Archive for the ‘性犯罪’ Category

(事例紹介)大津地裁 強制性交等致傷罪などで実刑判決

2022-10-12

(事例紹介)大津地裁 強制性交等致傷罪などで実刑判決

~事例~

去年5月、守山市の路上で20代の女性の体を触ったうえ、足を刺し大けがをさせたなどとして強制性交等致傷などの罪に問われた28歳の被告に対し、大津地方裁判所は「無差別的、通り魔的に犯行を繰り返した」として懲役10年の実刑判決を言い渡しました。
(中略)被告(28)は、去年5月、守山市の路上で20代の女性の体を触り、その際、包丁で女性の足を刺し、全治1か月の大けがをさせたとして強制性交等致傷の罪に問われました。
また、守山市での犯行の前に草津市の路上でも10代の女性に抱きついて体を触るなどしたとして、強制わいせつの罪などにも問われました。
(後略)
(※2022年7月27日18:09NHK NEWS WEB配信記事より引用)

~強制性交等致傷罪と刑罰の重さ~

今回取り上げた事例では、被告人の男性が、20代女性に対する強制性交等致傷罪と、10代女性に対する強制わいせつ罪の容疑で起訴され、刑事裁判の結果、懲役10年実刑判決が言い渡されたと報道されています。
強制性交等致傷罪も強制わいせつ罪も非常に重い犯罪であり、罰金刑の規定はなく懲役刑のみが定められています。
つまり、強制性交等致傷罪も強制わいせつ罪も、起訴されれば必ず刑事裁判となり、公開の法廷で有罪・無罪を争ったり、有罪の場合の刑罰の重さを判断したりすることになります。
さらに、有罪の場合には執行猶予がつかなければ刑務所に行くことになりますし、特に強制性交等致傷罪については刑罰の下限が懲役6年であることから基本的には執行猶予がつかないため(執行猶予がつくには言い渡された刑罰が懲役3年以下であることが必要)、強制性交等致傷罪で起訴され有罪となるということは、原則として実刑判決となり刑務所に行くということに繋がります。

刑法第176条(強制わいせつ罪)
13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、6月以上10年以下の懲役に処する。
13歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。

刑法第177条(強制性交等罪)
13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いて性交、肛門性交又は口腔性交(以下「性交等」という。)をした者は、強制性交等の罪とし、5年以上の有期懲役に処する。
13歳未満の者に対し、性交等をした者も、同様とする。

刑法第181条第2項(強制性交等致死傷罪等)
第177条、第178条第2項若しくは第179条第2項の罪又はこれらの罪の未遂罪を犯し、よって人を死傷させた者は、無期又は6年以上の懲役に処する。

加えて、強制性交等致傷罪は、その刑罰の中に無期懲役も含まれています。
これによって、強制性交等致傷罪の刑事裁判は、裁判員裁判となります。
裁判員裁判では、裁判官に加えて一般の方から選出される裁判員に対しても被告人の主張を訴えていく必要があります。
法律知識や刑事事件の経験のない裁判員の方々に適切に主張を理解してもらうためには、より経験と工夫が求められるといえます。

~強制性交等致傷罪の成立~

ここで今回の事例を見ると、被告人の男性は、20代女性に対して、その身体を触り足を突き刺すなどしたとされています。
報道の内容だけでは具体的な犯行を全て知ることは叶いませんから、実際には被害女性が性交等にあたる被害を受けてしまったのかもしれませんが、報道だけ見ると「性交等にあたる行為をしていないように見えるのに強制性交等致傷罪が成立するのか」と思われた方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、強制性交等致傷罪の条文では、「第177条…の罪又はこれらの罪の未遂罪を犯し、よって人を死傷させた」ということが強制性交等致傷罪の成立要件とされています。
つまり、「性交等」という強制性交等罪の結果が発生していない=強制性交等未遂罪を犯したにとどまる場合であっても、それによって人を負傷させてしまえば、強制性交等致傷罪の既遂となるということです。

ですから、例えば今回の事例で、被害女性が「性交等」の被害を受けていなかったとしても、強制性交等未遂罪を犯したと言える状態で、それによって被害女性が怪我を負っているのであれば、強制性交等致傷罪が成立するということになるのです。

今回の事例では、被告人は強制性交等致傷罪だけでなく、別件の強制わいせつ罪でも起訴されており、そういった部分での悪質性も加えて、懲役10年の実刑判決という判断になったのでしょう。
ここまで触れてきたとおり、強制性交等致傷罪や強制わいせつ罪は非常に重い犯罪であり、被害者に与える被害の大きさも大きい犯罪です。
被害者対応や刑事裁判に対する対応も慎重を期す必要がありますから、刑事事件化した段階から弁護士のサポートを受け、専門家のアドバイスを受けながら対応をしていくことが望ましいでしょう。

刑事事件を中心に取り扱う弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、強制性交等致傷事件などの重大事件についてもご相談・ご依頼を承っています。
刑事事件を多数扱っているからこそ、裁判員裁判を担当した経験のある弁護士も所属しています。
裁判員裁判対象事件についても安心してご相談いただけますので、まずはお気軽にお問い合わせください。

