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ひき逃げ事件の自首を弁護士に相談

2021-06-02

ひき逃げ事件の自首を弁護士に相談

ひき逃げ事件の自首を弁護士に相談したいという場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~相談例~

滋賀県彦根市に住んでいるAです。
私は、通勤に自動車を利用しているのですが、ある日の帰り道、よそ見運転をしていたせいで通行人と接触する人身事故を起こしてしまいました。
私は、人身事故を起こしてしまったことに動揺してしまい、とっさに自動車を運転してそのまま現場から逃げ帰ってしまいました。
被害者の方は倒れ込んでいましたが、意識はあるようでした。
その翌日、どうやら滋賀県彦根警察署が通行人に怪我をさせた人身事故についてひき逃げ事件として捜査しているらしいと聞きました。
ひき逃げをしてしまった罪悪感でいっぱいになってしまった私は、自首してお詫びしたいと思っているのですが、自首したらどうなるのかが分からず不安に思っています。
私はどうしたらよいのでしょうか。
(※この相談例はフィクションです。)

・ひき逃げをしてしまって自首をしたい場合

「ひき逃げ事件を起こしてしまって自首したいと思っている」というご相談は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にもよく寄せられる相談の1つです。
人身事故を起こしてしまった当時は焦りや動揺からとっさに逃げてしまったものの、後から振り返って反省して自首を考えたり、家族など身近な方に相談してアドバイスをもらって自首を考えたりするケースが多いようです。
今回の記事では、そのひき逃げ事件と自首について検討していきます。

まず、ひき逃げ事件で成立する犯罪について確認しておきましょう。
多くのひき逃げ事件では、「ひき逃げ」という1つの犯罪が成立するわけではなく、人身事故を起こしてしまったことによる犯罪と、人身事故を起こしてしまった際の義務を果たさずに逃げてしまったことによる犯罪の2つの犯罪が成立します。

人身事故を起こしてしまったことによって成立する犯罪は、自動車運転処罰法という法律で定められている過失運転致死傷罪(場合によっては危険運転致死傷罪)です。
今回のAさんのケースでは、よそ見運転という不注意によって人身事故を起こしてしまっており、被害者が怪我をしているらしいことから、過失運転致傷罪が成立する可能性があります。

自動車運転処罰法第5条
自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処する。
ただし、その傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができる。

不注意(過失)によって人身事故を起こした場合、この過失運転致傷罪が成立することになりますが、ひき逃げ事件の場合には、これに人身事故を起こしてしまった際の義務を果たさずに逃げたことによる道路交通法違反が加わることになります。
道路交通法では、人身事故を起こしたらしかるべきところに報告したり、負傷者を救護したりする義務が定められています。

道路交通法第72条第1項
交通事故があつたときは、当該交通事故に係る車両等の運転者その他の乗務員(以下この節において「運転者等」という。)は、直ちに車両等の運転を停止して、負傷者を救護し、道路における危険を防止する等必要な措置を講じなければならない。
この場合において、当該車両等の運転者(運転者が死亡し、又は負傷したためやむを得ないときは、その他の乗務員。以下次項において同じ。)は、警察官が現場にいるときは当該警察官に、警察官が現場にいないときは直ちに最寄りの警察署(派出所又は駐在所を含む。以下次項において同じ。)の警察官に当該交通事故が発生した日時及び場所、当該交通事故における死傷者の数及び負傷者の負傷の程度並びに損壊した物及びその損壊の程度、当該交通事故に係る車両等の積載物並びに当該交通事故について講じた措置を報告しなければならない。

ひき逃げをするということは、この道路交通法に定められている義務を果たさないということになるため、それによる道路交通法違反が成立するのです。
ですから、今回のケースのAさんにも、これらの過失運転致傷罪や道路交通法違反が成立することになるでしょう。

さて、Aさんはひき逃げ事件を起こしてしまった後、自首することを希望しているようです。
しかし、ひき逃げ事件の場合、すでに一度現場から逃走しているという事実があるため、自ら出頭したり自首をしたりしても、逃亡のおそれがあると判断されて逮捕・勾留による身体拘束を受ける可能性があります。

さらに、自首といっても、ただ単に警察署に出頭するだけでは、自首になりません。
自首が成立するためには、捜査機関が被疑者を知る前に出頭する必要があり、捜査機関がすでに被疑者を把握しているような状況で自ら出頭したとしても、それは単なる出頭という扱いになります。

そして、自首したからといって、必ず刑が軽くなるわけでもありません。
自首について定めた条文では、自首をした場合には刑罰の減軽は任意のものとなっているのです。

しかし、自首にせよ出頭にせよ、自ら出頭したということは深く反省していることや、逃亡・証拠隠滅の意思のないことを示すことのできる事情になりますから、全く意味のないことではありません。

このように、自首についてはメリットもデメリットも存在するため、専門家である弁護士の話を聞いてメリットとデメリットを正確に把握してからどうするのか決定することをおすすめいたします。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、初回無料法律相談も受け付けていますので、自首に悩まれている方も、まずは遠慮なくご相談下さい。

不注意で起こした火事は何罪に?

2021-05-29

不注意で起こした火事は何罪に?

