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未成年にかかわる性犯罪~淫行②

2019-07-24

未成年にかかわる性犯罪~淫行②

~前回からの流れ~
会社員であるAさんは、SNSで知り合った16歳の女子高生を名乗るVさんと仲良くなり、滋賀県甲賀市のホテルで会うことになりました。
Aさんは、

①Vさんに「エッチしようよ」等と言ってVさんの同意のもと性行為をしましたが、特にお金をあげたり物をあげたりすることはなく、Vさんも要求することはありませんでした。(②以降省略)

その後、Vさんが滋賀県甲賀警察署に補導されたことでAさんとVさんの関係が露見し、Aさんは滋賀県甲賀警察署に逮捕されることとなってしまいました。
(※この事例はフィクションです。)

・淫行事件で疑われたら

前回の記事では、事例①のケースではAさんが滋賀県の青少年健全育成条例違反(淫行)の容疑をかけられたのだろう、ということについて触れました。
では、事例の①のケースのAさんのように淫行事件で被疑者となってしまったら、家族が淫行の容疑で逮捕されてしまったら、どのようにすべきなのでしょうか。

まず、淫行の容疑について被疑者本人が認めていない場合、例えば、相手について18歳未満であるという認識がなかった場合には、犯罪の認識がない(故意がない)として、無罪を主張することも考えられます。
しかし、滋賀県の青少年健全育成条例には以下のような規定も存在します。

滋賀県青少年の健全育成に関する条例27条5項
(略)または第23条から第25条までの規定に違反した者は、当該青少年の年齢を知らないことを理由として、第1項から第3項までの規定による処罰を免れることができない。
ただし、当該青少年の年齢を知らないことに過失がないときは、この限りでない。

淫行についての規定は、前回の記事で触れた通り、青少年健全育成条例の24条にあります。
つまり、滋賀県の青少年育成条例には、過失=不注意があって年齢を知らなかったとしても、淫行の罪によって処罰を受けることになるという決まりがあるのです。
こうした決まりもあることから、単に相手の年齢を知らなかったと無罪の主張をしたいと思っても、ただ年齢を知らなかったと言うだけではそもそも無罪の主張ともならない可能性があります。
まずは被疑者本人の主張と具体的な状況、青少年健全育成条例の決まりを照らし合わせて見通しを考えなければいけません。
そのためにも、まずは弁護士に相談されることをおすすめいたします。

一方、淫行の事実を認めていれば弁護士はいらないかというと、そういうわけではありません。
次回以降の記事で詳しく触れますが、性行為の際相手方に金銭を支払っていたり、対価として何か約束をしていたような場合には、青少年健全育成条例の淫行の罪ではなく、別の法律の児童買春の罪が成立します。
児童買春の罪となれば、淫行の罪よりもより重い刑罰が規定されているため、不当に重い罰を受けることになりかねません。
実際にあったのは淫行の事実だけであるのに、捜査機関からは児童買春についても疑われている、という状況も考えられます。
だからこそ、たとえ淫行の事実を認めている場合でも、自身に不利になる対応を意図せずにしてしまわないよう、弁護士のサポートを受けながら手続きを進めることが望ましいといえるのです。

また、淫行事件では、被害者である青少年への謝罪・弁償をすることが考えられますが、「青少年」は18歳未満の者とされていることが多いです。
そうなると、実際に謝罪や弁償をする相手としては、被害者である青少年自身ではなく、その青少年の保護者となることが多いです。
ここで、淫行事件では、たとえ被害者である青少年自身の同意があったとしても、淫行の罪は成立しますし、処罰されるということに注意が必要です。
「被害者とはいえ、あちらも同意していたのではないか」と不思議に思う方もいるかもしれませんが、淫行処罰規定を定める青少年健全育成条例は、名前の通り青少年の健全な育成を目指すものです。
淫行の罪は、18歳以上である加害者側が未熟である青少年を止めなければならない状況で淫行に応じてしまうという部分が問題となるため、青少年側の同意があったから必ず犯罪が成立しない、ということにはならないのです。
こうしたこともあり、被害者である青少年やその保護者へ謝罪・弁償を行うことが考えられるのです。

ですが、子供が性犯罪の被害に遭ったとなれば、保護者としては処罰感情が強くなることも当然です。
当事者同士の話し合いでは話が余計にこじれてしまったり、お互いの言い分を言い合うだけになってしまったりするおそれも考えられます。
そもそも、子供に悪影響を与えた人に一切かかわりたくない、と連絡さえ許してもらえない、ということも十分考えられます。
だからこそ、第三者的立場でお話しすることができ、法律の専門知識を備えた弁護士を挟むことで、適切な謝罪や示談交渉を行うことのできる可能性を上げることができるのです。
被害者との示談締結ができれば、寛大な処分を求める際の強い事情となることに加え、逮捕・勾留等の身体拘束がされている場合には、釈放に向けた大きな一歩ともなります。

滋賀県淫行事件にお困りの方は、まずは0120-631-881までお電話ください。
それぞれの事案に合った弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所弁護士によるサービスを、専門スタッフが丁寧にご案内いたします。

