Archive for the ‘財産事件’ Category
保険金の水増し請求で詐欺罪に
保険金の水増し請求で詐欺罪に
保険金の水増し請求で詐欺罪に問われたケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
Aさんは、滋賀県大津市で整骨院を経営していました。
Aさんは、交通事故に遭って治療のためにやってきた患者Bさんと共謀して、Bさんの通院日数や治療内容を偽造し、保険会社に保険金を水増しして請求しました。
しかし、保険会社の調査が入り、AさんとBさんが共謀して保険金を水増し請求をしていたことが発覚。
保険会社は滋賀県大津北警察署に通報し、滋賀県草津警察署は捜査を開始しました。
その結果、AさんとBさんは、詐欺未遂罪の容疑で、滋賀県大津北警察署に逮捕されることとなりました。
(※この事例はフィクションです。)
・保険金の水増し請求で詐欺罪に
実際には行っていない治療や入院、通院を偽造して保険会社へ保険金を水増し請求し、水増しされた保険金を受け取れば、詐欺罪が成立する可能性があります。
詐欺事件というと最近ではオレオレ詐欺などに代表される振り込め詐欺が有名ですが、こうした水増し請求による詐欺事件も、詐欺事件の典型例です。
保険会社としては、請求された分の治療や入院・通院があることを基にして、その分の保険金を支払っています。
ですが、実はその治療等が存在しない水増し請求であったとなれば、保険会社から水増し分の保険金をだまし取っている=「人を欺いて」保険金を得ているので、詐欺罪が成立しうるということになります。
刑法第246条第1項
人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。
詐欺罪にいう「人を欺く」行為とは、その財物を交付する際に交付の判断を左右するような重要な事実を偽ることであるとされています。
今回の事例のような保険金の水増し請求の事例では、保険会社がその保険金額を支払う根拠となる通院日数や入院日数、治療内容といった部分に嘘があるということになりますから、詐欺罪のいう「人を欺」くことに該当するのです。
そして、今回の事例では、保険金が支払われる前に保険会社が保険金の水増し請求に気づいていますが、こうした場合でも、水増し請求を行った時点で詐欺未遂罪が成立します。
保険金の水増し請求による詐欺事件では、今回の事例のように、客や整骨院・病院の従業員が一緒になって詐欺行為をする手口が取られやすいです。
すなわち、詐欺事件の事件関係者が複数人存在するということになるため、捜査機関や裁判所は、口裏合わせなどによって証拠隠滅されるのではないかと懸念することが予想されます。
こうしたことから、逮捕や勾留によって身体拘束されたうえで捜査されることも充分考えられます。
また、余罪があるのではないかと疑われることや、余罪が存在する場合は再逮捕が繰り返されて長期間の身体拘束となることも考えられます。
早めに弁護士に相談・依頼することで、このような事態にも迅速に対応してもらえることが期待できます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、保険金の水増し請求による詐欺事件についてもご相談・ご依頼を受け付けています。
突然の逮捕にお困りの方、水増し請求による詐欺事件にお悩みの方は、まずはお気軽にご相談ください。
ひったくりと事後強盗罪
ひったくりと事後強盗罪
ひったくりと事後強盗罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
Aさんは、滋賀県草津市内の路上を自転車に乗って走行中、自転車の前かごにバッグを入れて歩いているVさんを見かけました。
Aさんは、「荷物を簡単に取れそうだ」と思い、Vさんの横を通り過ぎざまに、Vさんのバッグをひったくり、そのまま立ち去ろうとしました。
しかし、VさんはすぐにAさんを追いかけ、Aさんの服を掴んでバッグを取り返そうとしました。
Aさんは、バッグを取り返されまいと、追いすがるVさんを突き飛ばして転倒させ、Vさんを振り切るとそのまま逃走しました。
一部始終を目撃していた人が滋賀県草津警察署に通報したことで捜査が開始され、Aさんは事後強盗罪の容疑で逮捕されました。
ひったくりのつもりが強盗罪という容疑で逮捕されたAさんは驚き、家族の依頼で接見に訪れた弁護士に相談することにしました。
(※この事例はフィクションです。)
・ひったくりが強盗罪となるケースは?