(事例紹介)住居侵入盗撮事件などで保護観察付執行猶予判決となった事例

2022-10-05

(事例紹介)住居侵入盗撮事件などで保護観察付執行猶予判決となった事例

~事例~

(前略)
被告は、背筋を伸ばして判決の宣告を聞いた。懲役2年6月、保護観察付き執行猶予4年。
(中略)
性犯罪者の再犯防止のためには適切な治療が必要という考え方が、司法関係者に広がっている。法務省保護局は2006年以降、「性犯罪者処遇プログラム」を実施。保護観察になった男性加害者を対象にした最新の調査では、プログラムを受講しなかった場合の再犯率は26%だったのに対し、受講した場合は15%にとどまっている。
(中略)被告が問われたのは住居侵入、ストーカー規制法違反、滋賀県迷惑行為等防止条例違反などの罪。同僚女性の勤務時間を把握し、自宅への侵入を繰り返したという。公判では起訴内容を認め、認知行動療法による再犯防止プログラムを受講していることを明かした。大津地裁は判決で「自宅に盗撮のための侵入を繰り返され、被害者が受けた精神的苦痛は容易に言葉にできるものではない」と非難。更生の意欲などを考慮して執行猶予とした上で、「被害者との接触を厳に禁止するなどしながら、専門家の指導監督下に置くのが相当」として保護観察付きとした。
(※2022年9月30日11:00京都新聞配信記事より引用)

~保護観察付執行猶予~

犯罪をして捜査を受けることとなった場合、捜査を経て検察官がその事件を起訴するか不起訴にするかの判断をすることになります。
起訴されるとなった場合には、刑事裁判となり、公開の法廷で有罪・無罪が争われたり、有罪の場合の刑の重さが決められたりします。
容疑に争いがない場合、多くのケースで刑罰を減軽してほしいという訴えや、執行猶予を付けてほしいという訴えをすることになるでしょう。
特に、刑務所に行ってしまういわゆる実刑判決を受けてしまえば、その期間中社会から隔離されて過ごすこととなってしまうため、実刑判決を避けてほしい=執行猶予を獲得してほしいと望まれる方は多いでしょう。

そもそも、執行猶予とは、文字通り刑罰の執行を猶予する制度です。
例えば、「懲役1年6月、執行猶予3年」という判決が下った場合、執行猶予期間である3年間は懲役1年6月という刑罰の執行が猶予され、3年間を何事もなく過ごすことができれば、懲役1年6月という刑罰は受けずに済むということになります。
執行猶予期間である3年間のうちに再度犯罪をして有罪となった場合には、猶予されていた懲役1年6月の刑罰を受けることになりますし、それに加えて執行猶予期間中にしてしまった犯罪の刑罰も受けることになります。

この執行猶予には、いくつか種類があります。
一般にイメージされる執行猶予は、「刑の全部執行猶予」を指すことが多いです。
これは、言い渡された刑罰のすべてが執行猶予の対象となるもので、先ほど例に挙げた「懲役1年6月、執行猶予3年」のケースはこの「刑の全部執行猶予」に当たります。

一方、「刑の一部執行猶予」という執行猶予も存在します。
この場合、執行が猶予される刑罰は全体の刑罰のうちの一部に限定され、例えば「懲役3年、うち1年につき3年の執行猶予」といった形になります。
例に挙げたケースでいうと、懲役3年のうち執行猶予されていない分の2年に関しては、刑が執行される=刑務所へ行くことになります。
そして、2年の刑期を終えて出所し、その後執行猶予の対象となった1年について3年間の執行猶予期間を過ごすということになります。
この3年間の執行猶予期間を何事もなく過ごせば1年分の懲役刑については受けることを免れられますし、逆に3年間の執行猶予期間で犯罪をしてしまえば、猶予されていた1年分の懲役刑としてしまった犯罪の分の刑罰を受けることとなります。

これらの執行猶予には、「保護観察」が付けられることがあります。
これが今回取り上げた事例の判決でも言い渡された「保護観察付執行猶予」です。
保護観察付執行猶予となった場合には、執行猶予期間中に保護観察官や保護司から指導監督を受けながら生活することになります。
例えば、「刑の全部執行猶予」の例で挙げた「懲役1年6月、執行猶予3年」のケースで保護観察付執行猶予であった場合、執行猶予期間である3年間は保護観察官や保護司から指導監督を受けながら生活することになります。
具体的には、最初に保護観察期間中に守るべき「遵守事項」(一般遵守事項と特別遵守事項があります。)が決められ、その「遵守事項」を守りながら生活するよう、定期的な面談・連絡を重ねながら指導・監督を受けることになります。
保護観察期間中の「遵守事項」のうち、「一般遵守事項」は保護観察付執行猶予判決を受けた人全員に共通して定められる事項であり、再犯をしないことや保護観察官・保護司の指導を誠実に受けることなどが定められています。
もう1つの「特別遵守事項」は、してしまった犯罪の傾向や個人の特徴によって定められるものであり、場合によっては「一般遵守事項」のみ定められ「特別遵守事項」は定められないこともあります。
例えば、共犯者のいる事件であれば共犯者との交際を断つということを定めたり、今回の事例で取り上げられている「性犯罪者処遇プログラム」などの再犯防止用プログラムの受講を定めたりすることが挙げられます。