未成年にかかわる性犯罪~淫行①

2019-07-22

未成年にかかわる性犯罪~淫行①

会社員であるAさんは、SNSで知り合った16歳の女子高生を名乗るVさんと仲良くなり、滋賀県甲賀市のホテルで会うことになりました。
Aさんは、
①Vさんに「エッチしようよ」等と言ってVさんの同意のもと性行為をしましたが、特にお金をあげたり物をあげたりすることはなく、Vさんも要求することはありませんでした。
②Vさんに性行為を求め、Vさんが「3万円ならいいよ」と言ったので、3万円を支払ってVさんと性行為をしました。
③Vさんと性行為をしましたが、その際、Vさんの同意のもと、性行為をしている様子をスマートフォンで録画していました。
④Vさんと同意のもと性行為をしましたが、その後、Vさんが12歳であったことが発覚しました。
その後、Vさんが滋賀県甲賀警察署に補導されたことでAさんとVさんの関係が露見し、Aさんは滋賀県甲賀警察署に逮捕されることとなってしまいました。
(※この事例はフィクションです。)

・未成年にかかわる性犯罪

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所には、様々な刑事事件に関するご相談が寄せられていますが、「未成年と関係を持ってしまった」「家族が未成年に対する性犯罪で逮捕された」というご相談も多く寄せられます。
今回から複数回にわたって、事例の①~④のケースに沿いながら、未成年、特に18歳未満の者にかかわる性犯罪について触れていきます。

・淫行

まず、事例の①のケースを例に取って、どのような犯罪が成立しうるか検討していきましょう。
事例の①のケースでは、報道などでもよく聞かれる「淫行」の罪が成立することが考えられます。
報道番組等でも「誰々が淫行事件を起こした」というようなフレーズを聞いたことのある方も多いかもしれません。
ただし、日本の法律では、刑法上に「淫行罪」という犯罪があるわけではなく、こうした「淫行事件」の場合、各都道府県ごとに定められている、いわゆる青少年健全育成条例の中にある規定に違反していることを指す場合が多いです。
滋賀の青少年健全育成条例の淫行についての規定を見てみましょう。

滋賀県青少年の健全育成に関する条例24条1項
何人も、青少年に対していん行またはわいせつな行為をしてはならない。

各都道府県の青少年健全育成条例では、「青少年」として18歳未満の者を対象としていることが多いです。
滋賀県では、滋賀県の青少年健全育成条例10条の中で「青少年」を「6歳以上18歳未満の者をいい、婚姻した女子を除く。」としています。

そして、青少年健全育成条例にいう「淫行(いん行)」とは、一般に「広く青少年に対する性行為一般をいうものと解すべきでなく、青少年を誘惑し、威迫し、欺罔し又は困惑させる等その心身の未成熟に乗じた不当な手段により行う性交又は性交類似行為のほか、青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められないような性交又は性交類似行為」(最判昭和60.10.23)と解されています。
こうしたことから、婚約中であったり、それに準ずるようないわゆる真剣交際であったりする間柄以外での性行為や性交類似行為は青少年健全育成条例の「淫行」にあたると解される可能性が高いと考えられます(ただし、婚約中であったり真剣交際であったりしても必ずしも「淫行」に当てはまらないわけではないことに注意が必要です。)。

事例のAさんの①のケースでは、AさんはVさんが16歳=18歳未満の「青少年」であると認識しながら性行為をしており、2人は特に真剣交際をしているような間柄でもありません。
こうしたことから、AさんはVさんに対する淫行滋賀県の青少年健全育成条例違反の容疑がかけられたのだと考えられます。
滋賀県の青少年健全育成条例の淫行処罰規定に違反した場合、「1年以下の懲役または50万円以下の罰金」に処せられる可能性があります(滋賀県青少年の健全育成に関する条例27条1項)。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、0120-631-881で専門スタッフがいつでも弊所弁護士によるサービスのお問い合わせを受け付けております。
淫行事件で疑われている、淫行事件ご家族が逮捕されてしまった、という内容のご相談は非常にセンシティブなものですから、なかなか周囲に相談できるものでもありません。
しかし、弁護士であればご相談内容が外に漏れるという心配もありませんから、安心してご相談いただけます。
まずはお気軽にご相談ください。
次回の記事では、淫行事件の弁護活動について詳しく触れていきます。

ドリフト族の共同危険行為

2019-07-20

ドリフト族の共同危険行為

18歳のAさんは、複数の友人らとともに、滋賀県守山市で車を走らせていました。
Aさんらは、集団でドリフト走行を行ったり、蛇行運転をしたりしながら、その様子を動画で撮影し、楽しんでいました。
Aさんらは、いわゆる「ドリフト族」と呼ばれる集団でした。
ある日、仲間内の1人が、ドリフト走行等をしている動画をSNSにアップしたところ、滋賀県守山警察署が捜査を開始し、Aさんらは道路交通法上の共同危険行為をしたとして逮捕されてしまいました。
Aさんの両親は、Aさんが車を運転することを趣味にしていたことは知っていましたが、まさか「ドリフト族」に所属してそうした運転をしているとは思いもよらず、逮捕の知らせを受けて急いで弁護士に相談しました。
(※この事例はフィクションです。)

・ドリフト族と共同危険行為

ドリフト走行とは、カーブに入る際に意図的に車を滑らせて走行させる運転技術のことです。
日本では、1970年代頃から「ドリフト族」と呼ばれる、峠道や駐車場、湾岸地区などでドリフト走行を披露する暴走族の集団が現れたといわれています。

このドリフト族のように、集団で、車やバイクで走行し、ドリフト走行を行う行為は、道路交通法上の共同危険行為にあたり、道路交通法違反となる可能性が高いです。
共同危険行為は、2人以上で車やバイクを連ねて走行させたりして、著しく道路上の危険を発生させたり他人に迷惑を及ぼしたりする行為のことで、共同危険行為を行うと2年以下の懲役または50万円以下の罰金となります(道路交通法107条の3)。
さらに、たとえドリフト族のように集団で走行していなくとも、ドリフト走行を行うこと自体が道路交通法上の安全運転義務(70条)に違反し、3月以下の懲役または5万円以下の罰金となる可能性もあります(道路交通法109条9号)。
ただし、Aさんは18歳とのことで、20歳未満であるため、後述するようにこの共同危険行為事件少年事件として扱われますから、原則としてAさんがこれらの刑事罰を受けることはありません(ただし、交通事件の場合には、罰金を見越して「逆送」され、罰金という刑事罰を受けるパターンもあります。)。

