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Yahoo!ニュースに末吉弁護士のコメントが掲載されました

2022-11-02

Yahoo!ニュースに末吉弁護士のコメントが掲載されました

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所 西日本統括本部長弁護士末吉弁護士(大阪弁護士会所属)が産経新聞の取材を受け、コメントが、令和4年10月26日(木)のYahoo!ニュースで紹介されています。◇

~取材の内容~

飲食店に電話で注文したにも関わらず、商品を受け取りに来ない「いたずら予約」が相次いでいる発生している問題に対して、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所 西日本統括本部長弁護士末吉弁護士(大阪弁護士会所属)が取材を受けました。

~末吉弁護士のコメント~

刑事事件の観点から見た「いたずら予約」について

「今回のケースは初めから取りに行くつもりがなく、さらに嘘の番号を伝えている。悪質性が高く、偽計業務妨害罪に問われる可能性がある」とアドバイスしました。

お店の対処法について

「インターネット注文で、事前決済のみ受け付ける。」「電話予約の場合は折り返して本人確認をする。」「作り始める前に再度予約を確認する。」といった方法を提案しました。

末吉弁護士がコメントした『Yahoo!ニュース』はこちらでご確認いただけます。

【事例紹介】ストーカー規制法違反で控訴中の逮捕~建造物侵入罪

2022-10-26

【事例紹介】ストーカー規制法違反で控訴中の逮捕~建造物侵入罪

ストーカー規制法違反で控訴中に、建造物侵入罪、ストーカー規制法違反で逮捕された事件を基に、建造物侵入罪について弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

事例

滋賀県警米原署は19日、建造物侵入とストーカー規制法違反の疑いで、滋賀県彦根市の男(34)を逮捕した。
(中略)つきまといなどの禁止命令を受けたにもかかわらず、(中略)同県米原市の(中略)女性の集合住宅敷地内に入って押しかけ、禁止命令に違反した疑い。
容疑を否認しているという。
男は2月、この女性にストーカー行為をしたとして、同署に逮捕された。
大津地裁長浜支部で5月、同規制法違反の罪で罰金30万円の判決を受けたが、不服として控訴中。
(10月19日 京都新聞 「ストーカー行為で控訴中の34歳男、40代女性住居の敷地内入った疑いで逮捕」より引用)

建造物侵入罪

建造物侵入罪を簡単に説明すると、管理者などの許可なく建造物(人が現在住んでいる家や空き家などを除いた建物)に侵入すると適用される罪名です。

今回の事例では、容疑者が集合住宅の敷地内に侵入したと報道されています。
集合住宅には人が住んでいるのに、なぜ建造物侵入罪が適用されているのでしょうか。
今回の事例で建造物侵入罪が適用されている理由について解説していきます。

刑法では、現在人が日常生活を送っている建物を住居、住居用に建てられた現在人が日常生活を送っていない建物(空き家など)を邸宅と定義しています。
そして、この住居、邸宅以外の建物を建造物と定義しています。
また、生活に適した建物で “現在“日常生活を送っていれば住居にあたるので、宿泊中のホテルの一室なども住居にあたります。

では、集合住宅について考えていきましょう。

集合住宅には多数の部屋があり、空き部屋でない限りはその一室一室に人が住み、日常生活を送っています。
集合住宅の部屋(居住部分)は人が住むために建設されいるので、当然生活に適した建物だといえるでしょう。
生活に適した建物で現在生活が送られている場所は住居になるので、人が住んでいる集合住宅内の一室は住居に該当します。

次に集合住宅の共有部分について考えていきましょう。

例えば、集合住宅の廊下はどうでしょうか。
廊下は多数の人が使用するので人の出入りが多いはずですし、そもそも廊下は通行のためにあるわけですから、人がその場所で生活することは想定されていないでしょう。
そのような場所で生活をすることは困難でしょうから、人が生活するのに適しているとは言えませんし、そのような場所に住む(日常生活を送る)人もいないと思われます。
以上のことから集合住宅の廊下は住居、邸宅にはあたらないので、建造物だといえます。

廊下以外の共有部分、例えばエントランスなどであっても同様のことがいえるでしょうから、集合住宅の部屋以外は建造物だと考えても差し支えはないはずです。

ですので、集合住宅の敷地内の人が住む場所(居住部分)に侵入すれば住居侵入罪にあたりますし、それ以外の場所(空き部屋を除く)であれば建造物侵入罪が成立します。
また、許可なく住居や建造物に侵入した場合に住居侵入罪や建造物侵入罪は適用されますので、立ち入りが許可されている場合には住居侵入罪、建造物侵入罪は成立しません。

今回の事例の報道には、容疑者が集合住宅の敷地内に侵入したとしか記載されていません。
容疑者が被害者の住む部屋に侵入していれば住居侵入罪になりますし、部屋以外の場所であれば建造物侵入罪が適用されることになります。
今回の報道が事実であれば、容疑者が建造物侵入罪で逮捕されていることから、おそらく集合住宅の廊下など部屋などの居住部分以外の場所に侵入したのでしょう。