単なる執行猶予ではなく保護観察付執行猶予が付されるケースとしては、今回の事例で裁判官が話していたような、実刑も考えられるが指導・監督や援助によって社会内での更生が期待できるというケースや、実刑までは考えられないが保護観察を付けることで社会福祉的な援助を期待するケースなどが考えられます。
例えば、再犯を何度も繰り返してしまい当事者だけでは更生が難しいもののプログラムの受講などの援助を受けることで更生が期待できるといったケースや、保護観察期間中に就労支援などを受けることで就労し生活環境を改善することが期待できるといったケースが想定されます。
今回取り上げた事例でも、認知行動療法などのプログラム受講などを遵守させることで、再犯防止に期待できると判断されたものと考えられます。

指導監督や援助を受けられるという意味では、保護観察付執行猶予は再犯防止や更生にプラスにはたらくと考えられますが、保護観察付執行猶予を受けた後に再犯をしてしまうと、再度の執行猶予を得ることはできません。
つまり、保護観察付執行猶予を受けた後に再度犯罪をしてしまえば、刑務所へ行くことになるということです。
ですから、「執行猶予になったから刑務所に行かなくて済んだ」と軽く考えるのではなく、保護観察付執行猶予を再犯防止・更生の機会として真摯に取り組む必要があります。
そういった環境を整えて刑事裁判に臨むためにも、早い段階から弁護士に相談し、準備していくことが望ましいでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件を多数取り扱う弁護士が、捜査段階から刑事裁判での公判弁護活動まで、一貫してサポートを行います。
執行猶予獲得を目指したい、刑事裁判になるのが不安だとお悩みの際は、一度お気軽にご相談ください。

【解決事例】淫行による青少年健全育成条例違反事件で釈放に成功

2022-09-28

【解決事例】淫行による青少年健全育成条例違反事件で釈放に成功

事件

滋賀県草津市に住むAさんは、Vさんと共通の知人を通じて知り合い、ネット上でやり取りを行っていました。
AさんとVさんは実際に会うことになり、AさんはVさんに誘われたことから、18歳未満だと知りながらVさんと性行為をしました。
その後、Aさんは青少年の健全な育成に関する条例違反の容疑で滋賀県草津警察署の警察官に逮捕されました。
Aさんの逮捕後すぐにAさんの家族は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所初回接見サービスを利用しました。
(※守秘義務の関係で一部事実と異なる表記をしています。)

事件解決のながれ

初回接見後、弁護活動の依頼を受けた弁護士は、Aさんの釈放を求める弁護活動に取り掛かりました。

Aさんが逮捕された直後から弁護活動を開始することができたため、Aさんに対する勾留(逮捕よりも長期の身体拘束)はまだ決まっていない状態でした。
そこで、弁護士は勾留を回避するために、勾留請求に対する意見書を作成し検察庁に提出しました。
意見書では、Aさんが逃亡や証拠隠滅をしないことや、家族がAさんの監督を行えること、Aさんがクリニックに通いカウンセリングを受ける必要性があることを検察官に訴えました。
しかし、その段階では弁護士の訴えは退けられてしまい、検察官はAさんの勾留を請求しました。

検察官の勾留請求後、弁護士は裁判所に勾留請求に対する意見書を提出しました。
裁判所へ提出した意見書も検察庁に提出したものと同様に、Aさんを勾留する必要性がないことや、Aさんを釈放する必要性があることを裁判官に訴えました。
裁判所に提出した意見書により弁護士の訴えが認められ、Aさんの釈放が決定しました。
釈放となったことで、Aさんは日常生活を送りながら取調べなどの捜査へ対応することが可能となりました。

その後、Aさんは略式手続により罰金刑が下されました。

検察官は逮捕後72時間以内に勾留を請求するかどうかの判断をします。
検察官が勾留を請求した場合は、裁判官が勾留を決定すべきかどうかを判断します。
弁護士は、検察官が勾留を請求する前や裁判官が勾留決定を下す前に、検察庁、裁判所それぞれに対して意見書を提出するなどして釈放を交渉することができます。
また、裁判官の判断により勾留が決定した後でも、勾留決定に対して準抗告申立書を裁判所に提出し、勾留決定の判断が妥当なのかを再度、別の裁判官に判断してもらうことができます。

釈放を求める弁護活動を行う上で、逮捕後の72時間の間の弁護活動はとても重要です。
今回の解決事例では、Aさんの逮捕当日から釈放を求める弁護活動を行えたため、検察官の勾留請求前、裁判官の勾留決定前の2回にわたって意見書を提出し、Aさんの釈放を実現することができました。
勾留が決定してしまったあとでは勾留請求に対して交渉することができませんので、その分釈放を求めることができる機会が減ってしまいます。

また、意見書を作成するための時間も必要になりますから、釈放を目指すためには早期に身柄解放活動に取り掛かる必要がありますから、そういった意味でも早期の相談・依頼が重要です。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件を中心に扱う法律事務所です。
ご家族が逮捕され弁護士を選任するかどうか迷っている方は、ぜひ弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の初回接見サービスをご利用ください。
ご予約は0120―631―881で承っております。