・共同危険行為と少年事件

少年事件の場合、先ほど触れたように原則として刑事罰が下ることはありません。
ではどういった処分が下されるのかというと、少年院送致や児童自立支援施設送致、保護観察といった処分が考えられます。
これらは、少年事件を起こしてしまった少年が更生できるように行う、いわゆる「保護処分」です。

今回のAさんについて考えると、Aさんはドリフト族に所属し、共同危険行為を繰り返していたようです。
こうした場合、Aさんが同様の少年事件を起こさないようにするためには、まずはドリフト族とのかかわりを絶つことが考えられます。
そうすると、一度今までの環境から離れて生活することが適当と判断されることもあります。
ドリフト族など、暴走族に所属する少年の共同危険行為事件では、こうした考えから、少年院送致といった処分がとられることも珍しくありません。
もちろん、少年院は刑務所とは別で、少年の更生のための施設ですから、全く少年のためにならないということでもないでしょう。
しかし、少年院に行っている間は、少年は今まで生活してきた環境から全く別の環境に切り離され、満足に連絡や外出もできない状態になってしまいます。
そうなれば、せっかく通っていた学校や働いていた勤務先も失ってしまうということにもなりかねません。

ですから、こうした事件では、まずはドリフト族との関係を絶ちつつ、社会内で更生できるような環境を整えていくことが考えられます(こうした活動を「環境調整」と言ったりします。)。
ですが、「環境を整える」といっても、少年本人だけ、その周りの家族だけで取り組もうとしても、なかなか何をしたらいいのか分からないことも多いです。
さらに、何か取り組んだとしても、それをどこにどのように訴えるべきなのかも分からないでしょう。
だからこそ、少年事件に強い弁護士のサポートを受けることが望ましいのです。
専門家である弁護士が第三者としてアドバイスすることで、今まで気づけなかった少年事件の原因に気づくことができたり、なかなか家庭内の当事者同士で話しづらかったことを相談できたりといったことが期待できます。
弁護士はその道のプロですから、遠慮なく相談していきましょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、共同危険行為事件を含めた少年事件のご相談をいつでもうけつけております。
まずは0120-631-881までお気軽にお電話ください。

動物虐待で刑事事件②~鳥獣保護法違反

2019-07-18

動物虐待で刑事事件②~鳥獣保護法違反

滋賀県草津市に住んでいるAさんは、日ごろのストレスを発散するために、近所にたくさんいる鴨を捕まえて虐待しようと考えました。
そこで、Aさんは鴨を捕まえると、くちばしをガムテープで固定し、鴨をひもでベランダに括りつけました。
しかし、ひもがゆるかったためか、しばらくして鴨はAさんのベランダから逃走し、近所のWさんのベランダへたどり着きました。
Wさんは、くちばしをガムテープで巻かれている鴨を見て、動物虐待目的で捕まえられていたのではないかと考え、滋賀県草津警察署へ通報しました。
その後、Aさんは鳥獣保護法違反の容疑で逮捕されることになりました。
(※令和元年7月14日京都新聞配信記事を基にしたフィクションです。)

前回は、動物虐待事件の多くに適用される動物愛護法違反について取り上げました。
今回はそれ以外の犯罪にも触れていきます。

・鳥獣保護法

報道される動物虐待事件では、前回の記事の事例のような、動物に暴行を加えるなどしてけがをさせたり殺してしまったり、飼育放棄をしたりといった動物虐待の態様が多く、動物愛護法違反が話題となることも多いです。
しかし、動物虐待に関しては、動物愛護法違反以外の犯罪が成立する可能性もあります。
まずは、前回の記事で取り上げた、動物愛護法の動物虐待を禁止する条文を再度確認してみましょう。

動物愛護法44条
1項 愛護動物をみだりに殺し、又は傷つけた者は、2年以下の懲役又は200万円以下の罰金に処する。
2項 愛護動物に対し、みだりに、給餌若しくは給水をやめ、酷使し、又はその健康及び安全を保持することが困難な場所に拘束することにより衰弱させること、自己の飼養し、又は保管する愛護動物であつて疾病にかかり、又は負傷したものの適切な保護を行わないこと、排せつ物の堆積した施設又は他の愛護動物の死体が放置された施設であつて自己の管理するものにおいて飼養し、又は保管することその他の虐待を行つた者は、100万円以下の罰金に処する。
3項 愛護動物を遺棄した者は、100万円以下の罰金に処する。
4項 前3項において「愛護動物」とは、次の各号に掲げる動物をいう。
1号 牛、馬、豚、めん羊、山羊、犬、猫、いえうさぎ、鶏、いえばと及びあひる
2号 前号に掲げるものを除くほか、人が占有している動物で哺乳類、鳥類又は爬虫類に属するもの

この通り、動物愛護法の動物虐待の禁止の条文の対象となるのは、「愛護動物」であることが必要とされています。
しかし、「愛護動物」であるためには、「牛、馬、豚、めん羊、山羊、犬、猫、いえうさぎ、鶏、いえばと及びあひる」であるか、そうでなければ「人が占有している動物で哺乳類、鳥類又は爬虫類に属するもの」でなければいけません。
「人が占有する」とは、簡単に言えば人が管理・支配していることを指しますから、例えばペットなどはこれに当てはまるでしょう。
ですから、全く野生の鳥類などは、動物愛護法の「愛護動物」ではないということになります。