前回の記事では、一般にひったくりは窃盗罪に問われるケースが多いものの、被害者の生命・身体に及ぼす危険の高い暴行によって財物を奪取したことが認められる場合になどには、強盗罪とされるケースもあるということを取り上げました。
そのようなケース以外にも、ひったくりが強盗罪とされうるケースとして、今回の事例のようなケースが考えられます。
刑法では、事後強盗罪という犯罪を定めています。
刑法第238条(事後強盗罪)
窃盗が、財物を得てこれを取り返されることを防ぎ、逮捕を免れ、又は罪跡を隠滅するために、暴行又は脅迫をしたときは、強盗として論ずる。
事後強盗罪は、大まかにいえば、通常の強盗罪とは成立の条件の順序が逆になっている強盗罪です。
通常の強盗罪は、暴行・脅迫を手段として財物を奪うという犯罪です。
対して事後強盗罪は、財物を取得した後に、その財物を取り返されることや逮捕の回避、罪跡を隠滅する目的で暴行・脅迫をした者に成立する犯罪です。
文字通り、事後的に暴行・脅迫した場合に成立する強盗罪ということになるでしょう。
事後強盗罪の暴行・脅迫も、強盗罪と同様に相手方の反抗を抑圧しする程度の強度が要求されます。
事後強盗罪の条文の主語が「窃盗が」となっていることからわかるように、事後強盗罪の主体は、窃盗犯人(未遂を含む)でなければなりません。
事後強盗罪が成立するためには、窃盗犯人が行った暴行・脅迫が、
①財物を得てこれを取り返されることを防ぐ目的
②逮捕を免れる目的
③罪跡を隠滅する目的
のいずれかの目的で行われなければなりません。
たとえ窃盗罪にあたるひったくりであっても、財物を奪った後に上記①~③の目的で暴行・脅迫を行った場合には事後強盗罪に問われる可能性があるということになります。
例えば、今回の事例のAさんの場合、Aさんは一度ひったくり=窃盗罪にあたる行為をしてVさんのバッグを得ていますが、Vさんがバッグを取り返そうと追いすがってきたため、バッグを取り返されまいとしてAさんを突き飛ばすといった暴行を加えています。
これは①にあたる目的で暴行を加えたものと考えられますから、Aさんには事後強盗罪の容疑がかかったのでしょう。
ひったくりというと聞こえは軽いかもしれませんが、事情によっては強盗罪のような重大犯罪にも発展し得る犯罪行為です。
そこから強盗致傷罪や強盗致死罪に発展してしまえば、裁判員裁判の対象ともなるため、さらに複雑な刑事手続が予想されます。
強盗罪まで至らずとも、ひったくりの際に被害者に怪我をさせてしまったり暴行を加えてしまったりしたことで、傷害罪や暴行罪といった別の犯罪が成立するケースもあります。
単純な犯罪のように見えますが、たかがひったくりと考えず、早い段階から弁護士に相談しておきましょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、ひったくりを含む刑事事件についてのご相談・ご依頼を受け付けています。
まずはお気軽にご相談下さい。
ひったくりをして現行犯逮捕されたら
ひったくりをして現行犯逮捕されたら
ひったくりをして現行犯逮捕されたというケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
Aさんは、滋賀県大津市の路上で、買い物帰りの通行人Vさん横を原付に乗って走り去る際に、Vさんの持っていたバッグをひったくりました。
その際、Vさんはバッグをひったくられた衝撃で転倒して軽いけがをしました。
見ていた人がすぐに通報し、近くにいた滋賀県大津警察署の警察官が駆け付け、Aさんを追いかけた結果、Aさんは現場から少し離れたところで窃盗罪の容疑で現行犯逮捕されました。
Aさんの逮捕を知ったAさんの両親は、驚くと同時にAさんの力になれないかと考え、滋賀県の刑事事件に対応している弁護士を探し、接見に行ってもらうことにしました。
(※この事例はフィクションです。)
・ひったくりと成立する犯罪
皆さんはひったくりと聞いて、どういった犯罪がイメージされるでしょうか。
財物を強奪するというイメージから、強盗罪を思い浮かべる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、一般にひったくりは窃盗罪が成立することの多い犯罪です。
刑法第235条(窃盗罪)
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
刑法第236条第1項(強盗罪)
暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取した者は、強盗の罪とし、5年以上の有期懲役に処する。
一般的にひったくりが強盗罪ではなく窃盗罪に問われるのは、ひったくり行為によって被害者から財物を得る際、強盗罪の成立に必要な「暴行又は脅迫」が存在しないことが多いと考えられているためです。
窃盗罪と強盗罪は、どちらも不法領得の意思をもって被害者の意思に反してその財物の占有を取得・移転させる犯罪です。
占有とは、財物に対する事実的支配のことを指し、不法領得の意思とは、権利者を排除して他人の物を自己の所有物と同様に利用しまたは処分する意思・目的を意味します。
つまり、窃盗罪と強盗罪は、被害者の意思に反して被害者の財物を自分のものとしてしまうという犯罪、という点では同じであるといえます。
しかし、強盗罪は、被害者の意思に反して被害者の財物を自分のものとしてしまう手段として、「暴行又は脅迫」が用いられることを成立の条件としているため、そこで窃盗罪との違いが出てきます。
多くの場合、ひったくりは、バイクや自転車等で急速に接近しつつ無理矢理被害者の所持品を奪う手口が用いられます。
そのため、ひったくり行為には広い意味で暴行は存在していると考えられるでしょう。
ですが、強盗罪の「暴行又は脅迫」という条件は単に暴行や脅迫があったというだけでは満たされず、被害者の抵抗を抑圧する程度の強さがなければならないと考えられています。
そのため、ひったくりのような形で被害者がその暴行により反抗を抑圧された結果として財物を奪われたとはいえないのであれば、ひったくりは被害者の隙に乗じて財物の占有を奪ったにすぎないと考えられ、窃盗罪に問われることになると考えられます。
ただし、ひったくりがどんなケースでも必ず窃盗罪になり、強盗罪は成立しないのかというとそうではありません。
先ほど触れたように、強盗罪は被害者の抵抗を押さえつける程度の強さの「暴行又は脅迫」をもってその財物を奪えば成立することになります。
例えば、ひったくりをしようとして被害者の荷物を掴んだものの、被害者がその荷物を奪われまいと抵抗して荷物を離さなかったという場合に、無理矢理被害者をひきずったり転ばせたりして被害者の生命・身体に対して危険性の高い暴行を加えて荷物を奪い取れば、それは被害者の抵抗を抑圧する強さの「暴行」をして財物を奪取したということになりますから、ひったくりであっても強盗罪が成立する可能性が出てくるということになります。
実際に、過去にはこうしたケースでひったくりが強盗罪にあたると判断された判例も存在します(最判昭和45.12.22)。