建造物侵入罪の量刑は3年以下の懲役または10万円以下の罰金です。(刑法第130条)
仮に、容疑者の男性が建造物侵入罪で有罪になってしまった場合には、3年以下の懲役か10万円以下の罰金のどちらかが科されることになります。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では逮捕、捜査された方に向けて初回接見サービス、初回無料法律相談を行っています。
建造物侵入罪、ストーカー規制法違反、その他の刑事事件でお困りの方は弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
初回接見サービス、無料法律相談のご予約は0120―631―881で24時間受け付けております。

次回のコラムでは、同じ事例を用いてストーカー規制法違反について解説します。

【事例紹介】禁止区域内で性的サービス 風営法違反で逮捕

2022-10-19

【事例紹介】禁止区域内で性的サービス 風営法違反で逮捕

禁止区域内で性的サービスを提供し、風営法違反逮捕された事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

事例

滋賀県警大津署などは13日、風営法(禁止地域営業)違反の疑いで、(中略)の経営者(43)と従業員の女(30)=いずれも同市=を逮捕した。
逮捕容疑は、経営者は9月28日、風俗店の営業禁止地域にある同店の個室で、男性客に対する性的サービスを従業員の女にさせた疑い。
女はほう助した疑い。
同署によると2人は容疑を認めているという。
(10月13日 京都新聞 「客に性的サービス、個室マッサージ店経営者ら容疑で逮捕」より引用)

店舗型性風俗特殊営業

風営法では、店舗に個室を作り、その個室内で異性の客の性的好奇心に応じて性的なサービスを提供する営業を「店舗型性風俗特殊営業」として規定しています。(風営法第2条6項2号)

今回の事例では、店舗の個室内で性的なサービスを異性に提供していたとされていますが、それが事実であれば、事例の店舗は風営法上の店舗型性風俗特殊営業にあたると考えられます。

店舗型性風俗特殊営業の禁止区域

風営法第28条では、店舗型性風俗営業の禁止区域を定めています。
官公庁施設や学校、児童福祉施設などの周囲200メートルの区域内、各都道府県の条例が定める禁止地域では、店舗型性風俗営業を禁止されています。(店舗型性風俗営業について届出書を提出している場合を除きます。)

風営法に違反し、禁止区域内で店舗型性風俗営業を行って有罪になった場合は、2年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金またはその両方が科されます。(風営法第49条5号、6号)

今回の事例の報道には、届け出の有無は記載されていないのでわかりませんが、もしも営業の届け出を行っていないのであれば、容疑者2人は禁止区域内で店舗型性風俗営業を行っているので、風営法に違反していることになります。

今回の事例のように逮捕されてしまった場合には、早期に弁護活動を行うことが重要になってきます。
あなたの大切な方が逮捕された際には、お早めに弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
弊所では逮捕された方に向けて初回接見サービスを行っております。
初回接見サービスのご予約は0120―631―881までご連絡ください。

(事例紹介)大津地裁 強制性交等致傷罪などで実刑判決

2022-10-12

(事例紹介)大津地裁 強制性交等致傷罪などで実刑判決

~事例~

去年5月、守山市の路上で20代の女性の体を触ったうえ、足を刺し大けがをさせたなどとして強制性交等致傷などの罪に問われた28歳の被告に対し、大津地方裁判所は「無差別的、通り魔的に犯行を繰り返した」として懲役10年の実刑判決を言い渡しました。
(中略)被告(28)は、去年5月、守山市の路上で20代の女性の体を触り、その際、包丁で女性の足を刺し、全治1か月の大けがをさせたとして強制性交等致傷の罪に問われました。
また、守山市での犯行の前に草津市の路上でも10代の女性に抱きついて体を触るなどしたとして、強制わいせつの罪などにも問われました。
(後略)
(※2022年7月27日18:09NHK NEWS WEB配信記事より引用)

~強制性交等致傷罪と刑罰の重さ~

今回取り上げた事例では、被告人の男性が、20代女性に対する強制性交等致傷罪と、10代女性に対する強制わいせつ罪の容疑で起訴され、刑事裁判の結果、懲役10年実刑判決が言い渡されたと報道されています。
強制性交等致傷罪も強制わいせつ罪も非常に重い犯罪であり、罰金刑の規定はなく懲役刑のみが定められています。
つまり、強制性交等致傷罪も強制わいせつ罪も、起訴されれば必ず刑事裁判となり、公開の法廷で有罪・無罪を争ったり、有罪の場合の刑罰の重さを判断したりすることになります。
さらに、有罪の場合には執行猶予がつかなければ刑務所に行くことになりますし、特に強制性交等致傷罪については刑罰の下限が懲役6年であることから基本的には執行猶予がつかないため(執行猶予がつくには言い渡された刑罰が懲役3年以下であることが必要)、強制性交等致傷罪で起訴され有罪となるということは、原則として実刑判決となり刑務所に行くということに繋がります。