不注意で起こした火事は何罪に問われるのかということについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~

滋賀県東近江市に住んでいるAさんは喫煙者であり、よく自宅の自室でたばこを吸っていました。
ある日、自室の灰皿にたばこの吸い殻が溜まってきたので、Aさんは今吸っているたばこをもみ消し、灰皿にあった吸い殻とまとめて自室のごみ箱に捨てました。
自室を出てリビングで家族とテレビを観ていたAさんは、焦げ臭いにおいを感じました。
気になってリビングを出てみると、Aさんの部屋のドアが燃えており、火は勢いを増していました。
Aさんが急いで消防に通報し、消防隊が駆け付けて消火活動をしたことでなんとか火は消し止められましたが、Aさんの自宅は半焼し、Aさんは滋賀県東近江警察署で取調べを受けることになりました。
どうやらAさんのたばこの火がきちんと消えていなかったことが火事の原因のようでした。
Aさんは、自分の不注意で火事を起こしてしまった時、どういった犯罪に問われるのだろうかと不安になり、弁護士に相談することにしました。
(※この事例はフィクションです)

・失火罪

今回のAさんの事例のように、不注意で火事を起こしてしまったようなケースでは、失火罪が問題になることが多いです。
失火罪は刑法第116条に規定されている犯罪です。

刑法第116条(失火罪)
第1項 失火により、第108条に規定する物又は他人の所有に係る第109条に規定する物を焼損した者は、50万円以下の罰金に処する。
第2項 失火により、第109条に規定する物であって自己の所有に係るもの又は第110条に規定する物を焼損し、よって公共の危険を生じさせた者も、前項と同様とする。

失火」とは、過失により出火させることをいいます。
少し注意を払えば出火によって物を焼損させることが予見できたのに予見しなかった場合や、焼損を回避する防止策を講じることができたのにしなかった場合で故意のないときに、過失による出火および焼損、すなわち失火の事実が認められることになります。
過失とは不注意のことを指し、簡単に言えば不注意で火事を起こした場合にはこの「失火」に当たるということになります。

刑法第116条第1項の条文にある「第108条に規定する物」「他人の所有に係る第109条に規定する物」とは、それぞれ現住建造物等と他人が所有する非現住建造物等を指します。
現住建造物等とは、現に人が住居として使用していたり人が現在する建造物、汽車、電車、艦船または鉱坑を指します。
対して刑法第116条第2項では、自己が所有する非現住建造物等と建造物等以外の物を失火によって焼損させた場合について規定されています。

ここで、失火罪で注意しなければいけないことの1つとして、刑法第116条第1項と第2項とでは、客体となるもの以外に「公共の危険」の発生の有無という条件が異なる部分があることが挙げられます。
条文の第1項で規定されている客体を焼損させた場合は、人の生命や身体が侵害される危険性が高かったり、焼損した物の財産的価値が高かったり違法性が大きかったりすることなどから、これらを焼損させた時点で既に公共の危険が発生したものと考えられます。

一方、条文の第2項に規定されている客体は、建造物等であっても、行為者が所有しかつ人が住居として使用していなかったり現に人がいるわけではないものや、そもそも建造物等ではないものなので、第1項で規定された客体のように焼損させた場合でも、ただちに人の生命や身体が脅かされるリスクは相対的に低いものと考えられています。
このような焼損される客体の性質の違いから、第2項では現実に公共の危険が発生することが失火罪を成立させる要素として要求されているのです。

今回のAさんのケースを考えてみましょう。
例えば、Aさんがたばこの火をもみ消した際にちゃんと火が消えたことを確認せずゴミ箱に吸い殻を捨てたというような事情があれば、Aさんの不注意によって火事が起きた=過失による出火があると言えそうです。
さらに、焼損された客体はAさんの自宅ですから、現に人が住居としている建造物となり、これは現住建造物に当たります。
よって、Aさんは刑法第116条第1項の失火罪に問われる可能性があるといえるでしょう。

・業務上失火罪と重過失失火罪

失火は過失による出火とその火力による物の焼損によって認められますが、過失の程度が重大である場合や、業務上必要な注意を怠った結果として出火と焼損が発生した場合には、先ほど挙げた単純な失火罪ではなく重過失失火罪もしくは業務上出火等罪(刑法第117条の2)に問われる可能性があります。
重過失失火罪もしくは業務上出火等罪の法定刑は3年以下の禁錮または150万円以下の罰金です。

どのような場合に過失の程度が重大であるといえるのかというと、例えば出火した際に人命や人身に重大な結果が生じる危険性が高かったり、この他公共の危険を生じる危険性がかなり高いような状況で特に慎重な態度をとることが必要であったにもかかわらずその必要な慎重さを欠いて出火させてしまった場合などが挙げられます。

今回の事例でいえば、たばこの火の不始末が火事の主要な原因の1つとして世間に知られていることや、たばこをきちんと消すこととその確認をすることの容易さなどから、Aさんの場合でも失火罪ではなく重過失失火罪が適用される可能性は十分にあります。

重過失失火罪になると禁錮刑の可能性がありますので、刑事収容施設に長期間入らなければならないかもしれません。
その場合、罰金刑と比べて社会復帰の困難さや周囲から向けられる視線などで刑そのものが与える以上の不利益を被ることになるおそれもあります。
過失の事実をどう評価するかは法律の専門家であっても難しい論点で、失火罪を含む過失犯では特に慎重に検討されなければなりません。
だからこそ、不注意で火事を起こしてしまって刑事事件となった場合には、早期に専門家である弁護士に相談することが重要なのです。

刑事事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、不注意で火事を起こして失火罪に問われている方のご相談・ご依頼も受け付けています。
弁護士の話を聞くことで刑事手続への理解が深まり、不安の軽減なども期待できます。
まずはお気軽にご相談ください。

借りるだけのつもりが窃盗事件に発展

2021-05-26

借りるだけのつもりが窃盗事件に発展

借りるだけのつもりが窃盗事件に発展したケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~

滋賀県近江八幡市に住んでいるAさんは、自宅から少し距離のある店に買い物に行こうと歩いていましたが、道中にあった駐輪場に停めてあったVさんの自転車が目に留まりました。
Aさんは、「自転車に乗って行けば早く済むし、すぐに戻るのだから借りるくらいなら大丈夫だろう」と考え、停めてあったVさんの自転車を借りるつもりで乗っていきました。
15分後、Aさんが自転車に乗って駐輪場に戻ってくると、Vさんが自転車がなくなったと滋賀県近江八幡警察署に相談していたようで、Vさんの自転車に乗っていたAさんは滋賀県近江八幡警察署で話を聞かれることになってしまいました。
Aさんは、「自分は借りるだけのつもりでいたし、実際に駐輪場に戻ってきているのに窃盗罪になるのか?」と不安に思っています。
(※この事例はフィクションです。)

・「借りるだけ」でも窃盗事件に?