では、今回の事例のように、野生の鳥類を捕まえて動物虐待行為をしたような場合には、どうなるのでしょうか。
ここで、今回のAさんの逮捕容疑である鳥獣保護法違反が成立することが考えられるのです。
鳥獣保護法は、正式名称を「鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律」といい、名前の通り、鳥獣の保護だけでなく、その狩猟についての規制も定められている法律です。
この鳥獣保護法でいう「鳥獣」は、「鳥類又は哺乳類に属する野生動物」ですから(鳥獣保護法2条1項)、動物愛護法の「愛護動物」でない野生の鳥類等も含まれますから、動物愛護法違反とならない動物虐待行為でも、鳥獣保護法違反となる可能性があるということになるのです。

例えば、鳥獣保護法では、狩猟鳥獣の捕獲を狩猟期間や狩猟区域の外で行った場合、鳥獣保護法違反として処罰する旨を定めています。

鳥獣保護法83条1項
次の各号のいずれかに該当する者は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。
2号 狩猟可能区域以外の区域において、又は狩猟期間(略)外の期間に狩猟鳥獣の捕獲等をした者(第9条第1項の許可を受けた者及び第13条第1項の規定により捕獲等をした者を除く。)

動物虐待目的で野生の鳥類を捕まえた場合、狩猟期間や狩猟区域以外での捕獲であるとして、この鳥獣保護法の規定に違反する可能性があります。

鳥獣保護法は動物愛護法に比べて、より耳なじみのない法律かもしれません。
刑事事件専門弁護士が所属する弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、こうした耳なじみのないような犯罪・刑事事件にも迅速に対応を行います。
まずはフリーダイヤル0120-631-881までお電話ください。

動物虐待で刑事事件①~動物愛護法違反

2019-07-16

動物虐待で刑事事件①~動物愛護法違反

滋賀県草津市に住んでいるAさんは、日ごろのストレスを発散するために、近所にいる野良猫を捕まえては暴行していました。
ある日、Aさんの暴行を受けた野良猫を見た近所の人が、「動物虐待をしている人がいるようだ」と滋賀県草津警察署に通報したことで捜査が開始され、その後、Aさんは動物愛護法違反の容疑で逮捕されてしまいました。
Aさんの家族は、ニュース番組での報道を見て、Aさんが逮捕されたことを知ったのですが、どうすればよいのかわからず、ひとまず刑事事件に対応している弁護士に相談してみることにしました。
(※この事例はフィクションです。)

動物虐待事件はしばしばメディアで報道されるため、動物虐待をすれば犯罪となり、刑事事件となることをご存じの方も多いでしょう。
今回からは、動物虐待をした際に成立しうる犯罪について複数回に分けて取り上げていきます。

・動物愛護法

まずは、今回の事例のAさんの逮捕容疑でもあり、ニュースで動物虐待事件が取り上げられる多くの場合で目にするであろう「動物愛護法違反」という犯罪について触れていきましょう。
動物愛護法という法律は、正式には「動物の愛護及び管理に関する法律」という法律です。
動物愛護法の中の、動物虐待を禁止する条文を見てみましょう。

動物愛護法44条
1項 愛護動物をみだりに殺し、又は傷つけた者は、2年以下の懲役又は200万円以下の罰金に処する。
2項 愛護動物に対し、みだりに、給餌若しくは給水をやめ、酷使し、又はその健康及び安全を保持することが困難な場所に拘束することにより衰弱させること、自己の飼養し、又は保管する愛護動物であつて疾病にかかり、又は負傷したものの適切な保護を行わないこと、排せつ物の堆積した施設又は他の愛護動物の死体が放置された施設であつて自己の管理するものにおいて飼養し、又は保管することその他の虐待を行つた者は、100万円以下の罰金に処する。
3項 愛護動物を遺棄した者は、100万円以下の罰金に処する。

Aさんのしてしまった動物虐待行為のような、動物に暴行して傷つけたり、殺してしまったりするものについては、1項の条文で処罰が決められています。
そして、いわゆる飼育放棄や酷使といった動物虐待行為については、2項の条文で処罰が決められています。
さらに、動物を遺棄した場合には3項の条文が該当します。
しかし、この動物愛護法の条文にある「愛護動物」とは、全ての動物を対象としているわけではないことに注意が必要です。

動物愛護法44条4項
前3項において「愛護動物」とは、次の各号に掲げる動物をいう。
1号 牛、馬、豚、めん羊、山羊、犬、猫、いえうさぎ、鶏、いえばと及びあひる
2号 前号に掲げるものを除くほか、人が占有している動物で哺乳類、鳥類又は爬虫類に属するもの

これらの中に入っていない動物については、「愛護動物」である動物愛護法44条の対象にはなりませんから、その動物虐待行為は動物愛護法違反とはなりません(ですが、別の犯罪が成立する可能性は十分あります。次回の記事で詳しく取り上げます。)。

・動物愛護法の改正

つい先日、この動物愛護法が改正案が可決され、成立しました。
この改正動物愛護法では、ペット販売業者等についての規制等に加え、動物虐待行為の厳罰化がなされました。
現在、先ほど挙げた動物愛護法44条1項にある動物虐待行為は、「2年以下の懲役又は200万円以下の罰金」の法定刑となっていますが、改正後は「5年以下の懲役又は500万円以下の罰金」と大幅に強化されます。
そして、こちらも先ほど挙げた動物愛護法44条3項の動物虐待行為も、現在「100万円以下の罰金」と罰金刑のみの規定となっていますが、改正後は「1年以下の懲役又は100万円以下の罰金」と懲役刑となる可能性が出てきます。