刑法第176条(強制わいせつ罪)
13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、6月以上10年以下の懲役に処する。
13歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。

刑法第177条(強制性交等罪)
13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いて性交、肛門性交又は口腔性交(以下「性交等」という。)をした者は、強制性交等の罪とし、5年以上の有期懲役に処する。
13歳未満の者に対し、性交等をした者も、同様とする。

刑法第181条第2項(強制性交等致死傷罪等)
第177条、第178条第2項若しくは第179条第2項の罪又はこれらの罪の未遂罪を犯し、よって人を死傷させた者は、無期又は6年以上の懲役に処する。

加えて、強制性交等致傷罪は、その刑罰の中に無期懲役も含まれています。
これによって、強制性交等致傷罪の刑事裁判は、裁判員裁判となります。
裁判員裁判では、裁判官に加えて一般の方から選出される裁判員に対しても被告人の主張を訴えていく必要があります。
法律知識や刑事事件の経験のない裁判員の方々に適切に主張を理解してもらうためには、より経験と工夫が求められるといえます。

~強制性交等致傷罪の成立~

ここで今回の事例を見ると、被告人の男性は、20代女性に対して、その身体を触り足を突き刺すなどしたとされています。
報道の内容だけでは具体的な犯行を全て知ることは叶いませんから、実際には被害女性が性交等にあたる被害を受けてしまったのかもしれませんが、報道だけ見ると「性交等にあたる行為をしていないように見えるのに強制性交等致傷罪が成立するのか」と思われた方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、強制性交等致傷罪の条文では、「第177条…の罪又はこれらの罪の未遂罪を犯し、よって人を死傷させた」ということが強制性交等致傷罪の成立要件とされています。
つまり、「性交等」という強制性交等罪の結果が発生していない=強制性交等未遂罪を犯したにとどまる場合であっても、それによって人を負傷させてしまえば、強制性交等致傷罪の既遂となるということです。

ですから、例えば今回の事例で、被害女性が「性交等」の被害を受けていなかったとしても、強制性交等未遂罪を犯したと言える状態で、それによって被害女性が怪我を負っているのであれば、強制性交等致傷罪が成立するということになるのです。

今回の事例では、被告人は強制性交等致傷罪だけでなく、別件の強制わいせつ罪でも起訴されており、そういった部分での悪質性も加えて、懲役10年の実刑判決という判断になったのでしょう。
ここまで触れてきたとおり、強制性交等致傷罪や強制わいせつ罪は非常に重い犯罪であり、被害者に与える被害の大きさも大きい犯罪です。
被害者対応や刑事裁判に対する対応も慎重を期す必要がありますから、刑事事件化した段階から弁護士のサポートを受け、専門家のアドバイスを受けながら対応をしていくことが望ましいでしょう。

刑事事件を中心に取り扱う弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、強制性交等致傷事件などの重大事件についてもご相談・ご依頼を承っています。
刑事事件を多数扱っているからこそ、裁判員裁判を担当した経験のある弁護士も所属しています。
裁判員裁判対象事件についても安心してご相談いただけますので、まずはお気軽にお問い合わせください。

(事例紹介)住居侵入盗撮事件などで保護観察付執行猶予判決となった事例

2022-10-05

(事例紹介)住居侵入盗撮事件などで保護観察付執行猶予判決となった事例

~事例~

(前略)
被告は、背筋を伸ばして判決の宣告を聞いた。懲役2年6月、保護観察付き執行猶予4年。
(中略)
性犯罪者の再犯防止のためには適切な治療が必要という考え方が、司法関係者に広がっている。法務省保護局は2006年以降、「性犯罪者処遇プログラム」を実施。保護観察になった男性加害者を対象にした最新の調査では、プログラムを受講しなかった場合の再犯率は26%だったのに対し、受講した場合は15%にとどまっている。
(中略)被告が問われたのは住居侵入、ストーカー規制法違反、滋賀県迷惑行為等防止条例違反などの罪。同僚女性の勤務時間を把握し、自宅への侵入を繰り返したという。公判では起訴内容を認め、認知行動療法による再犯防止プログラムを受講していることを明かした。大津地裁は判決で「自宅に盗撮のための侵入を繰り返され、被害者が受けた精神的苦痛は容易に言葉にできるものではない」と非難。更生の意欲などを考慮して執行猶予とした上で、「被害者との接触を厳に禁止するなどしながら、専門家の指導監督下に置くのが相当」として保護観察付きとした。
(※2022年9月30日11:00京都新聞配信記事より引用)