(事例紹介)卑わいな行為を見せて強制わいせつ罪に問われた事例

2022-08-03

(事例紹介)卑わいな行為を見せて強制わいせつ罪に問われた事例

~事例~

滋賀県警草津署は25日、強制わいせつの疑いで、滋賀県草津市の放課後児童支援員の男(35)を逮捕した。
容疑を否認しているという。
逮捕容疑は今年5月ごろ、自宅で市内の小学生女児に自慰行為を見せた疑い。
同署によると、男は学童保育の勤務の傍ら、自宅を子どもの遊戯スペースとして無償で開放していたという。
(※2022年7月25日18:44京都新聞配信記事より引用)

~触らなくても強制わいせつ罪になる?~

今回取り上げた事例では、男性が強制わいせつ罪の容疑で逮捕されていますが、容疑の内容は、小学生女児に自慰行為を見せたというものです。
強制わいせつ罪は痴漢などで成立することの多い犯罪であることもあり、「卑わいな行為を見せた」ということをもって強制わいせつ罪の容疑がかけられていることに疑問を持たれる方もいらっしゃるかもしれません。
今回は、この報道の事案と照らし合わせながら強制わいせつ罪について確認していきましょう。

まず、強制わいせつ罪は刑法で以下のように定められています。

刑法第176条
13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、6月以上10年以下の懲役に処する。
13歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。

強制わいせつ罪では、被害者が13歳以上の方か13歳未満の方かによって、手段として暴行又は脅迫が用いられる必要があるかどうかが異なります。
被害者が13歳以上の方である場合には、暴行又は脅迫を用いて「わいせつな行為」をすることで強制わいせつ罪が成立します。
こうしたケースは、多くの方がイメージする強制わいせつ罪と合致しやすいのではないでしょうか。
対して、被害者が13歳未満の方であれば、暴行・脅迫なしであっても「わいせつな行為」をした時点で強制わいせつ罪が成立します。
こちらについては、なかなか世間一般のイメージにない部分かもしれません。

今回取り上げた事例にあてはめてみると、報道によると被害者は小学生女児です。
小学生は「13歳未満の者」ですから、たとえ暴行や脅迫がなくとも、「わいせつな行為」をしたのであれば強制わいせつ罪が成立するということになります。

では、「わいせつな行為」とはどういったことを指すのでしょうか。
強制わいせつ罪の「わいせつ」は、「徒に性欲を興奮または刺激せしめ、且つ普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反すること」と解されています(名古屋高裁金沢支部判決昭和36.5.2)。
加えて、キスをしたという行為について強制わいせつ罪の成否が争われた事例で「すべて反風俗的のものとし刑法にいわゆる猥褻の観念を以て律すべきでないのは所論のとおりであるが、それが行われたときの当事者の意思感情、行動環境等によつて、それが一般の風俗道徳的感情に反するような場合には、猥褻な行為と認められることもあり得る」(東京高裁決定昭和32.1.22)とされた裁判例もあります。
こうした裁判例から、身体触るという行為でなくとも強制わいせつ罪の「わいせつな行為」となり得ることが分かります。
今回の報道の事例では、容疑の内容のうち自慰行為を見せつけるという行為が「わいせつな行為」に当たると考えられて、男性は強制わいせつ罪の容疑をかけられているということなのでしょう。

このように、刑事事件では一般に浸透しているイメージとは異なる内容であってもその犯罪が成立したり容疑をかけられたりというケースが存在します。
報道によれば男性は容疑を否認しているとのことですが、否認事件の場合には、どの部分を否認しているのかによっても、適切な対応は異なってきますし、成立し得る犯罪が変わる場合もあります。
だからこそ、何かしらの犯罪に問われ刑事事件となった場合に早期に弁護士に相談するメリットは大きいのです。
弁護士に相談することで、自分に容疑がかけられている犯罪はどういったものなのか、なぜその犯罪の容疑がかけられているのか、自分の認識・主張でその犯罪が成立するのかといったことをきちんと把握しながら刑事手続に臨むことが期待できるのです。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、在宅捜査を受けている方から逮捕・勾留されている方まで幅広くご相談いただける体制を整えています。
0120-631-881では、スタッフがご相談者様の事情に合わせたサービスの案内を行っておりますので、まずはお気軽にお問い合わせください。

(事例紹介)強制わいせつ致傷事件で逮捕された事例

2022-07-20

(事例紹介)強制わいせつ致傷事件で逮捕された事例

~事例~

滋賀県警東近江署は7日、強制わいせつ致傷の疑いで、大津市の団体職員の男(30)を逮捕した。
逮捕容疑は、4月19日午後10時15分ごろから20日午前0時40分ごろ、滋賀県東近江市のホテルで20代女性の胸や下半身などを触り、右胸、首や腰に軽傷を負わせた疑い。
同署によると、男は「強制ではない」と容疑を一部否認しているという。
(※2022年6月7日京都新聞配信記事より引用)