ひったくりという行為を聞いただけでは、実は成立する犯罪を決め付けることはできません。
これはひったくりに限らず、刑事事件全般にいえることです。
小さな事情によって成立する犯罪や刑事手続きが変わることは刑事事件ではよくあることです。
だからこそ、刑事事件の当事者になってしまったら、まずは弁護士に相談してみましょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件専門の弁護士がご相談を受け付けています。
まずはスタッフがご案内しますので、0120-631-881までお問い合わせください。
キセル乗車事件を弁護士に相談
キセル乗車事件を弁護士に相談
キセル乗車事件を弁護士に相談するケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
Aさんは滋賀県大津市内を通る駅間をキセル乗車によって移動することを常習的に行っていました。
ある日、Aさんがいつものようにキセル乗車をして駅の改札を出たところ、滋賀県大津北警察署の警察官に呼び止められました。
どうやら、鉄道会社がキセル乗車の被害に困り、警察に相談したようです。
Aさんは、後日取調べに呼び出されることになったのですが、どのように対応すべきか分かりません。
そこでAさんは、刑事事件を取り扱う弁護士に相談してみることにしました。
(※この事例はフィクションです。)
・キセル乗車
キセル乗車とは、ある駅からある駅まで電車に乗って移動する際、途中の駅までの乗車券を使って駅の改札を通って乗車し、降車時には途中の駅から到着地までの乗車券を使って到着地の駅の改札を通ることで、出発地の駅と到着地の駅の間にある分の運賃の支払いを免れることをいいます。
キセル乗車は、キセルが吸口と火皿の両端に金具を用いていることになぞらえてキセル乗車と呼ばれるようになったようです。
・キセル乗車と詐欺罪
このキセル乗車を行うことは詐欺罪(刑法第246条第2項)に問われる可能性があります。
刑法第246条(詐欺罪)
第1項 人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。
第2交 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。
刑法第246条第2項に当たることによる詐欺罪、いわあゆる2項詐欺罪(詐欺利得罪とも呼ばれます)は、人を騙して財産上不法の利益を得、または他人に得させることで成立します。
キセル乗車によって詐欺罪が成立することを説明する説には、乗車駅基準説と下車駅基準説と呼ばれる2つの説が存在します。
乗車駅基準説は、乗車駅で到着地の駅まで乗車する意思を持っているのにもかかわらず、途中の駅までしか乗らないように装って入場したところに詐欺罪の「人を欺」く行為(欺罔行為)があり、輸送という有償的役務の提供を受けた点に財産上不法の利益の取得があると考える説です。
対して、下車駅基準説は、下車駅で途中区間の運賃を支払うことなく、あたかも途中の駅から乗車したように装って出場するところに詐欺罪の「人を欺」く行為(欺罔行為)があり、途中区間を含む運賃精算義務を免れた点に財産上不法の利益の取得があると考える説です。
実務においてはキセル乗車をめぐる最高裁判例はなく、高裁判例では各事件ごとに被害者の処分行為(財産上の利益の提供)の有無や欺罔行為の要件を充たしているかどうかなどで詐欺罪の成立を否定するケースもあり、判断が分かれています。
ただし、注意しなければならないのは、詐欺罪が成立するためには欺罔行為の相手方が人でなければないということです。
現在の多くの駅では自動改札機の設置が進み自動化されているため、キセル乗車で詐欺罪に問われる可能性があるのは自動改札機のない駅(人が切符を確認する駅)を利用する場合に限られます。
・キセル乗車と電子計算機使用詐欺罪
では、自動改札機を通過した場合ではなんの犯罪も成立しないのかというと、そうではありません。
も機会を騙したとして電子計算機使用詐欺罪(刑法第246条の2)に問われる可能性があります。
刑法第246条の2(電子計算機使用詐欺罪)
前条に規定するもののほか、人の事務処理に使用する電子計算機に虚偽の情報若しくは不正な指令を与えて財産権の得喪若しくは変更に係る不実の電磁的記録を作り、又は財産権の得喪若しくは変更に係る虚偽の電磁的記録を人の事務処理の用に供して、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者は、10年以下の懲役に処する。
過去の裁判例の中には、使用された乗車券・回数券の記録が「虚偽の電磁的記録」に当たるとして電子計算機使用詐欺罪の成立を認めたものがあります。
この事件で使われた乗車券や回数券は不正な改変がなされたものではありませんでしたが、それぞれにエンコードされ、自動改札機等の事務処理システムにより認識される入場情報は実際の者とは異なるという意味で「虚偽」のものであると考えられたようです。
・キセル乗車と鉄道営業法違反
キセル乗車は、こうした詐欺罪以外の犯罪として鉄道営業法違反という犯罪になる可能性もあります。
鉄道営業法第29条では、鉄道係員の許諾を受けずに有効な乗車券で乗車した場合,乗車券に指示されたものより優等な車両に乗った場合、乗車券に指示されている停車場以外で下車した場合をそれぞれ処罰対象としています。
鉄道営業法第29条違反の法定刑は、2万円以下の罰金または科料です。
キセル乗車は被害額が少額である場合が多いことから犯罪であるという意識が働きにくい面があるかもしれません。
しかし、キセル乗車は詐欺罪や鉄道営業法違反などの犯罪に当たり得る行為です。
キセル乗車をしないことはもちろんですが、もしもキセル乗車をしてしまって刑事事件の当事者となってしまったら、早めに弁護士に相談しましょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、初回無料法律相談も受け付けていますので、お気軽にご相談ください。
居空き事件を起こして逮捕されたら
居空き事件を起こして逮捕されたら
居空き事件を起こして逮捕されたというケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
Aさんは、滋賀県長浜市にあるVさん宅に忍び込み、家の中を物色し、現金約30万円を盗み出しました。
Vさんは高齢で耳が聞こえづらく、Aさんが別の部屋に侵入していることに気付くことができていませんでした。
しかし、数時間後、荒らされた室内を見て、何者かが侵入して家のものを盗んでいったと気づいたVさんは、滋賀県長浜警察署へ通報。
防犯カメラの映像などから、Aさんの犯行が発覚し、Aさんは滋賀県長浜警察署に住居侵入罪と窃盗罪の容疑で逮捕されることとなりました。
滋賀県長浜市の近隣では、相次いでこうした居空き事件が発生しており、Aさんは余罪についても疑われています。
Aさんは、家族の依頼によって接見に来た弁護士に、今後について相談することにしました。
(※この事例はフィクションです。)
・居空きとは?