このように、動物虐待による動物愛護法違反は世間的にも注目され、厳罰化の傾向にあります。
動物虐待による動物愛護法違反事件でお困りの際は、刑事事件専門弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所弁護士までご相談ください。

大津市の監護者性交等事件を相談②

2019-07-14

大津市の監護者性交等事件を相談②

~前回の流れ~
滋賀県大津市に住んでいるAさんには、妻のBさんと14歳の娘Vさんがいます。
ある日、Vさんがなかなか帰宅せず、不審に思ったBさんがVさんの通っている中学校に確認の電話を入れたところ、Vさんが児童相談所に保護されていると言われました。
驚いたBさんが児童相談所に問い合わせたところ、Vさんが学校でAさんから性交されたと相談したため、学校から児童相談所に通告され、保護するに至ったとのことでした。
児童相談所からは、検査の結果等も見るが今のところ滋賀県大津警察署に通報する予定であることも伝えられました。
それを聞いたAさんとBさんは、刑事事件に詳しい弁護士に相談することにしました。
(※この事例はフィクションです。)

・監護者性交等罪

前回の記事では、平成29年の刑法改正で監護者性交等罪が新設されたことに触れ、他の犯罪との比較を行いました。
今回の記事では、より詳しく監護者性交等罪について触れていきます。
まずは、監護者性交等罪の条文をもう一度確認してみましょう。

刑法179条2項(監護者性交等罪)
18歳未満の者に対し、その者を現に監護する者であることによる影響力があることに乗じて性交等をした者は、第177条の例による。

※注※
刑法177条(強制性交等罪)
13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いて性交、肛門性交又は口腔性交(以下「性交等」という。)をした者は、強制性交等の罪とし、5年以上の有期懲役に処する。
13歳未満の者に対し、性交等をした者も、同様とする。

条文を見ると、監護者性交等罪が成立するには、①18歳未満の者に対して、②その者を現に監護する者が、③監護する者であることによる影響力があることに乗じて、④性交等をする、ということが必要とされています。

①18歳未満の者に対して
これは文字通り、18歳未満の者に対して行為を行うということを指します。
「者」とあるだけですので、性別は問われません。

②その者を現に監護する者が
①が被害者についての条件であったのに対して、こちらは加害者となる者についての条件です。
ここでいう「監護」とは、保護・監督することを言います。
つまり、被害者である18歳未満の者を現在保護・監督している者ということになります。
最もイメージされやすい監護者は、その18歳未満の者と同居している親でしょう。
なお、同居しているかどうか、生活費は負担しているかどうかといった具体的な生活にかかわる状況から判断し、同居している親以外の者が監護者と認められる場合もあることに注意が必要です。

③監護する者であることによる影響力があることに乗じて
これは、監護者であるという立場を利用して性交等を行うことを指します。

強制性交等罪が成立するために、性交等の際に暴行や脅迫が用いられたことを要するのに対して、監護者性交等罪の成立には、そうした暴行・脅迫の存在は求められません。
これは、監護者とその監護を受けている者いう立場上、被害者が生活するうえで加害者に頼らなければならないという状況が多いということや、DV等が存在していた場合には事後的な報復をおそれてしまう可能性があること、被害者が幼く知識がない場合には、そもそも性的な被害に遭っていると分からない可能性があることなどが理由となっています。
こうしたことから、監護者性交等罪では「暴行・脅迫」を用いずとも、監護者という立場を利用していればそれと同等であるという判断をしているのです。

④性交等をする
性交等とは、強制性交等罪と同様、肛門性交や口腔性交といった性交類似行為も含みます。

この①~④を満たした場合、監護者性交等罪が成立するのです。
監護者性交等罪の成立・不成立で問題になりやすいのは特に②③の部分ですが、仮にこの部分が満たされなかった場合には、前回の記事で取り上げた、児童福祉法違反や都道府県の青少年保護育成条例違反といった犯罪が成立すると考えられます。

・監護者性交等罪は重い犯罪

監護者性交等罪は非常に重い罪で、法定刑は御覧いただいた通り、「5年以上の有期懲役」です。
執行猶予を付けることができるのは、言い渡された刑が3年以下の場合に限られます。
したがって、監護者性交等罪は原則として執行猶予を付けることができない犯罪であり、有罪となれば基本的に刑務所に行くことになります。

さらに、犯罪の性質上悪質性が高いと判断されるケースも多く、たとえ被害者である子どもやその親権者等が加害者を許すとしていても実刑判決が下されることもあります。
実際に、被害少女や加害者の妻が執行猶予を求める嘆願書を出していた監護者性交等事件で懲役6年の実刑判決が出たという事例も見られます(大津地判平成30.7.31)。

これだけ重い犯罪であるため、監護者性交等事件の被疑者となってしまったら、すぐに弁護士に相談することが望ましいでしょう。
逮捕や取調べ直後から弁護士のサポートを受けることによって、その後の公判弁護活動にも幅が生まれます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件専門の弁護士がご相談に乗らせていただきます。
まずは0120-631-881までお問い合わせください。

大津市の監護者性交等事件を相談①

2019-07-12

大津市の監護者性交等事件を相談①

滋賀県大津市に住んでいるAさんには、妻のBさんと14歳の娘Vさんがいます。
ある日、Vさんがなかなか帰宅せず、不審に思ったBさんがVさんの通っている中学校に確認の電話を入れたところ、Vさんが児童相談所に保護されていると言われました。
驚いたBさんが児童相談所に問い合わせたところ、Vさんが学校でAさんから性交されたと相談したため、学校から児童相談所に通告され、保護するに至ったとのことでした。
児童相談所からは、検査の結果等も見るが今のところ滋賀県大津警察署に通報する予定であることも伝えられました。
それを聞いたAさんとBさんは、刑事事件に詳しい弁護士に相談することにしました。
(※この事例はフィクションです。)

・Aさんに容疑がかかる犯罪は?