~強制わいせつ致傷罪と刑事手続~

今回取り上げた事例では、男性が強制わいせつ致傷罪の容疑で逮捕されています。
強制わいせつ致傷罪は、刑法で以下のように定められている犯罪です。

刑法第181条
第1項 第176条、第178条第1項若しくは第179条第1項の罪又はこれらの罪の未遂罪を犯し、よって人を死傷させた者は、無期又は3年以上の懲役に処する。
第2項 第177条、第178条第2項若しくは第179条第2項の罪又はこれらの罪の未遂罪を犯し、よって人を死傷させた者は、無期又は6年以上の懲役に処する。

この刑法第181条第1項のうち、「第176条」に当たるのが強制わいせつ罪です。
つまり、強制わいせつ罪や強制わいせつ未遂罪を犯し、それによって人を死傷してしまった場合に強制わいせつ致死罪や強制わいせつ致傷罪が成立するということになります。
ここで注意しなければいけないのは、強制わいせつ致傷罪は、強制わいせつ未遂罪を犯して相手を怪我させたといった場合、つまり、結果としてわいせつ行為に至らなかったような場合でも成立し得るということです。
例えば、強制わいせつ罪を犯すつもりで相手に暴行・脅迫をしたものの、相手が抵抗したり人が駆け付けたりしたことでわいせつな行為をすることはできなかったという場合には強制わいせつ未遂罪となりますが、このとき相手が怪我をしていれば、強制わいせつ致傷罪となるのです。

今回取り上げた事例では、逮捕された男性の被疑事実は、女性の胸や下半身などを触ったという部分が「わいせつな行為」に当たると考えられたのでしょう。
そして、被害者の女性は軽傷を負っているようです。
男性は容疑を否認しているようですが、この「わいせつな行為」が暴行や脅迫を用いて行われたものであれば、強制わいせつ罪を犯して相手に怪我をさせたということで強制わいせつ致傷罪となります。

~強制わいせつ致傷事件と刑事手続~

強制わいせつ致傷罪は、法定刑に無期懲役が含まれていることから、起訴され裁判となると、裁判員裁判となります。
裁判員裁判では、普段裁判に関わっていない裁判員の方が判断に加わることになるため、裁判員にも被告人の主張が伝わるよう、主張の仕方を工夫しなければなりません。
さらに、裁判員裁判が開かれるまでにも、入念な準備が求められます。

こうしたことから、強制わいせつ致傷事件では、早い段階から弁護士に相談し、サポートを受けながら刑事手続に対応していくことが望ましいでしょう。
特に、今回の報道の事例のように容疑を否認しているケースでは、操作段階の取調べから慎重な対応が必要ですから、逮捕されたという段階からでも弁護士に相談してみることをおすすめします。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、強制わいせつ致傷事件の逮捕についてのご相談・ご依頼についても承っています。
専門スタッフがご状況に合わせたサービスをご案内していますので、まずはお気軽にお電話ください(0120-631-881)。

(事例紹介)12歳の女性に現金を渡して性交し強制性交等罪に

2022-06-29

(事例紹介)12歳の女性に現金を渡して性交し強制性交等罪に

~事例~

滋賀県警東近江署は22日、強制性交、児童買春・ポルノ禁止法違反の疑いで、大阪府東大阪市、会社員の男(43)を逮捕した。
逮捕容疑は、2021年1月21日午後0時10分~同4時20分までの間、滋賀県東近江市内のホテルで、中学1年だった滋賀県在住の女性=当時(12)=が13歳未満と知りながら、現金2万5千円を渡し、わいせつな行為をした疑い。
同署によると、少女は男とSNSを通じて知り合ったという。
男は「13歳以下の女性と性交したことはない」と容疑を否認しているという。
(※2022年6月22日19:31京都新聞配信記事より引用)

~強制性交等罪と被害者の年齢~

今回取り上げた事例では、逮捕された男性は強制性交等罪児童買春禁止法違反の容疑をかけられています。
未成年にお金を渡して性交をすれば、児童買春の罪にあたるということは、比較的知られていることではないでしょうか。
今回の逮捕された男性が問われている児童買春禁止法違反の部分は、まさにこの未成年にお金を渡してわいせつな行為をしたという部分にかかっているものでしょう。

対して、この事例で強制性交等罪の容疑がかかっているということに疑問を持たれる方もいらっしゃるかもしれません。
強制性交等罪は、旧刑法では強姦罪として規定されていた犯罪であり、「無理矢理性交等をすることで成立する犯罪である」というイメージが強いでしょう。
そのため、いわゆる児童買春をしたのであれば、相手の同意があってしたことであり、強制性交等罪にあたらないのではないかと考えられる方もいらっしゃるでしょう。

しかし、強制性交等罪では、一般にイメージされる「無理矢理性交等をした」以外にも成立する要件が定められています。

刑法第177条
13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いて性交、肛門性交又は口腔性交(以下「性交等」という。)をした者は、強制性交等の罪とし、5年以上の有期懲役に処する。
13歳未満の者に対し、性交等をした者も、同様とする。