今回の事例のAさんは、借りるだけのつもりで駐輪場に停めてあったVさんの自転車を使用しています。
こうした「借りるだけ」「すぐ戻す」といったつもりで他人の物を使ってしまったというケースは、「使用窃盗」と呼ばれることがあります。
「使用『窃盗』」と言われる通り、こうしたケースでは窃盗罪が成立するのかどうかが問題となります。

刑法第235条(窃盗罪)
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

結論からいうと、いわゆる使用窃盗のケースでは、原則として窃盗罪は成立しないと考えられています。

そもそも、窃盗罪が成立するには、上記の条文に書いてある条件(「他人の財物を窃取した」こと)以外に、その窃盗行為をした人に「不法領得の意思」という意思があることが必要であると考えられています。
「不法領得の意思」とは、「権利者を排除し、他人の物を自己の所有物と同様に利用し、または処分する意思」とされています。
簡単に言えば、その物の持ち主を排除して、自分がその物の持ち主で無ければできないような行為をしてその物を利用・処分するつもりがあるかということです。
窃盗罪の条文には載っていないものの、窃盗罪の成立にはこの「不法領得の意思」があることが必要だと考えられています。
もしもこの「不法領得の意思」の有無を考えなければ、その物を毀棄・隠匿するつもりだった場合(器物損壊罪などが成立する場合)と区別がつかなくなってしまうため、窃盗罪では「不法領得の意思」があるかどうかが重要となっているのです。

ここで今回のAさんの事例のような「使用窃盗」のケースを考えてみましょう。
「借りるだけ」「すぐ戻す」と思っていたような場合、「権利者を排除し、他人の物を自己の所有物と同様に利用し、または処分する」という意思=不法領得の意思はないと考えられます。
少なくとも「借りるだけ」「すぐ戻す」つもりであるなら、「権利者を排除」する意思はないと思われるためです。
こうしたことから、使用窃盗のケースでは窃盗罪が成立しないとされているのです。

しかし、「借りるだけ」と思っていれば必ず窃盗罪が成立しないというわけではありません。
借りたものや借りていた時間によっては、使用窃盗のつもりでも窃盗罪となってしまうことがあります。
過去には、他人の自動車を無断で運転した事件で、窃盗罪が成立した事件があります。
自動車という価値の高いものであることや、燃料や外装を消費しているであろうこと、長時間運転したことなどから、使っていた自動車を自分の物として利用しているうえ権利者を排除するものだと判断され、窃盗罪に必要な「不法領得の意思」があると判断されたのです。
いくら「借りるだけ」「すぐ戻す」というつもりでも、事情によっては窃盗罪が成立する可能性が出てきますから、無断で人の物を使うようなことは避けるべきでしょう。

それでも使用窃盗をしてしまった、窃盗罪を疑われてしまったという場合には、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所弁護士までご相談ください。
使用窃盗のケースに当たるのか、窃盗罪が成立する可能性はあるのか、その場合どういった刑事手続きが予想されるかなど、刑事事件専門の弁護士が丁寧にご相談いたします。
まずはお気軽にお問い合わせ下さい。

盗品の売却を代行して逮捕

2021-05-22

盗品の売却を代行して逮捕

盗品売却を代行して逮捕されてしまったケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~

滋賀県甲賀市に住むAさんは、友達であるBさんから、「滋賀県甲賀市にある古書店で本を万引きしたけど、自分の趣味に合わなかった。本自体に価値はあるようなのでどうにかうまく処分できないか」という相談を受けました。
Bさんが「本をうまく売ってくれれば、代金の2割はお礼にあげるよ」と言っていたため、AさんはBさんから本を預かると、滋賀県甲賀市内にある別の古書店で50万円で売却し、Bさんからお礼として代金の2割をもらいました。
数日後、本が盗まれたことに気が付いた古書店が滋賀県甲賀警察署に被害届を提出。
捜査の結果、Bさんは本を盗んだことによる窃盗罪で逮捕され、さらにAさんは盗品を売却したとして盗品等関与罪の容疑で逮捕されてしまいました。
Aさんは、自分は売却を代行しただけなのに逮捕されるのかと不思議に思い、家族の依頼を受けて接見に訪れた弁護士に、自分にかけられている容疑について詳しく聞いてみることにしました。
(※この事例はフィクションです。)

・盗品の処分は犯罪?

盗品その他財産に対する罪に当たる行為によって領得された物(盗品等)に関する犯罪のことを、盗品等関与罪といいます。
盗品等関与罪の中身としては、盗品の無償譲受、運搬、保管、有償処分あっせんといった行為が含まれ、これらは刑法に規定があります。
盗品等関与罪とまとめて呼ばれるものの、行為によっては量刑に差があり、特に盗品の無償譲受とその他の犯罪では以下の通り量刑に差があります。

刑法第256条
第1項 盗品その他財産に対する罪に当たる行為によって領得された物を無償で譲り受けた者は、3年以下の懲役に処する。
第2項 前項に規定する物を運搬し、保管し、若しくは有償で譲り受け、又はその有償の処分のあっせんをした者は、10年以下の懲役及び50万円以下の罰金に処する。

条文のとおり、盗品等無償譲受罪(刑法第256条第1項)よりもその他の類型による関与(同条第2項)の方が法定刑が重く規定されています。
これは、盗品等関与罪のなかには所有者の盗品に対する私法上の追求権行使を困難にする、つまり、盗品の持ち主がその盗品を追跡することを困難にしてしまう犯罪だけでなく、窃盗犯人等(本犯)の利益関与・本犯助長性をも内容としているものがあるからだと考えられています。
刑法第256条第2項で定められている盗品への関与においては、追求権だけの侵害ではなく、利益関与・本犯助長性まで認められるので、同条第1項の盗品等無償譲受罪より罪が重くなっていると考えられます。
たとえば、盗品がお金になると思えば本犯がまた窃盗をしてしまう可能性がありますし、本犯の為に運搬保管した場合はその後の行為が格段にやりやすくなるおそれがあります。
このような理由から刑法第256条第2項が同条第1項より重く処罰されているのです。