居空きは、窃盗の手口の1つを指す言葉です。
住人の留守中を狙った窃盗は空き巣と呼ばれますが、反対に、住人の在宅時に窃盗を行うのが居空き(いあき)です。
なお、住人の在宅時の窃盗であっても、住人が就寝中の住宅に侵入して窃盗を行うものは居空きではなく忍び込みと呼ばれます。
居空きは、耳の聞こえづらい高齢者や一人暮らしの家を狙って行われることが多く、家族構成や生活パターンを調べた上で行われる窃盗の手口であると言われています。
そのため、居空き事件は計画性があり悪質性の高い窃盗事件として扱われる可能性も否定できません。
居空きは、窃盗行為をしていることから窃盗罪にあたることはもちろん、窃盗行為のために住居への侵入をしていることから、住居侵入罪にも問われることになります。
窃盗罪の法定刑は10年以下の懲役又は50万円以下の罰金、住居侵入罪の法定刑は3年以下の懲役又は10万円以下の罰金です。
居空きの場合、住居侵入行為は窃盗行為のための手段であると言えます。
このように、複数の犯罪をしているケースで、1つの犯罪をすることが別の犯罪をする手段となっているものを「牽連犯」と言います。
牽連犯となった場合では、「その最も重い刑により処断」されるため(刑法54条1項)、居空きでは、より重い窃盗罪の法定刑である10年以下の懲役又は50万円以下の罰金という範囲で処断されることとなるでしょう。
・余罪があるとどうなる?
今回のAさんは、Vさん宅における居空き窃盗事件の被疑者として逮捕されていますが、余罪についても疑われているようです。
余罪とは、現在容疑をかけられて捜査されている犯罪以外の犯罪のことを指します。
例えば、AさんがVさん宅の居空き窃盗事件以外に窃盗事件を起こしていれば、それが余罪ということになるのです。
余罪がある場合、様々なリスクが考えられます。
まず、本件事件以外に余罪があれば、その余罪を捜査する必要があるとして再逮捕等のさらなる身体拘束をされるおそれがあります。
日本の法律では、同じ犯罪・事件についての再逮捕は原則的にできないこととなっていますが、別の犯罪・事件であればすでに逮捕した被疑者を再逮捕することができます。
つまり、余罪があれば、理論上は、余罪の分だけ逮捕や勾留を繰り返すこともできるのです。
また、余罪があれば行った犯罪の数が多くなるわけですから、処分にも影響が出てくる可能性があります。
1つの窃盗事件だけを起こした場合と3つの窃盗事件を起こした場合では、当然刑罰にも差が出てきます。
余罪の数や期間等によっては、常習的に犯罪をしていたと判断される可能性も出てきてしまいます。
しかし、では余罪があることへ何の対応もできないのかというと、そうではありません。
自分のやっていない余罪を誘導に乗って認めることを避けるために弁護士に取調べ対応をアドバイスしてもらったり、発覚した余罪分についても示談交渉を進めてもらったりといったことが考えられます。
余罪があるからと言ってあきらめずに、まずは弁護士に相談し、見通しや弁護活動について詳しい話を聞いてみましょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、居空き事件を含めた窃盗事件・住居侵入事件のご相談もお待ちしております。
逮捕された被疑者の方向けに、お申込みから最短即日対応が可能な初回接見サービスもご用意しております。
刑事事件にお困りの際は、お気軽に0120-631-881までお問い合わせください。
子どもが恐喝事件を起こしたら
子どもが恐喝事件を起こしたら
子どもが恐喝事件を起こしてしまったケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
滋賀県守山市に住んでいるAさん(17歳)は、いわゆる不良仲間とつるんでいました。
ある日、Aさんが仲間といたところ、中学生のVさんとその友人が歩いてきました。
Vさんらがお年玉をたくさんもらったという話をしていたことから、AさんらはVさんらからお金を巻き込んでやろうと数人でVさんらを取り囲み、「金を渡さないと痛い目を見る」などと言ってカツアゲを行いました。
VさんらはAさんらにリンチされるのではないかと怯え、持っていたお金をAさんらに渡しました。
その後、Vさんらが帰宅して親に相談をしたことからこのカツアゲが発覚し、後日、Aさんは滋賀県守山警察署に恐喝罪の容疑で逮捕されてしまいました。
Aさんの両親は、まさか息子が逮捕されるような事態になるとは思わず、慌てて少年事件を取り扱っている弁護士に相談に行きました。
(※この事例はフィクションです。)
・恐喝罪
脅して金品を巻き上げる行為、いわゆるカツアゲは、刑法上の恐喝罪にあたるとされています。
恐喝罪は、刑法249条に規定されている犯罪で、「人を恐喝して財物を交付させた者」に成立します。
今回のAさんの起こした事件は少年事件として処理されるため、原則として刑罰を受けることにはなりませんが、成人の刑事事件で恐喝罪として検挙された場合には、10年以下の懲役という刑罰を受ける可能性が出てきます。
そもそも「恐喝」するとは、財物を交付させるために暴行又は脅迫によって相手を畏怖させることを言います。
今回のAさんも、Vさんらからお金を巻き上げるために不良仲間とVさんらを取り囲んで脅していることから、恐喝をしていると言えそうです。
そして、Vさんらはその脅し怯え、Aさんらにお金を渡していることから、AさんらはVさんらに「財物」を「交付させた」と言えそうです。
このことから、Aさんには恐喝罪が成立すると考えられるのです。