強制性交等罪を定めている刑法第177条の前段部分は、簡単に言えば先ほどから触れている「無理矢理性交等をすると強制性交等罪が成立する」ということを指しています。
しかし、この前段部分には「13歳以上の者に対し」という限定がついています。
この前段部分の対象とならない13歳未満の者が相手だった場合はどうなるのかというと、刑法第177条の後段にある通り、「性交等をした」場合に強制性交等罪が成立します。
すなわち、相手が13歳未満であった場合、たとえ暴行や脅迫が用いられずとも=無理矢理でなくとも、性交等をしただけで強制性交等罪が成立することになるのです。
この13歳という年齢は、昨今「性交同意年齢」と言われて話題に上がることもあります。

今回取り上げた事例を見てみると、男性は13歳未満の少女と性交等をしたことで強制性交等罪の容疑をかけられているのだと考えられます。
先ほど触れた通り、少女の年齢が12歳であれば、少女がその行為に同意していたとしても、性交等をした段階で強制性交等罪に当たる行為となります。
ただし、報道によれば男性は容疑を否認しているようですから、少女が13歳未満である認識がなかったという主張をしている可能性があります。
こうした場合、男性には強制性交等罪の故意がないということになりますから、本意ではない供述をしないようにするためにも、弁護士から随時アドバイスを受けながら、取調べ対応などを慎重に行う必要があるでしょう。

昨今は、SNSの発達・普及によって、SNSを通じて未成年者と関係を持ち、身体の関係まで発展してしまうという性犯罪事件も多く発生しています。
こうした児童買春事件や強制性交等事件では、被害者との接触を避けるために逮捕されて捜査されるというケースも少なくありませんから、まずは弁護士のサポートを受けてみることをおすすめします。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、逮捕された方向けの初回接見サービスをご用意しておりますので、ご家族が逮捕されてしまって状況が分からない、逮捕された方の力になりたいという場合にもスピーディーに対応が可能です。
まずはお気軽にお問い合わせください。

【解決事例】出張先のホテルでデリヘルを盗撮 不送致に

2022-06-22

【解決事例】出張先のホテルでデリヘルを盗撮 不送致に

~事例~

会社員のAさんは、出張先の滋賀県米原市のホテルで、デリヘル嬢Vさんを呼びました。
Aさんは、Vさんのサービスを受ける最中、Vさんに無断でカメラを仕掛け、Vさんのサービスの様子を盗撮しました。
VさんがAさんの盗撮行為に気付き、滋賀県米原警察署に相談。
Aさんは、滋賀県米原警察署から、盗撮の被害についての相談があったことを聞き、Vさんに連絡を入れましたが、Vさんからは、きちんとした謝罪と賠償がなければ被害届を出すつもりだということを話されました。
Aさんは、どのように対応すべきなのか不安に思い、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所初回無料法律相談を利用し、その後、弁護士に弁護活動を依頼することにしました。
(※守秘義務の関係で一部事実と異なる表記をしています。)

~弁護活動と結果~

今回のAさんのように、ホテルに呼んだデリヘル盗撮したというケースでは、都道府県の定める迷惑防止条例違反となったり、軽犯罪法違反となったりするケースが多いです。
デリヘルなどの性的サービスを受ける場合でも、当然相手の許可を得ずにサービスの様子を撮影すれば、盗撮行為として犯罪となる可能性は出てきますし、サービス外の行為を強要するなどすれば、それも犯罪行為になり得ます。

Aさんのケースでは、Vさんの意向もあり、Vさんとの示談が成立すれば、そのまま事件が検察へ送致(いわゆる送検)されずに警察段階で終了となる可能性がありました。

そこで、Aさんからの依頼を受けた弁護士は、速やかにVさんに連絡を取り、Aさんが謝罪と弁償の意思を持っていることを伝え、示談交渉に取りかかりました。
弁護士との示談交渉の結果、Vさんとの示談は成立し、Vさんからお許しの言葉をいただくことができました。

弁護士を通じて警察署へ示談を事情を報告したことで、Aさんの盗撮事件不送致となり、警察段階で終了となりました。
これにより、Aさんは前科がつくことも回避でき、刑事手続に対応する時間も短縮することができました。

デリヘル盗撮など、風俗トラブルから刑事事件に発展するケースもあります。
早めに弁護士のサポートを受けて対応することで、事件を早期に終息させることができる可能性もありますから、まずは弁護士に相談してみることをおすすめします。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、風俗トラブルから発展した刑事事件についてのご相談・ご依頼も受け付けています。
盗撮事件などの刑事手続や事件対応にお悩みの際は、お気軽にお問い合わせください。

【解決事例】盗撮事件で釈放後に弁護士に相談 不起訴を獲得

2022-05-25

【解決事例】盗撮事件で釈放後に弁護士に相談 不起訴を獲得

~事例~

Aさんは、滋賀県草津市にある駅のエスカレーターに乗っている際、同じく駅の利用客であった女性Vさんを盗撮してしまいました。
Aさんの盗撮行為はすぐに発覚し、Aさんは現行犯逮捕され、滋賀県草津警察署に連れて行かれましたが、その日のうちに釈放されました。
警察から、後日呼び出しがあると聞いたAさんは、今後どのようにすべきなのか不安に感じ、釈放から数日の間に弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所初回無料法律相談を利用することにしました。
(※守秘義務の関係で一部事実と異なる表記をしています。)