本件では、Bさんが古書店盗んだ本の売却をAさんに依頼していることから、第2項の有償処分あっせん罪の成立が問題となります。
盗品等の有償処分罪の成立要件は、①前項に規定するもの(盗品等)の、②有償の処分のあっせんをしたことです。

まず①については、判例によれば、「盗品等」とは財産に対する罪によって取得した財物で、被害者が法律上追求し得る権限を有する物をいいます(大判大12.4.14)。
典型的には窃盗罪、詐欺、恐喝によって取得した財物です。
他方、賄賂は収賄罪が財産犯ではないので「盗品等」にはあたりません。
また、私法上の規定により所有者が所有権を失ってしまう場合にも「盗品等」とはされません。
例えば、即時取得、加工や添付といった規定が適用されるときは盗品性が失われます。

本事例ではAさんはBさんが盗んだ本について売却という処分行為をしています。
よって、窃盗による財物を対象としています。
したがって、①の要件を満たします。

次に②についてです。
有償の処分のあっせんとは、盗品の有償的な法律上の処分行為を媒介、周旋することいいます。
法律上の処分は、売買や交換などが典型です。
この処分が有償かどうか問題であって、あっせんの有償無償は問題となりません。
本事例では、Aさんは別の古書店に売却して売買成立に関与しているといえるので、法律上の処分を媒介しているといえます。
また、このあっせんによってAさんはその代金の2割がもらえるとのことですが、上記の通り問題となりません。
よって、②の要件を満たします。

以上から、Aさんには盗品等有償処分あっせん罪が成立すると考えられるのです。

・盗品等関与事件と弁護士

盗品等関与罪については、窃盗行為などをした本犯とは異なって被害者とは間接的な関係しかありません。
そこで自らの情報だけで示談交渉することは容易ではなく、弁護士に依頼することで示談交渉から示談成立に至る可能性は高まると思われます。
また、盗品等関与罪のうち有償処分あっせんの法定刑は10年以下の懲役であることから、決して軽い罪ではなく、積極的な行動が求められます。
このような盗品等関与罪でご相談の方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所までご連絡下さい。

ネットオークション詐欺事件で逮捕されてしまった

2021-05-19

ネットオークション詐欺事件で逮捕されてしまった

ネットオークション詐欺事件で逮捕されてしまったケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~

Aさんは、ネットオークションサイトに、人気で入手困難とされているゲーム機Xを出品しました。
しかし、Aさんはゲーム機Xを実際に手元に持っていたわけではなく、単にお金欲しさに偽の情報で出品しただけでした。
すると、滋賀県守山市に住んでいるVさんが、Aさんの出品情報を見て、購入したいと申し込んできました。
AさんはVさんの申し出を受けると伝え、Vさんから代金として約7万円を振り込んでもらいました。
後日、Vさん宅にAさんからの荷物が届きましたが、中身はゲーム機ではなく飲料水でした。
ネットオークション詐欺に遭ったと気づいたVさんは、滋賀県守山警察署に被害を相談。
滋賀県守山警察署の捜査により、Aさんは詐欺事件の被疑者として逮捕されてしまいました。
Aさんの逮捕の知らせを聞いたAさんの家族は、どうしてよいのか分からず、ひとまず滋賀県の刑事事件や逮捕に対応してくれる弁護士に相談してみることにしました。
(※令和3年5月18日YAHOO!JAPANニュース配信記事を基にしたフィクションです。)

・ネットオークション詐欺

現在では、様々な人がインターネットを介して自分の持っている物を売買することができます。
今回のAさんの事例でも登場しているネットオークションや、フリーマーケットアプリ(フリマアプリ)などがその筆頭でしょう。
他にも、SNSで買い手や売り手を募集してやり取りをするなどの手段を通じて個人間で売買を行うことも見られます。
しかし、こうしたケースでは、直接商品を確認することはできないため、今回の事例のように詐欺行為が行われてしまうことがあります。

今回の事例では、Aさんは詐欺罪に問われていますが、その詐欺罪は刑法に定められている犯罪の1つです。

刑法第246条第1項
人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。

この詐欺罪の「人を欺いて」という部分は、単に相手に嘘をついたということだけを示しているのではありません。
詐欺罪のいう「人を欺」く行為とは、相手が財物を交付する判断をする際に重要な事実について嘘をつく行為を指します。
つまり、「これが嘘だったら財物を引き渡すことはしない」という部分について嘘をつくことが詐欺罪成立の条件の1つとなるのです。

今回のAさんの事例を考えてみましょう。
Aさんは、Vさんに対してネットオークションでゲーム機Xを販売するとしています。
Vさんとしては、当然ゲーム機Xをもらえるということでその代金=「財物」をAさんに振込んでいます。
ゲーム機Xでないのであれば、Vさんは代金という「財物」をAさんに引き渡すことはしないでしょう。
となると、AさんがVさんへゲーム機Xを販売するという嘘は、Vさんにとって、財物を交付する判断をする際に重要な事実を偽る行為=「人を欺」く行為と言えるでしょう。
そうなると、「人を欺いて」代金という「財物を交付させ」たAさんには、詐欺罪が成立すると考えられるのです。