今回Aさんに容疑がかかる可能性のある犯罪としては、刑法上の「監護者性交等罪」が考えられます。

刑法179条
1項 18歳未満の者に対し、その者を現に監護する者であることによる影響力があることに乗じてわいせつな行為をした者は、第176条の例による。
2項 18歳未満の者に対し、その者を現に監護する者であることによる影響力があることに乗じて性交等をした者は、第177条の例による。

※注※
刑法176条(強制わいせつ罪)
13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、6月以上10年以下の懲役に処する。
13歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。

刑法177条(強制性交等罪)
13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いて性交、肛門性交又は口腔性交(以下「性交等」という。)をした者は、強制性交等の罪とし、5年以上の有期懲役に処する。
13歳未満の者に対し、性交等をした者も、同様とする。

つまり、監護者わいせつ罪となれば、強制わいせつ罪と同様の「6月以上10年以下の懲役」という刑罰を受けることになり、監護者性交等罪となれば、強制性交等罪と同様の「5年以上の有期懲役」という刑罰を受けることになります。

・監護者性交等罪はなぜできた?

今回の事例で問題となるであろう監護者性交等罪ですが、その名前には聞きなじみがないと思う方も多いかもしれません。
監護者性交等罪は、平成29年に行われた刑法改正で新設された犯罪なのです。

監護者性交等罪ができるまでは、「監護者」=18歳未満の者を保護・監督している者が18歳未満の者に対して性交等の行為やわいせつ行為をしても、暴行や脅迫を用いられていなければ(または被害者が13歳未満の者でなければ)、「児童福祉法違反」や各都道府県の「青少年保護育成条例違反」という犯罪が成立するにとどまりました(暴行・脅迫が認められた場合や相手が13歳未満であった場合には、旧「強姦罪」や「強制わいせつ罪」が適用されていました。)。

児童福祉法34条
1項 何人も、次に掲げる行為をしてはならない。
6号 児童に淫行をさせる行為

「淫行」は性交類似行為を指すとされていますから、わいせつ行為や性交等は「淫行」にあたると考えられます。
児童福祉法の「児童」は18歳未満の者を指します。
同様に、滋賀県の青少年保護育成条例では、以下のように規定されています。

青少年の健全な育成に関する条例(滋賀県)24条
何人も、青少年に対して行またはわいせつな行為をしてはならない。

青少年保護育成条例では、未婚の18歳未満の者を「青少年」としているところが多いです。

さて、この淫行をさせる行為による児童福祉法違反では、法定刑が「10年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金に処し、又はこれを併科」となっており(児童福祉法60条1項)、滋賀県の青少年保護育成条例違反では「1年以下の懲役または50万円以下の罰金」となっています。
これは強制性交等罪の法定刑である「5年以上の有期懲役」や強制わいせつ罪の法定刑である「6月以上10年以下の懲役」よりも軽い刑罰となっています。
しかし、監護者であることを利用して性交等やわいせつ行為を18歳未満の者にすることは、強制性交等罪や強制わいせつ罪と同じくらい悪質であるとして、監護者性交等罪や監護者わいせつ罪が新しく規定されたのです。

このように、法律の改正によって新しく犯罪ができることもあり、こうした犯罪にも迅速に対応することが求められます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所刑事事件を専門に取り扱う法律事務所です。
監護者性交等罪など、まだできて間もなく、事例も多くない犯罪であっても、今までの経験や知識から、丁寧にご相談に乗らせていただきます。
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飲酒運転を隠そうと逃亡…これも犯罪に?③

2019-07-10

飲酒運転を隠そうと逃亡…これも犯罪に?③

~前回からの流れ~
滋賀県大津市のAさんは、仕事から帰宅後、飲酒していました。
ふとAさんは、帰路に買って帰ろうと思っていた日用雑貨を買い忘れて帰ってきてしまったことを思い出しました。
そこでAさんは、「そんなに遠い距離ではないし大丈夫だろう」と思い、飲酒運転をしながらホームセンターに向かいました。
するとその道中で、歩行者Vさんと接触し、けがをさせてしまうという人身事故を起こしてしまいました。
このままでは飲酒運転がばれてしまうと焦ったAさんは、Vさんに声をかけることもなく、そのまま自動車で走り去り、コンビニで水を購入して飲む等をしました。
しかし、15分後、通報を受けて捜査していた滋賀県大津北警察署の警察官により、Aさんは警察署に任意同行され、その後逮捕されてしまいました。
(※この事例はフィクションです。)

前回の記事で触れた、自動車運転処罰法の中にある「過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱罪」は、いわゆる「逃げ得」防止のための規定です。
今回は、なぜこの過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱罪が規定されることになったのか、また、過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱罪を疑われた際どういった対応が考えられるのか、といった部分に触れていきます。

・「逃げ得」?