~弁護活動と結果~

Aさんは、盗撮行為をしてしまったことを反省し、Vさんに謝罪したいと考えていました。
弁護士は、Aさんの意向を捜査機関に伝え、弁護士限りでVさんと謝罪・弁償を含めた示談交渉をしたいと申し出ました。
Vさんに話し合いに応じていただくことができ、弁護士はVさんのもとへ出向き、Aさんの反省と謝罪の気持ちを伝え、示談交渉を行いました。

示談交渉の結果、Vさんとの示談が成立し、Vさんからは、Aさんへのお許しの言葉とともに、Aさんの処分を寛大な処分としてほしい旨の上申書もいただくことができました。
こうした事情を弁護士から検察官に訴えたことで、Aさんは不起訴処分を獲得することができました。

今回の事例のAさんは、一度現行犯逮捕された後に釈放されていますが、その後すぐに弁護士への相談・依頼をしています。
釈放されると、身体の自由がきくようになることもあり、「事件が終わった」「ひと段落した」と考えてしまいがちですが、Aさんが警察から言われていたように、釈放されたとしてもその後の捜査は続いていきますし、当然捜査の結果として処分も下されます。
釈放されたからといって事件自体が終わったわけではありませんから、示談締結や不起訴処分の獲得を目指すのであれば、釈放された後でも早い段階から弁護士に相談することが重要です。
特に、捜査段階で釈放された場合には、起訴されるまで国選弁護人がつくこともありませんから、一度弁護士に相談してみることがおすすめです。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、在宅捜査を受けている方やすでに釈放されたという方向けに初回無料法律相談を受け付けています。
ご予約は0120-631-881でいつでも承っていますので、お気軽にお電話下さい。

建造物侵入罪と盗撮行為で逮捕されたら

2022-03-09

建造物侵入罪と盗撮行為で逮捕されたら

建造物侵入罪盗撮行為逮捕されてしまったケースについて,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~

滋賀県彦根市に住むAさんは,これまで何度も盗撮を行った常習犯で,以前にも盗撮をしたことで滋賀県の迷惑防止条例違反となり罰金刑を受けたこともある人物でした。
しかし,Aさんは盗撮をすることをやめることができず,滋賀県彦根市にあるコンビニの女子トイレにこっそり入るとカメラを設置して,利用客であったVさんの排便の様子を盗撮しました。
しかし,Vさんがカメラに気づき,店員に相談したことから店員が滋賀県彦根警察署に通報しました。
防犯カメラの映像等から,Aさんが女子トイレに入って盗撮カメラを仕掛け盗撮をしたことが発覚し,Aさんは滋賀県彦根警察署の警察官に,盗撮による滋賀県の迷惑防止条例違反の容疑と建造物侵入罪の容疑で逮捕されました。
(※この事例はフィクションです。)

~滋賀県の迷惑防止条例違反(盗撮)~

公共の場で盗撮をした場合,各都道府県で定められた迷惑防止条例違反となり,処罰される可能性があります。
滋賀県の場合,「滋賀県迷惑行為等防止条例」という迷惑防止条例の3条で盗撮行為が禁止されています。

滋賀県迷惑行為等防止条例3条
1項 何人も,公共の場所または公共の乗物において,みだりに人を著しく羞恥させ、または人に不安もしくは嫌悪を覚えさせるような次に掲げる行為をしてはならない。
2号 人の下着または身体(これらのうち衣服等で覆われている部分に限る。以下「下着等」という。)をのぞき見すること。

2項 何人も,公共の場所,公共の乗物または集会所,事務所,学校その他の特定多数の者が集まり,もしくは利用する場所にいる人の下着等を見,またはその映像を記録する目的で,みだりに写真機,ビデオカメラその他撮影する機能を有する機器(以下「写真機等」という。)を人に向け,または設置してはならない。

3項 何人も,公衆または特定多数の者が利用することができる浴場,便所,更衣室その他の人が通常衣服の全部または一部を着けない状態でいる場所において,当該状態にある人の姿態を見,またはその映像を記録する目的で,みだりに写真機等を人に向け,または設置してはならない。

この条文に違反して盗撮を行った場合,6月以下の懲役又は50万円以下の罰金が科せられます(滋賀県迷惑行為等防止条例11条1項1号)。
さらに,常習として盗撮行為を行ったと判断された場合は,1年以下の懲役又は100万円以下の罰金が科せられます(滋賀県迷惑行為等防止条例11条2項)。

なお,滋賀県の場合,撮影機器がうまく起動していなかったり角度的に下着等が映っていなかったりして実際に盗撮ができていなかった場合であっても,盗撮目的で撮影機器を差し向けたり設置しただけでも盗撮を行ったのと同様に処罰されうることに注意が必要です。

今回のAさんは,公共の場所であるコンビニのトイレで盗撮をしていることから,滋賀県迷惑行為等防止条例3条1項2号に該当し,迷惑防止条例違反(盗撮)が成立すると考えられます。
加えて,Aさんは盗撮目的でコンビニの女子トイレに入った行為には,コンビニの管理者の意思に反する侵入をしたとして,建造物侵入罪が成立する可能性があります。