・詐欺事件と弁護活動

詐欺罪は、刑罰として懲役刑のみが定められている犯罪です。
つまり、罰金を支払って事件が終了するということはなく、起訴されるということは公開の法廷で裁判を受けるということとイコールになります。
そして、有罪となった場合には、執行猶予が付かなければ刑務所に行くことになるのです。
これだけ重い犯罪ですから、詐欺事件の被疑者となった場合には逃亡を防ぐ目的で逮捕される可能性も十分考えられますし、早期に示談交渉などに取り組んで刑の減軽などを主張していくことが重要です。
だからこそ、すぐに弁護士に相談することが大切となるのです。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、ネットオークションに関わる詐欺事件のご相談・ご依頼も受け付けています。
刑事事件専門だからこそ、刑事手続きの始まりから終わりまで迅速かつ丁寧な弁護活動が可能です。
まずはお気軽にご相談ください。

業務妨害罪の種類とは

2021-05-15

業務妨害罪の種類とは

業務妨害罪の種類について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~

Aさんは、滋賀県草津市にある飲食店で、店員の態度に腹を立て、その飲食店に迷惑をかけてやろうと考えるようになりました。
そこでAさんは、飲食店に電話をかけると、「飲食店に爆弾を仕掛けた」と嘘をつきました。
電話を受けた飲食店は滋賀県草津警察署に通報。
その後の滋賀県草津警察署の捜査により、Aさんは威力業務妨害罪の容疑で逮捕されてしまいました。
Aさんの家族は、Aさんが逮捕されたと知り、急いで刑事事件を扱っている弁護士に相談することにしました。
Aさんの家族は、相談の場でAさんの逮捕容疑である業務妨害罪について詳しく説明を聞くことになりました。
(※この事例はフィクションです。)

・偽計業務妨害罪と威力業務妨害罪

今回の事例のAさんが「威力業務妨害罪」という犯罪の容疑で逮捕されているように、一般に「業務妨害(罪)」という言葉は周知されているものの、実は刑法で定められている業務妨害に関わる犯罪の罪名は、その業務妨害行為の態様などによって細かく分けられています。
今回の事例のAさんの逮捕容疑は威力業務妨害罪という犯罪であり、刑法第234条に定められています。

刑法第234条(威力業務妨害罪)
威力を用いて人の業務を妨害した者も、前条の例による。

この条文にいう「前条」とは、信用毀損罪および偽計業務妨害罪を規定する刑法第233条を指します。

刑法第233条(偽計業務妨害罪等)
虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又は業務を妨害した者は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

条文のとおり、偽計業務妨害罪威力業務妨害罪は共に「業務を妨害」することで成立する犯罪ですが、その業務を妨害する手段として「偽計」が用いられたか、それとも「威力」が用いられたかによってどちらが成立するのかが変わることになります。

偽計業務妨害罪威力業務妨害罪の条文中にある「業務」とは、どちらも人が社会生活上の地位に基づき継続して従事する事務または事業をいいます。
例えば、今回の事例の現場となった飲食店の事業は「業務」であるといえるでしょう。
今回の事例では、Aさんは爆弾を仕掛けたと嘘の電話をしていますが、これによって飲食店は警察への通報や客の避難誘導、営業の停止などを行い業務が正常にできなくなった、またはできなくなるおそれが相当程度あったと考えられます。
こうしたことから、Aさんの行為は「業務を妨害」していたと考えられます。

・「爆弾を仕掛けた」という嘘は「偽計」?「威力」?

では、Aさんが爆弾を仕掛けたという嘘を飲食店に電話をしたという業務妨害行為の手段が「偽計」なのか「威力」なのか、どちらになるのでしょうか。

ここで、威力業務妨害罪の「威力」とは、人の意思を制圧するに足りる勢力をいうものとされています。
つまり、自由な意思で判断したり行動することに対して圧力をかけ、その自由を奪うような行為が威力業務妨害罪の「威力」に当たるというわけです。

他方で、偽計業務妨害罪の「偽計」とは、人を欺罔、誘惑し、あるいは人の錯誤や不知を利用する違法な手段を指します。
つまり、相手を騙すなどすることでその判断や行動の自由を奪うことが「偽計」となるのです。

今回の事例では、Aさんの電話した内容が嘘であることから、一見「偽計」を手段とした偽計業務妨害罪が成立するように思えますが、こうしたケースでは、嘘であっても爆弾という相手が抗えない強力な勢力を用いていることから「威力」を用いていると判断され、威力業務妨害罪が成立することが多いようです。

偽計業務妨害罪威力業務妨害罪は法定刑こそ同じですが、罪名が何であるかというのは刑事手続や司法判断においてはかなり重要な違いをもたらします。
だからこそ、どの行為がどの条文のどこに当てはまってどういった犯罪の容疑がかけられているのかということを、刑事事件に強い弁護士にきちんと相談しておくことが大切です。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、偽計業務妨害事件威力業務妨害事件といった業務妨害行為に関わる刑事事件のご相談・ご依頼も受け付けています。
特に、今回のAさんの事例のように、被疑者が逮捕されてしまっているケースでは、限られた時間の中で迅速な弁護活動が求められます。
まずはお早めにご相談ください。

チケットの不正転売で逮捕されてしまったら

2021-05-12

チケットの不正転売で逮捕されてしまったら

チケット不正販売逮捕されてしまった場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説いたします。

~事例~

Aさんは、人気のアーティストであるVさんが滋賀県大津市でコンサートをする予定であることを知りました。
Vさんのコンサートは人気ゆえにチケットの当選倍率が高く、チケットを手に入れることのできないファンが多くいることを知っていたAさんは、Aさんはこうしたファンの強い購買意欲に商機を見出し、事業として独自システムによってVさんのコンサートチケットを大量に仕入れ、それを自身のインターネットサイトでVさんらに許可をとらず転売しました。
Aさんの転売したチケットは、全て指定席のもので、通常価格が8,000円であるのに対しAさんは3万円という高額での転売をしていました。
すると後日、滋賀県大津警察署の警察官がAさんの自宅にやってくると、Aさんはチケット不正転売禁止法違反の容疑で逮捕されてしまいました。
Aさんの家族は、Aさんがチケット転売行為によって逮捕されたことに驚き、これからどうしてよいのか弁護士に相談してみることにしました。
(※この事例はフィクションです。)