~保護観察付執行猶予~

犯罪をして捜査を受けることとなった場合、捜査を経て検察官がその事件を起訴するか不起訴にするかの判断をすることになります。
起訴されるとなった場合には、刑事裁判となり、公開の法廷で有罪・無罪が争われたり、有罪の場合の刑の重さが決められたりします。
容疑に争いがない場合、多くのケースで刑罰を減軽してほしいという訴えや、執行猶予を付けてほしいという訴えをすることになるでしょう。
特に、刑務所に行ってしまういわゆる実刑判決を受けてしまえば、その期間中社会から隔離されて過ごすこととなってしまうため、実刑判決を避けてほしい=執行猶予を獲得してほしいと望まれる方は多いでしょう。

そもそも、執行猶予とは、文字通り刑罰の執行を猶予する制度です。
例えば、「懲役1年6月、執行猶予3年」という判決が下った場合、執行猶予期間である3年間は懲役1年6月という刑罰の執行が猶予され、3年間を何事もなく過ごすことができれば、懲役1年6月という刑罰は受けずに済むということになります。
執行猶予期間である3年間のうちに再度犯罪をして有罪となった場合には、猶予されていた懲役1年6月の刑罰を受けることになりますし、それに加えて執行猶予期間中にしてしまった犯罪の刑罰も受けることになります。

この執行猶予には、いくつか種類があります。
一般にイメージされる執行猶予は、「刑の全部執行猶予」を指すことが多いです。
これは、言い渡された刑罰のすべてが執行猶予の対象となるもので、先ほど例に挙げた「懲役1年6月、執行猶予3年」のケースはこの「刑の全部執行猶予」に当たります。

一方、「刑の一部執行猶予」という執行猶予も存在します。
この場合、執行が猶予される刑罰は全体の刑罰のうちの一部に限定され、例えば「懲役3年、うち1年につき3年の執行猶予」といった形になります。
例に挙げたケースでいうと、懲役3年のうち執行猶予されていない分の2年に関しては、刑が執行される=刑務所へ行くことになります。
そして、2年の刑期を終えて出所し、その後執行猶予の対象となった1年について3年間の執行猶予期間を過ごすということになります。
この3年間の執行猶予期間を何事もなく過ごせば1年分の懲役刑については受けることを免れられますし、逆に3年間の執行猶予期間で犯罪をしてしまえば、猶予されていた1年分の懲役刑としてしまった犯罪の分の刑罰を受けることとなります。

これらの執行猶予には、「保護観察」が付けられることがあります。
これが今回取り上げた事例の判決でも言い渡された「保護観察付執行猶予」です。
保護観察付執行猶予となった場合には、執行猶予期間中に保護観察官や保護司から指導監督を受けながら生活することになります。
例えば、「刑の全部執行猶予」の例で挙げた「懲役1年6月、執行猶予3年」のケースで保護観察付執行猶予であった場合、執行猶予期間である3年間は保護観察官や保護司から指導監督を受けながら生活することになります。
具体的には、最初に保護観察期間中に守るべき「遵守事項」(一般遵守事項と特別遵守事項があります。)が決められ、その「遵守事項」を守りながら生活するよう、定期的な面談・連絡を重ねながら指導・監督を受けることになります。
保護観察期間中の「遵守事項」のうち、「一般遵守事項」は保護観察付執行猶予判決を受けた人全員に共通して定められる事項であり、再犯をしないことや保護観察官・保護司の指導を誠実に受けることなどが定められています。
もう1つの「特別遵守事項」は、してしまった犯罪の傾向や個人の特徴によって定められるものであり、場合によっては「一般遵守事項」のみ定められ「特別遵守事項」は定められないこともあります。
例えば、共犯者のいる事件であれば共犯者との交際を断つということを定めたり、今回の事例で取り上げられている「性犯罪者処遇プログラム」などの再犯防止用プログラムの受講を定めたりすることが挙げられます。

単なる執行猶予ではなく保護観察付執行猶予が付されるケースとしては、今回の事例で裁判官が話していたような、実刑も考えられるが指導・監督や援助によって社会内での更生が期待できるというケースや、実刑までは考えられないが保護観察を付けることで社会福祉的な援助を期待するケースなどが考えられます。
例えば、再犯を何度も繰り返してしまい当事者だけでは更生が難しいもののプログラムの受講などの援助を受けることで更生が期待できるといったケースや、保護観察期間中に就労支援などを受けることで就労し生活環境を改善することが期待できるといったケースが想定されます。
今回取り上げた事例でも、認知行動療法などのプログラム受講などを遵守させることで、再犯防止に期待できると判断されたものと考えられます。

指導監督や援助を受けられるという意味では、保護観察付執行猶予は再犯防止や更生にプラスにはたらくと考えられますが、保護観察付執行猶予を受けた後に再犯をしてしまうと、再度の執行猶予を得ることはできません。
つまり、保護観察付執行猶予を受けた後に再度犯罪をしてしまえば、刑務所へ行くことになるということです。
ですから、「執行猶予になったから刑務所に行かなくて済んだ」と軽く考えるのではなく、保護観察付執行猶予を再犯防止・更生の機会として真摯に取り組む必要があります。
そういった環境を整えて刑事裁判に臨むためにも、早い段階から弁護士に相談し、準備していくことが望ましいでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件を多数取り扱う弁護士が、捜査段階から刑事裁判での公判弁護活動まで、一貫してサポートを行います。
執行猶予獲得を目指したい、刑事裁判になるのが不安だとお悩みの際は、一度お気軽にご相談ください。

