ刑事事件化してしまったというときに取調べなどに適切に対応できないおそれも出てきてしまいますから、まずは弁護士に相談し、自分の行為に成立しうる犯罪はどういった犯罪なのか、その見通しはどういったものなのかなどを理解することをおすすめいたします。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件専門の弁護士が初回無料法律相談を行っています。
刑事事件化前のものであってもご相談可能ですから、まずはお気軽にご相談ください。

賄賂を受け取って逮捕されたら

2021-07-11

賄賂を受け取って逮捕されたら

賄賂を受け取って逮捕されてしまったケースついて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~

滋賀県東近江市に住むBさんは建築業を営んでおり、昨今の不景気のあおりを受け事業の受注が伸び悩んでいました。
そこで、Bさんは、滋賀県東近江市で来年度に公募する公共事業の受注を何とか獲得したいと考え、滋賀県東近江市の市役所で働いており、公共事業の公募に関する業務を担当している知り合いのAさんに便宜を図ってもらうことにし、Aさんに対してその旨伝えた上で海外旅行のチケットを渡しました。
Aさんも、Bさんから伝えられた内容を把握した上でチケットを受け取りました。
しかし、Aさんが同じ課の上司にBさんを事業主とするよう主張したものの取り合ってもらず、結局Bさんは来年度の公共事業の事業者に選定されませんでした。
その後、滋賀県東近江警察署がAさんを受託収賄罪の容疑で逮捕しました。
Aさんの家族は急いで刑事事件を取り扱っている弁護士に相談することにしました。
(※この事例はフィクションです。)

・収賄罪

今回の事例のAさんに成立する犯罪としてまず考えられるのは、刑法に定められている受託収賄罪という犯罪です。
受託収賄罪の成立要件は、①公務員が、②その職務に関し、③賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をしたこと、④請託を受けたことです。

刑法第197条第1項
公務員が、その職務に関し、賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、5年以下の懲役に処する。この場合において、請託を受けたときは、7年以下の懲役に処する。

以下ではこの受託収賄罪の成立要件を1つずつ確認していきます。
まず、①「公務員」とは、国又は地方公共団体の職員その他法令により公務に従事する議員、委員その他の職員です(刑法第7条第1項)。
今回の事例のAさんのような市役所の職員はもちろん、公立の学校の教師や警察官なども含まれます。

次に、②の「職務」とは、公務員がその地位に伴い公務として取り扱うべき一切の執務をいいます(最判昭和28.10.27)。
この「職務」については、一般的職務権限があればよく、具体的な職務として現に行っている公務である必要はないと解されています。
というのも、受託収賄罪が職務の適正な遂行とそれに対する国民の信頼を保護することを目的に制定された犯罪だからであるとされています。
つまり、具体的な職務に含まれなくとも抽象的な職務権限にある行為にさえ賄賂が渡されれば、国民の信頼が害されるといえるので、抽象的職務権限でたりると解されているのです。

さらに、判例は、「職務に関し」とは公務員の職務行為自体であることを要せず、職務に密接に関係する準職務行為または事実上所管する職務行為の場合を含むと解しています(最決昭和31.7.12)。
判例の立場では、これらの職務についても賄賂によって国民の信頼が害されるおそれがあると考えているのでしょう。
以上から、②の条件である「職務に関し」とは、抽象的職務権限を有する行為又は職務密接関連行為について、と解されることになります。

また、③の要件である「賄賂」とは、公務員の職務に関連する不正の報酬としての一切の利益をいい、その利益は経済的な利益に限らず人の需要や欲求を満たすものであればよいと考えられています。
「収受」とは、賄賂を取得することをいいます。
「要求」とは、賄賂の供与を要求することをいい、相手が現実に応じたかどうかは犯罪の成否に影響しません。
「約束」とは、将来賄賂を収受すべきことについて合意することをいいます。

最後に、④の要件である「請託」とは、公務員に対し、職務に関し一定の職務行為を依頼することをいいます。
職務内容は正当なものも含みますが、ある程度具体的であることが必要とされています。

では、今回の事例について、受託収賄罪の成立要件をあてはめてみましょう。
滋賀県東近江市の職員である(①)Aさんは、公共事業の公募に関する業務を担当しており、この業務の一環としてなされる来年度公共事業の事業者選定(②)について便宜を図ってもらいたいとのBさんの依頼を受けて(④)海外旅行のチケットを受け取っています(③)。
結果としてAさんの働きかけによってBさんの受注には至っていませんが、受託収賄罪の条文には、受託収賄罪成立の条件として、「賄賂を受け取って相手の要求が実現される」というところまでは設定されていません。
つまり、今回の事例のAさんのように、賄賂を受け取るなどした時点で受託収賄罪は成立するということになるのです。
以上から、Aさんには受託収賄罪が成立すると考えられるのです。