・チケット不正転売禁止法ができた経緯とは

チケット不正転売はダフ屋行為とも呼ばれており、その語源はチケットを意味する「札(ふだ)」を逆さに読んだことであるとも言われています。
チケット不正転売防止法が制定される以前も、チケット不正転売は各都道府県の条例で規制されており、対応がなされていました。
しかし、多くの条例は「公の場所」での不正転売を禁ずるのみであって、インターネット販売について適用があるといえるか等の問題を抱えていました。
また、このような条例を制定してない地方自治体は、物価統制令という戦後まもなく成立した古い法律で対処していたようですが、この法律はハイパーインフレに対処し生活安定を図る法律であるため、不正転売への適用には無理があると言われていました。
このような状況の中、2020年に予定されていた東京オリンピックの開催決定を受け全国的な規制の必要性が生じたこと、また、インターネットの登場で個人も容易に不正転売を行うことができるようになってしまったことなどに対処する必要が生じたことから、チケット不正転売禁止法が成立することになりました。

・チケット不正転売禁止法の対象となる行為

チケット不正転売禁止法が対象とする行為は、特定興行入場券の不正転売(第3条)と、特定興行入場券の不正転売の目的を有しての譲受け(第4条)です。
そしてこれら行為を行った場合に処罰されます。

チケット不正転売禁止法
第3条 何人も、特定興行入場券の不正転売をしてはならないこと。
第4条 何人も、特定興行入場券の不正転売を目的として、特定興行入場券を譲り受けてはならない。
第9条 第3条又は第4条の規定に違反した者は、1年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

今回の事例では、いずれの行為もAさんに成立する可能性があります。
まず第3条に決められている不正転売については、「特定興行入場券の不正転売」とは、興行主の事前の同意を得ない、特定興行入場券の業として行う有償譲渡であって、興行主等の当該特定興行入場券の販売価格を超える価格をその販売価格とするものをいいます(第2条第4項)。
これを本件について見てみると、まずAさんは自身のインターネットサイトでVさんに許可をとらず転売しており、コンサートを開催し不特定多数の者に聴かせることを主宰する「興行主」たるVさんらの許可を得ずに販売しています。
次に、このコンサートチケットの販売は事業としてなされた有償販売であり、当該チケットは本来8,000円で販売されているところ、Aさんは3万円で販売しており特定興行入場券の販売価格を超える価格をその販売価格で販売したといえます。
以上より、Aさんの行為はチケット不正転売禁止法第3条で禁止されている不正転売に該当します。

次に第4条に定められている不正転売行為について考えてみましょう。
Aさんは、自身の販売サイトで転売することを目的として独自のシステムでVさんのコンサートチケットを仕入れていることから、「特定興行入場券の不正転売を目的として譲り受けた」といえます。
ですから、Aさんの行為はチケット不正転売禁止法第4条で禁止されている行為にも該当すると考えられます。

これらのことから、Aさんはチケット不正転売禁止法の第3条又は第4条の規定に違反したといえるので、チケット不正転売禁止法違反の罪が成立することになるでしょう。

SNSやインターネットの普及により、誰でもやろうと思えばできてしまうチケットの不正転売だからこそ、注意を払わねばなりません。
それでもこのようなチケット不正転売禁止法違反をしてしまった場合には、刑事事件専門弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所までご相談ください。

本番行為の風俗トラブルで刑事事件に

2021-05-08

本番行為の風俗トラブルで刑事事件に

本番行為風俗トラブル刑事事件に発展したケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~

男性会社員のAさんは、滋賀県大津市にある風俗店で、女性キャストVさんからサービスを受けていました。
このお店ではいわゆる本番行為が禁止されていましたが、サービスを受けるうちに気分が高揚したAさんは、拒否するVさんを無視して本番行為をしようとVさんを押し倒しました。
まさに本番行為に及ぼうとしているところを店の男性スタッフが発見し、Aさんは店側から「無理に本番行為をしようとしただろう。きちんとした対応をしてくれなければ滋賀県大津北警察署に届け出ることも考える」と言われてしまいました。
自分がどうなるのか怖くなったAさんは、ひとまず店との話し合いの前に弁護士に相談して詳しい話を聞いてみることにしました。
(※この事例はフィクションです。)

・本番行為の強要と刑事事件

そもそも原則として、風俗店では、いわゆる「本番行為」は禁止されています。
お金をもらって本番行為をするということは売春に当たるため、それを風俗店として認めてしまえば風俗店が売春防止法違反という犯罪に問われてしまうためです。
ですから、風俗店では本番行為が禁止されており、利用客にもその旨は伝えられます。
しかし、今回のAさんは風俗店を利用した際に女性キャストVさんに対して本番行為を強要してしまったようです。
こうした行為はどのような犯罪になる可能性があるのでしょうか。

相手方の同意がないにもかかわらず無理に本番行為を行ってしまった場合は強制性交等罪(刑法第177条)の成立が考えられます。

刑法第177条
13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いて性交,肛門性交又は口腔性交(以下「性交等」という。)をした者は、強制性交等の罪とし,5年以上の有期懲役に処する。
13歳未満の者に対し、性交等をした者も、同様とする。

強制性交等罪が成立する場合で、さらにその行為時に相手に怪我をさせてしまったときは強制性交等致傷罪(刑法第181条第2項)に問われる可能性もあります。
強制性交等致傷罪の法定刑は無期または6年以上の懲役となっています。

強制性交等罪には未遂犯処罰規定(刑法第180条)がありますので、本番行為を強要したものの実際に行為は行わなかったというときでも、強制性交等未遂罪として罪に問われる可能性は残ります。
また、先ほど挙げた強制性交等致傷罪は強制性交等未遂罪の機会に怪我をさせた場合にも成立しますので、注意が必要です。