【事例紹介】家族への傷害事件で家族が逮捕された事例

2022-09-28

【事例紹介】家族への傷害事件で家族が逮捕された事例

滋賀県東近江市で起きた家族への傷害事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

事例

長女(13)に暴行しけがを負わせたとして、滋賀県警東近江署は21日、傷害の疑いで、滋賀県東近江市の無職の父親(42)とアルバイトの長男(16)を逮捕した。
逮捕容疑は、7月20日午前10時10分から22日午前9時半の間、長男と自宅で長女の腕や脚を蹴ったり、髪をつかむなどの暴行を加え、右脚などに打撲を負わせた疑い。
(後略)
(9月21日 京都新聞 「長女の腕や足を蹴り、けが負わせた疑い 42歳父と16歳兄逮捕「弟に暴力、腹立った」」より引用)

傷害罪

人の身体を傷害した者は、15年以下の懲役または50万円以下の罰金に処する。(刑法第204条)

暴行し、人にけが負わせた場合は傷害罪にあたります。
今回の事例では、父親と長男が、長女の腕や脚を蹴る暴行を行い、長女に打撲(けが)を負わせているので、父親と長男の2人が傷害罪の容疑で逮捕されています。
傷害罪により有罪になった場合は、15年以下の懲役か50万円以下の罰金が科されることになります。

家族内のトラブルだからと考える方もいらっしゃるかもしれませんが、傷害罪の成立要件の中に加害者と被害者の関係性で限定はありません。
ですから、たとえ加害者と被害者が家族同士であったとしても、暴行をふるってけがをさせてしまえば、当然傷害罪に問われることになります。

では、実際に子供に蹴る暴行を加え、傷害罪で有罪になった場合にはどれ位の量刑が科されるのでしょうか。
実際に子供の腕や脚を蹴り、傷害罪で有罪になった事例をご紹介します。
(ご紹介する事例は、事件内容など今回の事例と異なります。)

岡山県警察本部の警察官は、自宅で小学生の子供に腕や脚を蹴るなどの暴行を行い、全治2週間から4週間の打撲を負わせました。
その後、警察官は傷害罪の容疑で逮捕され、略式命令により30万円の罰金が科されました。
(2022年8月23日 NHK NEWS WEB 「子どもに暴行 警察官に罰金30万円の略式命令」より)

岡山県の事例では全治2~4週間の打撲を負わせたとして、警察官は30万円の罰金が科されています。
今回の事例では、長女のけがの度合いはわかりませんが、岡山県の事例のように打撲を負わせていることから、同程度の罰金が科される可能性もあるといえるでしょう。
もちろん、けがの程度や、暴行の常習性の有無など、考慮されるべき事情は様々ですので、罰金刑でも金額が前後したり、懲役刑が妥当と考えられて起訴される可能性も否定できません。

また、今回の事例では10代の長男も傷害罪に問われていますが、こちらは10代の少年のため、少年事件の手続に則って処分が決められることとなります。
こちらについては、原則としては保護処分という更生を目指すための処分が下されることになりますが、社会内での更生が可能なのか、適切なのかといった部分によって、少年院送致などの施設送致の処分か、保護観察処分となるかが変わってくることになります。

今回取り上げた事例のように、家族など親しい人や知人への暴行・傷害事件の場合は、加害者が被害者に接触することが可能であることから、逮捕されやすい傾向にあります。
身柄解放活動は時間との勝負ですので、逮捕された場合は早期に弁護士に相談をすることがとても大切です。
もちろん、最終的な処分を適切なものとするためにも、早い段階から弁護士のアドバイスを受けるなどの弁護活動をしてもらうことが重要です。
逮捕の知らせを受けたときからすぐに弁護士に相談してみることが望ましいでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、初回接見サービスや無料法律相談を行なっています。
逮捕された方や傷害罪などの刑事事件でお困りの方は弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

【解決事例】淫行による青少年健全育成条例違反事件で釈放に成功

2022-09-28

【解決事例】淫行による青少年健全育成条例違反事件で釈放に成功

事件

滋賀県草津市に住むAさんは、Vさんと共通の知人を通じて知り合い、ネット上でやり取りを行っていました。
AさんとVさんは実際に会うことになり、AさんはVさんに誘われたことから、18歳未満だと知りながらVさんと性行為をしました。
その後、Aさんは青少年の健全な育成に関する条例違反の容疑で滋賀県草津警察署の警察官に逮捕されました。
Aさんの逮捕後すぐにAさんの家族は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所初回接見サービスを利用しました。
(※守秘義務の関係で一部事実と異なる表記をしています。)