受託収賄罪を含む収賄罪は、議員などの政治家特有の犯罪だというイメージがあるかもしれません。
しかし、平成30年度犯罪白書によれば、最も検挙されている公務員の属性は地方公共団体の職員です。
おそらく議員と比べ、地方高級団体の職員の貰える給料は高くなく、直接権限行使に携わっていることが多いため、贈賄側からの働き掛けも強いものとなっているのでしょう。
収賄事件は一般のイメージよりも身近に存在する刑事事件なのです。

受託収賄罪は、職務の公正に対する国民の信用を毀損し、遵法意識の低下を招くなど、その及ぼす影響は小さくありません。
さらに、収賄事件は当事者だけで隠密裏に行われることが多く、被害者が存在しない犯罪です。
このような受託収賄罪などの賄賂の罪に関しては、検察官の処分も重い傾向があり終局処分のおよそ7割が起訴となっています(平成30年度犯罪白書より)。
こうした重大かつ複雑な刑事事件となるからこそ、早めに弁護士に相談することが重要と言えるでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件専門の弁護士がご相談・ご依頼を受け付けています。
賄賂を貰って逮捕されてしまったとお困りの際は、お気軽にご相談ください。

通貨偽造事件の逮捕に対応

2021-07-07

通貨偽造事件の逮捕に対応

通貨偽造事件逮捕されてしまったケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~

滋賀県近江八幡市に住んでいるAさんは、楽をしてお金を得たいと考え、趣味で使っている高性能プリンターを使ってお札を作れるのではないかと思いつきました。
Aさんは、持っていた1万円札をそのプリンターでコピーなどをすることで、一見しただけでは偽物と分からない程度の偽札を作ることに成功しました。
大量に偽の1万円札を作成したAさんは、そのうち3万円を持って滋賀県近江八幡市にある家電量販店Vに行き、欲しかった家電を購入し、偽札で代金約3万円を支払いました。
後日、家電量販店Vの店員がAさんの使用した1万円札が偽物であると気づき、滋賀県近江八幡警察署に被害届を提出しました。
そして滋賀県近江八幡警察署で捜査された結果、Aさんは通貨偽造罪などの容疑により逮捕されました。
Aさんの家族は、Aさんが逮捕されたという知らせを聞いて、まずはAさんの話も聞かなければいけないと、弁護士にAさんに会いに行ってもらうことにしました。
(※この事例はフィクションです。)

・通貨偽造罪とは

通貨偽造罪とは、刑法に定められている犯罪です。
刑法には、通貨偽造に関する犯罪について以下の様に定められています。

刑法第148条 
第1項 行使の目的で、通用する貨幣、紙幣又は銀行券を偽造し、又は変造した者は、無期又は3年以上の懲役に処する。
第2項 偽造又は変造の貨幣、紙幣又は銀行券を行使し、又は行使の目的で人に交付し、若しくは輸入した者も、前項と同様とする。

上記の条文の内、第1項に定められている犯罪を通貨偽造罪といい、第2項に定められている犯罪を偽造通貨行使等罪といいます。

まず、第1項の通貨偽造罪が成立するためには、「行使の目的をもって」「偽造・変造すること」です。
ここで、行使の目的とは、「偽造・変造したものを真正な通貨として、本来の用法に従って、流通させる目的」を指すとされています。
簡単に言えば、通貨偽造罪が成立するには、その偽造された通貨を支払いなどに使う目的が必要だということになります。

次に偽造と変造については、「偽造」は、「権限のない者が通貨に似た外観のものを作成すること」を指し、対して「変造」とは、「権限のない者が真正な通貨に加工して通貨に似た外観のものを作成すること」を指します。
つまり、大まかに言えば、「偽造」とは1から通過に似た偽物を勝手に作成することを指し、「変造」とは元々ある本物の通貨を加工して通貨のようなものを勝手に作成することを指すということになります。

最後に偽造通貨行使罪における行使とは、「真正な通貨として流通に置くこと」を指すとされています。
先ほど触れたように、つまりはお金として使用することが行使に当たります。
具体的には、通常の売買で用いるほか、自販機などに置いて使用する場合も行使にあたります。

では、Aさんの事例についてみていきましょう。
まず、行使の目的があるかについてですが、本件のAさんの目的は楽をしてお金を得たいというものであり、偽札を作った後家電量販店でその偽札で買い物をしていることからも、行使の目的があると言える可能性が高いです。
次に、Aさんはプリンターを使い通貨に似た外観のものを新たに作成していますから、それが一般人をもって本物のお札と見間違える程度の出来であったなら、「偽造」をしたことになるでしょう。
こうしたことから、Aさんには通貨偽造罪が成立する可能性があるといえます。

・成立する犯罪は通貨偽造罪だけでない?