ただし、注意すべきは恐喝罪の「恐喝」にあたる暴行又は脅迫は、相手の反抗を抑圧しない程度のものであることが必要とされるという点です。
もしも相手の反抗を抑圧するほどの暴行又は脅迫であると認められれば、恐喝罪ではなく、強盗罪が成立する可能性が出てきます。
強盗罪の法定刑は5年以上の有期懲役となっていますから、恐喝罪と比べても重い犯罪であることが分かります。
Aさんの場合は少年事件ですから、原則こうした刑罰は受けませんが、それでもより重い犯罪が成立することで、処分に影響が出てくる可能性があります。
・子どもが恐喝事件をおこしたら
今回のように、20歳未満の者が法律に触れる事件を起こした場合には、少年事件として扱われ、最終的に家庭裁判所の判断によって処分が決められることになります。
繰り返し記載しているように、少年事件では、法定刑の重い犯罪だから必ず少年院に行くとも限りませんし、逆に法定刑の軽い犯罪だから何も処分を下されないとも限りません。
通常の成人の刑事事件とは違い、少年事件ではその少年のその後の更生が第一に考えられるためです。
しかし、では少年事件において、通常の成人の刑事事件と同じような弁護活動は不要か、というとそういうわけでもありません。
例えば、今回のAさんのカツアゲによる恐喝事件では、Vさんという被害者がいます。
この被害者に対して謝罪をする、被害に遭った分について賠償をする、ということは、少年事件であっても全く不要というわけではありません。
確かに、起訴・不起訴を決める成人の刑事事件に比べれば、少年事件では示談は必須というわけではありませんが、少年が反省しているのかどうか、少年自身やその家族・周囲の人がどのように事件について受け止めているのか、といった事情を示す1つの材料として、被害者に謝罪をしていることや示談をしていることは有効であるのです。
ただし、今回の事件のように、子どもの間で起きてしまった少年事件では、示談するにも困難が伴うことも多々見られます。
未成年者との示談では、示談交渉の相手は親となりますが、自分のお子さんが被害に遭ったとなれば、当然のことながら被害感情も小さくありません。
もしもお互い感情的になってしまえば、示談交渉前よりも溝が深まってしまう、という可能性も出てきてしまいます。
だからこそ、少年事件の弁護活動にも、専門家である弁護士を介入させることが望ましいと言えるのです。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、成人の刑事事件だけでなく、少年事件も幅広く取り扱っています。
示談交渉だけでなく、釈放を目指した身柄解放活動や取調べ対応のレクチャーまで、一貫した弁護活動をご提供いたします。
少年事件は成人の刑事事件とは違った手続きもあり、複雑な面があります。
少年事件の取り扱いも多い弊所弁護士に、ぜひご相談下さい。
車上狙いによる窃盗事件と再逮捕
車上狙いによる窃盗事件と再逮捕
車上狙いによる窃盗事件と再逮捕について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
Aさんは、滋賀県米原市の駐車場に停めてあったVさん所有の自動車の窓ガラスを割り、中に設置されていたカーナビや、車内に保管されていたDVDなど合計50万円相当のものを盗み出しました。
Aさんはこうした車上狙いの窃盗行為を頻繁に行っており、盗んだカーナビ等を転売して利益を得ていました。
Vさんが被害届を出したことにより捜査が開始され、Aさんは滋賀県米原警察署に窃盗罪と器物損壊罪の容疑で逮捕されてしまいました。
そしてその後、Aさんはこの件で勾留されていたのですが、さらに別件の車上荒らしについて再逮捕されることとなりました。
Aさんが長期の身体拘束を受けていることを心配したAさんの家族は、刑事事件に対応している弁護士に相談してみることにしました。
(※この事例はフィクションです。)
・車上狙い
車上狙いとは、車上荒らしとも呼ばれる窃盗行為の一種類です。
車上狙いでは、車に積んである積み荷や、車内にあった現金や金品、さらにはその車に設置・搭載されている車の部品が狙われます。
車上狙いで狙われる車の部品は、Aさんの事件のようにカーナビやカーオーディオ、タイヤやホイール、バッテリーが多いと言われています。
・車上狙いと窃盗罪・器物損壊罪
車上狙いによって成立する犯罪として挙げられる代表的なものは、窃盗罪と器物損壊罪です。
刑法235条(窃盗罪)
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
刑法261条(器物損壊罪)
前3条に規定するもののほか、他人の物を損壊し、又は傷害した者は、3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料に処する。
車上狙いの場合、車の積み荷や車内にあった金品、車の部品を勝手に持ち出していることから、窃盗罪にあたります。
さらに、Aさんのように車上狙いをするために車の窓ガラスを割る等、車本来の効用を害するようなことをすれば、器物損壊罪にも当たりうるということになります。
・車上狙いと逮捕
Aさんのように、車内の金品だけでなく車の部品も盗んでいく車上狙い事件の場合、被害額も高額になることが予想されます。
そしてAさんは車上狙いをするにあたって車を傷つけてもいますから、1件1件の被害額が大きくなってしまうでしょう。
さらに、Aさんはこうした車上狙い行為を何度も行っており、被害品を転売していたようです。