事件解決のながれ

初回接見後、弁護活動の依頼を受けた弁護士は、Aさんの釈放を求める弁護活動に取り掛かりました。

Aさんが逮捕された直後から弁護活動を開始することができたため、Aさんに対する勾留(逮捕よりも長期の身体拘束)はまだ決まっていない状態でした。
そこで、弁護士は勾留を回避するために、勾留請求に対する意見書を作成し検察庁に提出しました。
意見書では、Aさんが逃亡や証拠隠滅をしないことや、家族がAさんの監督を行えること、Aさんがクリニックに通いカウンセリングを受ける必要性があることを検察官に訴えました。
しかし、その段階では弁護士の訴えは退けられてしまい、検察官はAさんの勾留を請求しました。

検察官の勾留請求後、弁護士は裁判所に勾留請求に対する意見書を提出しました。
裁判所へ提出した意見書も検察庁に提出したものと同様に、Aさんを勾留する必要性がないことや、Aさんを釈放する必要性があることを裁判官に訴えました。
裁判所に提出した意見書により弁護士の訴えが認められ、Aさんの釈放が決定しました。
釈放となったことで、Aさんは日常生活を送りながら取調べなどの捜査へ対応することが可能となりました。

その後、Aさんは略式手続により罰金刑が下されました。

検察官は逮捕後72時間以内に勾留を請求するかどうかの判断をします。
検察官が勾留を請求した場合は、裁判官が勾留を決定すべきかどうかを判断します。
弁護士は、検察官が勾留を請求する前や裁判官が勾留決定を下す前に、検察庁、裁判所それぞれに対して意見書を提出するなどして釈放を交渉することができます。
また、裁判官の判断により勾留が決定した後でも、勾留決定に対して準抗告申立書を裁判所に提出し、勾留決定の判断が妥当なのかを再度、別の裁判官に判断してもらうことができます。

釈放を求める弁護活動を行う上で、逮捕後の72時間の間の弁護活動はとても重要です。
今回の解決事例では、Aさんの逮捕当日から釈放を求める弁護活動を行えたため、検察官の勾留請求前、裁判官の勾留決定前の2回にわたって意見書を提出し、Aさんの釈放を実現することができました。
勾留が決定してしまったあとでは勾留請求に対して交渉することができませんので、その分釈放を求めることができる機会が減ってしまいます。

また、意見書を作成するための時間も必要になりますから、釈放を目指すためには早期に身柄解放活動に取り掛かる必要がありますから、そういった意味でも早期の相談・依頼が重要です。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件を中心に扱う法律事務所です。
ご家族が逮捕され弁護士を選任するかどうか迷っている方は、ぜひ弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の初回接見サービスをご利用ください。
ご予約は0120―631―881で承っております。

【事例紹介】滋賀県野洲市 強盗未遂罪で逮捕

2022-09-21

【事例紹介】滋賀県野洲市 強盗未遂罪で逮捕

滋賀県野洲市で起きた強盗未遂事件について弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

事例

滋賀県警守山署は19日、強盗未遂の疑いで、滋賀県草津市、無職の男(33)を逮捕した。
逮捕容疑は、18日午後5時5分ごろ、同県野洲市西河原の仏壇店で、店を経営する男性(48)にカッターナイフを突き付けて「有り金全部出せ」などと現金を要求した疑い。
(後略)
(9月19日 京都新聞 「「有り金全部出せ」カッターナイフで仏壇店主を脅す 容疑で33歳男を逮捕」より引用)

強盗罪

刑法第236条第1項
暴行または脅迫を用いて他人の財物を強取した者は、強盗の罪とし、5年以上の有期懲役に処する。

強盗罪を簡単に説明すると、暴行や脅迫を用いて財物を強取する犯罪です。
強盗罪が成立するには、一般の人が反抗することができないと思われる程度の暴力や脅迫が必要です。
ですので、暴行や脅迫が上記の程度を満たしていない場合は、恐喝罪など別の罪に問われることになります。
また、強盗罪は未遂であっても罰せられます。(刑法第243条)

今回の事例ではカッターナイフを突き付けることで男性を脅し、お金を奪い取ろうとしています。
カッターナイフで脅された状態で相手に逆らうことは、命の危険もあり一般的に見ても困難でしょうから、今回の事例では強盗罪が適用されているのでしょう。
また、「現金を要求した疑い」と記載されていることから、事例の男性がお金を奪い取ることができなかったと推測されます。
事例の男性はお金を奪い取ることができなかったので、今回の事例では強盗未遂罪の容疑で逮捕されたのだと考えられます。

強盗罪で有罪になった場合は5年以上の有期懲役が科されることになりますが、未遂であった場合は刑罰の減軽や刑が免除される場合があります。(刑法第43条)
では強盗未遂罪で有罪になった場合はどれくらいの量刑が科されるのでしょうか。

福島県にある信用金庫などに刃物を持って押し入り、現金を奪おうとした強盗未遂事件では、被告人に懲役3年6月の実刑判決が下されました。
(9月16日 福島テレビ 「福島・南相馬市強盗未遂事件で 被告の66歳の男に 懲役3年6か月の実刑判決」より)