今回のAさんが偽造した1万円札は、家電量販店Vでの支払いに利用していることから、真正な通貨として流通に置いたと考えることができるので、偽造通貨を行使したと判断されるでしょう。
そのため、Aさんには、通貨偽造罪だけではなく偽造通貨行使罪も成立する可能性が高いです。

また、Aさんは偽造した通貨を用いて家電量販店Vで買い物をしていますが、このとき詐欺罪が成立する可能性も考えられます。
詐欺罪について刑法では、以下のように定められています。

刑法第246条第1項
人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。

詐欺罪が成立するためには、相手を騙して勘違いさせ、その誤信に基づいて財物を交付させることが必要です。
今回の事件では、相手方に見せたお金が真正な通貨であると誤信させて、家電などの商品を交付させていますから、相手の誤信に基づいて財物を交付させたといえます。
したがって、今回のAさんの行為には詐欺罪も成立しうるのです。

ただし、偽造通貨を用いた詐欺の場合には、詐欺罪は偽造通貨行使罪に吸収されて処理されることになるでしょう。
裁判などでは通貨偽造罪偽造通貨行使罪を中心に争っていくことになると考えられます。
争点などを整理するためにも、まずは弁護士に相談してみることが重要でしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。
刑事事件でお悩みの方は、まずはお気軽に0120-631-881までお電話ください。
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いじめをきっかけに児童ポルノ製造事件に

2021-06-23

いじめをきっかけに児童ポルノ製造事件に

いじめをきっかけに児童ポルノ製造事件に発展したケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~

滋賀県大津市にある高校に通っている16歳の女子高生Aさんは、同級生であるVさんを友人らといじめていました。
ある日Aさんは、Vさんを下着姿にしてスマートフォンで写真を撮り、それをメッセージアプリなどを通じて仲間内で共有するといったいじめを行いました。
耐え切れなくなったVさんが両親にいじめについて話したことをきっかけに、Vさんらは滋賀県大津警察署に相談をしました。
その結果、Aさんは児童ポルノ製造を行ったとして、滋賀県大津警察署で話を聞かれることとなりました。
(※この事例はフィクションです。)

・いじめをきっかけとした少年事件

文部科学省の「令和元年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果」という統計によると、令和元年度に認知された小・中・高等学校及び特別支援学校におけるいじめは、61万2,496件であり、前年度よりも6万8,563件増加したとのことです。
認知されたいじめの内訳としては、小学校でのいじめが48万4,545件、中学校でのいじめが10万6,524件、高等学校でのいじめが1万8,352件、特別支援学校でのいじめが3,075件となっています。
そして、この認知されたいじめの態様のうち、パソコンや携帯電話等を使ったいじめは1万7,924件(前年度1万6,334件)で、いじめの総認知件数に占める割合は2.9%だったようです。
今回のAさんのケースでも、スマートフォンが用いられています。

今回のAさんは、同級生のVさんの下着姿をスマートフォンのカメラで撮影し、それをメッセージアプリなどを通じて仲間内で共有していたようです。
18歳未満の児童の下着姿や裸の姿などの写真は、児童ポルノ禁止法にいう「児童ポルノ」に当たる可能性があります。

児童ポルノ禁止法第2条第3項
この法律において「児童ポルノ」とは、写真、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)に係る記録媒体その他の物であって、次の各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写したものをいう。
第1号 児童を相手方とする又は児童による性交又は性交類似行為に係る児童の姿態
第2号 他人が児童の性器等を触る行為又は児童が他人の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの
第3号 衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位(性器等若しくはその周辺部、臀でん部又は胸部をいう。)が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するもの

こういった児童ポルノは、製造(例えば撮影することで「児童ポルノ」に該当する写真を作り出すことなど)や所持、提供が禁止されています。
例えば、以下の条文では提供目的の児童ポルノの製造(第3項)や、提供以外の目的での児童ポルノの製造(第4項)が禁止されています。

児童ポルノ禁止法第7条
第3項 前項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを製造し、所持し、運搬し、本邦に輸入し、又は本邦から輸出した者も、同項と同様とする。同項に掲げる行為の目的で、同項の電磁的記録を保管した者も、同様とする。
第4項 前項に規定するもののほか、児童に第二条第三項各号のいずれかに掲げる姿態をとらせ、これを写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより、当該児童に係る児童ポルノを製造した者も、第二項と同様とする。

こうした児童ポルノ禁止法違反は、児童ポルノの製造や所持、提供する人が被害者と同様児童であっても同性であっても関係なく成立します。
ですから、いじめや嫌がらせで児童である被害者を下着姿や裸姿にしてその様子を撮影すれば「児童ポルノ」を製造していることになり、児童ポルノ禁止法違反として少年事件化する可能性があるということになるのです。

そして、こうしたいじめの場合、今回のAさんのケースのように、製造した児童ポルノを仲間内で拡散してしまっているというケースも想定されますが、その場合、児童ポルノの提供という、製造とはまた別の犯罪に当たる可能性が出てきます。

いじめという言葉によって、なかなかそれが犯罪であり、少年事件刑事事件に結びつく可能性のある行為であるとイメージできない人もいるかもしれません。
しかし、いじめの態様次第では、犯罪が成立して捜査機関が介入するケースも当然考えられます。
だからこそ、少年事件刑事事件になりそうだ、少年事件刑事事件化してしまったとお悩みの際は、お早めに弁護士に相談・依頼されることをおすすめいたします。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、いじめをきっかけに児童ポルノ禁止法違反事件などの少年事件刑事事件に発展してしまったというケースについても、ご相談・ご依頼を受け付けています。
まずはお気軽に、弊所弁護士までご相談ください。