窃盗事件において、被害額が高額であったり、何度も犯行を重ねていたり(=余罪が複数あったり)、転売をしていたりする事情があると、逮捕による拘束がされやすくなると言えます。
なぜなら、逮捕は、主に逃亡や証拠隠滅のおそれを防ぐために行われるものであるからです。
例えば、被害額が高額であったり、何度も犯行を重ねていたりするような場合には、有罪となった際の刑罰が重くなる可能性が高まります。
そうした重い刑罰を避けるために、被疑者が逃亡したり証拠隠滅をしたりするのではないか、と判断されることがあります。
また、転売を行っているような場合には、転売先など、事件に関連した関係先が存在することになります。
関係先の証言と被疑者の証言が食い違っていたり、関係先が多かったりすれば、それらに接触して証拠隠滅を図るおそれがあると判断される可能性も出てくるのです。
逮捕を避けたり、逮捕に引き続く身体拘束を避けたりするには、まずはこうしたおそれのないことを、手続きにのっとって適切に主張していくことが必要となります。
ただし、こうした主張はただ釈放してほしいというだけでは足りず、被疑者自身の事情やその周囲の方々の事情を証拠化して主張していくことが求められます。
このサポートを行えるのが、刑事事件の専門知識のある弁護士なのです。
・車上狙いと再逮捕
Aさんのように、車上狙いによる窃盗行為を繰り返している場合には、それぞれ1つ1つの事件について逮捕・勾留が繰り返される可能性があります。
特に前述したように、関係先とAさんとの供述に食い違いがある場合や、Aさんが否認しているような場合には、こうした再逮捕がなされる可能性も高まるでしょう。
この再逮捕が繰り返されれば、起訴前の被疑者段階であっても、1か月以上身体拘束されてしまうことも考えられます。
身体拘束が長引けば、釈放されたいがために本意でない供述をしてしまうリスクも出てきてしまいますから、早期に弁護士に相談し、サポートに入ってもらいましょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、再逮捕を伴う刑事事件についてもご依頼を承っております。
車上狙いを含む窃盗事件・器物損壊事件についても、刑事事件専門の弁護士が依頼者様の不安解消のために全力を尽くします。
まずはお電話にてお問い合わせください(0120-631-881)。
窃盗罪・詐欺罪と転売行為
窃盗罪・詐欺罪と転売行為
窃盗罪・詐欺罪と転売行為について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
Aさんは、滋賀県東近江市にあるホームセンターで商品を万引きし、さらにその近くにあるリサイクルショップで万引きした商品を転売して小遣い稼ぎをしていました。
万引きの被害が相次いだことから、ホームセンターは滋賀県東近江警察署に被害届を提出。
滋賀県東近江警察署では、万引きによる窃盗事件の捜査が始まりました。
その後、防犯カメラの映像などからAさんの犯行であるということが分かり、Aさんは窃盗罪の容疑で逮捕されることになりました。
その後、Aさんは家族の依頼で警察署を訪れた弁護士と話し、自分には窃盗罪だけでなく詐欺罪が成立する可能性もあるということを聞きました。
(※この事例はフィクションです。)
・窃盗罪と転売
万引きという言葉は軽く聞こえるかもしれませんが、万引きは刑法の窃盗罪が成立するれっきとした犯罪行為です。
刑法第235条(窃盗罪)
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
窃盗罪は、刑罰の重さが「10年以下の懲役又は50万円以下の罰金」と非常に幅広く設定されています。
その理由は、窃盗事件といっても、被害額が数百円程度の万引きをしたという窃盗事件から、何百万円の価値がある物を盗んだという窃盗事件までありますし、窃盗行為の回数も1回限りのものから余罪が複数あるものまで存在するため、事情によって刑罰の重さを柔軟に変えられるようにしているためです。
窃盗罪では、窃盗行為による被害金額やその態様、悪質性等の事情によってこの範囲の中で刑罰が決められることになります。
今回のAさんのような転売目的の窃盗事件の場合、目的が単に自分で使用するというものではなく、そこから転売によってさらに利益を得ようというものであるため、悪質性が高いと判断され、厳しい処分が下されやすいと考えられます。
・詐欺罪と転売
今回のAさんは、弁護士に詐欺罪も成立する可能性があると言われています。
転売目的の窃盗事件から詐欺事件にまで発展することはあるのでしょうか。
実は、今回のAさんのように、万引きした商品、すなわち盗品をリサイクルショップで転売する行為には、詐欺罪が成立する可能性があるのです。
詐欺罪は、窃盗罪と同じく刑法に定められている犯罪の1つです。
刑法第246条第1項(詐欺罪)
人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。
詐欺罪は、「人を欺いて財物を交付させ」る、すなわち、相手を騙し、騙された相手が騙されたことによって財物を引き渡すということによって成立する犯罪です。
今回のケースに沿って考えてみましょう。
通常、リサイクルショップで物を売る際には、その物が盗品ではないかどうかを確認されます。
盗品と知って譲り受ければ、リサイクルショップ側も盗品等関与罪という犯罪に問われる可能性が出てくるからです。
ですから、リサイクルショップでは盗品ではないことを確認して物を買いとることになっているのです。