ご紹介した裁判例では、被告人に懲役3年6月が言い渡されています。
強盗罪で有罪になった場合は5年以上の有期懲役になりますので、未遂などを理由に刑罰が軽減されたことが伺えます。

今回の事例と裁判例では事件内容など異なる点はありますが、どちらの事例も刃物を用いた強盗未遂事件です。
今回の事例の男性が有罪になった場合にも、紹介した裁判例と同様に未遂であることが考慮されることも考えられます。
しかし、たとえ刑罰が減軽されたとしても、紹介した裁判例と同様に執行猶予が付かず、懲役刑が科されてしまった場合は刑務所に収容されることになります。
こうしたケースで、例えば執行猶予付き判決を得たいというような場合には、公判に向けてより入念な準備が必要になってくるといえるでしょう。
公判に向けての準備や身柄解放活動を行うためにも、早い段階から弁護士に相談をすることが望ましいといえます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件の豊富な弁護経験をもつ法律事務所です。
刑事事件に強い弁護士をつけることによって、執行猶予付き判決を目指したり、刑罰の減軽を求めたりする弁護活動をスムーズに進めることが期待できます。
強盗未遂罪についてお困りの場合や、ご家族ご友人が逮捕されてしまってお悩みの場合には、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。 

【事例紹介】滋賀県長浜市 グラウンドに侵入して建造物侵入罪

2022-09-14

【事例紹介】滋賀県長浜市 グラウンドに侵入して建造物侵入罪

滋賀県長浜市にある中学校のグラウンドで車を走行させ、建造物侵入罪で逮捕された事例を弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

事例

8日午前9時5分ごろ、滋賀県長浜市高田町の長浜西中で、「不審な車がグラウンドを走り回り、横転した」と110番があった。生徒らにけが人はなかった。
滋賀県警長浜署は、建造物侵入の疑いで、現場にいた運転者の同市の女(48)を現行犯逮捕した。
(後略)
(9月8日 京都新聞 「中学校のグラウンド「不審な車走り回り、横転」 侵入容疑で48歳の女逮捕」より引用)

建造物侵入罪

建造物侵入罪は、刑法第130条で規定されています。

刑法第130条
正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、3年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。

刑法第130条では建造物以外のものへの侵入に対する犯罪も規定されており、住居、邸宅、建造物、艦船に侵入した場合にも刑法第130条に該当することになります。

刑法第130条で定められる建造物は、日々生活を行う場所(住居)や、人が住むために造られた住居以外の建造物(邸宅)を除いた建造物を指します。
今回事件があった学校のほか、工場や商業施設、会社などがこの建造物にあたります。

では、今回の事例に当てはめて考えていきましょう。

今回の事例ではグラウンドを車が走り回り、運転していた女性が建造物侵入罪で逮捕されています。
グラウンドは日々生活を行う場所ではありませんし、人が住むための建物でもありませんので住宅や邸宅にあたらないことがわかります。

次に、グラウンドが刑法第130条でいう「建造物」にあたるのという問題ですが、そもそもグラウンドは「建造物」といえるのでしょうか。
こうした部分から、今回の事例の女性が建造物侵入罪で逮捕されたことに疑問を持った方も多いと思います。
では、なぜグラウンドへの侵入が建造物侵入罪にあたるのかを1つの判例を用いて解説していきます。

ご紹介するのは、その裁判の被告人らの行為が建造物侵入罪にあたるのかについて争われた事件の判例です。
この事件では、被告人らは、ほか数十名の学生らとともに、正門を閉鎖し通路を金網柵で遮断された部外者以外立ち入り禁止のA構内へ、金網柵を引き倒して乱入しました。
被告人らが侵入した場所は、A建物の通用門からC構内の建物やグラウンドへの通路、並びに駐車場に利用されている土地でした。

この建造物侵入事件の第1審では、被告人両名に懲役3月執行猶予2年に処しましたが、その後の控訴審では建造物侵入罪にあたらないとして無罪を言い渡しました。

その後の上告審で、その土地が、建物に接してその周辺に存在し、管理者が外部との境界に門塀等の囲障を設置し、建物の附属地として建物利用のために供されるものであることを明示されれば、囲繞地にあたると裁判官は判断しました。
刑法第130条で規定されている「建造物」には囲繞地が含まれており、囲繞地に侵入した場合は建造物侵入罪が成立します。

今回の被告人らが侵入した土地は、A建物の囲繞地であり建造物侵入罪にあたるため、東京高等裁判所への差し戻しが決まりました。
昭和51年3月4日 最高裁判所より)