強制性交等罪の成立要件である暴行・脅迫は、相手方の反抗を抑圧する程度の暴行・脅迫でなければなりません。
「反抗を抑圧する」とは、物理的・精神的に反抗できない状態にすることを意味します。
したがって強制性交等罪の要件である暴行・脅迫は、少なくとも被害者の反抗を著しく困難にする程度の強度が必要であるということになります。
しかし、実際は相手方の意思に反するという事実が認められれば、暴行・脅迫があった場合、それは相手の反抗を抑圧する暴行・脅迫であると扱われる傾向が強く、さらに単純に加えられた力の強さや脅迫の強さだけでなく、その行為時の他の事情についても考慮に入れて判断されることもあります。
例えば、場所的な要素としてエレベーターのような狭い場所であればそれほど強い力を加えずとも相手の抵抗を押さえつけることができますし、加害者と被害者の事情としてそれらの体格や年齢などが違えばそういった事情も考慮されることになるでしょう。

ここで、被害者側が容易に抵抗できたと考えられるのに抵抗されなかったという理由で、強制性交等罪が要求する程度の暴行・脅迫がなかったと無罪を言い渡されたり訴追されなかったりするという意見もあります。
たしかに過去にそのような判断が下されたこともありました(最判平成23.7.25)が、性犯罪被害者が被害に遭った際に容易には抵抗できない心理状態にあることなど種々の事情から当該被害者にとって抵抗が困難であると認められた際には、比較的軽微な暴行・脅迫しかなかったとしても反抗を抑圧する程度のものであったと認められるケースも存在します。

また、先ほど触れた強制性交等致傷罪の結果である「傷害」には、キスマークをつけることや性病をうつすことも含まれます。
もちろん、本番を強要する際に行われた暴行行為によって傷害結果が生じた場合も強制性交等致傷罪の成立が考えられます。

今回の事例にあてはめて考えてみると、Aさんはまだ本番行為を行っていないので強制性交等罪に問われることはないでしょう。
しかし、AさんにはVさんの意に反して無理に本番行為をする目的があり、Vさんを押し倒したことなどがその目的を達成するための行為であったと考えられるときには強制性交等未遂罪として捜査が行われる可能性があります。

・本番行為の強要と弁護活動

風俗店での本番行為の強要トラブルについては、被害者が直接またはお店を経由して警察に被害届を出すことなどによって捜査が開始される場合がほとんどです。
捜査が開始された場合、容疑がかかる犯罪が強制性交等罪という重い犯罪であることから逮捕されてしまう可能性もあります。

ですから、本番行為を強要してしまったら、お早めに刑事事件に強い弁護士に相談されることをおすすめします。
刑事事件化してしまった場合や刑事事件化が心配される場合、弁護士が被害者と示談交渉をしたり、警察等と逮捕を回避する交渉することにより逮捕されるリスクを減らす活動が考えられます。

そして、示談交渉に関しては、弁護士を介して示談交渉を行うべきと考えられます。
当事者間で直接交渉を行おうとしても、風俗店側が無理な要求を行ったり、話し合いが進まない場合も多いです。
示談がまとまらないまま時間が過ぎてしまうと、その間に刑事手続きが進み取り返しの付かない状況になってしまうおそれもあります。
刑事事件に強い弁護士に依頼することで円滑に示談交渉を進めることが期待できますし、依頼者にとって不当な不利益を回避することにもつながります。

本番行為による風俗トラブルに関わるものだけに限らず、刑事事件はスピードが命です。
早期に動き出すことによって逮捕や起訴を回避できる可能性を高めることができます。
もし起訴に至ってしまった場合でも、早めに準備をしておくことによって執行猶予の獲得を狙うこともできます。
風俗店で本番行為を強要してしまった方、強制性交等罪や強制性交等致傷罪の被疑者となってしまった方は、お早めに刑事事件に強い弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所弁護士にご相談ください。

痴漢事件の示談内容とは?

2021-05-05

痴漢事件の示談内容とは?

痴漢事件示談内容について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~

滋賀県高島市にある駅構内で痴漢事件を起こしたAさんは、滋賀県高島警察署痴漢事件の被疑者として捜査を受けていました。
その後、弁護士をつけての示談を勧められたAさんは、痴漢事件に対応している弁護士に相談してみることにしました。
刑事事件示談についてどういったことを決めるのか分からなかったAさんは、弁護士に相談する際、刑事事件示談とはどのようなものとなるのかも詳しく聞くことにしました。
(※この事例はフィクションです。)

・痴漢事件と示談

痴漢事件のように被害者が存在する刑事事件では、示談の有無が非常に重要です。
示談の締結ができることで、被害者の処罰感情のおさまりなどを主張することができるため、起訴・不起訴の判断や量刑(どのくらいの重さの刑罰を科すか)の判断の際に、被疑者・被告人に有利に働くことが考えられるからです。
ですから、痴漢事件などの被害者が存在する刑事事件では、被疑者・被告人が容疑を認めているのであれば、早い段階から被害者の方との示談交渉に取りかかることが望ましいと考えられるのです。

しかし、示談という言葉は一般的にも知られているものの、実際に示談によってどのような内容が取り決められるのかということは、なかなか知られていないのではないでしょうか。
示談は賠償金などのお金を払うもの」というイメージが強い方も多いかもしれませんが、示談では示談金や賠償金といった金銭の支払いだけではなく、様々な取り決めがなされます。
示談に含まれることの多いものの一例を紹介します。

謝罪
示談書の中に、被疑者・被告人から被害者の方への謝罪を入れることがあります。
その他にも、被疑者・被告人から被害者の方へ謝罪文を作成してお渡ししたり、被害者の方の希望等によっては直接謝罪の場を設けることもあります。