つまり、今回のAさんのように盗品を転売するということは、リサイクルショップに盗品を「盗品ではない」と偽って売り、その代金を受け取っているということになります。
ここで、詐欺罪の「人を欺いて」とは、財物を交付するかどうかを判断する際に重要な事項を偽ることであるとされています。
今回のAさんのケースを考えると、Aさんは実際には万引きをした盗品である物を、リサイクルショップには「盗品ではない」と偽っています。
しかし、もしもリサイクルショップが本当はAさんが持ち込んだ物が盗品であると分かっていれば、リサイクルショップはAさんの持ち込んだ物を買い取り、代金をAさんに渡すことはしなかったでしょう。
つまり、Aさんはリサイクルショップが代金をAさんに引き渡すかどうか判断する際に重要な事項=その物が盗品であるかどうかということについて偽り、それに騙されたリサイクルショップから代金を引き渡させたということになります。
こうしたことから、Aさんにはリサイクルショップに対する詐欺罪も成立しうるのです。
このようにして、転売の絡んだ刑事事件では、複数の犯罪が成立する可能性があります。
さらに、転売という目的によって悪質性の高い犯行であると判断される可能性もありますから、早い段階で弁護士に相談・依頼し、被害者対応や取調べ対応などをしておくことが望ましいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、転売に関連した刑事事件についてもご相談・ご依頼を受け付けています。
まずはお気軽にお問い合わせください。
万引きと微罪処分
万引きと微罪処分
万引きと微罪処分について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
滋賀県草津市に住んでいるAさんは、ある日、近所にあるスーパーマーケットに買い物に出かけた際、合計で1,000円前後の商品をマイバッグに隠し、そのまま精算せずにレジを通り抜ける万引きをしました。
しかし、売り場内でのAさんの挙動に注目していた私服警備員が万引き行為に気付き、店を出たAさんに声をかけたことから万引きが発覚。
警備員はそのまま滋賀県草津警察署に連絡し、Aさんは滋賀県草津警察署で万引き事件の被疑者として取調べを受けることになりました。
Aさんは、今回の万引きが初めての万引きであり、警察で話を聞かれたことから大いに反省し、その足で今後について弁護士に相談しに行くことにしました。
弁護士との相談でAさんは、場合によっては微罪処分という処分で終わり、警察段階で事件が終了する可能性があるという話を聞きました。
(※フィクションです)
~万引きと微罪処分~
まず、今回の事例でAさんがしてしまった万引きという行為は、刑法にある窃盗罪に当たります。
刑法第235条(窃盗罪)
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
警察は、万引きなどの窃盗罪を含む犯罪の捜査をしたときは速やかに書類及び証拠物と共に事件を検察官に送致しなければなりません。
検察官は、事件の送致を受けた後、被疑者を呼び出して取り調べ、事件を起訴するかしないかを決めるのが通常の手続きです。
しかし、今回のAさんの万引き事件は、警察段階で終了する可能性もあると言われているようです。
警察は、特定の事件に限り、検察に送致することなく刑事手続を警察段階で終了させることができます。
これを微罪処分と言います。
微罪処分は、刑事訴訟法第246条但書に根拠があるとされています。
刑事訴訟法第246条
司法警察員は、犯罪の捜査をしたときは、この法律に特別の定のある場合を除いては、速やかに書類及び証拠物とともに事件を検察官に送致しなければならない。
但し、検察官が指定した事件については、この限りでない。
この定めを受けて、犯罪捜査規範第198条は次のように定めています。
犯罪捜査規範第198条
捜査した事件について、犯罪事実が極めて軽微であり、かつ、検察官から送致の手続をとる必要がないとあらかじめ指定されたものについては、送致しないことができる。
Aさんの万引き行為は、A自身に前科前歴がなく、被害が軽微であり、検察官から送致の手続をとる必要がないと予め指定されていた種類のものです。
ここからさらに弁護士の弁護活動により被害弁償がなされた等の事情があれば、警察官限りで処理される微罪処分とされる可能性があるということなのでしょう。
もっとも、どのような事件が「軽微」と判断されるのか、送致の必要がないと予め指定されているかは、一般には公表はされていません。
本件のAさんも微罪処分で済むかどうかは事前にわかることではありませんし、自分のしようとしていることが微罪処分相当だろうと安易に考えるべきではありません。
また、微罪処分は、あくまでそのように処理することも「できる」というだけのことであって、警察が微罪処分で終わらせなかったとしてもそのことに異議や不服を申し立てることはできません。
更に、仮に微罪処分で処理されても、前歴としては検察庁内に記録が残ります。
被害が軽微であっても同種行為を繰り返したりすると、微罪処分で終わらずに送検され、起訴されて裁判となる可能性も出てくることになります。
~弁護活動~
前述のように、被害が軽いから、前科前歴がないからといって必ずしも微罪処分となるわけではありませんが、迅速に被害弁償等を行っていくことで、微罪処分の獲得の可能性や、送検後に不起訴処分の獲得ができる可能性が高まります。