コカイン所持事件で逮捕されたら

2021-06-19

コカイン所持事件で逮捕されたら

コカイン所持事件逮捕されてしまったケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~

滋賀県大津市在住のAさんは、数年前からコカインを使用していました。
ある日、Aさんが取引をしていたコカインの売人が逮捕されたことからAさんにも捜査の手が伸び、Aさんも滋賀県大津北警察署に、コカイン所持による麻薬取締法違反の容疑で逮捕されてしまいました。
Aさんと離れて暮らしていたAさんの家族は、突然滋賀県大津北警察署からAさんを逮捕したという知らせを受け、どうしてよいか分からず困ってしまいました。
そこでAさんの家族は、ひとまず滋賀県刑事事件やその逮捕に対応している弁護士に相談し、Aさんの話を聞いてきてもらうことにしました。
(※この事例はフィクションです。)

・コカイン所持事件

コカインは、コカという植物から製造される薬物で、コカインを使用すると一時的な爽快感や陶酔感を得られるとされています。
ご存知の方も多いように、コカインは違法薬物として禁止されている薬物です。
コカインは、他の薬物に比べて耐性ができるのも早く、使用を重ねることでコカインの使用量は増えていきやすいといわれています。
そして、コカインは違法薬物の中でも覚醒剤に次いで依存性が高く、依存症になりやすいともいわれています。
さらに、コカインを大量に摂取することで呼吸困難などにより死亡するおそれもあることから、コカインは非常に危険な薬物であるといえます。

麻薬取締法では、コカインを麻薬として規定し、その使用や所持等を禁止しています。

麻薬取締法第2条
この法律において次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
第1号 麻薬 別表第一に掲げる物をいう。

別表第一
13 コカインその他エクゴニンのエステル及びその塩類
14 コカ葉

麻薬取締法第66条
第1項 ジアセチルモルヒネ等以外の麻薬を、みだりに、製剤し、小分けし、譲り渡し、譲り受け、又は所持した者(第69条第4号若しくは第5号又は第70条第5号に該当する者を除く。)は、7年以下の懲役に処する。
第2項 営利の目的で前項の罪を犯した者は、1年以上10年以下の懲役に処し、又は情状により1年以上10年以下の懲役及び300万円以下の罰金に処する。
第3項 前二項の未遂罪は、罰する。

条文に出てくる「ジアセチルモルヒネ」とは、一般に「ヘロイン」と言われる薬物を指します。
今回問題となっているコカインとヘロインは別物ですから、コカインは「ジアセチルモルヒネ等以外の麻薬」となります。
今回のAさんは、自分で使うためにコカインを所持し、さらにそのコカインを自分で使っていたようですから、この麻薬取締法の条文に違反することになるでしょう。

注意が必要なのは、コカインを所持していた目的が自分で使うためだけではなかった場合です。
例えば、知人友人やそのほかの人へコカインを売却するためにコカインを所持していたというような場合には、麻薬取締法第66条第2項にあるような「営利の目的」での所持と判断され、単純に所持していた場合よりも重い刑罰が科せられる可能性が出てきます。

・コカイン所持事件と弁護活動

コカイン所持事件のような麻薬取締法違反事件においては、初犯であり犯行態様が重くなければ執行猶予がつくことが多いとされています。
しかし、初犯であれば必ず執行猶予がつくというものではなく、例えばコカインを所持していた量や、コカインの所持・使用歴の長さといった様々な事情によっては、たとえ初犯であっても実刑判決が下る可能性もあります。
ですから、早い段階から執行猶予を獲得するために再犯防止策を講じたり、その活動を証拠化したりすることで、裁判に向けて準備していくことが求められます。

もちろん、コカインの所持や使用といった容疑を否認している場合には、その主張をするために、取調べへの対応や証拠集めを慎重に行っていかなければなりません。

また、コカイン所持事件に限らず、薬物事件では逮捕・勾留による身体拘束が行われたうえで捜査をされるというケースが非常に多く見られます。
これは、証拠となる薬物自体が簡単に隠滅できてしまうことや、薬物の売人や仕入れ先といった事件関係者が存在するためにそこで口裏合わせができてしまうといった事情があるためと考えられています。
逮捕・勾留されれば、当然生活に支障が出てしまうことになりますから、捜査段階での釈放を求める活動や、起訴後の保釈を求める活動が必要になってくるでしょう。

こうした事情があるからこそ、早い段階から弁護士に相談・依頼しておくことが重要なのです。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、コカイン所持・使用による逮捕についてのご相談・ご依頼も承っております。
滋賀県コカイン所持事件にお困りの方、逮捕・勾留にお悩みの方は、お気軽に弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所弁護士までご相談ください。

治療費請求が恐喝罪に?

2021-06-16

治療費請求が恐喝罪に?

