Archive for the ‘財産事件’ Category

詐欺事件のような窃盗事件?

2021-07-31

詐欺事件のような窃盗事件?

詐欺事件のような窃盗事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~

29歳のAさんは、滋賀県大津市に住んでいる80歳のVさんの自宅を訪ねると、市役所の職員を装って、「このあたりでキャッシュカードが不正利用されているということだったので、セキュリティの強化と不正利用されていないかの調査のために巡回している。調査の間にカードが不正利用されるといけないので、この封筒にカードを入れて封をして調査している期間の間保管しておいてほしい」などと話すと、Vさんのキャッシュカードを持参した封筒に入れさせ、封を閉じさせました。
そしてAさんは、「本日から2週間、市が調査をするので、その間封筒は開かずに保管しておくように。封を開けていないことがわかるように封筒の口部分に印鑑を押してほしい」と話すと、Vさんに印鑑を取りに行かせ、その間にVさんのキャッシュカードが入った封筒と、よく似た封筒をすり替えました。
Vさんに封筒に判を押させたAさんは、すり替えた封筒に入れられていたVさんのキャッシュカードを利用して、Vさんの銀行口座にあった預金のうち80万円をATMでおろしました。
2週間後、市の調査について連絡が来ないことを不審に思ったVさんが市に問い合わせたことで被害に遭ったことが発覚。
Vさんは滋賀県大津北警察署に被害届を提出し、捜査が開始され、Aさんは窃盗事件の被疑者として逮捕されてしまいました。
Aさんの逮捕を聞いたAさんの家族は、「窃盗罪」という言葉から万引きや置引きを想像していたところ、まるで詐欺事件のような事件内容であったため、驚いて弁護士に相談することにしました。
(※この事例はフィクションです。)

・詐欺事件のような窃盗事件

今回のAさんは、滋賀県大津北警察署窃盗罪の容疑で逮捕されているようです。
しかし、Aさんの家族がそのギャップに驚いたように、Aさんの犯行の手口は市役所の職員を装ってキャッシュカードを持って帰ってしまうという、詐欺事件のようにも見える手口でした。
なぜAさんに成立する犯罪が窃盗罪なのでしょうか。

まず、詐欺罪について定めている条文を確認してみましょう。

刑法第246条第1項
人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。

条文によると、詐欺罪は「人を欺いて」「財物を交付させ」ないと成立しない犯罪です。
確かに、今回のAさんは、市の職員を装ってVさんのキャッシュカードを封筒に入れさせるなどしているため、Vさんという「人」を騙す=「欺いて」いることになるでしょう。
しかし、AさんはVさんからキャッシュカードを引き渡してもらった=Vさんにキャッシュカードを「交付させ」たわけではなく、こっそり似ている封筒とすり替えて持ち去っています。
この部分が詐欺罪の条文と合致しないことから、Aさんには詐欺罪が成立しないと考えられるのです。

ではAさんに成立すると考えられる犯罪は何罪かというと、冒頭でも触れられていた窃盗罪が考えられます。
窃盗罪の条文を確認してみましょう。

刑法第235条
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

窃盗罪の条文に出てくる「窃取」とは、他人が支配・管理している物を、その人の意思に反して自分の支配・管理下に移してしまうことを指します。
今回のAさんがVさんのキャッシュカードを入手した手口は、Vさんが気付かないうちにこっそり封筒を入れ替えるという手口でした。
この手口を見ると、AさんはVさんの所持しているキャッシュカード=「他人の財物」を、Vさんの意思に反して自分の管理下に移した=「窃取した」と考えられますから、Aさんには窃盗罪が成立すると考えられるのです。

今回の事例のAさんの家族は、Aさんの逮捕容疑である窃盗罪とAさんの犯行の内容の間にあるギャップに驚いたようですが、刑事事件ではこのように容疑をかけられている犯罪名と実際の犯行の間にイメージのギャップがあることも少なくありません。
被疑者・被告人である当事者はもちろん、サポートするご家族などもそのギャップを解消し、容疑をかけられている犯罪やその見通しを把握しながら手続きに臨むことが重要です。
例えば今回の事例でいえば、詐欺罪の法定刑は10年以下の懲役であり、窃盗罪の法定刑が10年以下の懲役又は50万円の罰金であることから、罰金刑がある分窃盗罪の方が軽い刑罰が定められていることになります。
しかし、今回の事例のようなケースでは、事件の内容的に詐欺事件に近い=より悪質性の高い窃盗事件であると考えられ、裁判で有罪判決が下された場合の量刑は一般の窃盗事件よりも重くなる可能性があります。
だからこそ、「たかが窃盗事件」と罪名だけで判断して軽く考えるようなことはしない方が賢明といえ、早期に弁護士に相談・依頼し、入念な準備をする必要が出てくるでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、詐欺事件窃盗事件を含む刑事事件全般を取り扱っています。
「家族が逮捕されたがどういった容疑をかけられているのか分からない」「容疑をかけられている犯罪の見通しや内容が分からない」といったご相談にも、弁護士にお気軽にご相談ください。
お問い合わせは0120-631-881までお電話ください。

ペットを連れ去ったら何罪に?