被害弁償等の被害者への対応や、それらを適切に捜査機関に示して処分について交渉していくことを考えれば、早めに弁護士に相談することが望ましいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、万引き事件についてお困りの方のご相談も受け付けていますので、まずはお気軽にお問い合わせください。
業務上横領事件になりそうで不安
業務上横領事件になりそうで不安
業務上横領事件になりそうで不安であるというケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
Aさんは、滋賀県彦根市にある会社Vの経理部長として働いている50歳の男性です。
Aさんは、会社Vのお金を管理する権限を持っており、時たま会社の金を着服しては帳簿を書き換え、会社の金を横領していました。
しかし、別の社員が会社の帳簿を確認したことから帳簿が合わないことが発覚し、社内で調査が行われることになりました。
Aさんは、このままでは自分の行為が露見し、業務上横領事件となってしまうのではないか、滋賀県彦根警察署に逮捕されてしまうのではないか、と不安に思うようになりました。
そこでAさんは、滋賀県の刑事事件に対応している弁護士に相談してみたところ、警察の介入前でも弁護士に相談・依頼するメリットがあることが分かりました。
(※この事例はフィクションです。)
・業務上横領罪
今回のAさんの事例のように、経理などで会社のお金を管理する立場にある人がそのお金を勝手に自分のものにする行為は、典型的な業務上横領罪にあたる行為と言えます。
業務上横領罪は、業務上自己の占有する他人の物を横領することによって成立します。
刑法第253条(業務上横領罪)
業務上自己の占有する他人の物を横領した者は、10年以下の懲役に処する。
業務上横領罪の「業務」とは、人が社会生活上の地位に基づき反復継続して行う、委託を受けて他人の物を占有・保管することを内容とする事務であるとされています。
今回Aさんは会社Vの経理部長という地位に基づいて、会社から会社のお金を管理する権限を与えられて会社のお金を管理する事務=仕事に就いているので、業務上横領罪の言う「業務上」にあたる地位にいると考えられます。
そして、「横領」とは、委託されているものについて「不法領得の意思を実現するすべての行為」を指すとされています(最判昭和28.12.25)。
この横領行為での「不法領得の意思」とは、他人のものを支配・管理している者が、委託された任務に背いてその物について権限がないのにもかかわらず、その物を所有している人でなければできないような処分をする意思であるとされています。
今回のAさんの場合、当然会社から任されている仕事は、会社のお金を仕事の範囲で管理すると言う仕事になるでしょう。
当然その内容は、Aさんが会社のお金を自分のものにしていいという内容ではありませんし、Aさんにはその権限も与えられていません。
つまり、Aさんは自分に与えられた権限を超えて自分が管理している会社のお金を自分のものとするという行為をしているため、業務上横領罪の「横領」行為をしていると考えられるのです。
ここで注意しなければいけないのは、単に会社員が自分の会社などのお金を着服しただけでは業務上横領罪にはならないということです。
先ほどから見てきたように、業務上横領罪が成立するには、「業務上」に当てはまる立場と、「横領」にあたる委託の任務に反する行為がなければいけません。
例えば、会社のお金を管理する立場にない人が会社のお金を着服しても、前述のような「業務上」「横領」したとはいえないため、業務上横領罪には当てはまらないということになるのです(この場合、態様によって詐欺罪や窃盗罪など別の犯罪の成立が考えられます。)。
・業務上横領事件になる前に
業務上横領行為を自分の所属している会社に対して行った場合、その事実が会社に知られれば、今回のAさんが心配しているように、警察署に届けられて刑事事件化してしまうことも十分考えられます。
業務上横領罪の法定刑は10年以下の懲役と重いものになっていますから、被害額等によっては逮捕されてしまうこともあり得るでしょう。
だからこそ、業務上横領罪を犯してしまったら、早めに弁護士に相談し、できる活動をきちんと把握した上で今後の行動を決めることが望ましいでしょう。
今回のAさんのように、まだ警察などの捜査機関に事件が届けられていない場合には、刑事事件化する前に会社と示談交渉を行うのも有効な手段の1つです。
もしも会社が示談締結に応じてくれ、被害届を出す前に当事者間で解決することができれば、そもそも業務上横領事件として刑事事件化することを防ぐことができます。
たとえ刑事事件化したとしても、業務上横領行為の被害者である会社に被害弁償をしたり示談締結をしたりすることは、逮捕・勾留の回避や起訴・不起訴の判断、刑罰の重さの判断の際に有利に働くことが考えられますから、迅速に活動を始めておくことに越したことはないでしょう。
もちろん、刑事事件化して逮捕されてしまったり、取り調べが開始されたとしても、すでに弁護士に弁護活動を依頼しておけば、スムーズに釈放を求める活動へ移行してもらったり、取り調べへのアドバイスをもらったりすることもできますから、まだ業務上横領事件として刑事事件化していなかったとしても、まずは弁護士に相談・依頼してみることが重要です。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件前のご相談・ご依頼も受け付けています。
業務上横領事件に限らず、少しでも刑事事件についての不安がある場合には、お気軽にご相談ください。