治療費請求が恐喝罪に問われたケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説いたします。

~事例~

滋賀県高島市にすむAさんは、滋賀県高島市の路上で、散歩中に、Vさんの運転する車と接触する事故に遭いました。
両者は、示談交渉で、VさんがAさんに対して、令和3年2月末までに、Aさんの治療費100万円を支払う旨合意しました。
しかし、Aさんは、2月末を3カ月過ぎてもVさんからの支払いがなかったことから、何が何でも払ってもらうためにVさん宅に赴きました。
Aさんは、Vさんと対面すると、Vさんの首ネックを掴みながら、「てめぇなめてんのか。はやく100万円払え。さもないと痛い目見るぞ。」と語気強く申し向けました。
これに畏怖したVさんは100万をAさんに支払いました。
その後、Vさんが「Aさんにお金を脅し取られた。滋賀県高島警察署に相談するかもしれない」と話していると噂を聞き、自身の行為にどのような法的問題があるか弁護士へ無料相談しに行きました。
(この事例はフィクションです。)

~恐喝罪と権利行使~

Aさんの行為は、Vさんを脅して金品を手に入れている点で、恐喝罪の成立が問題となります。

刑法第249条
人を恐喝して財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。

まず①「恐喝して」とは、財物を交付させるための手段として相手方を畏怖させる程度の暴行又は脅迫をすることをいいます。
恐喝罪の手段が相手方を畏怖させるに足りる程度とされているのは、これが相手方の反抗を抑圧するに足りる程度であれば強盗罪(刑法236条)の実行行為に当たるからです。

本件では、AさんはVさんに対して「てめぇなめてんのか。はやく100万円払え。さもないと痛い目見るぞ。」と語気強く申し向けており、この言辞は相手方の犯行を抑圧しないまでも、Vさんの首ネックを掴む暴行と相まって、畏怖させるに足りる程度の脅迫に当たるといえます。
そして、これはVさんから100万円とお車代えをもらうための手段としてなされたものです。
よって、Aさんの行為は「恐喝」にあたるでしょう。

次に「交付させた」とは、恐喝した結果畏怖した相手方の瑕疵ある意思に基づき財物の占有を得ることをいいます。
すなわち、ⅰ被害者による交付行為が必要なだけでなく、ⅱそれと恐喝との間に因果関係が必要とされています。
したがって、恐喝されたものの全く畏怖せず、加害者に同情して財物を交付した場合には、恐喝未遂罪が成立します。

本件では、Aさんは、上記Aさんの言辞が原因で(ⅱ)畏怖したVさんから100万円を受け取っています(ⅰ)。
よって、「交付させた」といえます

以上からAさんには恐喝罪が成立すると考えられます。

しかし、今回のAさんは、そもそも交通事故による治療費の費用の支払を受けられなかったことから上記行為に及んでおり、上記行為は、正当な賠償請求として許されるとも考えられます。
この点、判例(最判30年10月14日)は、他人に対して権利を有する者が、その権利を実行することは、その権利の範囲でありかつその方法が社会通念上一般に認容すべきものと認められる程度を超えない場合には違法とはならず、右の範囲程度を超える場合に違法となり、恐喝罪が成立するとしています。
これは違法とは社会通念上相当性を欠く行為をいうのであり、権利の行使であっても行使方法等によっては、社会的相当性を欠く場合があることを理由にしていると考えられます。

本件では、AさんがVさんに支払いを迫った額は100万円であり、これは上述の通り交通事故に関して生じた治療費の額に当たるので、Aさんのもつ治療費の請求権利内の額でしょう。
しかし、AさんがVさんに対して行った行為は、Vさんの首ネックを掴みつつ「痛い目見るぞ。」と語気強く申し向けたものであり、いくらVさんが約束の金額を3ヵ月支払わなかったとはいえ、やりすぎであると捉えられても不思議はありません。
そうなると、Aさんの権利行使は違法とされ、恐喝罪が成立する可能性が出てくるのです。

治療費請求など、当然の権利だと思っているようなことでも、請求のやり方を間違えれば、重大な犯罪になりえます。
治療費請求などから刑事事件に発展しそうだ、刑事事件に発展してしまって困っているといった場合には、早期に弁護士に相談することがおすすめです。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件専門の弁護士が初回無料法律相談や初回接見サービスに対応しています。
まずはお気軽にご相談ください。

窃盗後に暴行してしまったら

2021-06-12

窃盗後に暴行してしまったら

窃盗後に暴行してしまったケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説いたします。

~事例~

滋賀県長浜市在住のAさんは、近所の宝石店に侵入し宝石を盗もうと計画して、下見をするなどの準備をしました。
計画実行の当日に、Aさんは予定通り深夜の宝石店に侵入しました。
ところが、Aさんが宝石を手にしたところ、Aさんは、宝石店を警備中の警備員Vさんに犯行現場を発見されてしまいました。
手にしていた宝石を慌ててカバンに入れて逃げようとするAさんは、どうにか逃げ切ろうと、自分を捕まえようとして手を伸ばしてきたVさんに対して突き飛ばすなどの暴行を加え、Vさんを転倒させました。
そして、Aさんは、Vさんが倒れている間に宝石を手にして宝石店を抜け出しました。
Aさんは予定通り宝石を手に入れたものの、滋賀県木之本警察署が捜査を開始したという噂を聞きつけて不安に思ったため、自分は今後どうなるのか弁護士に相談してみることにしました。
(※この事例はフィクションです。)