2021-07-24

ペットを連れ去ったら何罪に?

ペットを連れ去ったら何罪に問われる可能性があるのかということについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説いたします。

~事例~

ある日、Aさんが滋賀県長浜市内を歩いていたところ、首輪を付けた小型犬がスーパーマーケットのすぐ前にある柵にリードで繋いであるところを見つけました。
その小型犬は、飼い主であるVさんがスーパーマーケットで買い物をする10分程度の間、外に繋いでおいたVさんのペットの犬でした。
Aさんは、もともと犬を飼いたいと思っていたこともあり、小型犬のリードを柵から外すと自宅へ連れ帰り、自分のペットとして飼育を始めました。
その後、買い物を終えてスーパーマーケットを出てきたVさんは、柵に繋いでおいたはずのペットの犬がいなくなっていることに気が付いて周囲を探しましたが、ペットの犬は見つかりませんでした。
そこで、Vさんは滋賀県木之本警察署に相談したのですが、捜査の結果、Aさんが犬をその場から連れ去っていたことが発覚。
Aさんは、窃盗罪の容疑で逮捕されてしまいました。
(※この事例はフィクションです。)

・ペットは法律上どう扱われる?

この記事を読んでいる方の中にも、今回の事例に出てくるような小型犬などのペットを飼っているという方がいらっしゃるでしょう。
ペットを家族同様大切にされている方も少なくないと思います。
そういった方にとっては違和感があるかもしれませんが、法律上、ペットのような動物は「物」として扱われます。
ですから、誰かがペットが傷つけても人を傷つけたときのように傷害罪(刑法第208条)は成立しませんし、ペットを連れ去ったとしても人を誘拐したときのように誘拐罪(刑法第224条)は成立しません。
大切にしているペットだからこそ、こういった扱いが腑に落ちないという方もいらっしゃるかもしれませんが、現在の法律上、ペットは「物」として扱われることになるのです。

・ペットを連れ去ったら何罪に?

さて、今回の事例では、AさんはVさんのペットの犬を勝手に連れ帰って自分のペットとしています。
こうしたケースでは、事例でもAさんの逮捕容疑となっているように、窃盗罪が問題になります。

刑法第235条(窃盗罪)
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

条文を確認すると、窃盗罪が成立するためには①「他人の財物を」、②「窃取」することが必要です。

①の「他人の財物」とは、他人が「占有」する「他人の財物」を意味します。
先ほど触れた通り、法律上ペットは「物」として扱われます。
ですから、Vさんのペットの犬も法律上は「物」と考えられます。
そして、窃盗罪の「財物」は、財産的価値がなくとも、社会通念上刑法的価値に値する主観的・感情的価値があるものであればよいとされます(大判明治44.8.15)。
したがって、例えばVさんのペットの犬が血統書付きの犬などではなくとも、窃盗罪の「財物」といえるでしょう。

そして、②「窃取」するということは、持ち主の意思に反してその物の占有を自分や第三者に移転することを指します。
「占有」とは、財物に対する事実上の支配をいいます。
今回のAさんの事例の場合、犬の飼い主であるVさんは犬のもとを離れてスーパーマーケットの中に行っていることから、Vさんが犬を占有しているかどうか疑問に思われる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、Vさんが犬のもとを離れたのは10分程度という短い時間であり、Vさんとしてもすぐに戻るつもりで犬を柵に繋いでおり、距離的にも近い位置にいます。
こうしたことから、Vさんが一時的にペットの犬と離れていたとしても、Vさんはペットの犬を「占有」している状態であったと考えられるでしょう。
その状況からAさんはVさんの意思に反して勝手に犬を連れ去り自分のペットとして扱っている=犬の支配をAさんのもとに移していると考えられるため、窃盗罪の「窃取」に該当する行為をしていると考えられます。

なお、窃盗罪には条文にある条件以外にも「不法領得の意思」という意思が必要とされています。
「不法領得の意思」を簡単に言えば、持ち主の権利を排除して自分が持ち主のようにその物を利用したり処分したりする意思のことを指します。
今回のAさんは、Vさんのもとからペットの犬を連れ去り、自分のペットとする=Vさんを排除して自分が犬の持ち主のようにふるまう意思をもって行動しているので、この「不法領得の意思」もあったと考えられます。

こうしたことから、Aさんのペットの連れ去り行為は窃盗罪にあたると考えられるのです。

先ほども触れた通り、法律上ペットは「物」として扱われますが、飼い主からすれば家族同然であったりします。
そうしたペットを連れ去られたとなれば、被害感情が大きいことも当然考えられます。
被害者対応なども慎重に行うことが求められますから、刑事事件の専門家である弁護士に相談してみることが望ましいでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、窃盗事件を含む刑事事件を専門的に取り扱っています。
お悩みの際はお気軽に弊所弁護士までご相談ください。

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