口外禁止
事件のことや示談のことをみだりに第三者に言わない、という約束を入れることがあります。
被害者の方にとってはもちろんのこと、被疑者・被告人にとっても、刑事事件に関与したという情報や、それに関して示談を行ったという情報は、非常にデリケートな情報となります。
ですから、口外禁止の条項を入れることによって、お互いみだりに他人に刑事事件示談のことを言わない、広めないといった約束をすることが多いです。
なお、この条項で制限しているのは、第三者に「みだりに」話さないということなので、捜査機関や裁判所といった機関に必要があって話す場合は除外されます。

接近禁止
示談の際の約束事として、今後被疑者・被告人が被害者の方へ近づかない、という約束を入れる場合もあります。
痴漢事件の場合、これに加えて、犯行現場となった駅や路線を被疑者・被告人が利用しないようにする、という約束をして示談するケースも見られます。
特に痴漢事件のような性犯罪事件では、被害者の方としては二度と被疑者・被告人と接触したくないと考えられる方も多いため、こうした約束事が求められることも少なくありません。

これらはほんの一例であり、このほかにも事件の詳細な事情や、被害者の方、被疑者・被告人の要望等により、示談の内容は細かく異なります。
示談は金銭の授受で解決するだけということではなく、こうした細かい約束事も決めることができるのです。
これは、被害者の方にとってもメリットになりうることです。
だからこそ、示談に悩んだらまずは法律・刑事事件の専門家である弁護士に相談してみましょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、痴漢事件を始めとする刑事事件示談についても、弁護士が丁寧に対応いたします。
まずはお気軽にお電話ください(0120-631-881)。

物置小屋への放火事件で逮捕されたら

2021-05-01

物置小屋への放火事件で逮捕されたら

物置小屋への放火事件逮捕されたケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~

Aさんは、滋賀県長浜市にあるVさんの私有地に使われていない雰囲気の物置小屋があることを知っていました。
ある日、Aさんはむしゃくしゃした気分が抑えられず、「何かをパーッと壊したい気分だ。あの物置小屋なら使っていなさそうだしなくなっても問題ないだろう」と考え、Vさんの私有地にある物置小屋に火をつけ、半焼させました。
当時物置小屋の中には誰も人がおらず、物置小屋が半焼するだけで済みましたが、通行人が物置小屋が燃えているところを発見し、滋賀県木之本警察署に通報したことをきっかけに捜査が開始され、Aさんは非現住建造物等放火罪の容疑で逮捕されてしまいました。
Aさんが放火事件を起こして逮捕されたと聞いたAさんの家族は、とにかくAさんがどういった容疑をかけられてどういったことを話しているのか知りたいと、弁護士にAさんの元に行ってもらうことにしました。
(※この事例はフィクションです。)

・物置小屋への放火事件

日本では、放火行為をした際に成立する犯罪は単なる「放火罪」という犯罪になるわけではありません。
今回の事例のAさんにかかっている容疑が「非現住建造物等放火罪」という長い犯罪名であるように、放火をした対象が何なのか、どういった状況で放火されたのかといった細かい事情によって、成立する犯罪が変わるのです。
今回のAさんは、他人の私有地に建っている物置小屋に放火したようですが、このような他人の建造物に対する放火事件の場合、成立する可能性のある犯罪は大まかに次の2つに分けられます。

刑法第108条(現住建造物等放火罪)
放火して、現に人が住居に使用し又は現に人がいる建造物、汽車、電車、艦船又は鉱坑を焼損した者は、死刑又は無期若しくは5年以上の懲役に処する。

刑法第109条第1項(非現住建造物等放火罪)
放火して、現に人が住居に使用せず、かつ、現に人がいない建造物、艦船又は鉱坑を焼損した者は、2年以上の有期懲役に処する。

このうち、今回のAさんの逮捕容疑は後者の非現住建造物等放火罪となっています。
現住建造物等放火罪非現住建造物等放火罪の2つの犯罪は、「建造物」等に放火してその「建造物」等を焼損させるという部分は共通しています。
しかし、現住建造物等放火罪「現に人が住居に使用し又は現に人がいる」建造物等を、非現住建造物等放火罪が「現に人が住居に使用せず、かつ、現に人がいない」建造物等を対象にしている部分が異なります。
つまり、放火され焼損した建造物等が住居として使用されているものであったり、中に人がいた場合には現住建造物等放火罪が成立し、放火され焼損した建造物等が住居として使用されていないものであり中に人もいなかったのであれば、非現住建造物等放火罪が成立するということになるのです。
現住建造物等放火罪の方が人の命に直接的に危険を及ぼすことから、刑罰の重さも非常に重いものとなっています。

今回のAさんの場合、住居として使われておらず、かつ現在人が中にいない物置小屋放火し焼損したのですから、「現に人が住居に使用せず、かつ、現に人がいない」建造物等に放火し焼損したことになり、非現住建造物等放火罪が成立すると考えられるのです。
ここで注意しなければいけないのは、先ほど確認した通り、放火・焼損した建造物等の中に人がいれば、その建造物等が住居でなくとも現住建造物等放火罪が成立することになります。
ですから、Aさんが物置小屋に放火した際に小屋の中に人がいれば、たとえ普段は使われていない気配のある物置小屋であったとしても現住建造物等放火罪が成立することになるのです。

なお、放火行為をしたものの、その建造物を焼損するまでに至らなかったような場合には、建造物等以外放火罪や器物損壊罪といった他の犯罪が成立する可能性もあるため、まずは法律の専門家である弁護士に事件の細かいところまで話したうえで、どういった犯罪が成立する可能性があるのか聞いておくことがおすすめです。

放火と一口に言っても、その態様や状況によって成立する犯罪は様々です。
どういった事情によって成立する犯罪が変わるのかは、専門的な知識が必要となりますので、一般の方のみで判断することは難しいことが多いです。
弁護士に相談してみることが望ましいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、逮捕されてしまった方向けの初回接見サービスから、在宅捜査を受けている方・刑事事件化が不安な方向けの初回無料法律相談まで、ご利用いただきやすいサービスをご用意しています。
まずはお気軽にご相談ください。

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