・強盗罪と事後強盗罪

今回のAさんは、宝石店に窃盗に入った際、自分を捕まえようとする警備員Vさんを突き飛ばすなどしています。
この行為には、刑法の「事後強盗罪」(刑法第238条)が成立する可能性があります。
「Aさんは窃盗行為をするために宝石店に入ったのに、強盗罪が成立するのか?」と不思議に思う方もいらっしゃるでしょう。
まずは、窃盗罪強盗罪事後強盗罪の条文を確認してみましょう。

刑法第235条(窃盗罪)
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

刑法第236条第1項(強盗罪)
暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取した者は、強盗の罪とし、5年以上の有期懲役に処する。

刑法第238条(事後強盗罪)
窃盗が、財物を得てこれを取り返されることを防ぎ、逮捕を免れ、又は罪跡を隠滅するために、暴行又は脅迫をしたときは、強盗として論ずる。

まず、Aさんが宝石店で宝石をカバンに入れた行為については窃盗罪が成立するでしょう。
Aさんは宝石を自分のカバンの中に勝手に入れていますが、これは宝石の本来の持ち主である宝石店の意思に反して、宝石の支配・管理を自分の下におくための行為と考えられるからです。
つまり、この時点でAさんは窃盗行為をした者であると考えられます。

次に、刑法の事後強盗罪の条文を見てみましょう。
事後強盗罪の主体となる人は「窃盗」と表されていますが、この「窃盗」とは、窃盗罪もしくは窃盗未遂罪を犯した人のことを指しています。
つまり、今回のAさんは、窃盗罪にあたる行為をしている人なので、事後強盗罪の対象となります。

事後強盗罪では、この「窃盗」が、「財物を得てこれを取り返されることを防ぎ、逮捕を免れ、又は罪跡を隠滅するために、暴行又は脅迫をしたとき」に、「強盗」=強盗罪として扱うことを定めています。
つまり、窃盗犯が、盗んだ物を取り返されたり、自分がつかまったり、証拠を隠滅したりするために、暴行や脅迫をした場合、事後強盗罪が成立し、刑法第236条の強盗罪と同じように扱われるということになるのです。

このときの暴行・脅迫については、強盗罪の要件である暴行・脅迫が相手の反抗を抑圧するに足りる程度の強さとされていることから、強盗罪の暴行・脅迫と同じ程度の強さが必要であると考えられています。
また、この暴行・脅迫の相手は、盗んだ物の持ち主に限らず、第三者(例えば窃盗の犯行を目撃した人や、窃盗を止めようとした第三者)であってもよいとされています。
そして、この暴行・脅迫はあくまで窃盗の機会に行われたものでなくてはならず、例えば窃盗犯が逃走した後に全く別の事情によって喧嘩になった人に暴行を加えたとしても、それは事後強盗罪とはなりません。

今回のAさんの事例では、窃盗犯であるAさんが、自分が捕まることを避けるために、警備員のVさんに暴行を加えています。
Vさんが転倒しているほどの強さの暴行であることから、相手の抵抗を抑圧するに足りる程度の強さの暴行であったと考えることができます。
こうしたことから、Aさんには事後強盗罪が成立すると考えられるのです。

ここでさらに注意が必要なのは、もしもVさんがAさんの暴行によって怪我をしていた場合には、事後強盗罪よりもさらに重い、強盗致傷罪が成立するということです。

刑法第240罪(強盗致死傷罪)
強盗が、人を負傷させたときは無期又は6年以上の懲役に処し、死亡させたときは死刑又は無期懲役に処する。

強盗致傷罪となると、刑罰には無期懲役が含まれることになり、裁判手続きも裁判員裁判となるため、より慎重な対応が求められることになります。
もちろん、相手が怪我をしていなかった場合でも、強盗罪は非常に重い刑罰の設定されている犯罪ですから、慎重かつ迅速に対応をすることが必要です。
まずは刑事事件のプロである弁護士に相談するなどして、サポートを受けることが望ましいでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件専門弁護士事後強盗罪などの重大犯罪にも対応しています。
まずはお気軽にご相談ください。

ガールズバーでの年少者雇用で風営法違反事件に

2021-06-09

ガールズバーでの年少者雇用で風営法違反事件に

ガールズバーでの年少者雇用風営法違反事件になってしまったケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~