つまり、この判例によると、土地が門や塀などに囲まれていて建物の附属地として使用されていれば囲繞地=建造物侵入罪の対象である「建造物」として認められます。

では、今回の事例のグラウンドは囲繞地にあたるのでしょうか。
事例に当てはめて考えていきましょう。

通常、中学校のグラウンドは門や塀、柵などで囲まれて、外の道路などとは分けられていることが多いでしょう。
また、グラウンドは校舎に接しているでしょうし、校舎の附属地でもあります。
グラウンドでは体育の授業などを行うでしょうから、校舎の附属地として利用されているといえます。
事例のグラウンドは囲繞地としての条件を満たしていますので、囲繞地にあたるだろうと考えられます。

となると、刑法第130条で規定している「建造物」には囲繞地も含まれますので、今回の事例の女性が建造物侵入罪で逮捕されたことは不思議ではないことがわかります。

このようにして、建造物侵入罪のような一般に名前が知られているような犯罪であっても、イメージ通りではないケースが存在します。
刑事事件の知識・経験のある弁護士に相談しておくことで、こうしたイメージとのギャップをなくして刑事手続へ適切に対応できるようになることが期待できます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、在宅捜査を受けている方にも逮捕・勾留されて捜査を受けている方にもご利用いただけるサービスをご用意しています。
建造物侵入事件を含む刑事事件でお困りの際は、お気軽にお問い合わせください。

【事例紹介】死亡事故、労働安全衛生法違反で書類送検

2022-09-07

【事例紹介】死亡事故、労働安全衛生法違反で書類送検

滋賀県で起きた労働安全衛生法違反事件について弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

事例

滋賀県東近江労働基準監督署は2日、労働安全衛生法違反の疑いで、京都府八幡市のリサイクル会社と滋賀県湖南市の同社滋賀営業所の男性所長(47)を書類送検した。

書類送検容疑は、(中略)作業員(74)がフォークリフトにひかれ、死亡した事故で、フォークリフトと接触する恐れのある場所に作業員を立ち入らせない措置を講じなかった疑い。
(9月2日 京都新聞 「フォークリフトにひかれ作業員死亡、京都・八幡のリサイクル会社を書類送検」より引用)

労働安全衛生法

労働安全衛生法第21条
1、事業者は、掘削、採石、荷役、伐木等の業務における作業方法から生ずる危険を防止するため必要な措置を講じなければならない。
2、事業者は、労働者が墜落するおそれのある場所、土砂等が崩壊するおそれのある場所等に係る危険を防止するため必要な措置を講じなければならない。

フォークリフトは荷役作業(荷物の運搬作業)に使われます。
また、労働安全衛生法では、荷役に生じる危険を防止するための措置の実施を義務付けています。

今回の事例ではフォークリフトにより事故が起きており、フォークリフトは荷役作業に使用されますので、事例の事故当時は荷役作業中だったと考えられます。
前述したように、荷役作業で生じる危険については防止措置を講じる必要がありました。
今回の事例では、「フォークリフトと接触する恐れのある場所に作業員を立ち入らせない措置を講じなかった」と記載されていることから、荷役作業の危険防止措置が講じられていなかったことが伺えます。
繰り返しになりますが、荷役作業に生じる危険に対して防止措置を講じることは事業者に科される義務です。
ですので、防止措置を講じなかった場合は、労働安全衛生法違反になります。
労働安全衛生法第21条に違反し有罪になった場合は、6月以下の懲役もしくは50万円以下の罰金が科されます。(労働安全衛生法第119条)

では、実際に労働安全衛生法第21条で違反した場合はどのような量刑が科されるのでしょうか。
実際の事件を基に解説していきます。
※ご紹介する事件は労働安全衛生法第21条第2項に違反した事件です。今回の事例とご紹介する事件では事件内容が異なります。

この事例では、段ボール製造販売会社の工場で、屋根上の清掃作業をしていた男性が屋根の板部分を踏み抜き地面に墜落し死亡しました。
墜落防止措置を講じていなかったとして、労働安全衛生法違反の容疑で会社と次長が書類送検されました。
その後、会社と次長には、略式手続により罰金20万円が科されました。
(2021年12月2日 京都新聞 「屋根を踏み抜いて墜落死、会社と次長に罰金20万円の略式命令」より)

労働安全衛生法第21条第2項では、墜落するおそれのある場所の危険を防止する措置を講じなければならないと規定されています。
男性が墜落死した事件では、「墜落防止措置を講じていなかった」と記載されていることから労働安全衛生法第21条第2項に違反していると考えられます。

労働安全衛生法第21条第2項に違反した場合は、同条の第1項と同様の量刑が科されます。
ですので、今回の事例とご紹介した事件では事件内容や根拠となる条文が異なりますが、今回の事例でもご紹介した事件と同様に罰金刑が下される可能性があります。
罰金刑は前科になります。
前科が付いてしまうと資格のはく奪や、新しく資格を取得できなくなるおそれがあります。
早期に弁護士に相談し、弁護士が検察官に働きかけを行うことで不起訴処分を得られる可能性や、刑罰を軽減できる可能性があります。
労働安全衛生法違反でお困りの方は、刑事事件を多数取り扱う弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

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