~盗撮事件と弁護活動~

Aさんの場合,盗撮の初犯ではなく,過去に罰金刑を受けていることから,今回の盗撮事件が裁判になる可能性も否定できません。
そのため,弁護活動としては,被害者との示談交渉とともに公判に向けた準備をすることも考えられます。
例えば,被疑者の家族に,裁判に情状証人として出廷してもらったり,会社が事件を把握しているような場合には会社の社長や上司に裁判が終わってからも雇用を継続すると書面で約束してもらったりすることで,寛大な判決を目指す準備をしていくことが考えられます。
また,前回の罰金刑の時とは本人の反省の度合いが違うことを示すために,例えば,本人が盗撮を繰り返す原因と真摯に向き合っていること,具体的には医療機関に通院し今後も治療を継続すると約束していることなどの事実があればそれを証拠化する等の準備・活動が考えられます。

こうした弁護活動は,刑事事件に強い弁護士に相談してみましょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では,逮捕等されてしまった捜査段階から起訴されて裁判になってからの公判段階まで,一貫して刑事事件専門の弁護士がサポートを行います。
まずはお気軽にお問い合わせください。

児童買春の前科がある被疑者の弁護活動

2022-02-16

児童買春の前科がある被疑者の弁護活動

児童買春前科がある被疑者の弁護活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説いたします。

~ケース~

滋賀県東近江市在住のAさんは、SNSで知り合った女性Vが17歳であることを知りながら、性交の対償として5万円を支払うことを約し、滋賀県東近江市内のラブホテルでVと性交しました。
近頃、与えた覚えのないお金をVが持っていたり、高額な商品をたびたび購入していることを不審に感じたVの両親がVを問い詰めたところ、SNSで知り合った男性と性交し、対償を得ていることを打ち明けました。
Aさんの起こした事件がV両親に発覚してから数日後、Aさんの自宅に滋賀県東近江警察署の警察官が現れ、Aさんは児童買春の疑いで逮捕されてしまいました。
Aさんには以前も児童買春事件を起こし、罰金刑を受けた過去があります。
今後Aさんはどうなるのでしょうか。
(フィクションです)

~児童買春の罪について解説~

児童買春行為につき有罪判決が確定すると、五年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処せられます(児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律第4条)。

児童買春」とは、
①児童
②児童に対する性交等の周旋をした者
③児童の保護者(親権を行う者、未成年後見人その他の者で、児童を現に監護するものをいいます)又は児童をその支配下に置いている者
に対し、対償を供与し、又はその供与の約束をして、当該児童に対し、性交等をすることをいいます(同法第2条2項)。

Aさんは、児童であるVに、性交の対償として5万円を供与することを約し、Vと性交しています。
前記行為は、児童買春の罪を構成する可能性が高いと考えられます。

~逮捕直後の弁護活動~

逮捕・勾留されてしまうと、捜査段階において最長23日間の身体拘束を受けることになります。
身体拘束が長期化すれば、会社や学校を長期間にわたって無断欠勤・欠席することになってしまいます。
早期に弁護士を依頼し、より早く外に出られるように活動してもらうことが必要です。

~起訴された場合~

初犯であっても、児童買春事件が起訴される可能性は高く、同じ前科があるAさんが起訴される可能性は極めて高いでしょう。
児童買春事件を起こしたのが初めてであり、被害者が1人程度であれば、略式手続により略式起訴され、罰金刑を受けて事件が終了することが多いと思われます。
しかし、同種前科を有するAさんについては、略式手続ではなく、「公判請求」という形式で起訴される可能性があります。

児童買春事件において公判請求がなされる場合とは、前科がある、犯行態様が悪質である、被害者が多数存在するなどの理由で、検察官がAさんにつき懲役刑を相当と思料しているケースです(略式手続では懲役刑に処することはできません)。
公判請求がなされた場合は、公開の法廷に立って裁判を受けることになります。

また、前述の通り、略式手続で懲役刑が言い渡されることは法律上ありえませんが、公判請求がなされた場合は、懲役刑を言い渡される可能性があります。
懲役刑に処せられ、執行猶予がつかなければ、刑務所に入らなければならなくなります。
このような場合は、執行猶予付き判決を獲得し、刑務所での服役を回避することが極めて重要となります。

~執行猶予付き判決の獲得を目指す~

まずは、被害者と示談を成立させることが非常に重要です。
示談が成立すれば、Aさんにとって有利な事情として考慮されることが期待できます。

また、Aさんが児童買春事件を繰り返してしまった背景には、医学的、心理学的に説明されるべき問題が潜んでいるかもしれません。
精神科や心療内科において、専門的な治療、カウンセリングを受け、再犯防止に努めていることを裁判官にアピールすることも考えられます。

児童買春事件を繰り返してしまい、逮捕されてしまった場合には、すぐに刑事事件に熟練した弁護士の接見を受け、有利な事件解決を目指していきましょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件少年事件を専門とする法律事務所です。
ご家族が児童買春事件を起こして逮捕されてしまい、お困りの方は、是非、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

« Older Entries Newer Entries »

トップへ戻る

電話番号リンク 問い合わせバナー