Aさんは自身が経営する滋賀県長浜市にあるガールズバーで、高校生の女性Bさん(17歳)を従業員として雇い、客の接待をさせていました。
Aさんは、Bさんが18歳未満であることを知っていましたが、「17歳も18歳もそう変わらない。すぐ見てわかるものでもないし大丈夫だろう」と考え、雇い続けていました。
しかしある日、滋賀県長浜警察署の警察官がAさんのガールズバーに捜査に訪れ、Aさんは年少者雇用をしたことによる風営法違反の被疑者として逮捕されてしまいました。
(※この事例はフィクションです)

・年少者雇用による風営法違反

風営法とは、正式には「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」という名前の法律で、風俗営業等に関してその営業時間や営業場所を制限したり、青少年の立ち入りを規制したりすることなどで、風俗業務の適正化を図ることを目的としている法律です。

風営法違反というと、多くの方が性風俗がらみの無届営業や無許可営業、営業禁止時間外営業などによる風営法違反を思い浮かべるのではないでしょうか。
確かに、これらの行為も違法な行為として風営法により処罰対象とされていますが、風営法は年少者に客の接待をさせる行為も禁止し、処罰対象としています。
年少者雇用による風営法違反の法定刑は、1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金またはこれらの併科となっています。

風営法第22条第1項
風俗営業を営む者は、次に掲げる行為をしてはならない。
第3号 営業所で、18歳未満の者に客の接待をさせること。

風営法第50条第1項
次の各号のいずれかに該当する者は、1年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
第4号 第22条第1項第3号の規定又は同項第4号から第6号まで(これらの規定を第31条の23及び第32条第3項において準用する場合を含む。)の規定に違反した者

風営法による営業規制の対象となる風俗営業の定義や分類は、風営法第2条に規定されています。
全ての条文を挙げることはしませんが、例えばキャバクラは風営法第2条第1項第1号の定義により風俗営業となります。
ですから、もしもキャバクラで18歳未満の年少者にキャストとして客の接待をさせれば、風営法違反となり、風営法による処罰対象となります。

今回のケースで問題となるガールズバーは、その多くが深夜酒類提供飲食店営業として届出を行っています。
年少者に客の接待を禁じる風営法第22条の規定は、直接には風俗営業について適用される規定ですが、深夜酒類提供飲食店営業として営業を行っている場合であっても、この規定は準用されます(風営法第32条第3項)。
ただし、先ほど条文を挙げた風営法第22条第1項第3号のみ、準用される規定から除かれています。

だからといってガールズバーであれば18歳未満の年少者をどのように雇って働かせてもよいというわけではありません。
風営法には、18歳未満の年少者について、以下のような規定も存在します。

風営法第22条第1項
風俗営業を営む者は、次に掲げる行為をしてはならない。
第4号 営業所で午後10時から翌日の午前6時までの時間において18歳未満の者を客に接する業務に従事させること。

この条文については、深夜酒類提供飲食店営業にも準用されています。
つまり、この禁止されている時間帯にも18歳未満の年少者を接客業務に当たらせていたような場合には、ガールズバーであっても風営法違反として処罰されることになります。

さらに、そもそも深夜酒類提供飲食店営業では客の接待を行うことを禁止されていますので、風俗営業許可を得ずに従業員に接待行為を行わせていた場合には、その接待をしていた人が年少者かどうかに関係なく、風俗営業の無許可営業に当たり、風営法違反となってしまいます。

なお、客と接する業務に当たらない場合や風俗営業や深夜酒類提供飲食店営業などに当たらない営業についても、労働基準法により18歳未満の者(交代制によって使用する満16歳以上の男性を除く)を午後10時から午前5時までの間で使用したときは6月以下の懲役または30万円以下の罰金に処されることがあり得ますから、こちらにも注意が必要でしょう。

今回のケースでは、AさんがBさんを働かせていた時間帯やその業務内容、届出や許可の有無など具体的な状況によっては、Aさんは年少者雇用による風営法違反として処罰を受けるだけでなく、場合によっては無許可営業など、別の内容で風営法違反の罪に問われる可能性があります。

年少者雇用や無許可営業など、同じ「風営法違反」という犯罪名であっても、その内容は様々です。
複数の事情が絡み合って同じ名前の犯罪が複数成立している場合もありますので、まずは弁護士に相談し、どういった行為がどの法律のどの部分に違反している可能性があるのか、それによってどのような刑事手続きを受けることになりえるのか、細かい部分まで把握した上で刑事手続きに臨むことが重要です。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、風営法違反事件にも対応可能な刑事事件専門弁護士が、初回無料法律相談や初回接見サービスを受け付けています。
滋賀県風営法違反事件にお困りの際は、まずは0120-631-881までお問い合わせください。