飲酒運転をして人身事故を起こしてしまった場合、前回までの記事で触れたように、自動車運転処罰法内に規定されている危険運転致死傷罪にあたる可能性が出てきます。
しかし、飲酒運転が発覚しなければ、この危険運転致死傷罪が適用されなくなる可能性が出てきます。

例えば、酩酊状態で飲酒運転をして人身事故を起こし、危険運転致死傷罪が適用されてしまった場合、被害者が怪我をしていれば15年以下の懲役被害者が死亡していれば1年以上の有期懲役(上限20年)となることになります。
しかし、その場を立ち去り酔いがさめたりアルコール濃度が下がったりするまで待ったり、水を飲む等してアルコール濃度を下げる行為をして、アルコール濃度を検知できないようにしたり酩酊状態でないようにしたりすれば、危険運転致死傷罪の成立要件である、「アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させ」たと確認できず、ひき逃げによる道路交通法違反と過失運転致死傷罪が成立するにとどまることになります(事故後にアルコールを摂取した場合、検知されたアルコールが事故前に飲まれていたものなのか、事故後に飲まれたものなのか分からなくなるため、同じく飲酒運転をしていたかどうかの確認ができなくなります。)。
そうなると、ひき逃げ+過失運転致死傷罪は最高でも15年の懲役となりますので、最高20年の懲役となる危険運転致死傷罪よりも軽くなってしまいます。
これが逃げた方が得=「逃げ得」であるとされてきたのです。

そういった「逃げ得」を防止するため、今回取り上げた「過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱罪」が規定されたのです。
「過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱罪」が認められた場合、ひき逃げと合わせて最高18年の懲役が科される可能性があります。

・Aさんの事件で考えられる対応

今回のAさんは、飲酒運転の発覚をおそれ、逃亡したうえに水を飲んでアルコール値を下げるための行為をしています。
ですから、過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱罪とひき逃げに問われる可能性が考えられます。
ただし、もしもAさんが、実は飲酒運転発覚を避けるために逃げたり水を飲んだりしていたわけではなかったような場合、過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱罪については冤罪であることになります。
先ほど触れたように、過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱罪はひき逃げと合わさると非常に重い刑罰が科せられる可能性があります。
冤罪である場合はもちろん、そうでない場合も、弁護士の助言を逐一受けながら、取調べに臨むことが望ましいでしょう。

また、今回は人身事故ですから、けがをしてしまった歩行者Vさんという被害者の方が存在しています。
Vさんへの謝罪や被害弁償といった被害者対応も必要となることが考えられます。
ただし、Aさんは人身事故を起こした後に逃げてしまっていることから、Vさんの被害感情や処罰感情が大きいことも予想されます。
そうした場合には、直接話し合いを行うことで不要なトラブルを招いてしまったり、そもそも話し合いの場についてもらえないということも考えられます。
刑事手続きに有効な示談締結をするためにも、専門家であり第三者である弁護士のサポートが有効です。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所には、飲酒運転に関連した刑事事件のご相談も数多く寄せられています。
刑事事件専門の弁護士が、それぞれの事件ごとの事情をお伺いし、丁寧に対応や見通しをお話いたします。
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飲酒運転を隠そうと逃亡…これも犯罪に?②

2019-07-08

飲酒運転を隠そうと逃亡…これも犯罪に?②

~前回からの流れ~
滋賀県大津市のAさんは、仕事から帰宅後、飲酒していました。
ふとAさんは、帰路に買って帰ろうと思っていた日用雑貨を買い忘れて帰ってきてしまったことを思い出しました。
そこでAさんは、「そんなに遠い距離ではないし大丈夫だろう」と思い、飲酒運転をしながらホームセンターに向かいました。
するとその道中で、歩行者Vさんと接触し、けがをさせてしまうという人身事故を起こしてしまいました。
このままでは飲酒運転がばれてしまうと焦ったAさんは、Vさんに声をかけることもなく、そのまま自動車で走り去り、コンビニで水を購入して飲む等をしました。
しかし、15分後、通報を受けて捜査していた滋賀県大津北警察署の警察官により、Aさんは警察署に任意同行され、その後逮捕されてしまいました。
(※この事例はフィクションです。)

前回の記事では、飲酒運転や、飲酒運転中の人身事故に関わる犯罪について取り上げました。
上記事例Aさんは飲酒運転中に人身事故を起こしているわけですから、飲酒運転による道路交通法違反と過失運転致傷罪、もしくは危険運転致傷罪、さらにひき逃げによる道路交通法違反に該当するでしょう。
しかし、上記事例のAさんには、この他にも該当する可能性のある犯罪が考えられます。
今回はその犯罪について詳しく考えていきましょう。

・飲酒運転を隠そうと逃亡したら

上記事例のAさんは、飲酒運転をしていたことが発覚するのをおそれ、その場を逃げ去り、コンビニで水を購入して飲む等しています。
こうした場合、人身事故を起こしたことで成立する自動車運転処罰法違反や飲酒運転をしたことで成立する道路交通法違反以外に別の犯罪に問われる可能性が出てきます。
それが、自動車運転処罰法にある以下の規定です。

自動車運転処罰法4条(過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱罪)
アルコール又は薬物の影響によりその走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で自動車を運転した者が、運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた場合において、その運転の時のアルコール又は薬物の影響の有無又は程度が発覚することを免れる目的で、更にアルコール又は薬物を摂取すること、その場を離れて身体に保有するアルコール又は薬物の濃度を減少させることその他その影響の有無又は程度が発覚することを免れるべき行為をしたときは、12年以下の懲役に処する。

この規定に違反することは、通称「過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱罪」と言われています。
長い罪名でなかなか分かりにくい罪ですが、簡単に言えば、ある程度の飲酒運転で人身事故を起こしたにも関わらず、飲酒運転の発覚やその程度をうやむやにするために、事故後にあえてアルコールを摂取したり、事故現場を離れてアルコール濃度を下げるための行為等をしたときに成立する犯罪です。
なぜこのような規定があるかというと、人身事故後に現場から逃げ、飲酒運転をしていたかどうか分からなくしてしまうことで、飲酒運転にかかる部分の犯罪を証明できなくする、いわゆる「逃げ得」を防止するためであるといわれています。

では具体的に「逃げ得」とは、どのような状態を指すのでしょうか。

次回の記事で詳しく取り上げます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱罪といったなかなか聞きなじみがなく、わかりづらい犯罪についても、刑事事件専門の弁護士がご相談に乗らせていただきます。

交通事故に関わる刑事事件の場合、「飲酒運転」「人身事故」という一般に言われるワードは知っていても、実際に成立する犯罪や、それがどれほどの重さ・見通しとなるのかはなかなかわかりづらいでしょう。

弁護士であれば、刑事事件の専門家ですから、そうした部分についても事細かに聞くことができます。

お問い合わせは0120-631-881までいつでもお気軽にお電話ください。

 

飲酒運転を隠そうと逃亡…これも犯罪に?①

2019-07-06

飲酒運転を隠そうと逃亡…これも犯罪に?①

滋賀県大津市のAさんは、仕事から帰宅後、飲酒していました。
ふとAさんは、帰路に買って帰ろうと思っていた日用雑貨を買い忘れて帰ってきてしまったことを思い出しました。
そこでAさんは、「そんなに遠い距離ではないし大丈夫だろう」と思い、飲酒運転をしながらホームセンターに向かいました。
するとその道中で、歩行者Vさんと接触し、けがをさせてしまうという人身事故を起こしてしまいました。
このままでは飲酒運転がばれてしまうと焦ったAさんは、Vさんに声をかけることもなく、そのまま自動車で走り去り、コンビニで水を購入して飲む等をしました。
しかし、15分後、通報を受けて捜査していた滋賀県大津北警察署の警察官により、Aさんは警察署に任意同行され、その後逮捕されてしまいました。
(※この事例はフィクションです。)

・飲酒運転と人身事故

飲酒運転をしてしまうと、その態様によって道路交通法の中の「酒酔い運転」もしくは「酒気帯び運転」に当たる可能性が出てきます。
さらにその飲酒運転中に人身事故を起こしてしまえば、自動車運転処罰法(正式名称「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」)の中の「過失運転致死傷罪」や「危険運転致死傷罪」に当たる可能性が出てきます。

道路交通法65条
1 何人も、酒気を帯びて車両等を運転してはならない。

道路交通法117条の2
次の各号のいずれかに該当する者は、5年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。
1 第65条(酒気帯び運転等の禁止)第1項の規定に違反して車両等を運転した者で、その運転をした場合において酒に酔つた状態(アルコールの影響により正常な運転ができないおそれがある状態をいう。以下同じ。)にあつたもの

道路交通法117条の2の2
次の各号のいずれかに該当する者は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
3 第65条(酒気帯び運転等の禁止)第1項の規定に違反して車両等(軽車両を除く。次号において同じ。)を運転した者で、その運転をした場合において身体に政令で定める程度以上にアルコールを保有する状態にあつたもの

自動車運転処罰法2条
次に掲げる行為を行い、よって、人を負傷させた者は15年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は1年以上の有期懲役に処する。
1 アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させる行為

自動車運転処罰法3条
アルコール又は薬物の影響により、その走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で、自動車を運転し、よって、そのアルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態に陥り、人を負傷させた者は12年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は15年以下の懲役に処する。

自動車運転処罰法5条
自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処する。
ただし、その傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができる。

軽微な態様の飲酒運転での人身事故であった場合には、道路交通法違反+過失運転致死傷罪となることも多いですが、飲酒運転の態様次第では、「正常な運転が困難な状態」もしくは「正常な運転に支障が生じる恐れがある状態」にも関わらず運転して事故を起こしたとして、危険運転致死傷罪となることも考えられます。
さらにこうした人身事故を起こしながら、通報や救護を行わずに現場を立ち去った場合には、ひき逃げとして以下の道路交通法の規定にも反することになります。

道路交通法72条
交通事故があつたときは、当該交通事故に係る車両等の運転者その他の乗務員(以下この節において「運転者等」という。)は、直ちに車両等の運転を停止して、負傷者を救護し、道路における危険を防止する等必要な措置を講じなければならない。この場合において、当該車両等の運転者(運転者が死亡し、又は負傷したためやむを得ないときは、その他の乗務員。以下次項において同じ。)は、警察官が現場にいるときは当該警察官に、警察官が現場にいないときは直ちに最寄りの警察署(派出所又は駐在所を含む。以下次項において同じ。)の警察官に当該交通事故が発生した日時及び場所、当該交通事故における死傷者の数及び負傷者の負傷の程度並びに損壊した物及びその損壊の程度、当該交通事故に係る車両等の積載物並びに当該交通事故について講じた措置を報告しなければならない。

ここに加え、飲酒運転が発覚するのを防ぐために事故現場から立ち去ったような場合には、さらに別の犯罪が成立する可能性があります。
次回の記事で詳しく取り上げます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、飲酒運転や人身事故による刑事事件についてもご相談を受け付けています。
0120-631-881でいつでも弊所弁護士によるサービスについてご案内しておりますので、飲酒運転・人身事故に関する刑事事件でお悩みの際はお気軽にお電話ください。

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