賭博場開張等図利事件と幇助犯

2021-06-05

賭博場開張等図利事件と幇助犯

賭博場開張等図利事件幇助犯について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

【事件】

Aさんは知人のBさんが滋賀県米原市内でこっそり賭博場を開こうとしていることを知りました。
Aさんは、Bさんの助けになればいいと思い、周囲にBさんが営業している賭博場の宣伝をして、Bさんの賭博場に人が行くように促しました。
そのおかげもあってか、Bさんは賭博場の経営により多額の利益を上げましたが、その後、滋賀県米原警察署の捜査によって賭博場を経営していることが発覚し、賭博場開張等図利罪の容疑で逮捕されてしまいました。
BさんはAさんが周囲の人に賭博場の宣伝をしていることを知りませんでしたが、捜査が進むにつれてAさんが周囲の人に賭博場に勧誘していたことが発覚し、Aさんも滋賀県米原警察署に呼ばれて話を聞かれることになりました。
Aさんは、「自分は勝手に勧誘していただけだが、なにか犯罪になるのか」と不安に思い、弁護士に相談してみることにしました。
(※この事例はフィクションです)

・賭博場開張等図利罪

今回の事例では、Bさんが賭博場を営業していたことで賭博場開張等図利罪の容疑で逮捕されており、Aさんもその関連で話を聞かれるようです。
賭博場を開帳して利益を図る行為は、賭博場開帳等図利罪となります。

刑法第186条第2項(賭博場開張等図利罪)
賭博場を開帳し、又は博徒を結合して利益を図った者は、3月以上5年以下の懲役に処する。

そもそも、刑法では賭博をすること自体が賭博罪(刑法第185条)として処罰されることになっています。
それに加えて、賭博場開張等図利罪では、簡単に言えば、その賭博を主催したり運営したりした人を処罰するということになっています。

今回のBさんは、賭博場を経営していたわけですから、この賭博場開張等図利罪にあたると考えられるのです。
Bさんのように、自身がその犯罪をした立ち位置は「正犯」と呼ばれたりします。

・正犯と幇助犯

さて、今回の事例のAさんは、Bさんの主催する賭博の参加者を増やすことで、Bさんの利益を増大させることに役立つ行為をしているといえます。
ですから、Aさんの行為は、Bさん=賭博場開張等図利罪の主犯の行為を手助けしたとも考えられます。

正犯の行為を助けた場合、その手助けした人も共犯として処罰される可能性があります。
共犯には大きく3つの種類があります。

①共同正犯(刑法第60条)
正犯と共同して同一の犯罪に係る行為を行った場合に成立するのが共同正犯です。
共同正犯は正犯=その犯罪を行った人と同じように扱われ、また、その犯罪を構成する行為の一部しか実行していない場合でも、その犯罪全部を共同して行ったとして全体の責任を負うことになります。

この共同正犯が成立するためには、お互いの意思の連絡が必要であると考えられています。
しかし、今回の事例では、BさんはAさんの勧誘活動を知らなかったわけですから、AさんとBさんの間には意思の連絡がなく、Aさんは賭博場開帳等図利罪の共同正犯とはならないと考えられます。

②教唆犯(刑法第61条第1項)
教唆犯は、正犯者をそそのかして犯罪意思を惹起させ、正犯者がその犯罪を実行することで成立します。
つまり、犯罪をする気がなかった人に対して犯罪をする意思を持たせ、その人に犯罪をさせたといった場合にこの教唆犯という共犯の立ち位置になるのです。
教唆犯は正犯の刑を科することとされていますので、受けうる刑罰の重さは実際に犯罪をした正犯が受けうる重さの範囲と同じ範囲で判断されることになります。

今回の事例では、AさんがBさんに賭博場を開帳するようそそのかした事実はありませんので、Aさんの行為に関して教唆犯は問題とならないでしょう。

③幇助犯(刑法第62条第1項)
正犯が犯罪を行うに当たり、その犯罪の実行を物理的・精神的に容易にする行為を行った場合に幇助犯が成立します。
つまり、正犯が犯罪行為をする手助けをすることで、この幇助犯という立ち位置になるのです。
幇助犯は従犯として、正犯の刑を減軽することとされていますから、正犯が受けうる刑罰の重さの範囲よりも軽い範囲で刑罰の重さが決められることになります(刑法第63条)。

今回の事例について考えてみましょう。
Aさんは、賭博場への勧誘活動を行うことでBさんが胴元として行われた賭博場の開帳および利益獲得を容易にしていると評価することができますので、Aさんの勧誘活動は賭博場開帳等図利罪幇助犯に当たる可能性があります。

なお、先述したように、今回の事例で、もしもBさんとAさんとの間で勧誘活動をすることについて了解があったときには、Aさんは賭博場開帳等図利罪の共同正犯に問われる可能性がありました。
意思の連絡の有無で共同正犯と幇助犯のどちらに問われる可能性があるのか分岐するケースは多く想定されますので、もし犯罪行為に加担してしまったことで被疑者となってしまった際にはこの点を争うことが重要になる場合があります。
こうした部分は専門的な知識や経験がなければ判断しづらい部分ですから、まずは弁護士に相談して見通し等をきちんと把握することが重要です。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所刑事事件を専門とする法律事務所です。
賭博場開帳等図利罪といった耳慣れない犯罪のご相談や、幇助犯や共犯といった刑事事件の複雑な部分のご相談も、刑事事件専門の弁護士が丁寧に対応いたします。
まずはお気軽にご相談ください。

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